PowerPointのCopilotは人の顔をどう描いたか
この回の冒頭は、Microsoft 365のAI機能「Copilot」の提供コーナーです。堀元さんは、PowerPointのホームボタンから右端のCopilotを開き、チャットで指示を出せると紹介しました。
堀元さんが試したのは「人の顔っぽい図形の組み合わせのスライドを作って」という依頼です。丸を3つ並べる程度だろうと予想していたところ、Copilotは意外な図を出してきました。
(Copilotが)丸3つとか置くかなと思ったら、なんか個性的なこれ作ってきてさ。
出てきたのは、ビビッドに彩色された葉っぱを並べて人の顔に見せるスライドでした。水野さんも、文字のレイアウトを含めてデザインがそれなりに整っていると評価しています。
最後に、Copilotで無理難題に挑む「365秒チャレンジ」のスペシャルムービーも告知されました。365秒は約6分で、ショート動画にしては長いという二人の掛け合いでコーナーは締めくくられます。
ポーランド語「ナ・ズドローヴィエ」はくしゃみ以外のどこで使う?
本編の「うんちくエウレーカクイズ」は、出題者の越山さんが問題を読み、二人が「はい・いいえ」で答えられる質問を重ねて正解に近づく形式です。今回のジャンルは酒で、二人もお酒が入った状態で収録しています。
1問目は、ポーランド語でくしゃみをした人にかける「ナ・ズドローヴィエ」という言葉が、くしゃみ以外にどんな場面で日常的に使われるかという問題でした。
堀元さんはまず、南米のあたりではくしゃみの回数ごとに「健康に」「愛を」「お金が降ってくるように」と返すという、実利的なうんちくを思い出します。そこで出題者から、ナ・ズドローヴィエも「健康を」という意味だというヒントが出ました。
堀元さんはさらに、ドイツ語でもくしゃみをした人にゲズントハイト ── ドイツ語でくしゃみをした人にかける言葉。「健康」を意味する名詞で、英語圏でもそのまま使われることがありますと言い、健康という意味だと続けます。ポーランドはドイツの隣なので、似た発想なのだろうと推測しました。
解答は迷走します。友達と別れるとき、寝る前、酔っ払った人に言う、振られた人に言う、と候補が挙がりました。途中では、小説『ダレン・シャン』の決まり文句まで持ち出されています。
「振られた人に言う」という回答からは、堀元さんが友人の失恋に「お疲れ様です」と返すタイプだという話に広がりました。
(振られたと言われて)大変だったねってやったらもうお通夜ムードになるから、その日。
お疲れ様です、が優しさなんですよ、一番。
最後はイタリア語の乾杯「チンチン」の話がきっかけになり、「乾杯のときに言う」が正解でした。ナ・ズドローヴィエは、健康を願う乾杯の言葉でもあるということです。
なぜミュンヘン工科大学の中にビール工場があるのか?
2問目は、現存する世界最古のビール工場がミュンヘン工科大学にあり、起源は1040年とされるという問題です。大学は研究を行うだけで販売はせず、販売はヴァイエンシュテファン ── ドイツ・バイエルン州のビール醸造所。世界最古の醸造所として知られ、ヴァイツェンなどの小麦ビールで有名です醸造所が担っています。では、販売しない大学の敷地内にビール工場があるのはなぜか、という問いでした。
ヴァイエンシュテファンのビールは日本でも買えるという話から、冷蔵庫がビールだらけだという家の話で盛り上がります。チルドにもポケットにもビールが入っていて、かさばる大根やキャベツは買わず、もやしがおすすめだという生活ぶりが語られました。
考察では、ドイツのビール純粋令 ── ビールの原料を麦芽・ホップ・水に限るとした16世紀のバイエルンの法令。のちに酵母が加わり、ドイツビールの伝統を象徴する決まりとされていますも話題になります。副原料を入れない伝統的な製法を残す意義があるのでは、という仮説が出ましたが、問われているのは「なぜ大学の中にあるのか」だと整理されました。
堀元さんは、慶應義塾大学の日吉キャンパスに戦時中の防空壕が保存されている例を挙げ、史跡の保存ではないかと考えます。しかし答えは「保存以上の話がある」「偶然ではない」というものでした。
質問を重ねるうちに、「醸造施設がある場所に大学を建てた」「大学の設立はヴァイエンシュテファンと関係がある」「設立は19世紀」「ドイツに限らない、広く文化の話」といった手がかりが集まります。それでも核心には届かず、二人はギブアップを選びました。
大学の前身はビールを作る修道院だった
2問目の正解は、ミュンヘン工科大学の前身機関がビールを作っていた修道院だったから、というものでした。解説によると、かつては修道院が現在の大学にあたる役割を担っていたそうです。
