研究部門ディオゲネスは何を調べているのか
コテンラジオ特別編のこの回は、株式会社COTENの事業に関する新しい動きのお知らせから始まります。深井さんによると、COTENはミッションに「メタ認知のきっかけを提供する」、存在意義に「人文知と社会の架け橋になる」を掲げ、それ以外の事業は一切していないつもりだといいます。
COTENはこれまで、コテンラジオの制作とデータベースづくりで精一杯でした。それでも2年ほど前から人員が増え、コテンラジオ以外のテーマを調べる調査チームを作り始めたそうです。
その調査チームが、採用募集もしていた「ディオゲネス」です。深井さんは、ディオゲネスは歴史に限らず世界情勢も調べられる能力を持つチームだと説明しています。
ディオゲネスの研究テーマの1つ目は、女性の労働市場への参与です。日本では男性との差が大きいこのテーマについて、全世界の歴史的経緯を調べ、女性の地位が上がる・下がる一般傾向を探しており、すでにだいぶ見つかったといいます。
へー、(ディオゲネスは)もうマジで研究機関みたいな。
てか研究機関です。研究部署だからね。
研究テーマの2つ目は戦争リスクです。深井さんは、権力の集中から分散へと移るフェーズに入り、ロシアとウクライナ、パレスチナとイスラエルと、アメリカが望まない戦争が2回続いたことから、残念ながら戦争リスクは上がっていると見ています。
近い将来やっぱりその株式会社が戦争リスクを下げる活動をしないとビジネスができないみたいになる可能性もやっぱあると思ってんだよね。
深井さんはこれを環境問題になぞらえます。ESG ── 環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字。企業の長期的な価値を測る観点として、投資判断などで使われますのEでは、やっていいことと悪いことがある程度リスト化されています。その「戦争バージョン」を、過去の戦争を調べられるだけ調べて傾向から作れないかと考えているそうです。
研究テーマの3つ目はポスト資本主義です。ESG投資やソーシャルインパクト投資の現状、思想のルーツ、最新の動きを全体把握し、そのうえでCOTENが何をするかを決めるための研究だといいます。
現状把握をするっていうことが戦略を立てることの大基礎になるわけですけど、世界の状態を知らない人には戦略立てれませんから。
金にならない研究を、なぜクローズドで社会に届けるのか
ディオゲネスの研究は、コテンクルーの支援で続けてきたもので、それ自体はお金になりません。それでも研究が進むにつれて、どう社会に届ければビジネスとしても成り立つかが少しずつ見えてきたと深井さんは話します。
社会実装の形として挙がったのが、研修、法人コテンクルーへの還元、研究結果のレポート化などです。法人コテンクルーは現在90社ほどいますが、深井さんいわく、これまでは「綺麗に何もしてなかった」そうです。
ただし深井さんは、研究成果の多くはクローズドな場で共有したいと考えています。戦争の話は思想性が強く、女性の社会参画の話も切り抜かれて極端に持ち上げられたり下げられたりすると、動きづらくなるためです。
やっぱその経営層に限って喋る内容とかと、みんなに向かって喋る内容ってまた違ったりするから。
聞き手の側からも、全体をワンセットで理解しないと正しく受け取りにくい内容だという指摘がありました。深井さんは、タダで届けるのはコテンラジオで十分だとし、メンバーにちゃんとした賃金を払いたいと続けます。
だけど人文知やってるからといって儲けないつもりはない。
深井さんにとってCOTENは株式会社であり、ボランティアではありません。お金があればいろいろな研究ができるため、売上には貪欲でいたいといいます。
そのうえで紹介されたのが、人文知のインテリジェンス部門である「人文知研究所」です。深井さんは、COTENが持つこの研究機関を、できればすべての会社に持ってほしいと考えています。
たとえばESG投資をするにも、世界での状況やルーツを理解せず、欧米がやっているから従うだけでは、社会に大した価値は出ないと深井さんは話します。従うだけでも意味はあるものの、日本企業はもっと価値を出せるポテンシャルがあるという見立てです。
ただ欧米の真似をするだけではなくて、彼らに従うだけではなくて、守破離でいくと、僕もう破のフェーズに今入ってると思ってるので。
