資金調達を経て、コテンはどんな次のステージへ?
今回の番外編のテーマは、コテンラジオそのものです。深井さんによると、運営会社のコテンは事業規模が大きくなり、新しいフェーズに入りつつあるといいます。
コテンは2021年6月に資金調達を行い、その資金で新しいメンバーを採用して、歴史の調査を強化しました。中でも最も強化されたのが、歴史データベースの開発です。
深井さんは、現在また資金調達を進めていて、夏頃に終わりそうな感覚だと話します。資金調達が終われば、コテンはさらに次のステージに入ることになります。
データベースをちゃんとサービス化させていって、ターゲットの人たちに対してメタ認知を提供するっていうのを、スピーキング能力とかコンサルティングとかじゃなくて、プロダクトで達成する(のがミッション)。
深井さんが次のステージでやりたいのは、データベースをサービスにして、メタ認知 ── 自分の考え方や思い込みを一段上から客観的に捉えること。コテンは歴史を通じてこの視点を社会に提供することを掲げていますをプロダクトで届けることです。樋口さんも、これは当初からの事業目標だと応じています。
スピーカー深井龍之介の属人性をどう外すのか
深井さんは、コテンラジオを3年間楽しんできたし、今も楽しいと話します。やめるつもりはないものの、深井さん自身がスピーカーとして出続けると、時間的な制約からいろいろと難しい状況になっているといいます。
樋口さんは、深井さんがどれだけコテンラジオに時間を割きたくても、経営者として事業を前に進める責任があり、番組だけに注力するのが難しいフェーズに入っていると整理しました。
思い切って、僕としてはそのコテンラジオのスピーカーの役割をどんどん外していこうと思ってるんですね。自分から。ゼロにはしない。
深井さんは、メディアを通じたメタ認知の提供は、もともと広報の位置づけだったものの、今では1つの事業としてとても大切だと認識が変わってきたと話します。だからこそ、深井さん個人の属人的な力だけに頼るものではない、という考えです。
深井さんが想定するのは、いろいろなスピーカーや聞き手によるさまざまなバージョンの番組で、メタ認知を提供する形です。歴史を話すのは今のメンバーでもよい一方で、ウクライナ・ロシア編のように国際社会問題のルーツを調べて発表するやり方や、宗教、子育て問題などの社会調査の発表もあり得るといいます。
メンバーは実際に、牧師さんに教わるなどしてキリスト教をはじめとする宗教の勉強をしているそうです。深井さんは、その学びを深井さん以外の人が伝える場面があってもよいと考えています。
深井さんがメインスピーカーを務め、固定メンバーで主に歴史を語る
深井さんがいない回も含め、さまざまなスピーカー・聞き手・テーマでメタ認知を提供する
なぜ広告ではなくコテンクルーで支えたいのか
深井さんは、個人や法人のコテンクルーの支援について、今の3人ないし4人の番組にお金を払っている感覚の人も多いだろうと話します。それ自体はとても嬉しいことだとしつつ、別の受け止め方を期待しています。
深井さんが望むのは、コテンという会社のメディアが広告に頼らず成り立つために、クルーとして支援してもらう状況です。
やっぱり広告入れてしまうと、どうしてもそのいろんな忖度が走るよね。スポンサーに対する忖度もそうだし。
深井さんは、広告モデルになると再生回数を稼ぐ動きも必要になり、メタ認知を提供する活動が市場経済に取り込まれてしまうと懸念しています。
深井さんは、もし無理なら広告など成り立つ形にするとしながらも、できればクルー制度で続けたいと話します。広告モデルではないメディアに賛同する人に、クルーを続けてほしいし、新しく増えてほしいという考えです。
固定メンバーのバイアスは多様性で崩せるか
樋口さんは、今後は深井さんや楊さん、樋口さん自身がいないバージョンのコテンラジオも出てくるということだね、と確認しました。深井さんはそれを認めたうえで、それをコテンラジオと呼ぶかどうかはまだ決めていないと話します。
