官能小説専門のオノマトペ辞典がある?
ゆる言語学ラジオでは以前、『官能小説用語表現辞典』を読む回を配信しました。リスナーから「一番笑った」「神回」との声が多く集まり、今回はその企画が帰ってきた形です。
収録場所は前回と同じく温泉宿です。2人は「インプット奴隷合宿」の最中で、風呂上がりに乾杯してから本題に入ります。堀元さんは、酒でも飲みながらでないとやれない企画だと冗談めかしています。
冒頭、水野さんが「熱い」という意味で使った名古屋方言の「ちんちん」から、話は官能小説とオノマトペへつながります。番組はこれまでもオノマトペを何度も扱ってきました。
水野さんが最初に紹介したのは『オノマトペは面白い 官能小説の擬声語・擬態語辞典』です。手、鼻、背中など、体の部位ごとにオノマトペが分類されています。
堀元さんが「乳首に関わるオノマトペ」の項を開くと、最初の語は「エロエロ」でした。用例では、舐める動作を表す擬態語として使われています。
乳首はね、エロエロっと舐めるものらしい。
水野さんは今回、このオノマトペ辞典を通読してきました。読んで感じたのは、日常では使わないオノマトペがかなり多く載っているということです。複数の用例が載る語もあり、オノマトペの世界の広さがわかるといいます。
つまり今回実はですね、オノマトペシリーズの続編と捉えてもいいわけです。
堀元さんが「オノマトペシリーズの集大成」とまとめると、水野さんは「勝手に捻じ曲げないでください」と即座に否定します。このやり取りは、回の最後にもう一度登場します。
「絶頂」だけを集めた辞典はどう分類されている?
水野さんが持参した3冊目は『官能小説「絶頂」表現用語用例辞典』です。前回の辞典やオノマトペ辞典と同じく、永田守弘先生が1人で編んだシリーズだといいます。
絶頂の表現だけをどう分類すれば辞典になるのか。堀元さんは手か口かといった「シチュエーション別」を予想しましたが、水野さんはそれでは偏ると指摘します。実際の目次は、表現の型で分かれていました。
目次に並ぶ分類を、2人が読み上げた順に整理すると次のようになります。
貪欲形の用例「もっともっとえぐって」には、2人とも笑いが止まりません。燃焼形の「熱い、焼けちゃう」からは、水野さんが火あぶりの刑で知られるラウレンティウス ── 3世紀のローマの助祭で、殉教者として知られる人物。鉄格子の上で焼かれた際に「こちら側はもう焼けたから裏返せ」と言ったという伝承がありますの逸話を持ち出しました。
ラウレンティウスはですね、こちら側はよく焼けたから、そろそろもう片側も焼いた方がいいんじゃないか。
体液形には「涎にまみれた口唇をわななかせて」といった文学的な用例もあります。堀元さんは、官能小説の語彙力の高さに感心していました。
同じ体液形にある「ゆばりを放ちながら」では、水野さんが「はぁ」と普段の言語ネタのように感心してしまいます。堀元さんから「感心するところじゃない」とツッコまれ、水野さん自身も「今日調子悪いですね」と認めていました。
官能小説にしかない言葉は何で調べる?
4冊目は角川ソフィア文庫の『いろごと辞典』です。水野さんによると、西洋語、方言、現代の俗語、隠語までを網羅した性の辞典です。
水野さんが勧める理由は、永田先生の辞典は用例を集めたもので、語の意味までは書いていないからです。官能小説でしか使われず、国語辞典にも載っていない語があります。
代表例は抽送 ── 性行為の際のピストン運動を指す、官能小説特有の言葉。一般の国語辞典にはほとんど載っていませんです。官能小説の初心者が国語辞典を引いても見つからない言葉が、『いろごと辞典』には立項されていました。
さっそくページをめくった堀元さんが見つけたのは「切り落とし」です。芝居小屋の大衆席を指す言葉で、席が混み合いすぎて淫らな行為が行われていたため、この辞典に載っているといいます。
大衆席の名前がもうエッチな言葉になっちゃったみたいな。だからエコノミークラスがもうエッチな言葉みたいになってる。
「切り落とし」には「なめくじを二本ひん抜く切り落とし」という川柳のような用例も付いていました。「二本」が何を指すのかで2人は首をひねり、話は麻雀の牌のたとえにまで脱線していきます。
新明解国語辞典は「息子」まで拾っている?
