rightが「右」も「権利」も表すのはなぜか
ゆる言語学ラジオの水野さんは冒頭で、英単語のrightが「右」だけでなく「権利」や「正しい」も表すのは不思議だ、と問いかけます。この回は、その謎解きを最終目標に据えた回です。
右っていう意味のrightさ、権利もあって正しいもあってさ。不思議じゃない?
この回は、受験生向けに英単語帳『英単語ターゲット1900』を読む企画「ターゲット1900を読む会」の10回目にあたります。水野さんがリサーチした台本を、英語史研究者の堀田先生 ── 慶應義塾大学の堀田隆一教授。英語史が専門で、ブログ「hellog」やVoicy「英語の語源が身につくラジオ(heldio)」で語源の話を発信していますがチェックしたといいます。
堀田先生から届いたチェック完了のメールの最後には、rightについて「1時間半は喋れますね」と書かれていたそうです。rightという1語が、それだけ深い語源の話を抱えていることがうかがえます。
扱う8語は、medicine、matter、material、species、practice、focus、memory、rightです。語源の紹介に加えて、高校生向けの覚え方や、受験でよく出た言い回しも併せて紹介されます。
medicineの仲間remedyと「薬を飲む」の英語
1語目のmedicineは医薬や医学を表す単語です。水野さんと堀元さんはどちらも、カタカナ語として耳にしていたので覚えるのに苦労しなかったと振り返ります。
堀元さんは、身近な例としてEBM ── Evidence-Based Medicineの略で、根拠に基づく医療のこと。臨床研究などの科学的根拠をもとに治療法を選ぶ考え方ですを挙げます。ただし水野さんは、高校生の頃はEBMを知らなかったと指摘します。
ほとんど効果のないものを散々人類はやってきたから、その反省からEvidenceBasedMedicineが必要なんだと言われてますよね。
medicineの語源的な仲間として水野さんが挙げたのがremedyです。remedyは英単語としては治療法を意味しますが、堀元さんはすぐにホメオパシー ── 18世紀末にドイツで生まれた代替療法。症状を起こす物質を極端に薄めて用いると治療になるとする考え方で、科学的根拠は認められていませんの治療薬を連想します。
電子機器から出る有害な電波から身を守るためには、CPUを粉々に砕いて水で薄めまくったやつを飲めばいいとか、そういうやつですね。
水野さんは、ホメオパシーをあまり真似しないでほしい医療だとしたうえで、話を語源に戻します。治療するという意味の動詞medicateも仲間で、いずれもmediという綴りが共通しているので覚えやすいといいます。
英作文向けのポイントとして、水野さんは「薬を飲む」の言い方を紹介します。drinkを使うと酒などを飲む感じになるため、薬を飲むはtake a medicineと言うのが正しい表現です。
matterの語源が「木材」だったとは
2語目のmatterには、問題、重要である、物質、そして膿という多くの意味があります。物質の意味は、宇宙に存在すると理論上考えられているダークマター ── 光を出さず直接観測できないが、銀河の回転速度などから存在が推定される物質。宇宙の質量の大部分を占めると考えられていますのmatterです。
水野さんが明かしたmatterの語源は「木材」です。何かを作るための物質がスタートで、そこから物を作る材料としての意味が広がったといいます。
ダークマターのがっかり感すごいね。正体木だった。
水野さんによると、何かを生み出すものという発想から、matterはmotherとも語源的に関係があるそうです。堀元さんは「木から家ができるのと母親から子供が生まれるのは同じ」という発想を、だいぶサイコパスだと笑います。
次の単語materialについて、水野さんはmatterの二重語 ── 同じ語源から分かれ、異なる形と意味を持つようになった語の組のこと。英語のshirtとskirtなどが代表例ですだと説明します。materialはもともと家を作る材木を指し、そこから材料一般を表すようになりました。
堀元さんが「語源も意味も一緒なら2つもいらない」と言うと、水野さんは日本語の「競う」と「気負う」を例に反論します。水野さんによると、『新明解国語辞典』第八版に、この2語が二重語だと書かれているそうです。
じゃあ堀本さんは「競う」と「気負う」と書いて「気負う」は一個に統一した方がいいと思うんですか?
