「カムチャツカの若者が」はまだ覚えている?
この回は、光村図書出版の現行の国語の教科書を、堀元さんと水野さんが中学の巻から順にめくっていく企画です。堀元さんにとっては中3以来、約18年ぶりの国語の教科書になります。
堀元さんは中学時代を「世界を呪っていた時期」と振り返ります。当時は漫画『デスノート』に夢中で、自分のところにもデスノートが落ちてこないかと本気で思っていたそうです。
「俺んとこにもデスノート落ちてこねえかな」って思ってた。「死神リューク、俺を選べ」って思ってました、ずっと。
中1の教科書を開くと、最初に出てきたのが谷川俊太郎 ── 日本を代表する詩人。『二十億光年の孤独』などで知られ、教科書にも多くの詩が採られてきましたの詩『朝のリレー』でした。堀元さんは、自分の時代の教科書にも同じ詩が載っていたと気づきます。
カムチャツカの若者さ、中1の時に多分脳裏に刻み込まれて、それから17年間ぐらいずっと使われなかったのに、急に今蘇ってきました。
堀元さんは「カムチャッカ」という地名自体をこの詩で覚えたといいます。一方の水野さんはこの詩をまったく覚えておらず、堀元さんから「感受性がない」といじられます。
続いて『枕草子』の「春はあけぼの」が出てくると、二人は授業での暗唱テストを思い出し、その場で暗唱を始めます。堀元さんは春と夏をほぼ言えたものの、「秋は夕暮れ」から先は出てこず、「冬はつとめて」は内容だけ覚えていました。
冬の段は水野さんが引き取り、「炭もて渡るもいとつきづきし」まで暗唱します。水野さんは、「つきづきし」の訳語が「似つかわしい」なのが中学生には難しかったと指摘します。
似つかわしいって似てる意味なのか似てない意味なのか、どっちなのかってなるよね。
暗唱の話から、堀元さんの中学時代の話にも戻ります。堀元さんは、クラスの中心でひょうきんなことをする同級生を毎日冷ややかに見ていたと明かします。
(クラスの人気者を)「何が面白いんだ、あいつは。クラスの中でだけのお笑いの評価を得て、何が嬉しいのやら。社会に出た時に何も残らないのに」って思ってました。
一流研究者の文章が読める「国語」
中学の教科書には、第一線の研究者が書いた文章がいくつも載っています。堀元さんがまず見つけたのは、植物の専門家である稲垣栄洋先生の文章でした。堀元さんは『世界史を大きく動かした植物』など、稲垣先生の本を何冊も読んでいるそうです。
中3の教科書には、ゴリラ研究で知られる山極寿一 ── 霊長類学者で、アフリカでゴリラの野外研究を長く続けてきました。京都大学の総長も務めた人物です先生の『作られた物語を超えて』が載っています。子どものゴリラがドラミングする写真付きです。
水野さんによると、山極先生の文章の論旨は、アフリカの森でのゴリラ調査を通じて、人間が自然を見る目がいかに誤解に満ちているかを学んだ、というものです。話を作り伝える能力は人間に多くの仲間との交流をもたらしたが、だからこそ独りよがりな解釈を避け、相手の立場で考える視点が大切だと続きます。
中学生の時に、「そうか、みんな見えてる視点違うんだな、他者を尊重した方がいいんだな」みたいな学びになるよな、これ。
山極先生の文章にはQRコードが付いていて、著者インタビューも見られます。堀元さんは、授業で面白いと思った研究者の話を家で続けて聞ける体験を、自分たちの頃にはなかったものとして評価します。
さらに、番組にゲスト出演したこともある鈴木俊貴 ── 動物言語学者。シジュウカラが単語や文法を持つ鳴き声でコミュニケーションしていることを明らかにしてきました先生の『言葉を持つ鳥、シジュウカラ』も載っています。「ジャージャー」という鳴き声がヘビを示す単語だという研究が、図解や棒グラフ付きで紹介されています。
水野さんは、実験結果をグラフで示す構成から、国語の中で科学的思考も学べる点を挙げます。どちらの文章も教科書のための書き下ろしで、堀元さんは一流の研究者が子どもたちのために書いていること自体に驚きます。
| 書き手 | 分野 | 二人が注目した点 |
|---|---|---|
| 稲垣栄洋 | 植物 | いい研究者の文章を載せている |
| 山極寿一 | ゴリラ研究 | ゴリラから他者の視点の大切さを導く論旨 |
| 鈴木俊貴 | シジュウカラの言語 | 図解と棒グラフで研究の要点が学べる |
話は脱線して、水野さんが最近読んだ月刊誌『ムー』の話になります。『ムー』に鈴木先生が「鳥の言葉を解読した」という趣旨で8ページにわたって登場し、どの媒体よりも詳しいインタビューだったそうです。
水野さんによると、その号にはカフラー王 ── 古代エジプト第4王朝のファラオ。ギザの第二ピラミッドやスフィンクスとの関わりで知られますのピラミッドの地下構造物に関する研究を詳しく説明するページもあり、しっかりしたサイエンス記事だったといいます。ただインタビューの最後に、鈴木先生は軽井沢でUFOを3個見たという話もしていたそうです。
鈴木先生サービス精神すごいよね。
聞き上手の正解は「繰り返し」と「背景を掘る」こと?