深井さんは、破のフェーズに進むには人文知のインテリジェンス機関が必要で、それがないとできないのではないかと考えています。
200事例から見えた「組織変革の5パターン」
人文知をビジネスに活かす具体例として、深井さんは実際に提供した研修を紹介します。テーマは、トップダウンではなく、ミドルマネージャー層が主体性を持って組織を変革する方法でした。
COTENは、古代から現代まで、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、南アメリカを含むあらゆる地域の歴史から、ミドル層による組織・国家の変革事例を約200件抽出したといいます。歴史上はトップダウンが多いなかでの200件です。
逆に言うとさ、5パターンしかねえんだわ。
深井さんによると、約3000年間でミドル層が組織を変革したパターンは、COTENが把握する限り5つしかありませんでした。今の企業で6パターン目が生まれる可能性は低く、おそらく5パターンのどれかに収斂するという考えです。
その根拠として深井さんが挙げるのが、人間の挙動の再現性です。物理法則のような絶対性はないが、傾向は間違いなくあると深井さんは話します。
5つのパターンにはそれぞれ成功例と失敗例があり、200件を見比べると、なぜ成功と失敗に分かれたのかの仮説が立ちます。どこまで正しいかは別として、自分たちが今どのパターンの、成功と失敗のどちらの筋に入ろうとしているかがわかるといいます。
事例の収集
古代から現代、全地域からミドル層による変革を約200件抽出
パターン化
約3000年分の事例が5つのパターンに収斂
分岐の分析
各パターンの成功例と失敗例から、分岐の理由の仮説を立てる
研修での活用
受講者が、自社が今どのパターンに入ろうとしているかを見極める
この研修の受講者は、誰もが知る大手上場企業から選抜された、生え抜きのミドルマネージャー層だったそうです。
聞きてえそれ。おもろそう。
企業価値ではなく「存在価値」を上げるには
深井さんは、「人文知をビジネスに活かす」と言われても多くの人はピンと来ていないだろうと話します。そのうえで、外部環境と内部環境を理解して戦略を立てる「現状理解」が大事で、それは組織の中にいると難しいと強調します。
深井さんはその例として、コテンラジオのオスマン帝国シリーズで扱った内容を挙げています。自分の経験だけで現状を理解するのは難しく、そこに人文知を使ってほしいというのが深井さんの主張です。
大きな会社は、世界との関わりが強くなり、専門外のことを多く手がけるようになります。自分の知る市場だけでなく世界全体を理解したうえで会社が何をするかを決めないと、企業価値は上がっても存在価値は上げられないと深井さんは考えています。
この存在価値っていうのは永続的な価値じゃん。
一方で深井さんは、企業価値はゲームルールの変化で簡単に変わると話します。実際、30年前に企業価値が高かった日本企業は、今ではランキング圏外がほとんどだという例も挙がりました。
ゲームルールの変化でコロコロ変わる。稟議を通すときに使われやすい
社会にとっての、その組織の永続的な価値。世界・社会・自分を相対的に理解し続けることで考えられる
深井さんは、世界、社会、自分がどういう存在かを相対的に理解し続けることが、存在価値を考え続けるために必要だと話します。そこにお金と時間を投資してほしいという思いは、2年ほど前から持っていたそうです。
はいはい。むずいっすね、ここ。
中期経営計画の先にある「真のビジネスインテリジェンス」
樋口さんは、なぜ会社に人文知の研究部門がないのかを考えます。会社は売上を立てることを目的にしてきたので、マーケティングや組織運営のノウハウは蓄積されてきたものの、それが人文知までは届いていないのではないか、という見立てです。
深井さんもこれに同意し、世界情勢を調べることこそが真のビジネスインテリジェンスの姿だと話します。ところが、今の企業のインテリジェンス機能は、中期経営計画で精一杯だといいます。
それはしょうがないことだと思ってるし、別にバカにして言ってるわけじゃなくて。
資本主義の中では仕方のない挙動だったものの、時代は変わろうとしていると深井さんは考えています。だからこそ、社会を調べるスキルを持った専門部署を各社に作り、経営者に情報をずっとサジェストしてほしいという提案につながります。
