パフォーマンスは努力より「配置」で決まる?
この回のテーマは、深井龍之介さんが経営する株式会社COTENの文化です。ゲスト回が続いていたなかで、久しぶりに自分たちの会社について話す回になりました。
深井さんはまず、COTENがコミュニケーションをとても大切にしている会社だと話します。メンバーは全員リモートで働いており、時差もあります。収録時点では3か国ほどに分かれて同時に仕事をしているそうです。
深井さんが特に気をつけているのは、メンバー一人ひとりの才能と強みを分析し続け、どハマりする配置を探し続けることです。COTENには「才能博士兼チーフジーニアスオフィサー」として働くたかちんさんがいて、深井さんは彼を「才能を見分ける天才」と紹介しています。
深井さんは自分自身を例に挙げます。COTENで頑張って働けているのは社長というポジションがあるからで、他の会社の末端にいたらおそらく全く機能しない、という見立てです。
だからはまる場所にはまる人をちゃんと配置するっていうのは、かなりもうほんとそれだけで相当パフォーマンス変わると思ってて。
配置8割、努力2割ぐらいだと思ってるんですね、正直。
これに対し聞き手側からは、一般的には個人のパフォーマンスを上げるにはスキルアップを頑張らなければならないという感覚がある、という素朴な疑問が出ます。
「才能」と「強み」を見極める採用とは
深井さんは、スキルアップの考え方にも一理あると認めたうえで、たかちんさんによる「才能」と「強み」の定義を紹介します。両者を分けて考えることで、配置で何が変えられるのかが見えてきます。
努力しなくてもできること。配置によって、その力が自然に出る領域を任せる
トレーニングによってできるようになったこと。スキルアップの努力が効く部分
COTENの配置で重視しているのは、努力しなくてもパフォーマンスが出てしまう領域を、その才能を持つ人に任せることです。そして、そのために最も大切なのが採用だと深井さんは言います。
深井さんによると、採用で見るのは「優秀かどうか」ではありません。今ある仕事や、近いうちに発生する仕事に対して、その人が才能と強みを100%発揮できるかどうかです。収録時の採用にはおよそ150人の応募があり、深井さんは「一切手を抜かなかった」と振り返っています。
もう一つの特徴は、面接で自分たちの悪いところやできないことを全部伝える点です。深井さんは、お互いが期待しすぎると依存が生まれ、依存は最終的にパフォーマンスにつながらないと考えています。
だから僕たちもこの人が入るからこの事業ができるんだとかとは思わないし、その人たちもKOTENに入ったから人生が変わるんだとは思わないってことです。
COTENでは、ほとんどの人が入社によって年収が50%ほどになっているそうです。深井さんは、現ステージでは金銭報酬をあまり渡せない代わりに、非金銭報酬に価値を感じるかどうかを面接で丁寧に聞いたと話します。
スタートアップの採用はなぜ失敗する?
採用での失敗とは何か、という問いに対して、深井さんはいくつかのパターンを挙げます。最初に挙がったのは、期待値調整の失敗です。
深井さんの説明では、スタートアップにはなかなか人が来てくれないため、会社側はハンティングするように採用し、つい自分たちを盛ってしまいます。すると「可能性があるから来る人」が集まってしまう、というのです。
深井さんによると、可能性があろうがなかろうが自分で作るというメンタリティーの人でなければ、スタートアップでは「やってらんない」ことばかりが起こります。期待して入った人は辞めてしまい、「嘘をつかれた」と感じることにもなります。
人が来ない
スタートアップには普通、優秀な人がなかなか来てくれない
会社を盛る
来てもらうために、自分たちの可能性をアピールしてしまう
期待で入社
「可能性があるから」という理由で入る人が来る
離職
やってらんないと感じて辞め、嘘をつかれたとも感じる
ほかにも深井さんは、応募者が面接で「できる」と言ったことが実際にはできないケース、役職名に惹かれて応募してきた人を経験の浅い経営者が見極められないケースを挙げます。
さらに、COTENの初期に深井さん自身が経験したのが、仲はいいのに理念が違う人を入れてしまう失敗です。給料を高く払いすぎる、低く払いすぎるといった、どちらかが無理をする形もうまくいかないといいます。
バグるバグる。絶対にバグる。あとどっちかが無理するっていうのもバグる。
