英語力を上げる「最高の方法」はマンガ?
今回のゆる言語学ラジオは、Mantra株式会社が提供する英語学習アプリ「Langaku」の広告回です。水野さんは冒頭から、英語力を上げる最高の方法は「漫画を英語で読むこと」だと切り出し、広告案件であることもすぐに明かしました。
Langakuは、『アオハライド』『君に届け』『怪獣8号』『鬼滅の刃』『テニスの王子様』など、よく知られた作品を英語で読めるアプリです。水野さんは以前、台湾旅行で『デスノート』の中国語版を買い、漢字から意味を推測して読むのが面白かったという経験を話します。
文字の量めっちゃ多いんだけど、意外と漢字わかるからさ。
堀元さんは、英語論文をAI翻訳を使わずに読み、わからない単語を使われた文脈ごとNotionにメモしているといいます。文脈ごと覚えると定着しやすいので、マンガでも同じ効果がありそうだと話しました。
水野さんは、映画『ベスト・キッド』のリメイク版で、字幕の難しさを感じた場面を紹介します。引っ越しが原因で落ち込む主人公が「We have moved.」のあとに「That happened.」と言い、字幕では「そうなんだ」と訳されていたそうです。
プロの翻訳者の方に本当にケチをつけてらっしゃるっていうことでよろしいですか?
水野さんは慌てて、字幕を付ける作業がいかに難しいか、そして字幕作成者がいかに頑張っているかという話だと言い直しました。
ONE PIECEの第1話で出会った単語「lopped」
二人は最初に『ONE PIECE』を開きます。Langakuでは英語のセリフ量を「控えめ」「そこそこ」「がっつり」「全部」から選べて、英語に置き換える割合を調整できます。
堀元さんは2022年の時点で、雑誌『コトバ』のインタビュー記事でLangakuを知っていたそうです。記事では、絵で状況がわかるので英語の量が多くても読み進められる、と語られていたといいます。
第1話のプロローグでは、ゴール・D・ロジャーの処刑を語る「They lopped off his head」という一文が出てきます。二人は「lopped」を知らなかったものの、「最後の言葉」という文脈から「首をはねる」意味だと推測し、辞書で確かめると当たっていました。
日本語版の「彼の死に際に放った一言は」に比べると、英語版は「首を切り落とされる前に」と、ずいぶん具体的に書かれていることにも二人は気づきます。
Langakuでは、単語をタップすると意味が出て、AIが例文や類語も示してくれます。「lop off」の類語として「cut off」「chop off」が挙がり、ボタン1つで単語帳に登録して復習もできるそうです。
論文の単語を手作業でメモし続けている堀元さんは驚き、Langakuに言語学論文版をつくってほしいと頼みます。水野さんは、読者数が足りないから無理だとすかさず止めていました。
印象に残る例文は、なぜ覚えやすいのか
水野さんは高校時代、例文に癖があることで知られる単語帳『DUO 3.0』を使っていました。中でも「Watch out! The ceiling is giving way.(気をつけろ!天井が崩れかけているぞ)」という例文だけは躍動感があり、高校でみんなが真似していたそうです。
水野さんは、生き生きとした例文ほど記憶に残るので、名シーンの多い『ONE PIECE』は学習にぴったりだと考えます。堀元さんも、wealthやfameのように単語帳『ターゲット1900』に載る頻出語が自然に出てくると付け加えました。
さらに、Langakuでは文中の「it」をAIで調べると、この文脈で何を指しているかを教えてくれます。受験生のころに線を引いて必死に確かめていた作業です。
水野さんは、AIに頼ると自分で考えなくなるのではと心配します。堀元さんの「答え合わせとして使えばいい」という意見を受けて、水野さんは仮説を持ってから開けば勉強になると納得しました。
「金槌」の英訳は、なぜハンマーではなかった?
