手話で「会津」はどう表す?
うんちくエウレーカクイズは、答えそのものがうんちくとして面白く、解く過程も楽しめるクイズを番組で解いていく企画です。この回は出題役に武藤さんを迎え、リスナーから寄せられた問題に水野さんと堀元さんが挑みます。
1問目は、日本手話で地名をどう表すかという問題でした。投稿者のボルボックスさんの名前に、堀元さんはすかさず「微生物ですね」と反応しています。
日本語とは異なる独自の言語体系を持つ日本手話では、地名や固有名詞を関連のあるもので表されます。例えば、大阪を表す場合は手で秀吉の兜を作り、名古屋の場合はしゃちほこを表します。では、会津ではどのような動作で表すでしょうか。
二人はまず会津のイメージを探ります。福島県であること、幕府側として明治維新に抵抗したことを手がかりに、堀元さんは「戊辰戦争の形を作ればいい」と言い出し、謎のポーズを披露しました。
戊辰戦争を形にしたとしたらこうです。ちょっと首を傾げる。
音声だけでは伝わらないそのポーズは、プロレスラーの武藤敬司さんのようになってしまったと笑いが起きます。会津若松城も候補に挙がりますが、名古屋城がすでに出ているため城ではないだろう、と推理は進みます。
「戊辰戦争あたり」という時代の絞り込みまでは合っていたものの、会津の偉人も特産物も出てこず、推理は行き詰まっていきます。
「山川の丸覚えbot」は日本史の先生にバレていた?
会津の手がかりが何も出てこない水野さんは、ここで高校時代の日本史の話を始めます。名古屋大学文学部を目指していたのに、秋頃になって初めて日本史に記述問題があると気づいたというのです。
その後、日本史の先生が記述を見てくれることになりました。社会人になって先生と再会した水野さんは、初めて答案を見たときの印象を尋ねています。
(先生に)初めて僕の答案を見た時どう思っていましたか?って聞いたら、びっくりするぐらい何も勉強してないやつなんだなと思ったって言われました。
水野さんが合格できたのは、教科書を丸ごと暗記したからでした。歴史の流れを理解しないまま、山川の教科書の文言をそのまま書けるようにしていたことも、先生は答案から感じ取っていたといいます。
ただ、先生の言葉はそれで終わりませんでした。当時の水野さんは日本史の事実を噛み砕けるほど精神的に成熟していなかっただけで、今言語学を楽しめているのも、ようやく受け止められる成熟度に達したからだ、と話したそうです。
でもその結果が今ですよね。何も出てこない、歴史を自分の中で噛み砕いてこなかったから。
堀元さんは「先生いいこと言うじゃないですか」と感心しつつ、すぐに「山川丸覚えbot」と水野さんをいじります。結局二人は1問目をギブアップしました。
会津の手話が「切腹」になった理由とは
投稿された問題の解説によると、正解は「切腹の動作。腹の前で左から右へ拳を動かす」。[[白虎隊]]の最期にちなんだ手話です。
答えを聞いた堀元さんは「白虎隊か、会津って」と納得します。白虎隊は、最後まで新政府に抵抗し、飯盛山で自刃したことで知られる会津藩の少年部隊です。
一方で、幕末は入試に「ゴリゴリ出る」はずなのに、なぜ水野さんは覚えていないのかと堀元さんは突っ込みます。水野さんの答えは、白虎隊は単語として問われるだけで、記述で書くべきは別の歴史の流れだから、というものでした。
こんなに筆記試験に特化された人いるんだね。すごいね。筆記試験のためだけの歴史。
二人は、地名を表す手話のモチーフ選びが意外と大胆だという点でも盛り上がります。名古屋を表すものは他にもいくらでもあるのに、しゃちほこが選ばれたのは形にしやすかったからだろう、と推測しています。
| 地名 | 表し方 | モチーフ |
|---|---|---|
| 大阪 | 手で兜を作る | 秀吉の兜 |
| 名古屋 | しゃちほこを表す | しゃちほこ |
| 会津 | 腹の前で拳を左から右へ動かす | 白虎隊の最期(切腹) |
「味噌」を手話にしたらどうなるか、と水野さんが振ると、堀元さんはまたしても首を傾げたポーズになります。手話をやろうとすると全部この形になってしまう、という堀元さんの癖に、水野さんは「学習者として致命的な欠点じゃないですか」と返しました。
ここで改めて、今回のテーマが「おらが国編」、つまり日本の特定の地域にまつわる問題を集めた回だと紹介されます。水野さんは、実家で家族と夜な夜な『桃太郎電鉄』をしていたので名産品には強いと胸を張りますが、会津で何も思い出せなかった直後だけに説得力は今ひとつです。
島根県民の歌は、なぜ変更を提案された?
