「定義できている」とは、解像度が高い状態
前回は「心を豊かにする」という言葉を一つずつ分解し、思考の解像度を上げる過程を紹介しました。今回はその方法を、誰でもどんなトピックにも使える形へと広げていきます。
モーリスさんがやっていることは、特殊な作業ではないと言います。とにかく「この言葉をこう定義する」を一つ一つ積み重ねていくだけだと話します。
ただ、秋山さんはこの「定義する」という行為自体が、多くの人にとって珍しいのではないかと指摘します。
普通の人って、その言葉を使うときに国語辞書も引かないし、この言葉をこういう文脈であの人が使ってたから使ってみた、ぐらいのテンションで使う人が多いわけじゃないですか。
モーリスさんは、この視点を持つとセミナーや講座の質も見極められると言います。マーケティングやブランディングのような抽象度の高い言葉が、その場で定義されているかどうかがポイントになります。
定義されないまま進んでたときに、あれ、結局この講師の人はマーケティングという言葉をどういう意味で使ってるのか、と疑問に思ってみるのが良くて。ぶつけてみると、この講師の方の解像度レベルが測れるんです。
そこから、秋山さんはこの回のひとつの気づきを言葉にします。
1つ目のレンズ:辞書で調べる
抽象的な言葉は、どこから手をつければいいかわからなくなりがちです。「心は心でしょう」「豊かは豊かでしょう」と止まってしまうと、解像度は上がりません。
みんな迷子になって留まってしまうんですね。
そこで最初の手がかりになるのが、辞書で調べることです。もっともシンプルで、一番簡単な方法だとモーリスさんは話します。
たとえば「マーケティング」を辞書で引くと、「顧客のニーズを的確に捉え、商品やサービスが売れる仕組みを作る企業活動」と出てきます。これがひとつの目線になります。
ただし、辞書を引いて終わりではありません。その説明に含まれる「顧客のニーズ」「売れる仕組み」といった言葉も、自分で定義できるかを確かめる必要があります。
顧客のニーズって何ですか、と次に聞かれたときに答えられなかったら、それは定義できてないんで、それを深掘っていかないといけない。
辞書で引いても腑に落ちないこともあります。「心」を引くと「人の精神や感情の働き」などと出てきますが、わかるようでわからない感覚が残ります。そんなときに、次のレンズが必要になります。
2つ目のレンズ:対比する
辞書で引いてもあやふやなときは、その言葉の反対を考えます。モーリスさんは、言葉には世界を二つに分ける性質があると説明します。
心っていうものが生まれた時点で、心っていうものと心以外のものが分かれる。猫っていう言葉が生まれた時点で、猫という生き物と猫以外の生き物に分かれる。言葉はこの世界を二つに分ける性質がある。
この性質を使い、「心の反対は何か」「心ではないものは何か」を考えていきます。前回は「心の反対語は体」として、体を目に見える部分、心を目に見えない部分と定義しました。
反対を明らかにすると、その言葉の本質が見えやすくなります。モーリスさんがよく使う、わかりやすい手法だと話します。
3つ目のレンズ:所属を考える
3つ目は、その言葉がどこに所属しているのかを考えることです。抽象度の高い言い方ですが、階層をイメージするとわかりやすくなります。
たとえば「人間」の中に「心」と「体」があり、「マーケティング」は「企業活動」の中にあります。どの階層にある言葉なのかを押さえるということです。
前回の例では、人間の中に心と体があり、心の中にさらに感情・思考・価値観があるという構造でした。この階層がわかっていないと、迷子になってしまいます。
人間の中に心と体があって、心の中に感情と思考と価値観があるとわかってないと、あれ、感情は体のどこに関係してるんだ、とよくわかんないことを考え始めちゃう。
所属という階層構造が明確になるほど、言葉はきめ細やかに定義され、解像度の粒がどんどん増えていくとモーリスさんは話します。
定義に順番はなく、ゴールは「定義できること」
この3つには決まった順番はないとモーリスさんは言います。大事なのは、あくまで「定義する」というゴールに到達することです。
定義するっていうゴールがあって、そのために辞書を引く、対比する、所属を考えるという3つがある。定義されるんであれば何でもいいんです。
自分の中で定義できる言葉があるなら、それで十分です。アイデアが全く浮かばないときに、辞書を引くという位置づけになります。
秋山さんは、辞書はまず引くというより最終手段のようなものだと整理します。モーリスさん自身も、前回の「価値観」は辞書とは違う、自分の解釈で説明していたと明かします。
また、定義した言葉を人に伝えるときには、具体例が効いてきます。誰もがイメージしやすい例があると、腑に落ち方が変わり、アウトプットの説得力が増します。
仕事の言葉を定義すると、パフォーマンスが変わる
気になるトピックでまず試してみることを、モーリスさんはすすめます。普段の疑問がなければ、自分の仕事に関係する言葉から始めるのも良いと話します。
秋山さんは、薬剤師として「健康とは何か」を定義してみると、患者さんへの言葉やアウトプットが変わりそうだと語ります。
仕事に関係する言葉とか、仕事に関係する問いの解像度を上げると、やっぱりパフォーマンスが全然変わってくる。
自分なりに定義した言葉で語れると、同じ職種の中でも違いが出ます。秋山さんは、それが信頼度や頼りがいにつながるのではないかと話します。
私はこういう風に健康を定義してるからこう言ってるんですよ、と言われたら、他の薬剤師とは違うなって。
モーリスさんは、この方法を自分以外の人がやってもうまく進むのかを試してみたいと語ります。対比や所属をさらに分解し、誰でも一つずつ進めば定義できる形にしたいという構想です。
いやなんかコツ掴んだらできそうな気がしますよね。
番組では、実際にやってみてつまずいたかどうかを、公式LINEなどのメッセージで気軽に送ってほしいと呼びかけています。
まとめ
思考の解像度を上げる鍵は、言葉を「なんとなくわかる」で終わらせず、一つずつ定義していくことです。辞書・対比・所属という3つのレンズを繰り返すだけで、抽象的な言葉も扱えるようになります。
- 解像度が高い状態とは、その言葉を定義できている状態のこと。
- 定義の手がかりは、辞書で調べる・対比する・所属を考えるの3つ。
- 3つに決まった順番はなく、ゴールはあくまで「定義できること」。
- 人に伝えるときは、イメージしやすい具体例を添えると腑に落ちやすい。
- 仕事に関係する言葉を定義すると、アウトプットやパフォーマンスが変わる。