『ONE PIECE』の細かな訳も二人を楽しませます。ルフィの「ふん」は英語版で「hmph」になっていて、Langakuでは音声で読み上げることもできます。
ルフィの「I've had it with you guys」というセリフについて、二人は最初「よく聞け、男ども」くらいの意味だと考えました。日本語版と照らし合わせると、「もう頭きた」に当たり、英訳では文の順番が入れ替わっていたとわかります。
haveitwithなんとかみたいなやつってさ、辞書で引きづらいんですよね。
haveは意味が多く、イディオムなのかどうかもわかりにくいので、その場で意味が出る機能は助かると堀元さんは話します。ほかにも、wannaやgonnaのような縮約形 ── want toをwanna、going toをgonnaとするように、複数の語を縮めて1語のように発音・表記する形。くだけた会話や歌詞でよく使われますや、be動詞やhaveの否定を兼ねるain'tなど、洋楽ではよく聞くのに学校では習わない表現も出てきます。
シャンクスが泳げないルフィを「金槌」と言う場面は、英語版では「anchor(錨)」です。AIは、泳げない人を錨にたとえていると比喩まで解説してくれました。
シャンクスの登場シーンの効果音が「ta-da」になっていることにも二人は注目します。これは「ジャジャーン」に当たる、英語のマンガでよく使われる表現だそうです。
ボン・クレーの「Shall we dance?」は名訳か
Langakuのスタッフがすすめる訳として、水野さんは『ONE PIECE』第215話を紹介します。ボン・クレーの「でっかい口でかかってこいや」に近いセリフです。
堀元さんが予想した「Come on」。勢いは原文に近いが、ひねりはない
「Shall we dance?」。踊るキャラクターのボン・クレーらしさに合わせている
ぶっちゃけカモンの方が元気には近いでしょ。でもテンションとしては多分Shallwedance?だよな。
読み終えると、その日に読んだ英単語の数も表示されます。水野さんは565語、堀元さんは569語で、同じ話を読んだのに差が出たことで盛り上がりました。
水野さんは想像の「あるある」として、最初は英語で読んでいても、面白すぎて日本語で最後まで読んでしまい、あとで英語で読み直す高校生がいそうだと話しました。
NARUTOを英語で読むと、忍はどう訳される?
次に二人は『NARUTO -ナルト-』を開きます。開いた画面には「まずは10万語を目指してみましょう」という英語学習のヒントが出て、多読研究を出典として丁寧に示していました。
水野さんによると、Langakuを作る会社の創業者は東京大学の大学院を出た人だそうです。学問への敬意から出典を示しているのかもしれない、と二人は推測しました。
堀元さんは同世代でありながら、青年誌ばかり読んでいて『NARUTO』は未読だといいます。水野さんが挙げる、腕を後ろに伸ばす「ナルト走り」や、水風船で螺旋丸を真似する遊びも、堀元さんには通じませんでした。
英語版は「Once upon a time」から始まり、九尾の妖狐は「fox spirit」、忍は「shinobi」と訳されています。作中では「ninja」という語とも使い分けられていました。
「I rule and you drool」は悪意を足した訳か
イタズラ書きをするナルトのセリフには、「Losers, wannabes」「You don't have what it takes to do something this low」など、スラングや難しい構文が続きます。
二人がわからなかったのは「I rule and you drool」です。droolは「よだれを垂らす」という意味で、「自分が支配者で、お前らはよだれを垂らして見ているだけ」と相手を見下す表現だとAIは解説します。
「お前らこんな卑劣なことできねえだろ。だが俺はできる。俺はすごい」。自分を持ち上げる言い方
「I rule and you drool」。相手を見下す調子が強く、ruleとdroolで韻を踏む
水野さんは最初、悪意を足しすぎだと感じました。しかし、日本語の「俺はできる、俺はすごい」というリズム感を韻で表現したのだと気づき、堀元さんも「いい訳」だと評価しました。
お色気の術の英訳「ninja centerfold」とは
授業で変化の術をテストする場面には「conjure a form that looks like me」という表現が出てきます。conjureは「呪文や魔法で呼び出す」という意味で、「俺に見える姿を術で出してみろ」という課題でした。
ナルトはこの課題で、有名な「お色気の術」を披露します。英語版では「I call this one the ninja centerfold」となっていました。
堀元さんが調べると、centerfold ── 雑誌の中央の見開きページのこと。そこに載るピンナップ写真、特にヌード写真を指す意味でも使われますには、雑誌の中央見開きに載るヌード写真という意味があるそうです。二人は「ヌード写真の術」という訳になるのかと驚き、文化の違いを感じたと話します。
先生の「How big a fool are you?」のような罵倒表現も多く、英語の教科書では出会えない言葉に触れられるのが面白いと二人は語りました。
英語マンガのセリフが全部大文字なのはなぜ?
