恐竜図鑑をパラパラめくって終わった子ども時代
この回は、水野さんと堀元さんが自分の推し図鑑や推し事典を持ち寄り、図鑑作りのプロに品評してもらう企画です。水野さんは、図鑑を作ったことがないので良し悪しがわからない、細かい目線で見ていきたいと趣旨を説明します。
ゲストは、水野さんの友人で、学研の図鑑LIVEの編集長を務める松原さんです。松原さんはもともと生物学の研究をしていた経歴を持ち、学研では恐竜や人体など生き物の図鑑を多く手がけてきました。
松原さんが自ら編集した恐竜図鑑を取り出すと、堀元さんは子どもの頃に親にねだって恐竜図鑑を何冊も買ってもらった思い出を語ります。ただし当時の読み方は、テンションが上がってめくり、そのまま本棚に戻すだけだったといいます。
そう、パラパラめくって終わってました、当時から。いやだからもっと深く読みたかったね、本当はね。
だから、あの時の僕が見落としていた凄ポイントを今日はちょっと教えていただきたいです。
言語図鑑は、なぜ「あいうえお順」なのか?
最初に水野さんが紹介したのは『世界28言語図鑑』です。東京外国語大学で学べる28の外国語について、簡単な文法や文字、文化の写真などを載せた図鑑です。
堀元さんがめくると、トルコ語のページにはケバブやカッパドキアの写真が並び、日本語のページには「は」と「が」の違いといった文法の特徴まで載っていました。
この『世界28言語図鑑』を初めて見た松原さんが真っ先に注目したのは、言語をどういう順番で並べているかでした。アラビア語、イタリア語、インドネシア語と続く並びは、あいうえお順です。
松原さんは、地理順や大陸順も候補だったはずだとしたうえで、「完全に妄想」と断りつつ推察します。東京外大が教材として使ってほしいと考えるなら、日本語話者が目当ての言語にすぐたどり着ける検索性を優先し、あいうえお順にしたのではないか、という見立てです。
松原さん自身も恐竜図鑑を作るとき、最初の分かれ道は「時代順に並べるか、生き物のグループで分けるか」だったといいます。恐竜も今の生き物と同じようにグループ分けされていると伝えたかったため、三畳紀・ジュラ紀・白亜紀の順ではなく、グループ別を選びました。
三畳紀、ジュラ紀、白亜紀と年代に沿って恐竜を並べる案
今の生き物と同じようにグループ分けされていると伝えるため、学研の恐竜図鑑が採用した並べ方
目次に思想があるんだね。
そうだね。並び方に何を伝えたいかが宿るんだ。
水野さんは、自分が作るなら話者数の多い順に並べそうだと明かします。堀元さんが「マジョリティによる暴力」と先回りして茶化し、あいうえお順には言語の優劣を感じさせない効果もある、という話に落ち着きました。
松原さんはさらに、『世界28言語図鑑』が同じリズムで各言語の文字を紹介しているため、全体を俯瞰するとラテン文字を使う言語の多さが自然にわかる点を評価します。堀元さんは、各言語のページ数が揃っていること自体に意味があるのではと指摘しました。
松原さんによると、全体の構成を決める作業は台割 ── 本のどのページに何を載せるかを割り振った設計図。雑誌や書籍の編集で、ページ構成を決めるときに使われますと呼ばれ、ページのリズム感は本作りで特に考える部分だそうです。
恐竜図鑑にティラノ差別はあったのか?
「すべての言語を平等に扱う」という話の直後、水野さんは松原さんに、恐竜図鑑でティラノサウルスがかっこいいからページを増やしたことはないかと切り込みます。松原さんの答えは「ちょっと」でした。
松原さんは、ティラノサウルスがいる獣脚類 ── 二足歩行の肉食恐竜を中心とするグループ。ティラノサウルスのほか、鳥類もこの系統から進化したと考えられていますはもともと種数が多く、研究内容も豊富だと弁明します。しかし松原さん自身が「ティラノサウルスを愛してます」と認めたため、差別疑惑はさらに深まりました。
実際の学研の恐竜図鑑では、見開きまるごとがティラノサウルスで、「ティラノサウルスの仲間2」「仲間3」「仲間4」と、ティラノサウルス上科の恐竜が大量に載っていました。
これちょっとティラノ利権感じますよね。
松原さんは「全く自然であって、僕が作らなかったとしてもこうなっています」と国会答弁のように説明し、堀元さんの「秘書が勝手にページ数を増やした可能性」にも「記憶にないです」と応じて笑いを誘いました。
同じ言語でも、並べ方が違う図鑑を比べると何が見える?