堀元さんは、教科書の「聞き上手になろう 質問で話を引き出す」というページを見つけます。水野さんが最近、食事相手からもっと面白い話を引き出したいと悩んでいたため、二人で教科書の例文を使って練習してみることになりました。
例文は「この夏休みに妹と二人だけで京都のおばあちゃんの家に遊びに行ったんだ」という話です。水野さんが「めっちゃ楽しそうじゃん」と返すと、堀元さんは教科書の正解は「へー、妹さんと二人だけで京都まで」だと示します。
教科書のポイントは、相づちを打ち、聞いたことを繰り返すことで、話をしっかり聞いていると伝わり、話し手が安心して話せるというものです。ただ水野さんがすぐに何でも繰り返し始めると、堀元さんは「やり過ぎない方がいい」と止めます。
次の「二人だけで行くのは緊張したな」という発言が、話を広げるポイントです。教科書の答えは「今までは家族みんなで行っていたのに、どうして今年は二人で行ったの?」という、相手の言葉を引用して背景を掘る質問でした。クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンを組み合わせることも勧めています。
ここで水野さんは、堀元さんが昔コミュニケーション本を否定していた話を持ち出します。堀元さんは20歳ごろ、コミュニケーション本を読みすぎて、本の通りの会話しかできなくなっていたそうです。
悲しかったね。みんなからアキネーターって呼ばれてね。一問一答のコミュニケーションしすぎて。
そこで同じ例文を使い、当時の堀元さんを再現します。堀元さんは楽しそうに相づちを打ちながら、「なんでホッとしたの?」「京都では何食べたの?」「ラーメンは何味が好き?」と、話題を次々に変えていきました。
だから一回チャプって足湯に浸かったらすぐ出て別の足湯に入る。別府温泉、温泉のスタンプラリーみたいな。
相づちと繰り返しで安心させ、相手が話したそうな「緊張した」の背景を、相手の言葉を引用して掘る
楽しそうに反応しつつ一問一答で話題を次々に変え、深いところに立ち入らない
堀元さんに壁を作るつもりはなく、仲良くなりたくて必死だったといいます。「楽しそうにした方が仲良くなれる」と本に書いてあったからですが、実際はまったく楽しくなく、帰宅後はどっと疲れていたそうです。
いや、だからやっぱこの頃にちゃんと学んでおきたかったですね、僕は。いいコミュニケーションを。
「仮説を当てる」会話は盛り上がるのか
ここで水野さんから、コミュニケーションについての真剣な相談が出ます。水野さんは、会話が一番盛り上がるのは、間違っていてもいいから相手に仮説を当てることではないかと思っているそうです。
堀元さんは強く共感しつつ、二人とも「異常者」なので真理にはたどり着かないかもしれないと前置きします。仮説は合っていれば深められ、外れていれば理解が進むので、二人にとっては良いことしかありません。
でも仮説投げられ続けるとハラスメントと考える人もいっぱいいるから。
水野さんは、仮説が偏見に聞こえる危険も挙げます。取材ではこのやり方がてきめんに効き、良いインタビューになるものの、日常会話でどこまで有効かはわからないといいます。
仮説がないと盛り上がらず、てきめんに良いインタビューになる
偏見やハラスメントと受け取られることがあり、有効かどうかわからない
堀元さんは、仮説を当てられたい人と当てられたくない人がいると答えます。例として挙げたのが美容師さんです。堀元さんの体感では、本好きの美容師さんはほぼ伊坂幸太郎 ── 『重力ピエロ』『ゴールデンスランバー』などで知られる小説家。伏線を巧みに回収するエンタメ作品で人気がありますを読んでいるそうです。
ただ堀元さんが「なんで美容師さんって伊坂幸太郎が好きなんですか?」と聞くと、たいてい「よくわかんないですけど」と微妙な空気になるといいます。堀元さんは、自分たちは仮説を広げるのが好きだが、美容師さんはそうではないというメカニズムを考えます。
水野さんは、相手に興味を持ったときの示し方が、仮説を当てることになってしまっているといいます。たとえば「上司にあれこれ指示されるのが嫌」と言われたら、「面倒見のいいお姉さんがいた?」と家族構成から理由を探りたくなるそうです。
堀元さんは、コミュニケーション本によくある「なぜを掘ってはいけない」という教えを紹介します。醤油ラーメンが好きな理由を聞かれても、たいていの人は「うまいから」としか答えられないからです。
だから5W1Hのオープンクエスチョンするといいよってよく言われるんだけど、その中でWhyは一番下って言われるんですよ。
水野さんは、原因を聞く以外に「こういう状況のときも同じ行動をするの?」と条件を変える聞き方もすると返します。堀元さんはこれを思考実験での対照実験だと評し、自分は好きだが、大多数の人には気持ち悪がられるかもしれないと話します。
こうして世界は断絶していくのであったって感じですよね。
暗唱させられた古典、どこまで言える?