我々はほら、性の歴史の時にさ、全員男であるということを反省してたじゃん。それを実際に動かせるいい機会でもあると思うんだよね。
深井さんは、これまで固定だった聞き手やスピーカーに、女性が加わることもあり得ると話します。深井さんは、話し手が固定されるとその人のバイアスが良くも悪くもかかるため、多様性を持たせたほうがメタ認知につながると考えています。
樋口さんも、多様な語り手がいれば比較ができると応じました。深井さんは、コテンクルーはまだ全然足りないと感じていて、どんどん増やしたいと話します。
自分の手を離す決断は、なぜ怖かったのか
深井さんは、この変化を伝えるのはすごく勇気がいると打ち明けます。樋口さんも、深井さんが長く悩んできたことに触れています。
深井さんは以前からスタートアップ経営の経験があり、経営しながら勉強して放送することにどれほど時間がかかるかは重々承知していたといいます。それをだましだましやってきたものの、手伝ってくれる人を全員含めると組織は40人ほどの規模になりました。
現実的にここで僕がコテンラジオに固執してしまうと、コテンはこれ以上、何て言うかな、成長しないっていう状態になってきてる。
コテンも成長しないし、実はコテンラジオも成長しないんだよね。
深井さんがボトルネックになると、深井さんのリソースの奪い合いが起き、番組も深井さんの能力や観点を超えられなくなります。
経営の仕事が増える
組織が40人ほどになり、考えることが多くなる
リソースの奪い合い
経営と番組の間で深井さんの時間が取り合いになる
ボトルネック化
番組も深井さんの能力や観点を超えられない
成長の停滞
コテンもコテンラジオも成長しなくなる
一方で深井さんは、コテンラジオは属人的なコンテンツ提供だったものの、スタイルとしては継承できると考えています。広告モデルを使わないメタ認知のメディアは、深井さん以外の人でもできるという見立てです。
深井さんは、今の3人や4人のコテンラジオがなくなるわけではなく、できる範囲で続けると話します。新しいスタイルを番外編で試し、リスナーのフィードバックを受けてスピンアウトさせるなど、徐々にバリエーションを増やしていく考えです。
ずっと考えてたけど、やっぱりほら、結構怖いじゃんね。自分の手を離すって怖いことだから。
樋口さんが「今うまくいってるからね」と言うと、深井さんは、うまくいっているからこそ、うまくいかなくなるかもしれないと応じます。それでも深井さんは、今後はプロダクト、つまりデータベースを作ることに集中すると宣言しました。
深井さんは、データベースは自分がスピークするレベルではない影響を世界に与えると確信していると話します。起業も資金調達もメンバー集めも、ポッドキャストも、すべてはデータベースのためだったといいます。
人生はままならない。諸行無常のコテンラジオ
決断を語り終えた深井さんは、ポッドキャストで満足していれば誰も寂しい思いをせずに済んだのに、自分がデータベースを作ろうとするから、とこぼします。
諸行無常を感じるよね、ここでね。コテンラジオがこのスタイルでずっと続けばいいのになって、いろんな人が思ってるのにさ。
樋口さんは、データベースを作ろうとしなければ、そもそもコテンラジオはできなかったところもあると指摘します。楊さんは、期待されていると思っているのは自分たちだけかもしれない、と冗談めかして返しました。
具体的な変化として、この番外編の直後から、深井さんがいない、楊さんがメインスピーカーを務める回が本編に入る予定だと語られています。楊さんも、この編成は初めてだと話しています。
深井さんは、スピークすることは1つの才能だとして、新しいスピーカーをオーディションで集めたり、スカウトしに行ったりするのも面白いと考えています。
アラフォー男性4人の番組が持つバイアスとは
深井さんは、コテンラジオが全員九州大学出身で、九州の限られた地域に暮らす30代男性だけで作られている番組だと指摘します。楊さんが「俺だけ40ですけどね」と突っ込み、樋口さんが「アラフォーの4人」とまとめました。