水野さんは、似たコンセプトの図鑑として『世界言語文化図鑑』も紹介します。ハードカバーで価格は1万3000円プラス税と高価で、言語があいうえお順ではなく、ヨーロッパとユーラシア、太平洋地域といったエリア別に章立てされています。
| 項目 | 世界28言語図鑑 | 世界言語文化図鑑 |
|---|---|---|
| 並び順 | あいうえお順 | 地理(エリア)別 |
| 作り手の背景 | 東京外国語大学 | 類型論の研究者が編集顧問 |
| 松原さんの見立て | 教材としての検索性を重視 | 動物図鑑と同じ設計思想 |
だから並び替え違う図鑑をいくつか持っておくって意味あることかもしれないね。
『世界言語文化図鑑』には、類型論 ── 世界の言語を比較し、多様性の幅や共通する普遍性を探る言語学の分野の研究者として知られるバーナード・コムリが編集顧問として関わり、接頭辞などの言語学的な説明も多く載っています。
松原さんは、この地理別の構成を普通の動物図鑑と同じ設計思想だと見ます。カンガルーやコアラのような有袋類がオーストラリア大陸で繁栄しているように、地理と進化の広がりを並べる発想は言語にも応用できる、という気づきでした。
堀元さんは、最近読んだ『分類思考の世界』の内容を紹介します。16世紀ごろ、船で国外へ行けるようになって見知らぬ植物を大量に目にしたことで、博物学は記述の学問から分類の学問へ変わった、という話です。
なんかだから図鑑を作る営みって、結局分類を考える営みと近接してるんだなみたいなことを今聞いてて思ったんですけど。
松原さんも、博物学の原初的な衝動は「集めること」と「分類し整理すること」であり、図鑑はそのいちばんプリミティブなところをやっていると同意しました。
分類は失敗する。「首長竜とその仲間」に込めた小さな抵抗
自分なりに分類する楽しさの例として、小学生時代に日本全国の難読名字をノート2冊分集めた話が出ます。地域別にするか迷った末、全国に散らばる名字は書きようがなく、結局あいうえお順にしたそうです。
堀元さんは、自分のうんちくデータベースのタグ付けで分類に失敗した経験を語ります。
珍事とちょっとニュアンス違うからっていう理由でコントみたいってタグもできちゃって。その後さらにニュアンス違うからっていう理由で、できすぎた話ってタグもできちゃって。
もう次うんちくメモする時に、これは珍事か、コントみたいか、できすぎた話かって悩むようになってしまって。これ分類失敗したなって思いました。
図鑑の編纂でも同じ悩みはあると松原さんは言います。ライオンやトラは食肉目ですが、幼児向けには「猫の仲間」と言い換えるなど、表現を丸くするうちに言い切れない場面が出てくるのです。
その例が恐竜図鑑の首長竜のページです。他のページが「魚竜の仲間」「翼竜の仲間」なのに対し、首長竜だけは「首長竜とその仲間」となっています。首長竜より原始的で、首長竜に入らないかもしれない2種を載せる必要があり、その2種だけで1ページは作れなかったためでした。
松原さんは監修の先生と相談し、見出しを「首長竜とその仲間」とし、リード文で補うことにしたといいます。
同じような工夫は、社内で制作するYouTubeチャンネルでも行ったそうです。『文化系のための野球入門』を扱った回で、サムネイルには「野球部はクソ」と大きく書きつつ、タイトルは「なぜ『野球部はクソ』なのか」とかぎ括弧を付け、一般にそう言われている、というニュアンスを込めました。
僕見ましたよ。コメント欄かなんかでカギ括弧の位置がちゃんとしててすごいみたいなこと言ってる人いて。
上から開く箱に、図鑑オタクが「うおほほ」と興奮
堀元さんが持ってきたのは『世界の文字と記号の大図鑑 ー Unicode 6.0の全グリフ』です。Unicode ── 世界中の文字や記号に共通の番号を割り振る国際的な文字コード規格。古代文字まで収録対象に含めています6.0に収録された文字や記号をすべて載せた図鑑で、線文字Bのような古代文字まで入っています。
ところが話は中身より先に造本で盛り上がります。箱が上から開き、背が上に来る形で本が出てくるうえ、90度倒さないと開かない構造だったからです。出版社勤めの水野さんは、この体験を「めっちゃ気持ち悪い」と評しました。
こうなるって。うおほほ。
さらに水野さんと松原さんは、表紙のエンボス加工 ── 紙に凹凸を付けて文字や模様を立体的に浮かび上がらせる加工に注目します。メインタイトルには入れず、「デコードUnicode」というサブタイトルのような部分だけにエンボスを入れていたのです。