matterの核は「中身が詰まっている」
水野さんは、語源的な事実ではなく覚え方と割り切ったうえで、matterの多義性には「中身が詰まっている」というコアイメージがあるのではないかと提案します。物質も膿も、重要であることも、中身が詰まった感じで捉えられるという考え方です。
堀元さんは、ダークマターも宇宙の密度を計算すると物質がないとおかしい、つまり詰めなければいけないという発想から生まれたので、このイメージに合うと付け加えます。水野さんによると、堀田先生もこれがコアイメージではないかと話していたそうです。
水野さんがもう1つ面白いと感じているのは、日本語には「重要である」を一語で表す動詞がないことです。英語ではIt doesn't matterのように、matterが動詞として「重要である」を担っています。
堀元さんは他動詞の「重んじる」を挙げ、自動詞化した「重んざれる」があればmatterに対応すると提案します。さらに欧米の人は話題そのものが重要だと神の視点で語っている、という仮説を持ち出しますが、水野さんは「ちょっとずれてて」と否定します。
だからポイントはどちらかっていうと、動詞にその役割を担わせてるってのが面白いなっていう感覚かな。ごめん、全否定しちゃったんですけど。
悲しい。俺のこともっと重んじてくれ。
count・weigh・matterは日本語と対応していた
水野さんによると、「重要である」を表す英語の動詞はmatterだけではありません。数えるという意味のcountや、重さを測るという意味のweighも、自動詞として使うと「重要である」という意味になるそうです。
堀元さんは、weighが重さから「重要」になるのは、日本語の「重要」に「重」の字が入るのとパラレルだと気づきます。水野さんは、同じ対応がmatterとcountにも見られると続けます。
| 英語の動詞 | もとの意味 | 対応する日本語の表現 |
|---|---|---|
| weigh | 重さを測る | 「重要」の「重」 |
| matter | 事態 | 「それは事だね」 |
| count | 数える | 「ものの数に入らない」 |
この対応を意識すれば、count、matter、weighが「重要である」を表すことをまとめて覚えられる、というのが水野さんの提案です。ただし堀元さんは、「それは事だね」は高校生が言わなさそうな、おじさんの言い回しだと突っ込みます。
「そんなの関係ねぇ」と「I'm wearing」の英語
水野さんにとってIt doesn't matterは、小島よしおさんの印象と結びついています。テレビ番組で英語話者に芸を求められた小島よしおさんが、「そんなの関係ねぇ」を「It doesn't matter」とやって受けていたそうです。
小島よしおさんの「そんなの関係ねぇ」を英訳したらItdoesn'tmatterになるんだ。
堀元さんは、芸人のギャグで英語を覚えられそうだとして、とにかく明るい安村さんがアメリカで披露した「安心してください、履いてますよ」を挙げます。水野さんによると、安村さんが「I'm wearing」と言うと、観客が「pants」と補ったそうです。
水野さんは、このネタが言語界隈で話題になったと紹介します。日本語の「履いてますよ」は目的語を省けますが、英語の他動詞は後ろに目的語を置く強い制約があるため、観客が気持ち悪さを感じて「pants」と補ったのではないか、という考察です。
堀元さんは、音楽の「解決」になぞらえます。終わりの音を出さないと気持ち悪いというルールをあえて破って余韻を生む技術のように、「I'm wearing」で止めることがネタの強さになっていたのかもしれない、という見立てです。
As a matter of factはもともと法律用語
水野さんは高校生が覚える必要はないとしたうえで、堀田先生から届いた補足を紹介します。ターゲットにも載っている、「実のところは」を意味するAs a matter of factという言い回しについてです。
堀田先生によると、As a matter of factはもともと16世紀後半の法律用語でした。法廷で、意見ではなく事実だと強調して誤解を避けるための硬い専門表現が、今では一般的な表現になったといいます。
でも考えてみるとさ、infactとかでいいじゃん。なんでそんなややこしい言い回しするのかなと思ったら、硬い言い方なんだ。
堀元さんは硬い表現にまつわる話として、意味をよくわからないまま、かっこいいという理由で未必の故意という言葉を使ってしまった経験を明かします。水野さんも自信はないとしつつ説明を試み、2人で「知ったかぶりはよくない」と高校生に呼びかけます。
materialとマチエール、そして「オオマテ」の知ったかぶり
materialについて、水野さんは現代文でマチエールという言葉に出会った経験を話します。マチエールは、絵画の絵肌や彫刻の質感など、作品の材質的な効果を表すフランス語です。
