8046人が20分以上かけて答えたアンケート
コテンラジオのリスナーアンケートは、2024年2月15日から22日にかけて実施されました。前回は2021年7月ごろで、およそ2年半ぶりの大規模な調査です。
このアンケートの回答者数は8046人でした。平均回答時間は20分以上で、出演者の二人は、それだけの人の時間を使ってもらったことに驚きながら、何度も感謝を伝えています。
八千掛ける二十分は結構やばいっす。本当にありがとうございます、皆さん。
結果はプレスリリースでも公開されていますが、Podcastの番組として、音声でも面白いところをピックアップして紹介しようという趣旨です。
紹介の前に、樋口さんは統計上の注意を強調しています。今回のアンケートはランダムサンプリング ── 調査対象の集団から、偏りが出ないよう無作為に回答者を選ぶ方法。これを行わない調査は、答えた人の特徴が結果に強く反映されますをしておらず、20分以上かけて最後まで答えた人の回答だけを集計しています。
(回答者は)本当に聴いている人全体の全部の結果ではないっていうふうな感覚で聞いてもらえるといいかなと思います。
つまり、この結果は番組をとても好きな人、あるいは忍耐強い人に偏った集団の姿です。以降の数字は、その前提で読む必要があります。
中間管理職と経営者が多い、リスナーの属性
回答者の男女比は男性6割、女性4割でした。平均年齢は42.7歳で、66%が30代から40代です。
樋口さんは、自分自身がちょうどこの層に当てはまると話します。聞き手役の世代とリスナーの中心層が重なっていることについて、深井さんは番組の構造がこの結果をもたらしている可能性にも触れています。
俺がいっぱい聞いてると思いながら、じゃあ喋ったらいいですね。わかりました。
就業形態では、中間管理職が17.4%いました。自由業・自営業と経営者を合わせると約20%で、8000人のうち1600人ほどにあたります。
経営者・役員だけでも7.9%で、樋口さんによると日本の平均の3.9%のおよそ倍です。業種では、IT系が11.4%と、一般の5%台の倍ほどの割合でした。
居住地はほぼ人口比どおりでしたが、東京都だけは人口比の倍ほどの割合でした。出演者たちは、通勤電車の中で聴かれているのかもしれないと推測しています。
世帯構成では、パートナーと子どもがいる人が41.7%でした。大卒は85%で、平均世帯年収は878万円と、樋口さんが挙げた日本の平均546万円を大きく上回ります。
| 項目 | 回答者 | 一般の目安 |
|---|---|---|
| 経営者・役員 | 7.9% | 3.9% |
| IT系の業種 | 11.4% | 5%台 |
| 平均世帯年収 | 878万円 | 546万円 |
樋口さんは、これを聞いて学歴などで自分は違うと思わないでほしい、と念を押しています。番組はみんなに聴いてほしいと考えていて、あくまで「20分以上答えた人たちがこうだった」という結果だという立場です。
農業に携わるリスナーが多く聴いてくれていることも、うれしいこととして紹介されています。
学術がビジネスより上。リスナーの情報収集の習慣
今回のアンケートでは、情報収集の仕方も尋ねています。意識して受け取っている情報の1位は社会で54.2%、2位は文化・芸能・娯楽で31.1%でした。
注目されたのは、学術・学問が24.8%で、ビジネスの20.1%を上回ったことです。深井さんも、ビジネスより高いことに驚いています。
世の中の出来事について信頼できる情報を得る媒体では、ウェブメディアが39%で1位、Podcastが35%で2位でした。自己啓発についての情報になると順位が変わり、書籍が65%でトップになります。
| 順位 | 世の中の出来事 | 自己啓発 |
|---|---|---|
| 1 | ウェブメディア 39% | 書籍 65% |
| 2 | Podcast 35% | Podcast 53% |
| 3 | 書籍 33% | YouTube 31% |
深井さんは、信頼度とは別に「自分に合っているか」という軸があると話します。書籍のほうが信頼度は高いと思っていても、自分に合う度合いではPodcastが上に来るそうです。
深井さんはこの違いを、世の中の出来事は速さが必要で、自己啓発は速さが必要ない、と整理しています。
有料メディアへの毎月の支出は、1000円以上3000円未満が31%で最多でした。1万円以上使う人も6%ほどいて、出演者自身も本を含めればその層に入るようです。
社会の役に立ちたい人が81%
アンケートでは「社会の一員として何か社会のために役立ちたいと思っているか」も尋ねています。思っていると答えた人は81%でした。
樋口さんによると、内閣府が令和4年12月に行った世論調査の同様の質問では64.3%です。出演者たちは、リスナーの数字の高さと同時に、一般でも6割以上がそう思っていることにも希望を見ています。