経営者が自分で調べるのは、時間が足りず生半可なことではありません。深井さんは、ディオゲネスの仕事内容を紹介する回で剛さんを呼んで話した内容を振り返り、その大変さを説明しています。
COTENは人々に代わって調べ、架け橋になることを存在意義としてきました。ただし、COTENだけで担う形は労働集約型で限界があるため、深井さん以外にも人文知の研究チームを率いられる人を育てる必要があると話しています。
岡野バルブとサイバーエージェントで始まった人文知研究所
他社の中に人文知の研究部署を作る取り組みは、すでに2社で始まっていました。深井さんによると、始まったのは収録の約8か月前で、この回の配信に合わせてプレスリリースが出る予定だったそうです。
先行して投資したのは、コミュニティナースにも出資した岡野バルブ製造と、サイバーエージェントの2社です。両社は社内に新しい部署として人文知研究所を作っており、会社によって濃淡はあるといいます。
人文知研究所の役割は、経営陣が疑問に思っていることを、社会情勢や歴史のレベルで調べ続けることです。ディオゲネスと同じように、1〜2週間のスプリントで調べてはアウトプットする形を想定しています。
株式会社COTENの役割は、この部署の立ち上げ支援です。調査の仕方、適性のある人材、問いの立て方、アウトプットの仕方、言っていいことと悪いことなど、COTENのスキルを細かく継承していくといいます。
僕はこれは本当にすごいことだと思ってます。やっぱり後で追従するのと最初にやるの全然違うじゃないですか。
支援できるのは、今の余力では同時に最大6社ほどだそうです。お金を多く払えば人員を増やせるという性質のものではないため、深井さんは、インパクトを出してくれる会社とお互いに選び合う領域だと話しています。
一方で研修については、深井さんの話を動画にし、ファシリテーションのプロが入って実施する形を構想しており、そうすればもう少し数を出せるといいます。
なぜ最初に届ける相手がビジネスパーソンなのか
存在意義は「人文知と社会の架け橋」であり、本来はビジネスパーソンに限った話ではありません。それでもビジネスパーソンに向けて届けているのはなぜなのか、深井さんはここで説明を加えます。
僕がこの株式会社コテンでやってる全ての活動は全部戦略に基づいてます。
コテンラジオのエンタメ要素も、深井さん自身が入れたかったのではなく、樋口さんの戦略だといいます。深井さんは、頓挫せず影響力を大きくするために、1年後から5年後までのステップを描いたうえで届ける順番を選んでいます。
まずビジネスパーソンなのは、ビジネスパーソンが人文知に接続されるのが、最も人文知が社会に接続される影響がでかい状態が作れるからです。
深井さんはビジネスパーソンを、ざっくり「株式会社に所属している人」と定義します。お土産屋さんでパートをしている深井さんの母親も、株式会社の力学の中で動くビジネスパーソンだといいます。
深井さんは、コテンラジオでムガール帝国 ── 16世紀から19世紀にインドを支配したイスラーム王朝。のちにイギリス東インド会社がインドへの支配を強めていきましたと東インド会社を学んだ内容から、ビジネスパーソンの歴史を振り返ります。
ほとんどの人がビジネスパーソンになった今、経営者が社会への解像度を上げて意思決定することの影響は非常に大きいと深井さんは話します。何万人もの従業員と、その先にいる何十万、何百万、何千万人の顧客に影響するためです。
もう一つの理由は、ビジネスパーソンのほうがお金を払いやすいことです。研究には賃金が必要で、やりがい搾取はしないという姿勢を深井さんは繰り返しています。
世の中の8割ほどを占める人が社会を理解せず儲けだけを追うと、よい方向には行かない。それが近年わかってきたと深井さんは話します。部署は経営者向け、研修は従業員向けとして、ビジネスパーソンに人文知を実装していく考えです。
2社が具体的に何を研究しているかは、秘密保持契約もあり開示できないそうです。3社目、4社目も見えてきており、法人コテンクルーとは年に数回のイベントで研究成果を共有し、議論する場を作っていくといいます。
僕たちの研究が全てだとは思ってないし、自分たちが正しいとも思ってない。だからこそ部署を作って自分たちで研究する力を持ってほしいと思っているし。