話題は国語辞典に移ります。水野さんは新明解国語辞典 ── 三省堂の国語辞典。語釈に編者の個性がにじむことで知られ、愛読者が多い辞書ですの懐の深さに注目していました。
水野さんによると、新明解国語辞典は「息子」の項で、陰茎の俗称としての意味も拾っています。「せがれ」にも同じ意味が載っており、この種の比喩をしっかり押さえているといいます。
一方で、水野さんが調べた範囲では「失禁」は立項されていなかったそうです。辞書を通読したからこそ気づいた点ですが、堀元さんは「失禁についていつも調べてるんですね」とからかいます。
堀元さんはお返しに、『いろごと辞典』から失禁にまつわる語として「小便組」を紹介します。江戸時代の愛人契約にまつわる言葉で、その成り立ちには順を追った経緯があります。
愛人契約
女性が旦那からお金をもらい、愛人になる
解消できない
愛人の側からは契約を切る手段がなかった
知恵を絞る
一緒に寝る時に大量に漏らし、愛想を尽かされる方法が有効だった
ノウハウの流布
江戸の街で広まり、それを行う集団が「小便組」と呼ばれた
水野さんは笑うよりも先に感心してしまい、三行半 ── 江戸時代の離縁状の通称。本文が3行半で書かれたことに由来しますの代わりになる縁切りの方法だったと受け止めます。
すごいよな。なんかだから民衆のしたたかさみたいなものを感じますよね。
「海苔売りが転んだ」はSNSのバズと同じ?
ここからは、前回にならって各自が辞典をパラパラ読み、面白かった箇所を報告する形になります。堀元さんが『いろごと辞典』、水野さんが絶頂表現辞典を担当します。
堀元さんが見つけたのは「海苔売りが転んだ」という表現です。水野さんは精液がだらしなく出る様子を予想しましたが、正解は江戸時代の言葉で、女性の愛液の分泌が多い状態を指すといいます。
水野さんはこの隠語のレベルの高さに驚き、普段こっそり付けているメモの存在を明かします。辞書に載っていないアダルトビデオの独自用語を書き留めたものです。
水野さんによると、アダルトビデオのタイトルに付く言葉は響きこそ面白いものの、直接的です。対して江戸の言葉は、間に比喩を1段挟んでいます。
響きは面白いが、表しているものが直接的
比喩を1段挟んでおり、レトリカル
文字に残ってるということは、何かしら作品になってるってことじゃないですか。
水野さんはさらに、こうした表現は、Twitterで誰かが言った面白いたとえがバズって定着する現象に近いのではないかと考えます。水野さんは「オセロをひっくり返すように」のような「現代のことわざ」も収集しており、それと同じ文化かもしれないといいます。
堀元さんは自身の連載のために、春画 ── 江戸時代に盛んに描かれた性愛を主題とする浮世絵。庶民から上流層まで幅広く楽しまれましたをリサーチしたことがあります。体位を「四十八手」と呼ぶのは、菱川師宣 ── 江戸時代前期の浮世絵師。「見返り美人図」で知られ、浮世絵の祖とも呼ばれますの春画集に由来するはずだと話します。
堀元さんが感心したのは「曲茶臼」という体位です。女性上位の体位をとりながら女性が弦楽器を演奏し、乱れる演奏を周りの客に悟られないようにする、という趣向です。
恋人と電話しながらみたいなやつあるけど、あれの高度化したやつ、すでに春画で描かれてんのよ。
百人一首の着物を、芸者が気に入らなかった理由とは?
堀元さんが「江戸文化はレベチ」と言って紹介したのは、「反故染め」という、江戸で流行った艶っぽい小噺です。
小噺では、ある芸者が百人一首 ── 藤原定家が選んだとされる、100人の歌人の和歌を1首ずつ集めた歌集。かるたとしても親しまれていますの歌を全部染めた特注の着物を作ります。出来は良かったのに、芸者は気に入りませんでした。堀元さんはこの理由をクイズとして出します。
答えは、「花ぞ昔の香ににほひける」という句が、ちょうど陰部の位置に来ていたからです。芸者は、自分のそこが臭いと思われるのではないかと気にしたといいます。
話には続きがあり、位置をシャッフルして縫い直させたところ、また別の問題が起きます。小噺は次のように展開します。
特注の着物
百人一首を全部染めた着物を作り、出来に満足して着る
1度目の失敗
「花ぞ昔の香ににほひける」が陰部の位置に来ていた
縫い直し
句の位置をシャッフルして作り直させる
オチ
今度は「人こそ知らね乾く間もなし」が来て、芸者は顔を赤らめた
水野さんは「千早ぶる」の歌で予想して「ほぼ合ってる」と言われましたが、2人とも「くだらねえ」と笑い転げます。水野さんは、このオチは男性が書いたものに違いないとツッコんでいました。
官能表現はなぜ女性に偏るのか?