一方で深井さんは、アンケートに答えること自体を社会貢献だと考えるような人が回答している、というバイアスにも触れています。樋口さんも、社会貢献を考えない人は聴くなという意味ではない、とはっきり釘を刺しています。
普段の社会貢献の中身は、1位が自分の仕事で54%、2位が募金・寄付で47%、子育てや家族のケアが29%、ボランティア活動が26%でした。樋口さんは、子育てや家族のケアを「ど真ん中の社会貢献」だと話しています。
社会に役立つ行動に必要な要素としては、具体的な手段がわかる情報が39%、使える自由時間が32%、社会課題を把握できる情報が18%でした。
樋口さんは、こうした質問をする理由も説明しています。COTENは人文知を社会に役立てたいと考えていて、どんな人にどんな情報として届けるのがよいかを探っているためです。
人文知っていうのが善性みたいな所与の前提の善性に偏りすぎると人文知化していかなくなっちゃうんで、そこのバランスは超大事ですよ。
半数がコテンラジオでPodcastデビュー
コテンラジオと出会う前にPodcastを聴いていたかという質問では、「はい」と「いいえ」がちょうど50%ずつでした。8000人のうち4000人ほどが、コテンラジオをきっかけにPodcastを聴き始めた計算になります。
もともと歴史が好きだったかについては、好きだった人が約6割で、残りの約4割は歴史に興味がなかったと答えています。興味のなかった層を引き込めたことを、出演者たちは喜んでいます。
聴き始めたきっかけは、アプリ内の検索ランキングが40%、口コミが22%、Web検索とSNSがそれぞれ8%でした。
口コミの相手は友人が42%、家族が23%、同僚が15%、上司が5%で、場面は食事中が30%で最多でした。
これすごくない?そんな家族でポッドキャスト紹介し合う?
深井さんは、同じマンションの家族が小学4年生の子どもに家でずっと流して聴かせていた、という話を紹介しています。樋口さんは、社会科学的な構造理解の視点が早いうちに身につくかもしれないと話します。
聴くタイミングは、歩いている時が42%、車の運転中、家事の最中、公共交通機関がそれぞれ40%でした。深井さんは、仕事をしながら聴く人がランキングに入っていないことに注目しています。
番組を勧めている人の多くは、相手を選んで勧めていました。出会う人になるべく勧めている人も6%いました。
無料で楽しめるのに、なぜCOTEN CREWに入ってほしいのか
今回のアンケートでは、番組を支える月額支援のCOTEN CREW ── コテンラジオや世界史データベースなど、COTENの活動を月額で支援する仕組み。支援者の応援で活動が成り立っていますについても詳しく尋ねています。
個人でCREWになったことがない理由は、1位が「無料でも十分楽しめるから」で25%でした。経済的事情が18%、無料エピソードをまだ聴き切っていないが12%と続きます。
樋口さんは、有料化は簡単にできると説明します。人気シリーズの一部だけを有料にしたり、全12話のうち後半4話を有料にしたりする形も可能だといいます。
この形態を続けていることが可能なのは、無料でも楽しめるけど払ってる人がいるからなんですよ。
無料エピソードを聴き切っていないことを理由に入らない人が増えると、過去回をアーカイブして有料化したほうが得になってしまう、とも樋口さんは話します。そのうえで、そうはしないので、それを理由に入らないのはやめてもらえるとうれしい、と伝えています。
CREWの特典について、深井さんは楊さんの例えが一番しっくりくると紹介しています。神社にお参りした時に買うお守りのように、支援してくれた人への記念品として渡す感覚だといいます。
一番うれしかった「人文知への投資に共感する」という答え
CREWになった理由は、コテンラジオに長く続いてほしいからが63%、人文知への投資に共感するからが56%、世界史データベース事業を応援したいからが46%、アーリーアクセスを利用したいからが22%でした。
樋口さんは、人文知への投資に共感する人が56%いたことが一番うれしいと繰り返し語っています。コテンラジオはいつか終わるもので、事業の目的は人文知を使って社会を少し良くすることだからです。
褒められるとか面白いと言われるとか全部どうでもいいんですよ、僕。インセンティブになってないんで、自分の。
CREWを続けている理由では、人文知への投資への共感が64%、世界史データベースの応援が53%と、入った理由よりも高くなっていました。
| 理由 | なった理由 | 続けている理由 |
|---|---|---|
| コテンラジオが続いてほしい | 63% | 72% |
| 人文知への投資に共感 | 56% | 64% |
| 世界史データベースを応援 | 46% | 53% |
| アーリーアクセスを利用 | 22% | 23% |