2問目は、島根県の県民の歌にまつわる問題です。投稿者の名前は「脇役」と「迷惑客」をかけたもので、堀元さんは「深夜ラジオっぽい名前」と評しています。
昭和26年、作詞米山はる、作曲古関裕而によって島根県民の歌が完成しました。歌詞は公募、作曲は依頼。この曲は3番まであるのですが、3番の歌詞の一部が島根県議会で度々やり玉に挙げられ、2016年には変更する提案がなされました。一体なぜ歌詞の変更の提案がされたのでしょうか。
作曲者の古関裕而 ── 日本の作曲家。阪神タイガースの「六甲おろし」や「オリンピック・マーチ」など、球団歌や行進曲を数多く手がけたことで知られますについて、阪神・巨人・中日・東映の球団歌やオリンピックマーチを多く手がけた人物だという話が出ます。漢字で書けると自信満々だった水野さんが説明に詰まり、「どうでもいいです」と切り捨てられる場面もありました。
推理では、品詞やジャンルを一つずつ潰していきます。名詞でも形容詞でも動詞でもなく、宗教や犯罪、歴史的事実、地理的要因も関係ない、と候補が減っていきます。
堀元さんは「神無月が出雲だけ神在月になる」という知識から、歌詞の神無月を神在月に変えるべきだという説を出しますが不正解でした。続く宍道湖七品のしじみが取れなくなった説も外れます。ただ、「最近になって事情が変わった」という方向性は合っていました。
途中、水野さんは宍道湖しじみを使ったラーメン店の話から、週に8杯ほどラーメンを食べていると明かします。「週は7日しかないはずなのに」というツッコミに、「昼夜食えばいいだけ」と返すやりとりも挟まりました。
やがて「人工的なものか」という質問がイエスになり、さらに「統計上の値が関係ありますか」「人口が関係ありますか」という質問にもイエスが返ります。
島根の具体的な人口の数が書いてあったんだけど、時代が変わって合わなくなったから変えるんじゃないかって話になったエウレカ。
この答えが正解でした。実は「人工」と「人口」が同じ音だったせいで、片方は人工物のつもりで、もう片方はポピュレーションのつもりで聞いていた、という偶然の噛み合わせも起きていました。
「90万の県民」をどう歌い継ぐ?
投稿された問題の解説によると、変更の提案がされた3番の該当部には「90万の県民の」とありました。2016年当時、島根県は人口が70万人を割っており、現状にそぐわないと考えられたため変更が提案されました。
島根県民の歌の問題点は、歌詞に具体的な人口の数字を入れてしまったことでした。二人は、どこでも成立するような具体性のない言葉にしておけばよかったのに、と笑います。
昭和26年の完成時、3番の歌詞に「90万の県民の」と書かれる
2016年には人口が70万人を割り、現状に合わないとして変更が提案される
雑誌編集者の水野さんは、価格を書くときは必ず「何年時点のデータ」と添えると話し、歌詞にも時点を入れるべきだと冗談を飛ばします。堀元さんは、旧約聖書で人口調査をした結果、神が怒ったという記述を引き合いに出しました。
人口みたいなものを言って怒られるって失敗はもう人類も歴史で何度もやってますから、気をつけた方がいいですね。
話はさらに、人口を変数にしてプログラムのように外から値を取ってくる案へ広がります。堀元さんは、指示に合わせて任意の演奏をさせる現代音楽の楽譜を例に、「楽譜の外に現在の人口を入れて歌いなさい」と書いておけばよいと提案しました。
投稿された問題の解説によると、結局、県民の歌の歌詞は変更されていません。当時の県民90万人が一丸となって新しい島根県を築こうとした気概を尊重して受け継ごう、という理由だといいます。
この話を受けて、二人は「ゆる学徒カフェ」の歌を作るならどうなるかで遊び始めます。設立年も店名も店長の名前も変わりうるので、「A年B月、Cの地に」と変数だらけの歌詞を節をつけて歌い、最後は「今後もJ」と述語まで未確定になってしまいました。
そしたらメロディーももう定義しなくていいかもしれないですね。
最小都道府県が大阪府から香川県に変わった本当の理由
47都道府県で一番小さい面積なのは香川県ですが、1988年までは。
問題文が読み終わる前に早押しが入り、「大阪府」と答えて正解になります。理由として挙がったのは、埋め立てで大阪府の面積が増えて香川県を上回った、という説でした。
ところが、問題の解説には「一般的には関西空港の埋め立てにより大阪の面積が増えたと言われていますが」と続いていました。大阪府という答えは合っていても、理由は埋め立てではなかったのです。
このずれから、話は偽雑学へ広がります。堀元さんは、ラムネに入っているのはビー玉ではなく「エー玉」で、粗悪品がビー玉として売られた、という有名なガセネタを紹介しました。本来は「ビードロの玉」だからビー玉なのに、面白い説のほうが真実として広まってしまったといいます。
埋め立ては面白いからさ、広まりやすいのはわかるんだけど、実際には多分もっとめっちゃ地味で面白くない理由なんだよね。
推理を進めると、香川県のほうが小さくなったこと、ただし物理的にではなく統計上小さくなったことがわかってきます。
投稿された問題の解説によると、国土地理の計算方法が変わり、瀬戸内海の島の一部である境界不確定地を除くことになったため、香川県の面積が減りました。
関西空港の埋め立てで大阪府の面積が増え、香川県を上回った
計算方法の変更で境界不確定地が除かれ、香川県の面積が減った
二人は、偽雑学は面白いほうだけが生き残るという点で一致します。水野さんは、番組でも誤りを指摘したコメントにハートをつけるようにしているので、注意しながら見てほしいと呼びかけました。
讃岐弁「こんきんかかん かかんきんこん」はどんな状況の言葉?
