月額サポートプラン開始とコテンラジオFMの案内
シリーズ本編に入る前に、樋口さんはコテンラジオの月額サポートプランがついに始まったことを告知します。深井さんによると、収録の1週間ほど前に告知して以降、無料で聴けるにもかかわらず支援してくれる人が続々と現れているそうです。
深井さんは、現時点でリスナー全体の1%ほどが支援していると明かし、5%ほどに届くと諸事情によりさまざまな活動がとてもやりやすくなると話しています。
あわせて「コテンラジオFM」というサイトも公開されました。番組の内容をテキスト化したものが一部公開されていて、読み返したり言葉で検索したりできるほか、イベントの告知やニュースもそこで確認できます。
よろしくお願いします。もうお賽銭だと思ってですね。
支援者には、お守りのような位置づけで限定の音源が渡される仕組みになっていると、樋口さんは補足しています。
最澄と空海は、ひとことで言えば「すごい」?
新シリーズのテーマは「最澄と空海、悟りを開いた男たちの生涯」です。樋口さんは、二人が偉いお坊さんだというイメージはあっても、具体的に何をしたのかはわからないと率直に打ち明けます。
すごいです。一言で言ったら。
深井さんのこの一言に樋口さんが「すげえ伝わった」と返し、シリーズがこれで終わってしまいそうな掛け合いになります。楊さんは改めて、最澄と空海を日本の仏教史に圧倒的な影響を与えた二人の天才だと説明します。
深井さんが今回二人をまとめて取り上げた理由は、最澄と空海がまったく同時代の人物だからです。二人は互いに知り合いでもあり、平安時代初期に現れた「二大巨星」のような存在だったといいます。
その後の鎌倉時代には、浄土宗 ── 法然が開いた宗派。阿弥陀仏を信じて念仏を唱えることで極楽浄土に往生できると説きますや浄土真宗、日蓮宗 ── 日蓮が開いた宗派。法華経を最も重要な経典とし、題目を唱えることを重視しますなどが次々に生まれます。深井さんは、こうした日本仏教の多様化の基礎を作り、方向性を決定づけたのが最澄と空海だと位置づけます。
平安時代初期
最澄と空海が現れ、日本仏教の方向性を決定づける
鎌倉時代
浄土宗・浄土真宗・日蓮宗などが生まれ、仏教が多様化していく
「仏教をなめていた」と痛感した大乗仏教の奥深さ
深井さんは、本には最澄と空海が日本仏教の方向性を決めた人物だと書いてあるものの、深く勉強した結果「そんなレベルの人たちじゃなかった」と感じたと語ります。楊さんも、自分たちを含め普通の人は仏教をまったく理解できていないと痛感したといいます。
仏教には大きく分けて、上座部 ── 出家して修行する個人の悟りを重視する仏教の流れ。かつては「小乗」とも呼ばれ、東南アジアなどに広がりましたと大乗の2つの流れがあります。深井さんによると、日本の仏教はほぼすべて大乗仏教です。
楊さんも深井さんも、自分は「ゆるい浄土真宗」だと話し、多くのリスナーも浄土真宗か浄土宗に属しているのではないかと深井さんは見ています。最澄の天台宗も空海の真言宗も、この大乗仏教の系譜に入る宗派です。
(天台宗も真言宗も)大乗仏教のラインに入ってる2つの宗教なんだけど、全く理解してなかったなっていう印象がとにかく先に来た。
10万円分の本を買ってもわからない、仏教という哲学
深井さんは今回、これまでで一番勉強したと話します。普段から1シリーズで5万円分ほど本を買うところ、今回は10万円分を買って目を通しましたが、それでもわからないほど難しかったといいます。
深井さんが挙げる難しさの正体は、仏教が宗教というより哲学の要素が非常に濃いことです。神秘性もある一方で、しっかりしたロジックの部分があり、そのロジックがいろいろな宗派に分かれていきます。