教科書に『竹取物語』が出てくると、今度は水野さんが暗唱に挑みます。ところが「今は昔」の直後に、先の部分にある「讃岐の造」が混ざってしまいます。
違うの入ってきてるな。何かが(別の箇所が)コンタミしたな、今。
水野さんは、AIが違うものを参照して間違えるときのようだと自分で例えます。堀元さんが「野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり」と補い、コンタミの原因がわかりました。
続く『奥の細道』では、堀元さんが「月日は百代の過客にして」から始め、「漂泊の思ひ」という語句があるはずだと言い張ります。水野さんが「舟の上に生涯を浮かべ」と助け舟を出し、二人で掛け合いながら「白河の関」「道祖神の招き」まで思い出していきました。
堀元さんは中学の暗唱テストの仕組みも鮮明に覚えています。水野さんのほうは、そこまで厳しかった記憶はないそうです。
水野さんは那須与一 ── 『平家物語』に登場する弓の名手。屋島の戦いで、舟の上に掲げられた扇を射落とした場面が有名ですの場面をクイズにします。「鏑を取ってつがい、○○してひょうと放つ」の空欄を、堀元さんは「弓を引いて」の言い換えだと推測しました。
堀元さんの答えは「ギリと引いて」で不正解、正解は「よっ引いて」でした。聞いた瞬間に堀元さんも思い出し、二人は懐かしがります。
伊坂幸太郎が教科書に書き下ろし?
先ほど美容師さんの話で名前が出た伊坂幸太郎さんの作品『ヒューマノイド』も、教科書に載っていました。二人の世代の教科書には載っていなかった作家です。
水野さんが出典を確かめると、「本書のための書き下ろし」とありました。堀元さんはまず原稿料を気にしますが、水野さんは将来を担う若者に向けた書き下ろしだろうと返します。
だったら自分の既存の作品じゃなくて、何かこういうメッセージをとかなるんじゃないの?
水野さんが「教科書の依頼と、原稿料が倍の商業雑誌の依頼ならどちらを受けるか」と聞くと、堀元さんは即答で雑誌を選びます。子どもが大人になるころには自分は死んでいるから、という理由です。
ただ水野さんに、堀元さんが老年世代になれば今の子どもは壮年世代になると言われ、堀元さんは考えを変えます。社会保険料で自分を支えてもらえるなら教科書もありだとし、寄稿するなら「社会保険料を払って老年世代を支える大切さ」を書くと話しました。
続いて堀元さんは、『竹取物語』の「かぐや姫の昇天」という見出しを見て、少しエッチな響きを感じたと告白します。水野さんも、かぐや姫が求婚者に求めた「蓬莱の玉の枝」「燕の子安貝」「龍の首の五色の玉」などの宝物が、性的なものの隠喩だという説を聞いたことがあると応じます。
水野さんは「多感な中学時代こそ下ネタに敏感だったはず」と指摘します。しかし堀元さんは、英語の先生が「セックス」と言うたびに騒ぐ同級生を憎むほうが勝っていたそうです。
宮﨑駿のおすすめ文と、批評のための語彙リスト
教科書には「本との出会い」というおすすめ本のコラムもあり、その書き手が宮﨑駿さんでした。宮﨑さんは宮沢賢治 ── 『注文の多い料理店』『銀河鉄道の夜』などで知られる童話作家・詩人。生前はほとんど評価されませんでしたの『注文の多い料理店』などを勧めています。
堀元さんがクイズにした書き出しは「この人の作品は全て宝物です。慌てて読んではいけません」というものでした。二人は思わず「かっけー」と声をそろえます。
一方で水野さんは、中学生には宮﨑駿さんが影響を受けた本を並べることの重みはわからないだろうと話します。
国語の教科書ってすごさ、大人になってから気づく。
堀元さんは、実家に帰って当時の教科書を引っ張り出したくなったといいます。水野さんも、書き手が実は今よく読んでいる作家だった、ということがありそうだと応じます。
中3の教科書には、作品を批評するための言葉のリストもありました。「共感できる」「オリジナリティがある」といった語彙が並んでいます。