讃岐弁で有名な言葉遊びで「こんきんかかん かかんきんこん」という言葉があります。一体どういう状況で使われる言葉でしょう。
最後の問題は讃岐弁の言葉遊びです。堀元さんはまず「めっちゃ音気持ちいいな」と反応し、関西の「ちゃうちゃうちゃうんちゃう?」のように、土地の人以外には聞き取れないけれど意味が通っている言葉だろうと見当をつけます。
「かかん」は「書かない」ではないかという読みに対し、関西では否定の「ない」が「ん」になるのはよくある、と補足が入ります。そこから堀元さんは、古今和歌集を書かない、母親(かかあ)に金を持ってこいと言ったのに来ない、などと大胆な訳を組み立てていきました。
この衣にはなかなか文字が書けないな。で、お母さんに金を持ってこいって言ったけど来ないな。
結果は不正解でしたが、「かかん=書かない」は合っていました。続く質問で、「こん」は「この」ではなく「来ない」だとわかります。
ここで「来た、見た、勝った」のカエサルのように、否定が3つ並んでいるのではという説も出ます。しかし否定三連発ではなく、残る「きん」の正体が焦点になりました。
「きん」の品詞を絞り込むと何が見えた?
「きん」は名詞でも形容詞でも副詞でもありませんでした。なお香川県の東部では、「きん」が「けん」になるという情報も出てきます。
構造を整理すると、「来ない」「きん」「書かない」が並び、後半の「かかん きんこん」はそれをひっくり返した形です。二人はこれを対句のように「AはBで、BはA」という形になっていると捉えました。
途中、省略されている要素の話から、水野さんが大プロ ── 言語学の生成文法で、発音されないが文の中に存在すると考えられる主語などの要素。「この問題を解くのは難しい」の「解く」の主語のようなものを指しますという用語を持ち出し、堀元さんが「めんどくせえな、先生」と返す場面もありました。
突破口は品詞の質問の漏れでした。助詞までは聞いていたものの、接続詞を聞いていなかったのです。「きん」が順接のつなぎ言葉だとわかり、意味は「来ないから書かない」の方向で確定します。
| 語 | 意味 | 確定までの手がかり |
|---|---|---|
| こん | 来ない | 「この」ではないと判明したあと確定 |
| きん | 〜ので(順接) | 名詞・形容詞・副詞を除外し、接続の働きと判明 |
| かかん | 書かない | 否定の「ない」が「ん」になる関西の特徴から推測 |
今の話をまとめると、来ないので書かないし、書かないので来ないだ。
ここまでで言葉の意味は解けましたが、二人はどんな場面で使われるのかまで当てたいと、さらに推理を続けます。
デッドロックか、七夕の短冊か
「来ないから書かないし、書かないから来ない」という状態を、堀元さんはデッドロック ── 複数の処理がお互いの持つ資源の解放を待ち合い、どれも先に進めなくなる状態。コンピュータのOSや並行処理で起きる代表的な不具合ですだと表現します。相手が来ないと書けないのに、書かないと相手を呼べない、という状況です。
姉妹番組のゆるコンピュータ科学ラジオでも、食事する哲学者の問題 ── 複数の哲学者が円卓で隣とフォークを共有する設定で、全員が互いを待って動けなくなる様子を示す、並行処理の古典的な例題ですとしてこの状態を扱ったことがあり、コンピュータの中でよく起こるのだといいます。
無限に待ち続けてしまうデッドロックがやっぱよく起こるのであって、その状態をなんとか方言で表そうとしたのがその言葉だ。エウレカ。
これはさすがに不正解でした。学校の先生説、絵馬や七夕の短冊に願いを書かないから願いが来ない説なども出ますが、いずれも外れます。
そこで大ヒントとして「1月」が示されます。書き初め説を経て、たどり着いた答えは年賀状でした。
互いの資源の解放を待ち合い、どちらも先に進めないコンピュータの状態
相手から来ないので書かないし、こちらが書かないので相手からも来ない
年賀状は「どんどん返ってこない」?
