宗教はなぜ「デリケート」なのか?
コテンラジオのこの回は、樋口聖典さんが「お酒が残っている」と打ち明けるところから始まります。収録は朝10時で、深井龍之介さんに「目が行ってますね」と突っ込まれています。
前回の諸葛孔明の回は反響が良かったそうです。楊睿之さんは、諸葛孔明の人気の理由を、弱い国をなんとかのし上げようとする少年ジャンプ的な物語にあると見ています。
そのうえで樋口さんが発表した今回のテーマは「宗教がわかれば世界がわかる。世界三大宗教を作ったレジェンドたち」です。キリスト教、イスラム教、仏教を軸に、さまざまな宗教について語る回だと紹介されます。
そうですね、これ(宗教の回)やりたかったんですよね。
樋口さんは、以前の天皇の回に次いで神経を使うテーマだと身構えます。楊さんの「もう今日が最終回です」、深井さんの「殺されるんだ」という冗談が続き、スタジオには笑いが起きています。
ではなぜ宗教はここまでデリケートなのか。樋口さんの素朴な問いに、楊さんは「譲れなさ」を挙げます。
なんていうか、(宗教は)譲れなさすぎるんじゃないですか?
要はその人の精神世界とか死生観とか、あとはもうその根本に根ざした価値観なので、下手に茶化したりとか否定したりするのは、もうそれだけでもう死ぬしかないじゃないですか。
樋口さんはこれを、宗教を否定されることは自分の人間性や過去、今を否定されるのと同じ感覚になる、と受け止めます。深井さんはさらに言葉を重ねます。
ただし深井さんは、リスペクトを持って語れば大丈夫だとも話します。樋口さんも、天皇の回と同じく客観的に話すだけだと確認し、本題に入ります。
信者数22億人、15億人、4億人。三大宗教の規模と発祥
最初に深井さんが紹介するのは、三大宗教それぞれの信者数です。一番大きいのはキリスト教で、22億人。深井さんは、世界の3分の1がキリスト教徒であり、布教に最も成功した宗教だと説明します。
キリスト教が広がる地域として、深井さんはヨーロッパ、キリスト教化が進んだアメリカ大陸、南アフリカを挙げています。発祥は、ユダヤ人であるイエス・キリストが2000年ぐらい前に起こしたもので、場所はパレスチナ ── 地中海東岸の地域を指す呼び名。現在のイスラエルやパレスチナ自治区を含む一帯で、キリスト教やユダヤ教、イスラム教にとって重要な聖地があるです。
樋口さんは「パレスチナと言われてもピンと来ていない」と率直に打ち明け、深井さんも「あの辺ですね」と応じます。この回は、歴史に詳しくない聞き手の目線を残したまま進んでいきます。
イスラム教の信者は15億人です。深井さんは、あと何十年かでイスラム教徒のほうが多くなると言われていると紹介します。人口が増えている国に、イスラム教が多いことが理由です。
深井さんが「意外」と強調するのは、東南アジアでもイスラム教が盛んなことです。人口2億人ほどのインドネシアが世界最大のイスラム教国で、中東ではないという点に樋口さんも驚いています。
インドネシア。(世界最大のイスラム教国は)中東じゃないんですよね。
仏教の信者は4億人ほどで、三大宗教の中では一番小さい規模です。中心はタイ、中国、日本、チベットなどのアジアで、発祥はインドです。深井さんは、正確にはネパールかインドかどちらかと言われていると補足しています。
樋口さんの家は浄土真宗で、一応は仏教です。ただ、お寺に行っていた程度で、信心深くはないといいます。深井さんも「葬式の時だけ」の浄土真宗だったと重ね、2人とも仏教を勉強したことはないと認めます。
創始者は、キリスト教がイエス、イスラム教がムハンマド、仏教がゴータマ・シッダールタです。深井さんは、キリスト ── ギリシャ語で「油を注がれた者」を意味する言葉で、救世主を指す称号は名前ではなく救世主という意味だと説明します。ブッダも固有名詞ではなく、「悟った人」という意味です。
深井さんは、この3人の影響力はこれまで番組で扱ってきた人物とは比べものにならないと話します。今いる信者だけで世界の半分ほどに影響しており、過去の歴史を積み上げればさらに多い人数になります。人類史上最も影響を与え、最も多くの人に尊敬されている人たちだと位置づけています。
戦争にも勝たず権力も握らない。ブッダとイエスは「スピーチしただけ」?