Langakuでは、読書設定でセリフを大文字と小文字で切り替えられます。水野さんはここで、一般的な英語のマンガはセリフがすべて大文字になっていることに気づきました。
Langakuの担当者によると、ネイティブはこの大文字表記を当たり前に受け入れていて、理由を聞かれて初めて気づくほどだそうです。
英語マンガで一般的な表記。コマによっては文字が縦に伸び、読みにくい
Langakuが置き換えた表記。普段の英文に近く、読みやすい
文字の置き換えはLangakuのAI技術で行っているといい、水野さんはその技術力に感心しました。
翻訳の話から、水野さんは自著『インテリ悪口本 ── 水野さんが以前書いた本として話に出た作品。韓国の出版エージェントが翻訳権を買ったものの、刊行には至らなかったと語られています』が韓国で翻訳されかけた話をします。日本のネットカルチャーの話が多すぎて、結局は翻訳できなかったそうです。
堀元さんは雑誌のインタビューで知った話として、『銀魂』を海外向けに訳すと欄外が注釈だらけになったことを挙げます。木刀に「洞爺湖」と書かれている面白さも、注釈で説明したとたんに伝わらなくなる、と二人は話しました。
「だってばよ」に決まった訳がない理由
ナルトの口癖「だってばよ」には、決まった英訳がないそうです。場面ごとの文脈に合わせて、ふさわしい表現が当てられています。
| 英訳 | ニュアンス |
|---|---|
| Believe it | 信じろ |
| You bet | もちろん、賭けてもいい |
訳を選ぶときには、コマに描かれた口の形に合う言葉を選ぶ工夫もしているといいます。水野さんは「プロの技」だと感心し、堀元さんは訳さず「だってばよ」と書いて注釈を付けると冗談を言いました。
単語帳より非効率でも、10時間続けられる強み
最後に二人は感想を話します。水野さんは英検5級を持っていると明かし、中学1年生で受けたら周りは小学生ばかりで恥ずかしかったというエピソードを披露しました。
堀元さんは、Langakuは友達と勉強するのに似ていると話します。効率は多少落ちても、楽しいから長く続けられ、トータルではプラスになるという考え方です。
最大効率では優れているが、楽しくないので10時間続けるのは難しい
効率は下がるかもしれないが、楽しいので10時間でも読める
二人はゆる言語学ラジオも、知識を「希釈」して1時間聞いても疲れないようにしていると話します。英語と日本語の比率を選べるLangakuも、学習の負荷を希釈するアプリだとまとめました。
Langakuはある程度まで無料で読めて、途中から課金が必要です。紹介されたキャンペーンコードでは500コイン、単行本の半分ほどが読めるといいます。
まとめ
今回のゆる言語学ラジオでは、英語版マンガのセリフをもとに、直訳ではなくキャラクターやリズム、文化に合わせる翻訳の工夫と、楽しさで学習を続けるという考え方が語られました。
- 絵で文脈がわかるマンガは、知らない単語を推測しながら英語を読む練習に向いている
- 「Shall we dance?」や「I rule and you drool」のように、英訳はキャラクター性や韻を活かしている
- 「お色気の術」の「ninja centerfold」や『銀魂』の注釈のように、文化差は訳しにくさとして表れる
- 「だってばよ」には決まった訳がなく、文脈や口の形に合わせて表現が選ばれている
- 単語帳より効率が劣っても、楽しく続けられることが学習の強みになる