堀元さんは中学生がこの語彙で評論する姿を想像して苦笑いします。水野さんは、背伸びしたいのに言葉が追いつかない中学生には、こうしたリストが定着に役立つと話します。水野さん自身、料理屋で『美味しんぼ』の山岡さんのような言葉で感想を言いたがる子どもだったそうです。
小学校で推奨される「シントピカル読書」
小学校の教科書では、印象深い本について友だちと話す例に、あさのあつこさんの『バッテリー』が挙がっていました。二人とも小中学生のころに読んだ作品です。
水野さんは、先輩が主人公を体育倉庫に呼び出し、冷凍のブリのような硬いもので殴る場面を覚えていると言い張ります。堀元さんは「それ多分『金色のガッシュ!!』がコンタミしてます」と返しますが、主人公がいいピッチャーすぎていじめられる、暴力的な場面が多い話だったことには同意します。
教科書は、好きな本があるならテーマに着目して複数の本を読もうと推奨しています。水野さんはこれをシントピカル読書 ── 同じテーマについて複数の本を読み比べ、論点を自分なりに整理する読書法。アドラーの『本を読む本』で紹介された考え方ですだと指摘し、二人ともその効果を実感しているといいます。
できたら違う分野の研究者が書いた本とかだとマジで違うから。
例として挙がっているのは、『オランウータンに会いたい』から『すごいぞ進化』、『鳥のいる地球はすばらしい』へと読み進めるルートです。その後のブックトークの例では、小学生が「共生社会」というテーマで3冊を紹介していて、二人は例のレベルの高さに驚きます。
学校図書館の話では、二人とも面白い本を友だちに布教していた過去があるとわかります。水野さんは『有毒生物の秘密』で毒ガエルやヘビの名前を覚え、貸し出しが続く状態を作ってニヤニヤしていたそうです。
僕もね、『チョコレートの秘密』を読んで、チョコレートって元々は飲み物だったんだぜっていう知識を得て、それをみんなに言うと「えー」って言われるから、それで雑学をひけらかす喜びを知って今に至ります。
ただ堀元さんは、小学校高学年で世を憎み始め、『バトル・ロワイアル』を読んでいたといいます。同じころ生徒会長をしていた水野さんは、当時の堀元さんに「全然バカにされるタイプ」だと言われてしまいます。
今井むつみ先生は小学5年生にも手加減しない
小学5年生の教科書には、今井むつみ ── 認知科学者。子どもの言語習得や言葉と思考の関係を研究しています先生の『言葉の意味が分かること』が載っていました。二人とも今井先生のファンで、堀元さんはテーマが小学生には抽象的すぎないかと驚きます。
水野さんが読み上げた内容は、子どもにコップの意味を教えるならどうするか、という問いから始まります。コップには色や形、大きさなどさまざまなものがあり、その意味はグラスや湯のみ、花瓶のような似たものとの関係で決まる、という流れです。
問い
知らない言葉の意味に広がりがあるとはどういうことか
具体例
子どもにコップの意味を教えるとしたらどうするか
気づき
コップという一つの言葉が、色や形、大きさの違う多くのものを指す
関係
意味はグラスや湯のみ、花瓶など似たものとの関係で決まる
結論
言葉の意味は「面」である
水野さんは、実際にこの文章を扱う国語の先生や、教科書で読んだ子の親から、結構難しいと感じるという声を聞いたことがあるそうです。ゴリラの例に比べるとわかりにくいとも話します。
堀元さんは、今井先生が後から「言葉の意味って面だったんだ」と気づかせる仕掛けを、子どもに埋め込んでいるのではないかと考えます。
子どもを舐めないね、今井先生はね。
水野さんは、番組で名前が挙がった研究者が教科書に次々と出てくることを楽しみます。小5で今井先生の原稿を読める今の子どもたちに、二人は少し嫉妬すると冗談めかして話しました。
ごんぎつね裁判で兵十役を当てられた日
小学4年生の教科書には、定番の新美南吉 ── 愛知県半田市出身の童話作家。『ごんぎつね』『手袋を買いに』などで知られますの『ごんぎつね』が載っています。ところが水野さんは、新美南吉記念館のある半田市の近くで育ったのに、『ごんぎつね』の記憶がまったくないそうです。