アラフォーの4人が作ってるっていうのも、やっぱ凄まじいバイアスだと思うんだよね。
深井さんはここにいろいろな人を入れるべきだとし、「自己破壊していこうぜ」と話を広げます。さらに、リスナーも全員、うまくいっているものを自分で壊せばいいと勢いづきました。
樋口さんは「吉田松陰 ── 幕末の思想家・教育者。松下村塾で多くの志士を育て、行動を強く促す激しい言葉でも知られています味が出てきた」と笑い、楊さんは常に自分の中に乱世を抱えておくことが大事かもしれないと乗ります。社長を辞めたばかりの楊さんは、常にぶっ壊してきたので超わかる、と話しました。
いや、ちょっと待って、自己破壊しようっていう話やったっけ、これ。違うよね。
コテンラジオの体制変化を正当化するためにリスナーに自己破壊を迫るっていう。よくないよね。
深井さんも、自己破壊したいと思っていた人が背中を押されるのはよいが、そう思っていない人がするのは良くないと認め、話を引っ込めました。樋口さんは、そのフェーズではない人もいると添えています。
メタ認知を担う株式会社は、なぜ必要なのか
脱線から戻った深井さんは、コテンが次のステージに入ることにワクワクしていると話します。この後さらに人が増え、優秀な人に入ってもらう予定だといいます。
メタ認知を司る組織って世の中にほぼないじゃん。特に株式会社だったらないでしょ?
深井さんは、メタ認知を扱う事業を株式会社としてやっていくことに価値を感じていると語りました。
楊さんは、リスナーの多くは歴史への興味から聞き始め、やがて深井さんの声が聞きたくて聞いている人もいるはずだと話します。そうした人には少し寂しいかもしれない、という率直な指摘です。
(その寂しさを)メタ認知しましょう。そうですね、諸行無常を感じてほしい。
楊さんは、新しい人が入れば、その人の声を好きになる人も増えるはずだと話します。深井さんは「深井龍之介って何だったんだ」となると言い、楊さんに「そこまではならんでしょ」と返されています。
バンドメンバーが変わっても、コテンラジオは器になれるか
深井さんは、変化には最初は慣れないものだとして、番組が3人から4人になった時にも違和感を覚えた人がいたと振り返ります。深井さん自身も、バンドメンバーが変わったら驚くと共感を示しました。
しかも何の説明もしなかったしね、僕を入れた時に。
楊さんは、樋口さんがサングラス姿で加わったことに触れ、変な人が入ってきたと思われたはずだと笑います。樋口さんは、メガネが見つからずサングラスをかけていると説明しました。それでも楊さんは、今では樋口さんの声が好きな人も多いと話しています。
新しい番組をコテンラジオと呼ぶかどうかについて、楊さんはオールナイトニッポン ── ニッポン放送の深夜ラジオ番組。曜日ごとに異なるパーソナリティが担当しながら、同じ番組名で続いていますを例に挙げました。
もう1個の大きい括りというか、概念としてコテンラジオっていうのがあるっていうのも面白いですけどね。
番組は、変わり続けるコテンラジオをこれからもよろしくお願いします、という楊さんの言葉で締めくくられました。
まとめ
今回の番外編では、深井さんがデータベース開発に集中するため、コテンラジオのスピーカー役を少しずつ外していく方針が語られました。番組は終わるのではなく、多様な語り手とテーマでメタ認知を届ける「器」へ変わろうとしています。
- 深井さんは次のステージで、データベースをサービス化し、メタ認知をプロダクトで提供することに集中する
- 深井さんが番組に固執すると、コテンもコテンラジオもボトルネックで成長しなくなると考えている
- 広告の忖度を避けるため、コテンクルーの支援で成り立つメディアを続けたいと話している
- アラフォー男性4人という固定メンバーのバイアスを、多様なスピーカーや聞き手で崩していく
- まずは楊さんがメインスピーカーの回など、新しい編成が番外編や本編で試されていく