水野さんは、この企画が女性の話ばかりになっていることが気になっていたと切り出します。絶頂表現辞典の前書きには、その理由が書かれていました。
絶頂表現は男女どちらについてもあるが、男はパターンが限定されやすく、読者としての女の多様な主体の方が興味をそそられるので、ここでは女に焦点を絞ることにした。
なぜ男性はパターンが限られるのか。水野さんは、男性のオーガズムが瞬間的に終わってしまうからではないかと推測し、堀元さんも、一瞬だから表現に幅をつけにくいのかもしれないと応じます。
堀元さんは、BL小説なら男性の表現が多く出てくるかもしれないと話します。ただ、2人ともBL小説は読んだことがありませんでした。
『いろごと辞典』の「マラ」の周辺には「マラ比べ」という語がありました。陰茎の立派さを比べ合うことで、江戸時代には文化人や教養人の間でも行われたと書かれています。
堀元さんが「今でいう文化人」と言いかけると、水野さんは「名前出すな」と慌てて止めます。実在の人物を挙げそうになる危うい場面でした。
水野さんは絶頂表現辞典の局所の項から、「白目」の表現の大げささを紹介します。「目の玉をひっくり返して」「ぐるんと目ん玉をひっくり返す」「黒目がゆっくりと反転して」などの用例があるといいます。
堀元さんは漫画『嘘喰い ── 迫稔雄による、ギャンブルを題材にした漫画。人間離れした能力を持つ登場人物が多数登場します』に、目の周りの筋肉を鍛えて目を360度回せる人物がいたことを思い出していました。
水野さんは、男性の白目表現があるのかが気になります。堀元さんは、おねショタ漫画にはそうした描写があるかもしれないと答えました。
2人とも、『エロマンガ表現史』は読んでいました。乳首の残像表現に1章が割かれた本で、水野さんはその表現を、別々の作家が同時期に独立して生み出したことを、ニュートンとライプニッツの微積分にたとえます。
水野さんが続けて読んだ『増補 エロマンガ・スタディーズ』も、かなりの紙幅を女性の描写に割いていたといいます。
堀元さんは、男性の記録がまったくないわけではないと話します。江戸時代に著名な国学者2人が、料理屋で芸者に三味線を弾かせながらマラ比べをしたという記述が残っているそうです。
なんか体を波打たせたみたいな細かい描写じゃなくて、マラ比べしてたらしいぜみたいな話。大雑把な話が多いのかもしれないね。
男は「部位」、女は「ストーリー」に興奮する?
水野さんは、男女の違いを考える手がかりとして『性欲の科学 なぜ男は「素人」に興奮し女は「男同士」に萌えるのか』を挙げます。性的快感よりも、何に引きつけられるかを分析した本です。
水野さんによると、この本では男性はとにかく体の部位に興奮するとされています。極端な例では、ペニスの画像だけでも反応するといいます。
本の中には雑誌の事例も出てきます。『プレイボーイ』が売れたので男性のヌードを載せた『プレイガール』を作ったところ、買ったのはゲイの読者で、女性はほとんど買わなかったそうです。
体の部位そのものが性的なトリガーになりやすい
部位を見せるだけでは響かず、同じ理屈は通用しなかった
全然どこに興奮するかが違うから、同じ理屈を当てはめてもうまくいかないみたいな話はあったんで。
堀元さんは、部位の話に関連してディルドの満足度調査を紹介します。調査では、大きさは満足度にあまり寄与しませんでした。
満足度に寄与した意外な要素は、硬さよりも「血管のテクスチャー」だったといいます。2人は、リアリティが求められているのかもしれないと話します。
堀元さんは、女性も意外な部位に興奮している可能性があり、データが揃っていないだけではないかと見ています。一方で水野さんは、キャラクター設定を押し出すのはむしろ男性向けの商品だと気づき、2人は「不思議ですよね」で話を締めました。
「密道」はなんと読む?
