イエスはキリスト教徒ではなかった?一神教ユダヤ教という前提
世界三大宗教編の2回目は、最大宗教であるキリスト教から掘り下げます。深井さんは、創始者3人を改めて勉強し直したうえで、正直に「よくわからない」と切り出しました。
今回その3人を改めてちょっと勉強し直したんですよね、創始者の3人を。結論、ぶっちゃけよくわかんないです。
(イエスたちのことは)相当想像したりとか、いろんな補い方をしないと見えてこない。
樋口さんは「わからない人がわからない人のためにわからないなりに喋る」回だと受け、3人とも「悟れてない人」だと笑い合いながら本題に入ります。
イエスのイメージを聞かれた樋口さんは、真面目で正しく、優しい「聖人君子」の代表のような人物だと答えました。教会の十字架のシンボルを思い浮かべる人も多いかもしれません。
これに対して深井さんがまず強調したのは、イエスはキリスト教の創始者というより、ユダヤ教徒だったという点です。キリスト教とイスラム教はもともとユダヤ教から派生した宗教で、ヤハウェという同じ神をルーツにしています。
ユダヤ教の特徴は、唯一絶対の神がいる一神教であることです。深井さんによれば、仏教やギリシャ神話、ローマ神話、北欧神話のように、古代の世界は多神教が普通でした。
一神教だったのは、ユダヤ教やゾロアスター教 ── 古代ペルシアで生まれた宗教。善の神アフラ・マズダを中心とし、善悪二元論や最後の審判の考え方が後の宗教に影響を与えたとされますなどごく一部です。現在はキリスト教の22億人とイスラム教の15億人で世界の半分ほどが一神教ですが、深井さんはこれを「たまたまこの2つが思いっきり広がった」結果だと説明します。
ユダヤ教の神は、守るべきことを守らなければ罰する、厳しい存在として描かれます。樋口さんが「鬼軍曹」とたとえると、深井さんもそのまま受けました。
結構恐れながら、その神様の言ってることを守っていって生きていくと、神様が愛してくれるみたいな。
イエスが言ったのは、神はもっと愛情深く、そんなに厳しくないのではないか、ということでした。さらに、ユダヤ人だけが救われるという考えから、神の愛は全人類に注がれているという解釈に変わっていくきっかけにもなったと深井さんは話します。
厳しく罰する神。律法を守る者を愛し、救われるのはユダヤ人
愛情深い神。厳しさより愛が大事で、神の愛は全人類に注がれる
厳しさじゃなくて、愛が大事なんだよっていう風に言ったところに、彼の特異性がありますよね。
30歳まで日雇い大工、布教はわずか1年半
イエスが処刑されたのは33歳ごろだったといいます。深井さんは「同い年だよ、今俺」と驚きを口にし、樋口さんも「若っ」と反応しました。
イエスは30歳ぐらいまで、本当に普通の人でした。仕事は日雇いの大工、つまり肉体労働者です。当時のパレスチナ地方の日雇い大工は社会的地位がとても低く、深井さんは「奴隷の次ぐらい」だと説明しています。
そこから3年ほどで処刑に至り、布教的な活動をしたのはわずか1年半ほどでした。樋口さんは「スタートアップ界隈ぐらいのスピード感」だと驚いています。
イエスの活動範囲も広くありません。馬にも乗らず歩いて布教していたため、深井さんの見立てでは半径100キロ程度で、いくつかの村を回っていたイメージです。
イエスはある日突然大工を辞め、洗礼者ヨハネ ── ヨルダン川で人々に悔い改めの洗礼を授けたとされる宗教指導者。新約聖書ではイエスに洗礼を授けた人物として描かれていますに弟子入りします。そこで右腕のような立ち位置に上っていきますが、その理由もよくわかっていません。
イエスについての資料は、ほぼ聖書しか残っていません。聖書は死後数十年から100年ほどたって書かれたもので、歴史学的に見ると全部が事実ではないといいます。当時は97パーセントの人が読み書きできず、話は口伝えで広がっていました。
愛を語った人が、なぜ十字架刑になったのか
イエスはなぜ十字架にかけられたのか。深井さんの答えは、イエスは政治犯として処刑された、というものです。十字架刑は政治犯の処刑方法でした。
その理由を理解するには、当時のイスラエルやパレスチナ周辺の支配構造を知る必要があります。ユダヤ人は独立できず、ローマ帝国に支配されていました。