水野さんは電子辞書で綴りを調べ、materialと関係があるどころか同じ単語ではないかと感じたそうです。どちらも材料や質感に関わる意味なので、まとめて覚えられるといいます。
堀元さんは、北海道大学工学部の応用マテリアル工学科が「オオマテ」と略されることを紹介します。高校の飲み会でオオマテが何かわからないまま「お前確かにオオマテっぽいよね」と一か八か話を合わせ、会話が成立して嬉しかったと明かします。
知ったかぶりだけで生きてるから。
speciesとspiceは同じ語源だった
水野さんは、speciesにも二重語があり、絶対に当てられないと出題します。堀元さんはspeculationやspecを挙げますが外れで、正解はspice(香辛料)でした。
水野さんによると、ラテン語の「商品」や「種」を意味する語がもとにあり、そこから2つに分かれたようです。spiceは税関役人の間で産物や製品という意味が生じ、それが限定されて香辛料だけを指すようになったといいます。
ラテン語
「商品」「種」を意味する語
税関役人の間
産物や製品を指す意味が生じる
意味の限定
香辛料だけを指すようになる
水野さんは、広く指していたものの一部だけを指すようになる「意味の限定」はよく見られる現象だと説明し、houndを例に挙げます。houndは今では猟犬を意味しますが、古英語期には犬一般を指し、dogの台頭によって猟犬の意味に追いやられたそうです。
水野さんによると、中英語ではdogは軽蔑的な含意で使われることが多く、今イメージするような忠実な犬のニュアンスはありませんでした。堀元さんは、日本でも「お宅の犬」と言うと失礼で「ワンちゃん」と言わなければならない例を挙げ、似た変化が起きていると話します。
日本語の意味の限定の例として、水野さんは「薬」を挙げます。薬は一般的な意味を持ちつつ、ある文脈では違法薬物を指します。堀元さんも、カタカナで「クスリ」と書くと違法薬物感がすごいと応じます。
堀元さんは、昔はスパイスが代表的な輸入品で、中世のヨーロッパでは胡椒が非常に高い価値で取引されていたと話します。水野さんも、税関役人の間で意味変化が起きていることから、その背景が関わっている可能性はあると受けます。
speciesの「spe」は「見る」
水野さんによると、speciesのspeの部分は、以前の回で扱ったexpectやspeculationと同じ「見る」という意味です。種とは同じ外見のもののことだ、と水野さんは説明します。
堀元さんは、現代の種の定義は自然に繁殖するかどうかで、見た目はあまり関係ないと反論します。水野さんは、属を表すgenusの語源が「産む」で、gene、gender、generateと仲間だと話を広げ、「完全に論破」と宣言します。
俺が言ってんのは、種は外見によって区別されるんじゃなくて、自然環境で繁殖していくかみたいなところで区別されてるから、見た目はあんま関係ないですよって言ったんですよ。
堀元さんに追及された水野さんは、当時はそこまで細かい基準ではなく、同じような外見のものを種と呼んでいたのだろうと答え直します。この後は、お笑いコンビのトム・ブラウンの話題で脱線して盛り上がります。
practiceのコアは「繰り返し行う」
practiceには、練習、実践、社会の慣習という意味があり、動詞では練習するという意味になります。練習と実践は意味が遠いように見えるため、これも多義語に見えると水野さんは話します。
水野さんが提案するコアイメージは「繰り返し行う」です。社会の慣習はみんなが繰り返し行っていること、実践も練習も繰り返し行うことなので、まとめて覚えられるといいます。
僕、小学生の頃、漢字の練習をしてくださいって言って、漢字練習ドリルみたいなの渡されたんですけど、書く漢字一回ずつしか書かずに終わったんですけど、これ繰り返してないですから。
一方の水野さんは、漢字は見たら全部覚えて書けるようになったため、練習する必要がなくドリルが嫌いだったと明かします。堀元さんは「天才少年」と驚きます。
focusの語源は「囲炉裏・暖炉」
focusは焦点や集中させるという意味です。スマホのオートフォーカスなどで身近なので、語源を紹介するとかえって散らかるかもしれない、と水野さんは前置きします。
水野さんによると、focusはもともと囲炉裏や暖炉を意味し、燃料を表すfuelや、劇場やホテルの休憩所を表すfoyer(ロビー)と関係があります。foyerは、芝居の合間に観客が温まりに行ったことから、語源的につながっているそうです。
水野さんはfireも同じ語源かと調べましたが、関係は確認できず、堀田先生も「何とも言えません」とのことでした。堀元さんが「なんとか関係あったことにしてもらえませんか」と頼むと、水野さんは学問はそういうものではないと退けます。
『英語語源辞典』では、focusの意味は焦点が先で、活動や噴火などの中心点が2番目に生まれています。水野さんは、焦点は「焦げる点」とも書くので、暖かい囲炉裏から来ている可能性を挙げつつ、調べた限りではよくわからないと結論を保留します。
memoryの「M」の繰り返しはオノマトペ由来?
