諸葛孔明を占ったら「メンタルが弱い」?
諸葛孔明編の最終回で、樋口さんは「諸葛孔明、占ってみた」という企画を用意しました。漫画などでは孔明が占いで物事を決める場面がよく描かれます。この企画は逆に、孔明自身を占うというものです。
使ったのは、人気占い師ゲッターズさんの姓名判断 ── 名前の画数や文字から性格や運勢を読み解く占いの一種。日本では古くから親しまれていますサイトです。樋口さんが結果を読み上げると、孔明の人物像は「頭がよく、要領の良さも抜きん出ている」というものでした。
さらに占いの結果は、「困難に見舞われると気持ちが弱くなる一面もある。メンタルが強くなればもっと活躍できる」と続きます。深井さんは、この部分も史実の孔明に当てはまると受け止めました。
(孔明は)もともとそんなにメンタルが強くなかったけど、創業者たちが死んでいく過程で、多分彼は覚悟を決めていって、メンタルを強くしながらも、もともとそんな強くないから最後過労死するわけですよ。
楊さんも、孔明はもともとリーダーとして表舞台に立つタイプではなく、自分でも参謀としてサポートする側だと考えていたはずだと話します。それでも、表に立たざるを得ない状況に置かれました。
表に立たざるを得ない状況に立たされて、もう奮い立つしかなかった。
他のやれる人がいないから。
樋口さんは、孔明は本当はナンバー2の位置で一番無理なく輝けた人だったのかもしれないと考えます。深井さんは「劉備が死んだ時悲しかっただろうね」と、孔明の心中を想像していました。
恋愛運の答えは劉備への一途さ
次に樋口さんが読み上げたのは恋愛運です。占いの結果は「浮ついた恋愛が大嫌いで、好きな相手にはとことん尽くす。ただし頑なで、1つの考えで固まると抜け出せない」というものでした。
史実の孔明はお見合いで結婚しており、恋愛の記録は残っていません。そこで深井さんは、「好きな相手にとことん尽くす」は劉備との関係にそのまま当てはまると指摘します。
さっき言ってた「好きな相手にはとことん尽くします」が、まさに劉備じゃないですか。
(孔明は)こっちが自分の将来によさそうだったら転ぶっていうわけじゃなくて、一筋ですよ。
「頑なで1つの考えに固まる」という点も、劉備に仕えると決めたら一生仕え続けた孔明の姿と重なるとして、3人は「これも当たっている」と盛り上がります。
一方で樋口さんは、孔明は豪族などとうまく話せるタイプだったのではないかと尋ねます。深井さんは、その対人スキルは大量の勉強で後天的に身につけ、体系化したものだろうと答えました。孔明は著作も残しており、天下三分の計 ── 劉備に対し孔明が示したとされる戦略。曹操・孫権と天下を三分して勢力を確保し、のちの統一を目指すという構想ですも文章の形で伝わっています。
楊さんは、孔明は勉強のできるエリートでありながら、幼くして孤児になり、戦乱で落ち延びるなど現実の苦労を重ねた人だったと強調します。食べるものや着るものに困った時期もあったはずで、その経験が人への接し方を変えたのではないかと話しました。
ただ単に綺麗な家に住んで、上げ膳据え膳で食って、好きなだけ勉強できたっていう時間を過ごしたわけじゃないんですよ。苦労した経験のあるエリート。
深井さんは、孔明の生きた時代は人口が激減し、5人に4人が死んだほどだったと付け加えます。樋口さんは、不幸な異常事態が人間を強くし、後世に語り継がれる物語を生んだことの皮肉を口にしました。
深井さんは、同じような構図は歴史にいくつもあると話します。例として挙げたのが社会福祉です。
第二次世界大戦
一般の国民が大量に戦い、亡くなった
国家の反動
国家が国民に報いようとする動きが生まれた
社会福祉の発達
現代の社会福祉が一気に発達していった
ただし深井さんは「もちろん正当化はできない。良かったということではない」と念を押しています。樋口さんは、物事は陰と陽が絡み合っていて、単純な正解はないのかもしれないとまとめ、「占いが当たっていることだけは正解だった」と笑いを誘いました。
演義の天才軍師より、史実の宰相がかっこいい理由
諸葛孔明編を振り返る段になると、楊さんと樋口さんはまず「かっこいい」と口をそろえます。深井さんは、史実の孔明のほうがかっこいいのではないかと問いかけました。