年賀状が正解とわかると、水野さんはすかさず堀元さんへの不満を口にします。水野さんは3年連続で堀元さんに年賀状を出しているのに、返事が来ないというのです。
堀元さんに年賀状、3年連続で出してるんすけど来ないんすよ、返って。
さらに水野さんは、年賀状にジョークで書いた生成文法のツリーを堀元さんにネットへ晒された件を持ち出します。適当に省略して書いたツリーに言語学者から本気の指摘が入り、「授業受け直しです」と言われてしまったそうです。
水野さんの成長を見込んで僕は(年賀状を)晒したんです。
水野さんが「どんどん返ってこない」と言ったことにも、堀元さんは引っかかります。「どんどん」は返ってくるときにしか使えないと思っていた、という指摘で、言語学ラジオらしい副詞の用法の話が一瞬挟まりました。
水野さんは毎年20〜30枚ほど年賀状を出しており、本の監修者の先生全員にも送っているといいます。理由は「それで思い出してくれるじゃん、僕のこと」というものでした。
堀元さんは、企業ですら年賀状を電子化している今、個人で出し続ける水野さんを「残党」と呼びます。そして最後は「会津の山で腹を切るんでしょうね」と1問目の白虎隊につなげ、水野さんに「なんで俺、年賀状の白虎隊になってんの?」と突っ込まれました。
年賀状を出し続ける母の教えと、堀元さんの20年前の恨み
水野さんが年賀状を出し続ける背景には、母親の教えがありました。どれだけ仲が良くても、やりとりをしなければ関係は切れてしまうというものです。
学校の先生なんて特にそうだから、あんたがまあ元気でやってるってことを知らせつつ、その縁をつなぐためにも、年賀状は毎年出しなさいっていう風に教わったんです。
水野さんは今になってその意味を実感する一方で、母親が郵便局でパートをしていたことから、単にノルマを達成したかっただけではないかとも疑っています。社会人になって日本郵政のノルマの厳しさを知り、振り返るとそういうことだったのかもしれないと話しています。
堀元さんは当時問題になっていた自爆営業 ── 従業員が売上ノルマを達成するため、自腹で商品を購入すること。郵便局の年賀はがき販売をめぐって社会問題として報じられましたに触れつつ、それでも年賀状の習慣はいいものだと話し、中学の担任に出したくなったと言い出します。
ところがその担任は、堀元さんをひどく嫌っていた先生でした。授業を聞かずに点数を取る態度が嫌われ、進学校への出願時に「お前落ちるだろうけどな」と言われたそうです。
あの時に先生に受けた屈辱は一生忘れませんっていう年賀状送ってあげたらいいかもしれないですね。
水野さんは「やめなさい」と止めます。堀元さんは、20年前の恨みの蓋が急に開いたことに自分でも驚いていました。
「千代に八千代に」は変数にすべき?
エンディングでは、クイズの投稿募集とあわせて、ゆる学徒カフェの歌を作詞してくれる人を募る話が出ます。社歌や社訓を大声で唱えさせると忠誠心が高まるらしいと話しつつ、二人とも「怖い店」にはしたくないと笑っていました。
最後に話題は君が代へ移ります。島根県民の歌と同じように、歌詞に数字が入っているなら変数にしたほうがいいのでは、という発想です。
でもやっぱり一応さ、変数にしといた方がいいよ。XにYにの方がいいよ。
でもXに8Xにでしょ、ここは。
「千代」と「八千代」は8倍という相対関係が変わらないので、変数にするなら「Xに8Xに」が正しい、という結論になります。具体的な数字を歌詞に入れるリスクを島根県民の歌で学んだ直後らしい、理屈っぽいオチで回は締めくくられました。
まとめ
今回の「おらが国編」では、会津の手話、島根県民の歌、最小都道府県、讃岐弁の言葉遊びという4問を通して、地域ならではの意外な事情が次々に明かされました。面白い説ほど広まりやすいという偽雑学の話や、年賀状をめぐる母の教えなど、クイズから広がった脱線もこの回の味わいになっています。
- 日本手話で会津は、白虎隊の最期にちなんだ切腹の動作で表される
- 島根県民の歌は「90万の県民」という歌詞が人口減少で現状と合わなくなったが、当時の気概を尊重して変更されていない
- 最小都道府県が大阪府から香川県に変わったのは埋め立てではなく、計算方法の変更で香川県の面積が減ったため
- 讃岐弁「こんきんかかん かかんきんこん」は「来ないから書かない、書かないから来ない」という年賀状の言葉遊び