memoryは記憶を表し、仲間にはremember、memorize、そしてメモの元の言葉であるmemorandumがあります。今の高校生には、メモリーカードなどで身近な言葉だと水野さんは話します。
堀田先生は、memoryやrememberでMが繰り返されている点が示唆的だとコメントしたそうです。印欧語根 ── 英語やラテン語、サンスクリット語などの共通の祖先とされる印欧祖語の、語の中核となる要素。比較言語学によって再建されたものですではMの繰り返しはないのに、現代の英語には残っており、擬音語っぽい匂いがするといいます。
水野さんは、英語で「ぶつぶつ言う」を意味するmurmurを挙げ、暗記するときにぶつぶつ言う様子が擬音語的に語根になったのかもしれないと紹介します。ただし、これは断定できない仮説だと念を押しています。
もし暗記をする時ブツブツ言う人がめちゃくちゃ昔のヨーロッパにもいたんだとしたら、リメンバーとかメモリーとかにMがいっぱい入ってるのって、時空を超えて、そういうやついるよねっていう感じしますよね。
堀元さんは、東京の外れに住んでいた頃の病院の受付の人を思い出します。保険証の番号を小声で1人あたり4回ほど読み上げ続ける様子が異様で、病院に行きたくなくなったそうです。
rightはもともと「まっすぐ動かす」と「強い方」
最後の単語rightの大元は「まっすぐ動かす」だと水野さんは説明します。同じ語源の単語にはdirectやaddressがあり、権利との関係がわかりやすい例としてruleも挙げられます。
名詞の意味の順番は、正義、権利、右側、保守派です。rightが右の意味を持つのは古英語後期あたりからで、意外と遅いといいます。
それ以前に右を表していたのは、現代語に直すとstrongの比較級、つまり「the stronger side」のような語だったそうです。堀元さんが「右利きの人多いからってことだ」と言うと、水野さんは「まさにそういうこと」と同意します。
一方のleftは語源説が複数あるものの、仲間とされる単語は「弱い」「使い物にならない」といった意味を持つそうです。右は優位、左は劣位という価値観は、英語圏で広く共有されていると水野さんは話します。
フランス語やラテン語から借りた語にも同じ傾向があります。水野さんは、英語に入った右と左の語がそれぞれどんな意味になったかを並べて紹介します。
| 由来 | 右 | 左 |
|---|---|---|
| 英語本来 | right(もとは「より強い方」) | left(仲間の語は「弱い」) |
| フランス語 | droit(正義・法律の意味も) | gauche(英語で「不器用な」) |
| ラテン語 | dexter系(英語で「器用な」) | sinister(英語で「不吉な」) |
左差別が起きている。
中国と日本、右と左はどちらが偉い?
水野さんが中国も右が優位だと言うと、堀元さんは左大臣や右大臣では左の方が偉いのではと疑問を返します。水野さんによると、中国では右が上で、日本に入ってきたときに左が偉くなったそうです。
中国の右優位の例として、水野さんは左遷 ── 地位を下げて遠くへ移すこと。古代中国で右を尊び左を卑しんだことに由来するとされる言葉ですと「右に出る者がいない」を挙げます。一方で日本語には、裕福さを表す「左うちわ」があります。
水野さんによると、左うちわは利き手ではない左手で扇ぐくらい、全力で扇がなくていいほどの余裕から、裕福という意味になったそうです。堀元さんは「ハンディキャップ仮説じゃん」と例えますが、説明を始めると合わないことがわかり、2人で「この例え邪魔でしたね」と認め合います。
例えで脱線させるラジオ、これやっていきましょう。
日本はいつ左優位から右優位に変わったのか
水野さんは、日本がいつ左優位から右優位に変わったかも調べています。ただし日本の左はややこしく、左うちわは裕福ですが、左前は貧乏を意味するため、左が偉いとも言い切れません。
水野さんによると、日本書紀、古事記、源氏物語の頃はまだ左優位でした。鎌倉時代の文献明月記には左が邪道だという記述があり、13世紀ごろから中国の影響で右優位に移ったのではないかと言われているそうです。
なぜ日本では最初に左が優位だったのかは、文献が残っておらずわからないそうです。右が優位な理由は、9割が右利きであることなど説明がつけやすいと水野さんは話します。
水野さんは高校生向けに、認知科学の研究も紹介します。カササントという認知科学者の実験で、人は右をより好み、右を上、左を下と認識する傾向が示されているそうです。