だからこそ、お互いが納得するところまで話し合ってからスタートすることが大事だと深井さんは話します。現在のメンバーは外国の人と働く想定で採用しており、ほとんどの人が英語を話せるそうです。
タメ口と毎日の心理的安全性チェック
聞き手側は、COTENのメンバーがお互いを尊重し、自己開示もしていて、育てる・育てられるではなく対等なパートナーとして補い合っているように見えると話します。深井さんもそこは意識しているといいます。
COTENでは、深井さんの弟子であるひなつさんを除いて、全員がタメ口で話しています。深井さんは、日本語で敬語を使うと心理的距離ができて無駄に硬くなると感じているためです。
タメ口だからなまけるとかそういうことは起こんないし、タメ口だから一線超えるみたいなことも起こんないと思ってるんだよね。
もう一つ深井さんが大切にしているのが心理的安全性です。以前の番外編で篠田さんから聞いた話も学びになり、COTENでは組織として心理的安全性を定義し、その数値を毎日チェックしています。
モヤモヤがあればすぐに解消するのも方針です。深井さんは、モヤモヤを抱えた人はシンプルにパフォーマンスが出ないとスタートアップの経験から学んだといいます。
背景には、COTENがまだビジネスモデルを確立していない会社だという事情があります。データベースにしてもコテンラジオのマネタイズにしても、これから作る段階なので、決まったことをこなす力よりもクリエーションが大事になる、というのが深井さんの考えです。
和気あいあいとしてて、心理的安全性が確保されてて、何でも言ってよくてっていう状態がないと、やっぱクリエイティブになんないんだよね、人間が。
月1回の集まりは何がベスト?場づくりの実験
深井さんは、COTENが「実験」をとても大切にしていると話します。失敗を恐れないという意味でもあり、実験しないとわからないという前提に立つ、ある意味の科学的思考だといいます。
具体例が、メンバーが月に1回東京で集まるときの形態の実験です。どう集まれば心理的安全性が最大化されるかを試しており、最近は2つのやり方を比べてみたそうです。
1人1万5000円〜2万円ほどの店で集まってみた
周りに人がいない閉ざされた空間で話す。こちらのほうがいいという結論に
深井さんによると、費用はあまり変わらなかったものの、後者のほうがよかったといいます。実験を通じて、終わりの時間が決まっていないこと、自分たちしかいないこと、話すことに全集中できることが大切だとわかってきました。
みんなでご飯作るかって言ったら作らない。その時間は無駄。実は。
一方で、泊まる必要はないこともわかり、メンバーは夜にタクシーで帰っているそうです。楊さんはこれを、頑張って話すのではなく、頑張らなくても話せる場をみんなで探すことだと受け止めます。
深井さんは、モチベーションは他者が司れない領域だと考えています。会社がみんなのモチベーションを上げるのではなく、モチベーションが上がる状態と環境を設計するのが会社の役割だという立場です。
ある程度影響を与えることはできると思ってるんですけど、効率が非常に悪いんですよね。配置の方が圧倒的に効率が高いんですよ。
ゼネラリストとルーティン業務の分け方
会社のフェーズによって必要な人材は違うのでは、という問いに対し、深井さんはCOTENのメンバー構成を説明します。エンジニアと歴史チームを除くと、メンバーは何でもできるゼネラリストです。
COTENでは、ゼネラリストがクリエイティブなコア業務に集中します。クリエイティブではない業務も大切だと認識したうえで、それは必ずしも社員がやらなくてよいと深井さんは考えています。
コア業務
信頼関係と理念の共有が直接効くクリエイティブな仕事を、ゼネラリストがやり続ける
ルーティン業務の発生
事業が確立するにつれ、メール返信などこなす仕事が出てくる
自動化
半分以上のゼネラリストがプログラミングでき、自分で組んで機械処理する
適した人に任せる
人生のステージ的に、今はとりあえずこなしたい人に任せる
深井さんはこれを「お互いウィンウィン」と表現し、超適材適所に集中していると話します。判断はデータとファクトに基づき、思い込みで決めないことを重視しており、その大切さは歴史を学ぶなかで感じたといいます。
深井さんによると、多くの会社は実験をしておらず、合宿をしてもレビューをしていません。合宿を実験として捉えれば、次のステップは必ずレビューになる、という考え方です。