ただしローマ帝国が直接支配していたのは、ユダヤ教の祭司であり政治的指導者でもある、ごく一部のユダヤ人でした。この指導者層が、今度は一般のユダヤ人を支配していたのです。
ローマ帝国
ユダヤの地を支配し、ユダヤ人の指導者層を直接押さえる
ユダヤの指導者層
祭司であり政治的指導者。一般のユダヤ人を支配する
一般のユダヤ人
同じユダヤ人なのに「ローマの犬」になった中間層に反感を持つ
支配されているユダヤ人からすると、この中間層にいる同じユダヤ人だけど、ローマの犬みたいになってる人たち、すげえムカつくんですよ。
イエスは、この指導者層に反旗を翻す存在だと受け止められました。ローマ帝国と支配層の脅威と見なされ、政治犯として十字架にかけられたと深井さんは説明します。
イエスが語っていたのは愛の話でした。それでも、当時のユダヤ支配層が大事にしていた常識を覆す言動をいくつもしていたため、支配基盤を揺るがすものと見られたといいます。
ユダヤ教にはトーラー ── ユダヤ教の律法。神とイスラエルの民との約束とされ、日々の生活や儀礼について細かな決まりを定めていますと呼ばれる律法があり、神との約束としてのルールが何百個もありました。イエスは、それをあまり重視しなくていい、それより大事なことがある、という趣旨のことを言っていたのです。
番組では、律法が人の幸せにつながっていないとして、差別された人や病気の人に寄り添うほうが大事だとイエスが説いた、と説明されます。今の感覚ならいいことに聞こえても、当時の人からすれば「法律を守らないでどうするのか」という話でした。
でも当時で言ったらそれヤンキーっすよね。
自分のルールで勝手に社会と外れて動き出すって、もうこれヤンキーですね。
深井さんは「いい意味で言ってますから」と断ったうえで、社会のルールから外れて自分の生き方を貫く姿を、ヤンキーにたとえています。
見捨てられた人に寄り添った革命性
当時のパレスチナには、恵まれない人がたくさんいました。衛生状況が悪く、気候的にも厳しい土地だったため、貧しい人や病気の人が多かったといいます。
差別されていたのは、ハンセン病 ── らい菌による感染症。皮膚や末梢神経に症状が出て、古くから多くの社会で患者が隔離や差別の対象とされてきましたの人、病気の人、売春婦、そして徴税人などでした。イエスは、こうした人たちにも優しい言葉をかけて語りかけていました。
ユダヤ教では、売春婦は明確に律法を破った人であり、救われない人と見なされていました。不浄のものとして避けるべき存在で、接してもいけなかったのです。
ユダヤ教の常識では、不浄で救われない人として避け、接してはいけない
イエスは、そうした人にも平等に接し、愛を語りかける
イエスは、最後に救われない人とされていた人々にも平等に接しました。深井さんは、見捨てられた人に平等に接したことが当時としては革命的だったと話します。
それがすごく革命的だった、当時。それ(被差別民に優しくすること)は本当にイエスしかやってない。
当時はイエス以外にも、師事したヨハネをはじめ説教をして回る人がたくさんいました。それでも、被差別民に優しくしたのはイエスだったというのが深井さんの説明です。
「やっぱいい人なんですね」という問いに、深井さんも「めちゃくちゃいい人」と答えます。聖人君子というイメージは今のところ合っている、という確認で前半は終わり、話は次回へ続きます。
まとめ
イエスは、30歳まで社会的地位の低い日雇い大工として暮らし、わずか1年半ほどの布教のあと33歳ごろに処刑されました。厳しい神と律法を重んじるユダヤ教の中で、愛を説き、見捨てられた人にも寄り添ったことが、ローマ帝国とユダヤ支配層の秩序を揺るがすものと見なされたのです。
- イエスはキリスト教徒ではなく、一神教ユダヤ教を信じるユダヤ教徒だった
- 古代の宗教は多神教が普通で、一神教はもともと特殊な少数派だった
- イエスについて確実に言えるのは、ユダヤ人であることと処刑されたことぐらい
- ローマ帝国とユダヤの指導者層という支配構造の中で、イエスは政治犯として十字架刑になった
- 律法を破った人や被差別民にも平等に接したことが、当時は革命的だった