思想やばくないですか?ここ。この世界の文字と記号の大図鑑にはエンボス入れてないのに、デコードUnicodeだけエンボス入れてるの。
本屋に行くとどこに加工が入っているかを必ず見る、という出版関係者ならではの視点で、2人は堀元さんを置き去りにして盛り上がりました。
漢字砂漠とキク科の山場。図鑑には「長いエリア」がある
中身は、大量の文字とUnicodeの番号がひたすら並ぶだけという、堀元さんいわく「めちゃくちゃソリッド」な内容です。中でも漢字のエリアが長く、水野さんは「漢字砂漠」と表現しました。
堀元さんによると、Unicodeは似た文字が連続するように番号を振っているため、魚偏や馬偏の漢字がまとまって並ぶエリアがあります。松原さんは、番号順に並べると結果的に形が似た文字が並ぶ点を、生物学でいう形態の分類になぞらえました。
堀元さんは、かつて割り当てられる文字数が少なかった時代に、漢字に大量の領域を使うことへの反対論があったことにも触れ、ページをめくると規格の歴史まで感じられると話します。
松原さんは、特定の分類が図鑑の大部分を占める現象は生き物の図鑑にもあると続けます。植物図鑑では、ほかの科が見開き1つから8ページ程度なのに、タンポポやひまわりを含むキク科だけで15ページほどになることがあるそうです。魚ならスズキ目が多く、編集者には「やっとスズキ終わった」という山場があるといいます。
水野さんも、辞書では「し」や「す」が長く、辞書編集者は「し」「す」を終えると半分終わったようなものだと言うと紹介しました。
それ軽い気持ちでパラパラ読んでると気づかないけど、どこ多いのかなっていうのを注目すると、編纂者が嫌になるポイントがわかるわけですね。
出版社の人は、無責任に本が読めない?
Unicode図鑑をめくりながら、出版に関わる2人の口から最初に出たのは校正の話でした。文字とコードの一対一の対応を、10万9242文字ぶん全部確かめなければならないからです。
堀元さんが「今日は遊びだから校正する必要はない」となだめると、ようやく「無責任に読んでいいんだ」と安堵する場面もありました。
松原さんは、横長の判型にも理由を推察します。縦長のA4判では見開きに複数の言語の文字が入りすぎてしまうなど、1ページに何文字を美しく並べるかが「命みたいな本」なので、レイアウト見本を何度も作り直したはずだという見立てです。箱には、原著よりコード番号順で引きやすく再編集したとも書かれていました。
本作りをしていると、開いた瞬間に面白さより先に校正や監修の大変さが押し寄せ、書店売り場でどっと疲れることがよくあると松原さんは明かします。
中身に目を移すと、ページは制御文字から始まり、Aは41番あたりから登場します。水色と黄緑の2色を文字グループごとに交互に使い、大きく文字を見せる区切りのページで絵変わりさせる工夫もありました。松原さんは、検索用の資料なら並べるだけでもよいが、読み物として面白くしたい欲が出るのだと話します。
色の話から、松原さんは色覚バリアフリーへの配慮も紹介しました。学研の恐竜図鑑の凡例は、赤い丸が分類、青いスペードが全長、オレンジのダイヤが生息時期というように、色と形の両方で区別できるように作られています。
3歳から大人まで。図鑑は「どこから読んでも」「通読しても」面白く
水野さんは素朴な疑問をぶつけます。図鑑は通読を想定していないのだから、飽きられてもいいのではないか、という問いです。
松原さんの答えは、図鑑は普通の本と比べて対象年齢が異様に長いという点でした。学研の図鑑LIVEは3歳から大人までを対象としていて、発達段階によって読み方が変わることを前提に作っているといいます。
幼稚園や小学校低学年の子はパラパラめくって気になったページから読みますが、中学年ごろになると文脈がわかり、最初から読むかもしれません。そのため、1ページごとの強度を高めつつ、前後の文脈も通す作り方をしているそうです。
パラパラめくって気になったページから読む。1ページごとの強度を高めて応える
文脈がわかる年齢になり最初から読む。前後の文脈を通して応える
え、でもそれすごいな。もう言うたらリバーシブルみたいなもんでしょ。通読用としても耐えうるし、パッと開いても耐えうるように両方の観点で使わなきゃいけないんだ。
話はゆる言語学ラジオの下ネタ問題へ脱線し、堀元さんは下ネタがないと面白さが3分の1ほどになると主張します。人体の図鑑には当然生殖器も載っているという松原さんの補足で、2対1の形勢になった水野さんが悔しがる一幕もありました。
『人間の許容・適応限界事典』は、どんな目次になっている?