COTENでは合宿を、ビジネスプランを立てる場ではなく、非日常だからこそ言えることを言う場にしたところ、うまくいったそうです。毎日のチェックで心理的安全性の下がり具合は把握でき、その解消を月1回の集まりで行うことで、平均的にすっきりした状態で仕事ができているといいます。
恐怖がない状態を作ってストッパーなくして、モチベーション管理しなくてよくなってる状態って感じです、イメージ。
メンバーはなぜ優秀に見えるのか
聞き手側は、普通は心理的安全性があってもできない人をみんなで教える場面があるはずなのに、COTENではそれぞれが力を発揮していると驚きます。
深井さんは、まず配置が大きいと答えます。配置で解決しているため、6割ほどは頑張らなくても出せて、残りの3〜4割が成長のためのストレッチポイントになっている、という見立てです。
そんなめっちゃうまくいってるわけじゃないですよ。それをうまくいってるかどうかチェックしながら実験してるって意味です。
深井さんは、今の時点で完成しているとは全く言うつもりがないとしつつ、これまでの学びを総動員してやってみた結果うまくいっていると話します。COTENは尊敬できる人しかいない会社だとも語りました。
以前の回では、COTENは部活のようで深井さんは部長のようだ、という話も出ていたそうです。中央集権的な組織ではなく、リスペクトを払い合うことを大切にしているといいます。
株式会社という枠に収まらない参加の形
深井さんは、個人事業主として参加している楊さんも、コテンラジオに関わる樋口さんも、COTENのメンバーだと考えています。いろいろな参加の仕方ができる企業のほうがいいという考えで、番組で扱ったローマの例にも触れました。
COTENは副業も推進しており、社員も副業をしています。深井さんは、法人や個人のサポーターなど、潜在的に応援してくれる人をまだ生かしきれる仕組みがないのは悔しいとも話しています。
本人がいいなって思う方向で参加できて、いいなって思う時間働けて、いいなって思う仕事だけ参加できるような仕組みを作っちゃった方がいいなって思ってるんですよね。
聞き手側からは、COTENは株式会社という言葉では言い表せない組織になっているという声が上がります。深井さんも、次の時代に適した組織を作りたいが、法的に規定しようとすると現時点では株式会社がベターだと説明しました。
ソフトのCOTEN、土地の樋口さん。バンドにたとえると?
前回の番外編で自身の取り組みを語った樋口さんは、適材適所や才能を発揮するという考え方がCOTENと一緒だったと話します。深井さんも、前回の話に共感しながら聞いていたといいます。
深井さんはまた、ここで紹介した文化は自分の独走ではなく、みんなとの話し合いを続けた結果だと付け加えています。
樋口さんが面白いと感じたのは、取り組みの質感の違いです。同じ思想を持ちながら、拠って立つ場所が対照的だといいます。
チームや働き方の工夫が中心で、軸はIT。土地属性はほとんどない
土地に根付き、施設を軸に活動している
深井さん自身も土地へのこだわりが薄く、故郷の島根県にも福岡にも東京にもさほど思い入れがないそうです。自分の場合は人にしか紐付いていない感じだと話し、楊さんからは「遊牧民的」とも評されました。
最後に、コテンラジオを始めた頃の「バンドの感覚でやっている」という話が振り返られます。違う個性がたまたま組み合わさってパフォーマンスが出る感覚を、樋口さんは番組を続けながら実感しているといいます。たとえるなら、深井さんがギターボーカル、楊さんがベースコーラス、樋口さんがドラムだそうです。
深井さんは、ほかにも取り組みや文化はあるので次回に取っておこうと話し、状況は刻一刻と変わるので、この自己紹介はたまにやりたいと締めくくりました。
まとめ
株式会社COTENの文化の中心にあるのは、人を頑張らせるのではなく、才能が自然に発揮される配置と環境を、データと実験で探り続ける姿勢です。採用、話し方、心理的安全性、集まり方まで、すべてがその考え方でつながっています。
- 深井さんは、人のパフォーマンスはほぼ配置で決まり、配置8割・努力2割ほどだと考えている
- 採用では弱みも全部伝えて期待値を下げ、お互いに心理的依存がない状態から始める
- 全員タメ口、心理的安全性の毎日チェック、月1回の集まりで、クリエイティブになれる状態を保っている
- 集まり方や合宿も実験として捉え、必ずレビューして次に生かしている
- 参加の仕方を一つに限らず、株式会社の枠に収まらない組織を目指している