アカデミックとビジネスをつなぐ「セミアカデミック」の役割
樋口さんは、人文知の研究はこれまで大学などの研究機関のものだったと振り返ります。そのうえで、株式会社であるCOTENが株式会社の人文知研究所を支援するという、どちらも学術機関ではない構図に意味があると指摘しました。
深井さんはアカデミックにリスペクトを払いつつ、両者は分離されるべきだと話します。アカデミックとそれ以外の会社の間に、セミアカデミックなつなぎ役としての株式会社が必要だというのが深井さんの思想です。
まずアカデミックは社会にそんなに寄っちゃダメだと思ってる。独立して彼らの指向性で研究すべき。
コテンラジオの教育の歴史シリーズでルーツを調べたときに見えたように、大学にとって最も重要なのは、権力やお金に左右されない独立性だと深井さんは話します。一方でCOTENは株式会社として、すべて戦略で動いています。
僕がもし学者だったら、一般向けにラジオなんかしないからさ。興味ないもん。
各社の人文知研究所が同じくセミアカデミックな立場として学者とつながり、助言を得て経営に活かせば、学者も研究内容について諮問され、答えて収入を得られます。深井さんは、学者が直接ビジネスをするより、この形がベストだと考えています。
社会の役に立つかを動機にせず、権力やお金から独立して知を探求する。諮問に答える専門家であることが大切
学問とビジネスの両方を理解し、戦略的に動いて、つなぎ役・通訳となる
つなぎ役には、学問とビジネスの両方をわかっている「連続性」が必要です。深井さんは、そうした人がCOTEN以外にも出てきてほしいと話します。競合になるかもしれないが、人文知は独占しても意味がないので、協業になる可能性が高いとも見ています。
深井さんは、この構造をクラウド技術にたとえます。クラウドを必要とする会社は多いものの、組織構造にまで関わるほど高度で日々変わるため、極めたエンジニアやコンサルタントがつなぎ役になっています。その人文知版だという説明です。
ニーズのない市場を、なぜあえて作るのか
樋口さんは、歴史データベースが社会にできたときのインパクトを具体的にイメージできる人は少ないと話します。そのうえで、今回の取り組みはわかりやすいモデルケースになると評価しました。
深井さんも、人文知研究所がデータベースを使うことは、1つのユースケースになり得ると応じます。ただし、プレ市場から作る必要があるほど、この取り組みは市場から遠いといいます。
ありそうだから、ニーズがありそうだから作ってんじゃないんよ。ニーズないんだよ。
深井さんは、ニーズがなくても社会にあったほうがいいから作りに行っていると話します。人を怖がらせて売る広告手法には強い嫌悪感があると断ったうえで、それでもフラットに「ないとやばい」と思っているそうです。
大きな影響力を持ったビジネスパーソンが、社会に関心を持たず目先の売上だけを追い続ける状態は、君主制のほうがまだましだと思うほど危ういと深井さんは語ります。
樋口さんはこれを、自動車や武器を扱えるようになった大人にたとえます。力を持った以上、正しい使い方を知らなければ大変なことになる。人類全体がそういう状態にあるのではないか、という見方です。
ボタン何個かで簡単に人類って滅びるわけじゃん。だからさ、考えないと、もっとちゃんと考えないと。
深井さんは、義務感だけで動いているわけではないとも付け加えます。いちばん最初の動機は人文知の研究が好きだというただの好奇心で、みんなにシェアするかどうかを戦略で決めている、という両輪だそうです。
岡野バルブとサイバーエージェントの「オルレアンムーブ」とは
話は、先行して投資した2社への感謝に戻ります。深井さんは、自分から動いた岡野バルブ製造とサイバーエージェントの姿勢を「オルレアンムーブ」と呼んでいます。
由来はオルレアン公 ── フランス王家の分家の貴族。フランス革命期のオルレアン公ルイ・フィリップ2世は、民衆側を支持したことで知られていますです。深井さんによれば、フランス革命で貴族としてただ一人民衆側につき、オルレアン公が民衆側につかなければ革命は成就しなかったといいます。
樋口さんが言うように、本来革命で損をするのは貴族側です。それでも民衆側につき、貴族制がなくなったあとも別の形で生き残ったセンスを、深井さんはすごいと評価しています。