樋口さんによると、番組は今15人ほどの体制で作っていて、毎月数百万円がかかっています。無料で公開する側と、それを支える支援者の二段構成で、コテンラジオは成り立っているという説明です。
CREWをやめた理由と、まだ赤字という現実
CREWをやめた人は、そもそも入った理由では、世界史データベースの応援や人文知への投資が28%ほどと低めでした。続けている人はそこを意識しているのだろう、と樋口さんは見ています。
やめた理由の1位は経済的理由で40%、特典を使う時間がなかったが22%でした。樋口さんは、苦しいのに払う必要は全くなく、人文知は本来インフラのように税金などで支えられるのが望ましいと話します。
「自分が応援する必要を感じなくなった」という回答に対しては、会社はずっと赤字だと明かしています。
深井さんは、支援者が増えて自分の割合が相対的に下がったと感じた人もいるかもしれない、と推測します。樋口さんは、小さな支援の積み重ねで成り立っているので、必要ないわけではないと伝えています。
欲しい特典、イベント、社員教育への期待
樋口さんは、有料にできるものを無料で公開している以上、支援のために特典を用意するのはナンセンスだと考えています。それでも、欲しい特典を尋ねています。
挙がったのは、地図などの補助教材や台本の公開でした。台本は引用の集積なので、著作権の面で公開は難しいと説明されています。
「COTENに自分のスキルや時間を提供できる機会が欲しい」という回答も17%ありました。樋口さんは、人文知が社会に役立つ仕組みが5年以内には知れ渡る可能性がある、と展望を語っています。
イベントについては、パーソナリティがいれば参加したい人が60%、いなくても参加したい人が24%でした。イベントはぼちぼち開く予定だそうです。
役員の回答だけを見ると、コテンラジオを社員教育に使いたい人は5割を超え、マネジメント層に聴いてほしい人は約8割でした。
それってなんか転職して十社ぐらい経験しないとわかんないようなことを、歴史で普通にめっちゃわかったりしますからね。
深井さんは、構造理解に加えてコミュニケーションにも役立つと話します。樋口さんは、歴史に触れることで相対化や個別化がしやすくなり、意見の違う人を尊重しながら共存しやすくなると補足しています。
人気シリーズ1位は、前回に続き第一次世界大戦
好きなシリーズの1位は第一次世界大戦で、前回の調査でも1位でした。民主主義やシンドラーのような新しいシリーズもトップ10に入っています。
深井さんは、構造系のシリーズと人に焦点を当てたストーリー系がバランスよく入っていると見ています。樋口さんは、ガンディーがトップ10から外れていることから、構造系がやや多いと指摘しています。
楊さんは、最澄と空海も認識の構造を扱う点で構造系だと話しています。アンケートを取ったのは柳瀬敬史のシリーズより前で、次回はそのシリーズが上位に入るかもしれない、という話も出ています。
コテンラジオは目的ではなく手段
結果の紹介を終えて、出演者たちは今回のアンケートを振り返っています。印象に残ったのは、人文知への投資に共感する人が大勢いたことでした。
僕ね、別に歴史の話喋りたくて喋ってるわけじゃないんですよね。
手段なんですよ、これ。僕の目的じゃないんで、コテンラジオって。
樋口さんが目指しているのは、人文知にディープダイブした判断が行われる社会です。人類がこれだけ歴史を重ねてきたのに、歴史を知らずに重要な判断がされ続けていることを問題だと考えています。
一方で樋口さんは、全員が同じ考えになるのは全体主義のようで気持ち悪いとも話します。5割が共感してくれたことが十分にうれしく、アーリーアクセス目的の支援も歓迎だという姿勢です。
深井さんは、口コミには再生回数以上の熱量を感じると語っています。樋口さんは、繰り返し聴くことや、関心を持った分野の本を読むこと、ローマの歴史を聴いてイタリアへ行くことなどを勧めています。
最後は、次は2年後くらいにまたアンケートを取ろうという話で締めくくられています。
まとめ
2024年のリスナーアンケートは、偏りのある回答者集団という前提つきで、30〜40代の働く世代を中心に、学術や社会への関心が強い聴き手の姿を示しました。あわせて、コテンラジオの無料公開を支える支援者の多くが、人文知への投資そのものに共感していることがわかりました。
- 8046人が平均20分以上かけて回答したが、無作為抽出ではないため番組を強く好む層に偏った結果である
- 回答者は中間管理職や経営者、IT系、東京在住が一般より多く、学術・学問への関心がビジネスを上回った
- 回答者の半数はコテンラジオをきっかけにPodcastを聴き始め、約4割はもともと歴史に興味がなかった
- COTEN CREWを続ける人の64%が人文知への投資に共感しており、樋口さんはこれが5年間で一番うれしいと語った
- コテンラジオは目的ではなく、人文知を踏まえた判断が行われる社会をつくるための手段だとされている