堀元さんは『いろごと辞典』から、難読漢字に強い水野さんへのクイズを出します。秘密の「密」に「道」と書いて「みつどう」で立項されていますが、別の読み方があるといいます。
水野さんは手元の新明解国語辞典を引きますが、「密度」の次は「ミッドナイト」で、この語は載っていませんでした。
正解は「尻子玉」です。新明解国語辞典を引くと、尻子玉 ── 肛門の口にあると想像された玉。河童に抜かれると腑抜けになると言い伝えられていますは河童に抜かれると虚脱状態になるとされるものでした。
堀元さんの解釈では、男色における肛門を「尻子玉」と呼び、「密道」と書くのだろうとのことです。性行為に使う「秘密の道」というイメージだといいます。
続くクイズは「醜き紙」です。比喩ではなく本物の紙だと聞いた水野さんは、使い終わったティッシュだと見事に当てます。性行為の後の処理に使った紙のことでした。
ところが水野さんは、当てても外しても自分だけが何かを失っていると気づきます。堀元さんは安全圏から出題していたのです。
俺だけ失わせてない?何かを。
あれ、構造バレた?もしかして。
「カスタードのクリーム」の「の」がうまい理由
水野さんは『官能小説用語表現辞典』を堀元さんに手渡します。今パラパラ見ただけでもレベルが違うといいます。
堀元さんが注目したのは愛液の表現の豊富さです。中でも「カスタードのクリーム」という表現について、「カスタードクリーム」ではないところがポイントだと指摘します。
だからさ、カスタードクリームだとさ、複合語じゃないですか。
だからカスタードクリーム自体を指しちゃうんだけど、カスタードのクリームにするとクリームじゃないですか。
水野さんの分析では、「の」を挟むことで比喩だとわかりやすくなり、クリーム状であることも伝わります。助詞1つで比喩の効き方が変わるところに、2人は技巧を見ていました。
この表現の前後の文には、「蒸れパンティのマスク」「女臭が吹雪となり」といった、聞き慣れない言葉が次々に出てきます。水野さんは「うるさいぐらい比喩しててすごい」と評しました。
ここで水野さんは、オノマトペ辞典のコラムを紹介します。言語学的に良いことが書かれているといいます。
コラムによると、官能小説の作家は「ペニスを膣口に挿入する」とそのまま書くことはありません。肉棒、砲身、花蕾、秘門など、状況に応じた言い換えが数多くあるからです。
コラムはさらに、オノマトペを変えれば同じ動作でも伝わる情報が変わると説明しています。挙げられた例を整理すると次のとおりです。
| オノマトペ | 伝わるもの |
|---|---|
| グッと | 硬直したものの迫力 |
| ググッと | 動き |
| グニュッと | 粘膜の感触 |
| ズボッと・スルッと | 濡れている実感 |
水野さんは、官能小説でオノマトペが多用されるのは、オノマトペを本当に的確に使っていることの表れだと考えます。「言語学×エロ」はふざけて言っていたものの、冗談ではないと思わせる説得力があるといいます。
オノマトペ辞典には、上半身ではオノマトペが意外と少ないという記述もあります。背中、顔、歯、脇などにはほとんどなく、乳房のように明らかに性的な部位になると増えるそうです。
堀元さんは、オノマトペの分布がわかれば、日本人が何を性的と思っているのかについての文化的な洞察になりそうだと話します。水野さんは、『性欲の科学』でもポルノ小説の語彙を分析しており、男性向けは身体部位、女性向けは人格や仕事の描写が上位に来ていたと補足しました。
バッタのように体をのたくらせる?
堀元さんが次に取り上げたのは、絶頂表現の比喩です。「釣られた鮎のようにビンビンと」は、まだ自分でも思いつくかもしれないといいます。
堀元さんが「これは無理」と感じたのは、「〇〇のように体をのたくらせ」という比喩です。水野さんは弓、地震、津波と答えますが、どれも外れでした。
正解は「バッタ」で、用例は「生まれて初めて味わう強烈な刺激に美佐子はバッタのように体をのたくらせた」です。水野さんは、「バッタ」と「のたくる」はふつう結びつかない組み合わせだと指摘します。
AIって結局さ、前の単語から次これが続きそうだなっていうのを頑張って計算してるに過ぎないから、これ出せないわ。
水野さんも、AIが無理をすると上滑りした比喩を持ってきそうだと同意します。官能小説を読んだことはないものの、比喩をやりたい放題にやっていいと知るだけでもレトリックの凄さがわかるといいます。
水野さんが続けて読んだのは、絶頂の場面で女性の台詞が「おさねが行く、おさねが行きます」と急に敬語になる用例です。堀元さんは、昭和のお昼のバラエティー番組のような感じがすると笑います。
「おさね」は登場人物の名前ではなく、「瓜実顔」の「実(さね)」ではないかと水野さんは推測します。堀元さんは「流行語になる」と言い、水野さんは「ならねえよ」と返しました。
お尻はなぜ浮くのか、そしてビッグバン
絶頂表現辞典の「爆発」カテゴリーには、「頭が割れる、背骨が焼ける、お腹が爆発する」という用例が載っていました。堀元さんはその語呂の良さに驚きます。
水野さんはカエサルの「来た、見た、勝った」を連想しますが、すぐに3つとも死に至る内容だとツッコミます。用例には続きがあり、「お尻が浮いていく」と結ばれていました。
なんでお尻浮くの?