水野さんが次に紹介したのは、言語とは関係のない『人間の許容・適応限界事典』です。水野さんは中身を見せる前に、2人に「自分ならどういう目次にするか」を当てさせるクイズを出しました。
ヒントは、白黒で805ページ、全10章、分担執筆の専門書であることです。松原さんは、同じレベルの学問ジャンルを並べる方向か、マクロからミクロへズームインしていく方向か迷ったと話します。堀元さんは、生物学的限界、社会学的限界、経済学的限界のように学問ごとに分かれる仮説を立てました。
正解は「合ってる部分と間違ってる部分がある」。水野さんが読み上げた章は、生理、感覚、心理、知覚情報処理、運動、物理化学関係、生活と健康、テクノロジー、栄養などでした。心理の章にはハラスメントやプレッシャーの項目もあります。
堀元さんは運動の位置づけにだけ納得がいかず文句をつけ、水野さんに「味わう会だから」とたしなめられます。松原さんは、テクノロジーと栄養が1冊に並ぶことは普通の図鑑ではまずなく、許容・適応限界というテーマ設定だからこそ起きている構成だと評価しました。
読んでみた松原さんの感想は「軽やか」でした。1段落が短く要点が絞られ、図版がリズムよく入り、心拍数も2見開きで終わるため、分厚い見た目に反して読みやすいといいます。
堀元さんは漫画『アカギ ── 福本伸行による麻雀漫画。対局で負けるたびに血液を抜かれる勝負が描かれることで知られます』で読んだ、血液を抜かれる限界の知識を文献と勘違いして語り、水野さんに突っ込まれていました。
背骨とジャンクションと漸近線。「触れられないもの」への興奮
『人間の許容・適応限界事典』の図版で、松原さんは背骨から神経が伸びる様子に「たまんない」と反応します。背骨の研究をしていた松原さんは、節状の構造物を見ると生命を感じるといい、東京タワーにも「グッと来る」と話しました。
水野さんは、立体交差の写真だけを集めた写真集『ジャンクション』を取り出します。
このなんかぶつかりそうでぶつからないとこにこう組まれてる感じ。
そこから話は、y=1/xのように限りなく近づいても交わらないグラフの漸近線 ── 曲線が限りなく近づいていくが、決して交わらない直線へと飛びます。接線については「接しちゃってるから」あまり興奮しないという流れになりました。
松原さんは、この「触れられないことへの興奮」が自身の研究に近いと語ります。脊椎動物の進化は終わった出来事なので、証拠から考察はできても、確証には絶対に触れられないからです。
深夜に顕微鏡を覗いていて予想どおりの結果が出たとき、近づけないと思っていた生物の大きな流れに一瞬手が届いた気がして超興奮した。その記憶があるから漸近線に惹かれるのだ、というのが松原さんの説明でした。
顕微鏡の話まではよくわかるが漸近線の魅力はわからない、という結論になり、出演者と松原さんの心の距離そのものが漸近線だ、というオチがつきました。
力士の大型化から「silent」のアナグラムへ。朝倉書店の事典
堀元さんは『人間の許容・適応限界事典』の体重の項目を読み、記録上の最大体重は635キロを超えていたとされるジョン・ブラワー・ミノックの例を紹介します。続く力士の記述にある「力士の大型化がより一層進む中」という表現を、工業製品のようだと面白がりました。
ただ水野さんからは、事典を見て文章の一節を面白がるのではなく、もっとマクロな視点で語れと、コメンテーターとしてのスキル不足を指摘されます。
水野さんは、この事典を出している朝倉書店がほかにも多くの事典を出していると紹介します。言語学の各分野を概説する硬めの『言語の事典』と、同じ編者によるカジュアルな『ことばのおもしろ事典』です。
『ことばのおもしろ事典』は言語学の本というより、言葉全体を面白がる視点の事典だといいます。アナグラム ── 単語や文の文字を並び替えて、別の意味の語句を作る言葉遊びの章もあり、水野さんはここから得たネタでSNSでバズったことがあるそうです。
ドラマの『サイレント』っていうドラマをやってた時に、サイレントってアナグラムにするとLISTENになるんですよ。
ほかにも「Rome was not built in a day」が「Any labor I do wants time」に、「astronomers」が「no more stars」になるなど、意味まで響き合う例が載っています。水野さんは、朝倉書店の事典はウォッチしておくと面白いものに出会えるとまとめました。