そこで堀元さんがあらすじを説明します。水野さんはこれを「すれ違いコント」と言い、堀元さんに「悲劇なんですよ」とたしなめられます。
いたずら
いたずら好きの狐のごんが、兵十の釣った魚などを盗む
償い
兵十の母の病気をきっかけに、ごんは魚などを置いていくようになる
誤解
事情を知らない兵十は、またごんが盗みに来たと思う
悲劇
兵十はごんを撃ち、その後で毎日届けていたのがごんだと気づく
堀元さんのクラスでは、登場人物に扮した模擬裁判をしたそうです。先生が裁判長を務め、弁護人と検察がいて、堀元さんはなぜか兵十役に当たりました。
クラスの空気は「兵十がひどすぎる」一色で、堀元さんは「いいことをしてる狐を撃ち殺すなんて」と責め立てられます。つらさから罪を認めて終わらせようとしたところ、先生に止められました。
堀元さんは、クラスのみんなと先生の意向に板挟みになり、まさかの中間管理職のようだったと振り返ります。
そしたら先生が、それだと裁判が成立しないから頑張ってくれないとって言われて。
水野さんは、この経験を現代の弁護士の仕事につなげます。凶悪犯罪者を弁護すると非難されることがあっても、どんな被告人にも弁護人をつける手続きが法治国家では重要だと、小4で学んだことになるというわけです。
とはいえ当時の堀元さんは、撃ってもいないのに人間性を責められ、かなりへこんだそうです。堀元さんは冗談めかして、この裁判のせいで闇落ちし、『バトル・ロワイアル』を読むようになったと話します。
水野さんは、30歳の堀元さんなら迫真の弁論でやりきっただろうと言います。堀元さんも、今なら勝ちに行くと即答します。
え、じゃああなたは自分の家に来て重要な家財を盗んでいく盗人にフレンドリーな対応をするんですか?って。勝ちに行きますよね、やっぱり。
教育情報誌『とことば』とは?
最後に堀元さんから、この回が光村図書出版との有償コラボレーションだったことが明かされます。担当者が番組をよく見ていて、教科書を楽しく読めるのはこの二人だと考えてオファーしたのだろうと話します。
光村図書出版は、教育情報誌『とことば』を創刊しました。教育機関には紙で配られ、一般の人もウェブで読めます。対象は全国の小中学校や教育委員会の先生方と、教育に関心のある一般の人です。
誌名は「と、言葉」をキーワードにしていて、「AIと言葉」「風景と言葉」のように、さまざまなものを言葉とつなぐ意図があるそうです。手元の創刊0号のテーマは「私たちとことば」で、このあと出る創刊1号には水野さんが寄稿しています。
水野さんは今後のテーマとして「長野県諏訪地方とことば」「摩擦音とことば」を挙げますが、堀元さんに狭すぎると却下されます。
教員のリスナーが多いという話から、堀元さんは国語の先生向けに「知識を興味深く語る方法」を講演した経験を明かします。ちょうど下ネタの本を執筆中だったため、下ネタの例を多く盛り込み、ウケはしたものの「中学校ではできないんですよね」と言われたそうです。
番組の最後、二人はリスナーに教科書の思い出をコメントしてほしいと呼びかけます。堀元さんは、ごんぎつね裁判で兵十役をやらされた人や、逆転勝訴して今は弁護士になった人の話を聞きたいと話しました。
まとめ
今の国語の教科書には、山極寿一先生、鈴木俊貴先生、今井むつみ先生といった研究者や、伊坂幸太郎さん、宮﨑駿さんらの文章が、書き下ろしも含めて載っています。二人は懐かしい暗唱や授業の記憶を掘り起こしながら、子どものころには見えなかった教科書の重みに気づいていきました。
- 『枕草子』『奥の細道』など暗唱した古典は、きっかけがあれば驚くほどよみがえる
- 教科書の「聞き上手」は、繰り返しで安心させ、相手が話したい背景を掘ることを教えている
- 仮説を当てる会話は、取材では効くが、日常では偏見やハラスメントと受け取られることもある
- 研究者の書き下ろしや複数の本を読み比べる読書法など、今の教科書は子どもを舐めずに作られている
- ごんぎつね裁判の兵十役は、つらい思い出であると同時に、弁護の意味を学ぶ機会でもあった