この答えに強く反応したのは、ベルギーのトラピストビール ── トラピスト会の修道院の中で、修道士の関与のもとに造られるビール。名乗れる醸造所は世界でも限られていますを知っていた側でした。シメイやオルバルなど、名乗れる修道院のビールは確か6つほどあり、修道院での酒造りには雇用を維持する就労支援のような意味があったと調べたことがあったそうです。
教育機関だったなぁ、教会って昔なぁ、そういえば。
解説はさらに、ビールが修道院で衛生的な飲み物として飲料水の代わりになっていたことにも触れます。ヨーロッパでは飲みやすい水が手に入りにくく、発酵させることが殺菌にもなったという補足もありました。
修道院
ビールを醸造し、同時に教育機関の役割も担っていた
ビールの役割
衛生的な飲み物として、飲料水の代わりになった
大学へ
ヴァイエンシュテファン修道院から歴史的につながる形でミュンヘン工科大学が成立
現在
大学の敷地に最古のビール工場が残り、醸造所が販売を担う
上の流れのように、修道院という1点を置くだけで、醸造と教育が同じ場所にあった理由がつながります。堀元さんはこの構造を「綺麗な問題」と評しました。
投稿者からは、この話がきっかけで大学時代に教授とよく飲みに行く仲になったというエピソードと、地元の杉能舎 ── 福岡の地ビールを販売する酒造。投稿者がおすすめとして紹介し、エピソード説明にもサイトのリンクが載っていますの紹介も寄せられていました。
堀元さんは修道院にまつわるもう一つのうんちくとして、子どもを産んでいない女性の尿から有効成分を取るため、多くの修道院や教会の協力で作られた「奇跡の薬」があると話しかけます。ただ、話の途中で次の問題へと急かされてしまいました。
戦時中の大蔵省はなぜワインを増産したのか?
3問目は、第二次世界大戦中、ミッドウェー海戦に敗れた日本で、大蔵省が昭和19年にワインの増産を決定した理由を問う問題でした。
最初の回答「負けそうだからヤケ酒の需要が増えた」は不正解です。儲けのためでもなく、外交もあまり関係ないという答えが返ってきました。
外交の話では、堀元さんが『知られざる皇室外交』で読んだ内容を紹介しています。外交では良いワインをどれだけ蓄えられるかが重要で、来賓に出す献立の順番にまでメッセージを込めるそうです。
質問を重ねると、「内政ではある」「ワインは飲まずに別の用途に使う」「ワインを原料に固形物を作る」と絞られていきます。燃料、消毒、薬、健康増進はいずれも不正解でした。
消毒の質問では、コロナ禍にアルコール消毒液が不足した時期、消毒液のようなボトルで売られたお酒があった話が出ます。また堀元さんは、『酒場の文化史』で読んだ、昔のヨーロッパでは泣く子を黙らせるためにベビーシッターがジンを使っていたという話も紹介しました。
転機は「電気を使いますか」という質問でした。そこから「部品と言ってよい」「軍事目的」「船に関係する」「兵器に広く使われる」「魚雷に近い」と進みます。
魚雷に近いもの。ソナーですか?
堀元さん自身も「適当に聞いた」と驚くこの質問が当たりでした。ワインから作った固体がソナーの部品になり、軍事利用のために増産させた、というのが正解です。
ワインからソナーを作るロッシェル塩の仕組み
解説によると、ワインの成分から得られるのは酒石酸カリウムナトリウム、通称ロッシェル塩 ── 酒石酸カリウムナトリウムの通称。圧力をかけると電気が生じる圧電効果が強く、かつてはマイクやソナーの素子に使われましたです。圧電効果の特性があり、音波をいち早くキャッチできるといいます。
当時のドイツはこの特性をいち早く発見し、潜水艦のソナーの部品として実用化していました。
ミッドウェー海戦の敗北
日本軍が潜水艦の探知性能の強化を急ぐ
ドイツから技術を学ぶ
ロッシェル塩をソナーの部品として実用化していた
ワインが大量に必要
ロッシェル塩はワインの成分から得られる
大蔵省が増産を決定
酒類行政の管轄として、海軍の要求を緊急軍需物資として受けた
上の流れのとおり、大蔵省の決定は酒類行政を管轄する立場から、日本海軍の要求に応えたものだったそうです。出題者も、現代ならやるか怪しいが当時としては適切な判断だったと答えていました。
へー。ワインでソナー作れるの?
日本では山梨県など一部を除いてワインがあまり作られていなかった、という指摘もありました。それでもロッシェル塩のためにワインを作らせたことになります。
堀元さんは、ワインの問題は難問になりがちだと振り返ります。過去の回では、ワインの不純物を除くのに卵白を大量に使い、余った卵黄からカヌレが生まれたという問題がありました。今ではカヌレを作ると白身が余るという本末転倒まで起きていると笑い合います。
補足として、ロッシェル塩を取ったあとの残りのワインも販売されたものの、非常にまずく不評だったそうです。そこから、2021年の地震で冷蔵保存できず劣化したビールをクラウドファンディングの形で売った神奈川のブルワリーや、コロナ禍にビールを蒸留してジンやウイスキーにした醸造所の話へと広がりました。
急性アルコール中毒の患者にビール5リットル?