人体図鑑に載った親知らずは、編集長本人の歯だった
水野さんは、他のメディアでは話していない細かすぎる裏話を松原さんにリクエストします。松原さんが開いたのは、学研の図鑑LIVE『人体』の歯のページでした。
そこに載っている抜歯した親知らずの写真は、松原さん自身の歯です。厄介な生え方をしていたため入院を勧められ、全身麻酔で4本一気に抜いた際、きれいに抜けた歯をもらって撮影したといいます。前の版にはなかった写真でした。
キャプションは「治療で抜いた親知らず」と他人事のようですが、書いたのも松原さん本人です。さらに足をくじいたときには、骨折していればレントゲン写真を載せられると思い、「一瞬折れててくんねえかな」と考えたそうです。
怪我すれば怪我するほど素材が増えていく。
堀元さんは、自分のレントゲン写真を学研に売れば儲かる「いいエコシステム」だと茶化し、さらにSNSでのレントゲン写真を使った手口の話へ脱線しました。水野さんから編集でカットされる箇所を問われ、自覚が出てきたと笑い合っています。
「もっとマニアックに」。昆虫7000種を捕まえた学研図鑑の覚悟
終盤、この回が学研の広告案件であることが明かされ、松原さんが図鑑LIVEの方針を語ります。学研の図鑑は1970年から刊行され、ずっと「マニアックだ」と言われ続けてきました。
堀元さんは、とっつきやすくした話が続くのかと予想しますが、松原さんの答えは逆でした。2022年に図鑑LIVEとしてリニューアルし、学問にガチで向き合う方針をさらに強めたといいます。
昆虫や魚をどれだけ載せるかと問われれば「一番載せましょう」と答え、テーマによっては研究者に文章を直接書いてもらいます。松原さんは、研究者が見ている景色を損ねずに読者へ届ける戦いだと表現しました。
その象徴が『昆虫』です。学習図鑑として初めて、掲載した昆虫をすべて生きたまま撮影しています。日本全国に撮影チームを作って一旦7000種を捕まえ、そこから2800種を掲載しました。
撮影の過程では新種まで見つかり、研究者によって「ガッケンホソカワゲラ」と名付けられました。それでも図鑑では特別扱いせず、「一種は一種」としてフェアに載せています。堀元さんに「ティラノサウルスはいっぱい載せてますよね」と突っ込まれると、松原さんは「好きなんで」と返しました。
幼虫と成虫を別々に撮影するほか、蝶は捕まえると鱗粉が落ちてしまうため、専門家が蛹から育てて羽化したところを撮影したそうです。
それ聞くともう蝶のページめっちゃ見たく、実質タダよ。
大人向けの図鑑裏話イベントと、新刊『宇宙』
松原さんは、一冊ごとに苦労話があり、もっと伝えたい思いがあると話します。そこで、収録場所であるゆる学徒カフェのイベントスペースで、松原さんを招いたイベント「図鑑作りのガチ裏話」を開くことが告知されました。
堀元さんによると、イベントは松原さんとゆる民俗学ラジオの黒川さんの2人で、YouTubeでは言いづらい図鑑作りの裏話を深掘りする内容です。松原さんは、子ども向けや親子向けのトークはあっても、大人向けに裏話をするのは多分初めてだといいます。
あわせて、今年の夏の新刊『宇宙』も紹介されました。松原さんがメインで編集したものではなく、学研のベテラン編集者が手がけた一冊で、情報がぎゅうぎゅうに詰まり、大人が読んでも読み応えがあるそうです。
さらに、松原さんと編集部の後輩の2人で話すポッドキャスト『聞く図鑑』も紹介され、図鑑にまつわる裏話や考えを発信していると語られました。
まとめ
今回のゆる言語学ラジオは、推し図鑑を作り手の目で読み直すことで、並び順・造本・写真といった「パラパラめくるだけでは見えない判断」が次々に浮かび上がる回でした。図鑑を作ることは分類を考えることであり、学研の図鑑LIVEはその営みをさらにマニアックな方向へ推し進めていると語られています。
- 図鑑の並び順には、あいうえお順・地理順・グループ順など、何を伝えたいかという編集の思想が宿る
- 同じテーマでも並べ方が違う図鑑を比べると、パラパラめくったときの発見が変わる
- 「首長竜とその仲間」のような見出しや箱の開き方、エンボスの位置にも作り手の小さな工夫がある
- 学研の図鑑LIVEは3歳から大人までを想定し、拾い読みにも通読にも耐えるように作られている
- 『昆虫』では7000種を捕まえて2800種を生きたまま撮影するなど、研究者の景色をそのまま届けることを目指している