この研究を知りたい人向けに、水野さんは『知識は身体からできている』を挙げます。身体性認知科学 ── 身体の構造や動きが、思考や知覚、言語の理解に影響するとする認知科学の立場。「身体化された認知」とも呼ばれますの本で、翻訳書かつ出典が多く硬いものの、本体は200ページもなく、興味のある箇所だけ読むなら高校生でも挑戦できるといいます。
rightを覚えるための「事実ではない」ストーリー
最後に水野さんは、rightの「正しい」「権利」「保守派」をまとめて覚える方法を紹介します。ただし最初に、歴史的事実とは異なる覚え方だと断っています。
出発点の「正しい」は歴史的事実に沿っています。まっすぐが正しいにつながるのは、日本語でも「まっすぐな人」が正しい人を指すのと同じで、堀元さんは「実直」を例に挙げます。正しいから、ちょうどいい、適切なという意味も想像しやすいといいます。
まっすぐ
まっすぐなものは正しい
正しい・適切な
ちょうどいい味付けのように、適切の意味へ
右は強い
多くの人の利き手で、力も出せる
議会の保守派
議長席から見て右側に多数派の保守派が座る
権利
多数派が立法権を行使し、権利を獲得する
水野さんは、聖書にも「賢い者の心はその右にあり」と書かれているらしいと紹介し、右を強いとする構図が議会に持ち込まれたと考えるストーリーを示します。右が保守派、左が改革派を表すのは、この議会の座席から来ているといいます。
堀元さんが「どっかで言っちゃいそうで怖い」と言うと、水野さんは、多数派の保守派が議長席から見て右に置かれたこと自体は事実だと説明します。「右が強い」という構図が議会に持ち込まれたかどうかは、裏取りしていない部分だといいます。
ファクトとフィクションが今入り交じっててすごい難しい。
なので基本的にはあの、間違ってたらごめんって言って人にドヤ顔で喋るといいかもしれない。
堀元さんは、藤井健太郎さんのAmazonプライムの番組『キラーカッツ』で、芸人が通行人に右寄りか左寄りかを聞いて曲がる方向を決める企画があったと紹介します。水野さんは「ノットライト」と答え、今の高校生は選挙権を持つので政治に関心を持つ必要がある、と話を結びます。
8単語のおさらいと参考文献
水野さんと堀元さんは、medicine、matter、material、species、practice、focus、memory、rightの8単語をおさらいします。水野さんは情報量が特盛りだったと詫びています。
水野さんのメインの参考文献は『英語語源辞典』です。堀田先生が、日本どころか世界でも類を見ないほどいい辞典ではないかと評していたそうです。
今回読んだのはターゲットの5訂版で、現在は6訂版が出ているため、単語が微妙に違うそうです。多義語については『英語に強くなる多義語二〇〇』の内容も参考にしたものの、語源的な事実を踏まえていない覚え方も含まれると水野さんは念を押します。
堀田先生はブログを10年以上毎日更新しながら、Voicyも毎日更新しているそうで、堀元さんは「狂気の生産量」と評します。rightの話は、堀田先生のブログやVoicyでも語られています。
最後は、視聴者からの合格報告の話題です。堀元さんには、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を薦めたおかげで工学部に合格したというDMが届き、著者のアンディ・ウィアーのおかげだと思いつつ、自分の手柄のような空気を出しておいたと笑いを誘います。
まとめ
今回のゆる言語学ラジオは、英単語8語の語源をたどりながら、多義語の意味のつながりと覚え方を紹介しました。rightは「まっすぐ動かす」から「正しい」へ広がり、右の意味は後から加わったもので、右を強いとする価値観は英語圏にも中国にも見られます。
- rightの大元は「まっすぐ動かす」で、右の意味は古英語後期から。それ以前は「より強い方」を表す語が右を意味していた
- matterの語源は「木材」で、「中身が詰まっている」というコアイメージで物質・膿・重要であるをまとめて覚えられる
- count・weigh・matterが「重要である」を表すのは、「重要」「それは事だね」「ものの数に入らない」と日本語とも対応している
- speciesとspiceは同じ語源で、spiceは税関役人の間で意味が限定されて香辛料を指すようになった
- 英語ではright系の語が良い意味、left系の語が悪い意味になりやすく、日本は13世紀ごろに左優位から右優位へ移ったとされる