3人の共通点はどこにあるのか。樋口さんに聞かれた深井さんは、前回の諸葛亮との違いから話し始めます。
深井さんによると、諸葛亮は社会的成果を目に見える形で残しています。三大宗教の創始者のうち、ムハンマドは戦争で勝ったりもしています。一方でブッダとイエスは、ぶっちゃけ何もしていないとも言えるそうです。
ブッダとかイエスとかって、まあぶっちゃけ何もしてないとも言えるんですよね。スピーチしてるだけなんですよ。
ブッダとイエスは、生きている間に権力を握ったわけでも、社会を動かしたわけでもありません。ずっと喋っていただけで、結果的に今のような影響力を持っています。樋口さんが「芸能人ですね」と言うと、深井さんは「スターですよね。アイドルですよ」と応じます。
政治家として、目に見える社会的成果を生前に残した
権力を握らず、スピーチを続けた。思想を通じて超長期間、大多数の人を動かし続けている
深井さんが強調するのは、人間の思想を司る活動の影響力の大きさです。制度を作った、建造物を作ったといったこれまでの番組の話題とは比べものにならない、と話しています。
樋口さんは、3人は今の人間を動かすというより、人間の行動理念そのものに影響していると言い換えます。深井さんはこれを「ビジョナリーな動かし方」と呼びます。
へー、すげえな。プレゼン力。パワポとか持たしたらすごかったでしょ。
樋口さんの冗談はピッチコンテストにまで広がります。それを受けて深井さんは、3人のすごさを「課題の切り取り方」に見いだします。宗教が何千年も続いているのは、人類が抱えてきた課題や苦悩に、何千年にもわたってニーズがあったからです。その苦悩に当時着目して言語化したことが「ぶっ飛んでいる」と深井さんは評しています。
ロジカルでは理解できない?弟子の献身とカリスマ、そして反逆者としての創始者
樋口さんは、創始者たちの教えには普通の思考回路では理解できないものが多く、「どう解釈しよう」となると話します。深井さんの表現では、ロジカルシンキングで理解しづらいところが出てくる、ということです。
深井さんが例に挙げるのは、イエスの弟子たちです。キリスト教を広めたのはイエス本人ではなく、弟子たちでした。弟子たちはイエスが生きている間に裏切っていたのに、イエスが処刑された後になって、命をかけて教えを広めていきます。
その理由はちゃんとキリスト教の中ではこういう理由だよっていうのはあるんだけど、一般的に歴史的解釈しようとした時に、なんで?ってなる。
ブッダについても、深井さんは似た驚きを語ります。ブッダは30何歳ぐらいで悟り、その後は少し話すだけで人々が次々と大きく変わっていったそうです。
深井さんは、こうした話を以前は信じられなかったといいます。考えが変わったのは、ガンジー ── インド独立運動を率いた指導者マハトマ・ガンディー。非暴力・不服従を掲げ、多くの人々を動かしたを勉強してからでした。ガンジーにも同じような現象があり、本当にあるのだろうと思うようになったと話しています。
樋口さんは、被災地に芸能人が行くと地域が一気に元気になる例を出します。ジャニーズや、熊本でライブをしたダウンタウンさんのように、面白いことを言えるかどうかに関係なく、その人がいるだけで場が変わるという話です。
深井さんはその面は確実にあると認めたうえで、もう1つの共通点を挙げます。3人とも、当時の一般的な考え方を思いっきり覆していた、という点です。
全員基本反逆者っていうか。当時だからすごい反発もされてる。全員。
既成概念を覆す
当時の一般的な考え方を思いっきり覆す
反発・迫害
当時は強く反発され、迫害された人もいる
スタンダードに
その後、彼らの考えが標準になっていく
創始者たちは当時反発され、迫害された人もいました。それでもその後、彼らの考えはスタンダードになっていきます。3人の大枠をつかんだところで、樋口さんと深井さんは、次回から1人ずつスポットを当てていくと予告します。
まとめ
世界三大宗教シリーズの初回は、信者数と創始者を確認したうえで、宗教がデリケートな理由と、イエス・ムハンマド・ブッダに共通するすごさを整理する回でした。生前の社会的成果よりも、思想を通じて人類を長く動かし続けている点が、この3人の特異さとして浮かび上がります。
- 宗教がデリケートなのは、精神世界や死生観に根ざした「譲れない」価値観だから。ただし、リスペクトを持てば語れるとされる
- 信者数はキリスト教が22億人、イスラム教が15億人、仏教が4億人ほど。世界最大のイスラム教国はインドネシア
- ブッダとイエスは権力を握らず、スピーチを続けただけで、超長期間にわたり大多数の人を動かしている
- 弟子の献身や一瞬で人を変えるカリスマなど、ロジカルには説明しづらい現象がある
- 3人とも当時の既成概念を覆した反逆者で、反発された後にその考えがスタンダードになった