深井さんによると、三国志演義 ── 明代に成立した三国時代の歴史小説。史実をもとにしつつ脚色が多く、日本の漫画やゲームの三国志の多くがこの系統ですや三国志の漫画では、孔明は政治家というより軍師として描かれ、祈って風を起こしたりもします。
神がかった軍師。祈って風を起こすなどの演出が入っている
宰相として命をかけて役割を全うし、行動が記録に残っている政治家
楊さんが特にすごいと感じたのは、孔明の数字への向き合い方です。孔明は国の数字の書類にすべて目を通し、蜀の現状と数年後の姿を把握したうえで政策を決めていたといいます。
彼、数字の書類は全て目を通すんですよ。
深井さんが「データに対して緻密」と評すると、楊さんは「あるべき経営者の姿かもしれない」と続けました。樋口さん自身も、ここ半年ほどでようやく数字に目を通すようになったと打ち明けています。
乱世の儚さは、今の時代とどう重なるか
深井さんが孔明に心を動かされたのも、楊さんと同じ点でした。深井さんは自身も会社で何度か危機を経験しており、孔明が超危機的な状況でどう自分を奮い立たせたのかを想像すると、こみ上げるものがあると話します。
さらに深井さんは、俯瞰すると三国時代そのものが儚いと語ります。誰も天下を統一できず、多くの人が死に、優秀な人材が宦官 ── 宮廷に仕えた去勢された男性。後漢末には権力を握り、政敵の官僚たちを弾圧しましたに処刑された後の時代だったからです。
孔明より頭いいやついたはずなんです、もっと。そいつら全員殺されちゃった後なんですよ、これ。
深井さんは、この時代でなければ劉備のような人がのし上がることも、孔明が歴史に名を残すこともなかったと考えています。そこに、時代が起こす化学反応の儚さと面白さを感じるといいます。
樋口さんは、この話を今の社会に重ねて聞いていたと話します。大きなメインストリームが正解だった社会から、非中央集権型の社会へ移りつつあり、大学運動部のパワハラ問題などが若い世代から次々とリークされている状況は、大きな権力が下から突き破られている象徴だというのです。
深井さんも、既存の権力がゆっくり崩壊し、これまでと違うタイプの人間が覇権を取っていく流れは三国時代に近いと応じます。そのうえで、歴史にはいろいろなレイヤーで繰り返されるサイクルがあると説明しました。
乱立
多くの勢力が並び立つ
支持の集中
乱立の中から、みんなが支持するものが出てくる
覇権と安定
支持されたものが覇権を取り、安定する
衰退
安定が衰え、再び乱立の時代へ戻る
深井さんは「今はまさに乱立時代」と言い、樋口さんは「乱立時代に生きる我々は歴史を勉強しないといけない」と受けました。
諸葛孔明を知ると、なぜ自分がわかるのか
深井さんは、自分は役に立つから歴史を勉強しているのではなく、楽しいから勉強しているのだと話します。その楽しさは、諸葛亮の人生を時代背景とともに見ると、人間とは何かを考えさせられるところにあるといいます。
その人生の1ケーススタディから自分の人生も考えるし、人間ってなんでこんなことするんだろうって思うわけです。それがね、楽しいの、俺は。
楊さんが「ある種の人間観察」と表現すると、深井さんは、現代の人を理解するときも背景から入ると話します。どんな社会に置かれ、どのポジションや権力の中にいて、どんな感情を持ち、どんな決断をしたのかを見ていくと、自分と対比できるというのです。
最後に樋口さんは、教科書の印象から歴史に抵抗がある人こそコテンラジオから聞いてほしいと呼びかけ、6本か7本にわたった諸葛孔明編を締めくくりました。
まとめ
姓名判断で孔明を占うという遊びの企画は、劉備に一途に尽くし、苦労を背負って宰相の役割を全うした孔明の人物像を改めて浮かび上がらせました。話題はそこから乱世の儚さや現代との重なりへ広がり、歴史を通して人間と自分を知る楽しさで諸葛孔明編は幕を閉じます。
- 占いの「頭がよいがメンタルは強くない」「好きな相手に一途」という結果は、3人によれば史実の孔明や劉備との関係によく当てはまる
- 孔明は孤児や戦乱を経験した、苦労を知るエリートだったと楊さんは見ている
- 史実の孔明は、国の数字の書類にすべて目を通すデータに緻密な宰相で、演義の天才軍師像よりかっこいいと3人は語る
- 乱立から覇権、衰退へと戻るサイクルは歴史で繰り返され、深井さんは今を乱立時代と見ている
- 時代背景から人の選択を見ることで、自分自身を知れるのが歴史の楽しさだと深井さんは話す