4問目は、ベトナムのある地方のクリスマスパーティーで起きた事件です。お酒を飲んだ男性たちが意識障害で病院に運ばれ、1人は意識を失い、血中アルコール濃度は中毒を起こす濃度の10倍でした。
医師はこの患者にビールを流し込み続け、15分で約5リットルを入れたところで意識が回復し、命が救われました。なぜビールを投与し、それで助かったのかが問われます。
最初の回答は「迎え酒のように吐かせるため」でしたが、不正解です。二人は、凍えた人を急に温めないのと同じように体をアルコールに慣らすのでは、と考えたり、ビールは吸収効率が良いからでは、と推理を広げたりしました。
ソフトドリンクって3杯飲んでちゃぷちゃぷになるじゃん、お腹。
しかし「脱水を補うため」「血中アルコール濃度を下げるため」「利尿作用のため」はどれも違います。堀元さんは、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で両さんが蒸留酒だけを飲まされる話まで持ち出しますが、正解には遠いままでした。
突破口は、アルコール度数を問う質問でした。2%のお酒でも10%の日本酒でも、ウイスキーのストレートでも成立し、度数は関係ないというのです。一同が「死んじゃうよ」と驚くなか、アルコール飲料の種類は広く関係があるとわかります。
メタノールとエタノールが関係ありますか?
この質問に「はい」が返り、堀元さんは粗悪なメタノール入りの酒を飲んだ患者に、エタノールを飲ませたのだと答えて正解しました。
エタノールがメタノールの毒を遅らせる理由
解説によると、男性たちが飲んだのは密造酒で、含まれていたのはエタノールではなくメタノール ── 炭素を1つ持つ最も単純なアルコール。燃料や溶剤に使われ、飲むと失明や死亡につながる強い毒性がありますでした。問題文の血中アルコール濃度は、血中メタノール濃度を指していたことになります。
メタノール自体はそれほど有毒ではありません。体内で肝臓のアルコール脱水素酵素 ── アルコールを分解する酵素。エタノールをアセトアルデヒドに、メタノールをホルムアルデヒドに変える働きを持ちますによってホルムアルデヒドに代謝され、その後、強い毒性を持つ蟻酸になることが中毒の主な原因です。
一方で、エタノールはこの酵素と親和性が高く、同時に摂ると競合阻害が起きます。そのため、エタノールを与えると先にエタノールが代謝され、メタノールが蟻酸になるまでの時間を稼げるのです。
上の手順のように、ビールの役割は薄めることでも水分補給でもなく、毒ができるのを遅らせることでした。だから度数が低いビールでも、ウイスキーでも同じように成立したわけです。
お前メタノール飲んじゃったから一旦エタノール飲みなってことね。
ここから話は理科の雑談に移ります。アルコールがメタノールとエタノールに分かれていることを知らなかったという声に、堀元さんは「理科はやった方がいい」と勧めました。
堀元さんによれば、メタンにくっつけばメタノール、エタンならエタノール、プロパンならプロパノールというように、アルコールは無数に存在します。そのなかで、人が飲用にしているのはエタノールだけです。
メタン由来で炭素の数が少ないアルコール。体内で毒性の強い蟻酸になる。研究室では多く使われる
エタン由来のアルコール。人が飲用にしている唯一のアルコールで、メタノールの代謝を妨げる
研究室では多くがメタノールで、エタノールにもメタノールを混ぜて酒税法の対象外にしているため、飲むと危険だという話も出ました。コロナ禍に消毒液風のボトルで売られたお酒は、飲用である以上すべてエタノールだったはずだ、という整理にもつながります。
世界って理科だから、理科覚えた方がいいっすよってずっと言ってるじゃん。
酔っ払い収録の締めくくり
最後に堀元さんは、久しぶりにかなり酔った状態での収録だったと振り返りました。話題は、酔っ払いながら漢字の書き取りをした「伝説のボツ回」に移ります。
その回は、あまりにつまらなかったためサポーターコミュニティの特典にしたそうです。堀元さんは、自信のない漢字を書いて正解を見せられたとき、常人なら悔しがらない場面で大げさに悔しがっていた様子だけは少し面白かったと話しました。
番組では、引き続きうんちくエウレーカクイズの問題を専用の投稿フォームで募集していると告知され、この回は終わります。
まとめ
今回の酒編は、どの問題も1つの補助線で謎が解ける構成でした。修道院は醸造と教育をつなぎ、ロッシェル塩はワインとソナーをつなぎ、酵素の取り合いがビール5リットルの救命を説明します。
- ポーランド語の「ナ・ズドローヴィエ」は「健康を」という意味で、乾杯の言葉としても使われる
- ミュンヘン工科大学にビール工場があるのは、前身がビールを作っていた修道院だったから
- 戦時中の大蔵省は、ソナーの部品になるロッシェル塩を得るため、海軍の要求を受けてワインを増産した
- メタノール中毒の患者にエタノールを与えると、有毒な蟻酸ができるのを遅らせ、透析までの時間を稼げる
- 人が飲んでいるアルコールはエタノールだけで、アルコールには多くの種類がある