前回の回でも「お尻が浮く」表現は登場していました。用例の続きでは、汗とよだれを飛び散らせて女性が絶叫しており、真面目な絶頂の場面です。
堀元さんは前回のコメント欄に、お尻が浮く感覚は男性にはわからないだろうという声があったと紹介します。水野さんは、著者が男性なのにこの感覚を盛り込めていることに感心していました。
「浮遊」のページを引くと、全身が浮く、宇宙に投げ出されるといった表現が中心で、お尻に限った話ではありませんでした。それでも局所の項には「ベッドから浮き気味だったお尻がさらに浮き上がった」という用例があり、堀元さんは「お尻って浮きがちなんだ」と結論づけます。
水野さんは、声の項にある「宙返りよ」はお尻が浮くどころか一周して戻っていると返し、堀元さんは耳たぶのように「尻たぶ」が痙攣するという表現を見つけて、比喩の想像力に驚いていました。
堀元さんがこの回で最も推したのは、絶頂の場面の直後に置かれた「ビッグバンとはこれだったに違いない」という一文です。大げさな比喩が、それらしく成立して見えることに2人は感心します。
机に置いてあるさ、爪楊枝いっぱい入ったやつをさ、落っことしちゃってさ、床に散らばったのとか見てさ、ビッグバンとはこれだったに違いない。
水野さんは、くだらないことの後にこの一文を入れるだけで小説のようなリアリティが出ると話し、ネットミームになりそうだと乗ります。堀元さんは、リスナーにお気に入りの使い方をコメント欄で披露してほしいと呼びかけました。
性科学の発展のため、という大義名分?
締めくくりで水野さんは、今回は官能小説や性にまつわる辞典4冊を扱い、特に絶頂表現、『いろごと辞典』、オノマトペの話をしてきたと振り返ります。そのうえで、結局は浮かれてしまったと反省を口にします。
すると堀元さんは「めちゃくちゃ真面目な話をしていた」と主張し始めます。『オルガスムの科学』のような本を読むと、オルガズムの研究は笑われがちで、研究がなかなか進んでいないという問題が提起されているといいます。
そういう人が、あ、こういう研究ジャンルがあるんだって知るきっかけを作らなきゃいけない。それが我々の使命であって。
水野さんは、前回の回で広告が剥がされたことに触れ、「最後だけそれっぽいことを言えば広告が剥がれないという浅い考えではないですよね」と確認します。堀元さんは、YouTubeの規約に教育目的なら認められるという記載はあるものの、それとは関係ないと言い張りました。
最後には「性科学にとってビッグバンだったに違いない」という模範コメント例まで飛び出します。堀元さんは、中学時代のマラ比べのような体験談は書かないでほしいと念を押して、回を締めくくりました。
まとめ
今回のゆる言語学ラジオは、官能小説と性にまつわる辞典4冊を読み比べる回でした。笑いの多い読書会でしたが、オノマトペの描写力、比喩の自由さ、男女で異なる表現の偏り、江戸の性文化の豊かさが浮かび上がります。
- 官能小説の用例辞典は、絶頂表現を姿態形・痴語形・浮遊形などの型で分類している
- 『いろごと辞典』は、国語辞典に載らない官能小説の語や、江戸の隠語・小噺まで拾っている
- オノマトペ1つで描写の情報量が大きく変わり、官能小説はオノマトペを的確に使う分野だと水野さんは見ている
- 「カスタードのクリーム」や「バッタのように」など、助詞や意外な組み合わせが比喩の効果を生んでいる
- 官能表現が女性に偏る背景として、男女で興奮の対象が違うという『性欲の科学』の知見が話題になった