人文知が好きな人が集まったCOTENが人文知をやるのは当たり前です。一方で、これから人文知に踏み込む儲かっている会社の動きがオルレアンムーブだと深井さんは話します。小さな会社の法人コテンクルーはボトムアップ側として、どちらも大事だとしています。
2社は、明日潰れる心配をしているわけではありません。様子見して途中から入ってもよいのに、未来を見て自分から始めたことに、深井さんは強く感謝しています。
初期ってすごくありがたい。僕が福岡市と福岡県に感じている恩がそれ。全然話飛ぶけど。
深井さんが起業した頃、福岡のスタートアップ界隈は能力もお金の使い方もわからない「有象無象」だったといいます。それでも福岡市と福岡県は、有望な1社だけを一本釣りするのではなく、起業を志す人みんなを鼓舞してくれたそうです。
深井さんは、今の福岡でスタートアップのエコシステムが少しずつできているのは、長い間支援を続けたからだと話し、その恩は一生忘れないと語りました。
人文知への投資は、なぜ日本企業に向いているのか
深井さんは、人文知のインテリジェンス機関は日本企業に向いていると考えています。言語地はキリスト教圏の人たちのほうが強いとしつつ、よくわからない領域に投資できる点では日本企業のほうが向いているという見立てです。
コミュニティナースやCOTENのような企業にお金を使うとき、イギリスやアメリカではもっと説明を求められるだろうと深井さんは話します。説明不能な領域にお金を流せること、宗教的に比較的フラットな立場にいることを、日本の強みとして挙げました。
深井さんは、この動きが日本企業から出て、世界に対してモデルを示すところまでいけばいいと話します。
俺、ポッドキャストがやりたいわけじゃねえんだわ。これをやるためにポッドキャストやってんだよ。
7、8年前には「歴史好きなんですね」「データベースは何が儲かるんですか」と言われていたそうです。深井さんは、データベースも5年後くらいには「なるほど」と言われていると考えて動いています。
深井さんは、人文知は本来、目的を持たずに探求するものの権化だとも話します。今はあえて手段化しているため、将来は人文系の人から批判されるかもしれません。それでも学者にお金を流す動きも進めたいと考えています。
ミッション嫌いの深井さんが、逆算的に生きる理由
終盤、深井さんは雑談として、自分の体が弱く、長く生きる感覚があまりないことを明かします。そのため、限られた時間の中で、誰と付き合い何をするかをかなり選んでいるそうです。
一方で深井さんは、ミッションという考え方は大嫌いだとも話します。ミッションはキリスト教圏の考え方で、目的的に生きることがウェルビーイングだとは思っていないといいます。
深井さんは、出雲高校の卒業生が集まるスナックのような場所で、その瞬間の人間関係を最も大事にする地元の人々を見ています。そちらのほうが幸せだと感じつつ、この仕事だけは目的的・逆算的に生きている。深井さんはそれを自分の中のダブルスタンダードと表現しています。
最後に樋口さんは、深井さんがとても楽しそうに話していたのがいちばんうれしかったと振り返ります。深井さんはクルーへの感謝を伝え、数年後には「人文知でこんなこと起こるの?」と思われるはずだと、クルーの想像を超える自信を語りました。
まとめ
株式会社COTENは、ディオゲネスで積み上げた研究を社会実装する段階に入りました。岡野バルブ製造とサイバーエージェントの社内に人文知研究所を立ち上げています。背景には、影響力を持ったビジネスパーソンこそ、社会と自分を相対的に理解する人文知を必要としている、という深井さんの戦略と好奇心があります。
- COTENは女性の労働参与、戦争リスク、ポスト資本主義などを研究し、研修や法人クルー向けに成果を届け始めている
- 約200件の歴史事例から、ミドル層による組織変革は5パターンに収斂するという研修の知見が紹介された
- 企業内に人文知研究所を作る支援は2社で始まり、COTENが同時に支援できるのは最大6社ほど
- ビジネスパーソンから届けるのは、社会への影響が最も大きく、研究資金も確保しやすいためという戦略による
- 深井さんは、アカデミックの独立性を尊重しつつ、セミアカデミックな株式会社がつなぎ役を担う構図を重視している