以前の玄奘の回で扱った唯識 ── あらゆる存在は心の働きが生み出したものだとする仏教の思想。玄奘がインドから持ち帰り、中国や日本で研究されましたのように、仏教は存在とは何か、自我とは何か、自分と世界の関係はどうなっているのかを追求し続けています。深井さんは、その一つ一つが「やばいぐらいむずい」と表現します。
思考力の深みがもう常人のレベルじゃないまでに突き進んでるから、多分もう僕らは本を読んだだけでは全然理解できないだろうし、
多分本当に修行10何年ぐらいしないとダメなんだろう。
深井さんによると、空海自身も、理屈だけでは理解できず身体的な動作を伴う修行をしないと到達できない領域だと述べています。深井さんは本を読んで、それが本当にそうだろうと納得したといいます。
だって最初の一行から意味わかんねえもん。何言ってるか。
さらに深井さんは、京都のピッチ大会の準備や6社の経営、2冊の本の執筆と並行して、空海関連の本を30冊ほど読んだと明かします。楊さんは、それ自体が修行になって悟れそうだと笑います。
僧侶との対談でも見えなかった「密教」の正体
深井さんは今回、本を読むだけでなく僧侶からも話を聞いています。京都で開かれたベンチャーのビジネスカンファレンスでは、比叡山の天台宗の僧侶と対談するイベントに登壇し、真言宗の僧侶にも話を伺ったそうです。
空海は中国から密教 ── 言葉で説かれる教えの奥にある秘密の真理を、儀礼や瞑想などの実践を通じて体得しようとする仏教。空海が日本に本格的に伝えましたを持ち帰ります。深井さんは、密教という言葉を聞いたことがある人は多くても、何のことかは全然わからないだろうと問いかけます。
5冊ぐらい読んでも何のことかわかんないわけ。上っ面はわかるよ。上っ面は。
深井さんが特に苦しんだのは、空海や最澄が玄奘のように人生をかけた理由、つまり人生をかけるに足る何が密教にあるのかが、なかなか見えなかった点です。深井さんは、唯識論のほうがもう少し早く見えたと振り返ります。
深井さんによると、密教には西洋哲学と似たことが、西洋哲学より1000年ぐらい前に書かれていたりします。ただ、西洋哲学が比較的積み上げ型で書かれているのに対し、空海たちは基本的にひらめきで書いているため、「どうした?空海」と言いたくなるほど読み解きにくかったといいます。
比較的積み上げ型の思考で書かれていて、論理を追いやすい
基本的にひらめきで書かれていて、何を言いたいのかが読み取りにくい
楊さんは、密教が自らを「人間の言葉では理解できないもの」と定義していると補います。深井さんも、宇宙は言語を超えているから言語では理解できないという記述があったと応じ、「なんとなくわかる」けれど「だからどうなのか」がわからないところが大変だったと語ります。
密教を理解するためにブッダまで戻る羽目に
深井さんが苦労したもう一つの理由は、密教を理解するために、それ以前に成立した思想を順に理解しなければならなかったことです。華厳経 ── 大乗仏教の重要な経典の一つ。あらゆる存在が互いに関わり合い、無限につながっているという世界観を説きますや般若経 ── 「空」の思想を説く大乗仏教の経典群。般若心経もこの系統に含まれます、唯識論などを押さえる必要がありました。
さらに華厳経を理解しようとすると、またその前を理解しなければならず、深井さんの勉強は最終的にブッダまでさかのぼることになりました。
密教
空海が持ち帰った教えを理解しようとする
華厳経・般若経・唯識論
密教の前提となる思想を理解する必要が出てくる
ブッダ
それらの前提をたどり、最終的に仏教の出発点まで戻る
もう最終的にブッダまで戻ったんだよね。ふざけんなと思いました。
勉強中の気持ちを樋口さんに尋ねられた深井さんは、ワクワクではなく「キレました」と答え、本を投げようかと思ったほどだと明かします。それでも最後は楽しかったと振り返っています。
深井さんにとっての一番の発見は、仏教をなめていたと気づいたことでした。仏教の凄さがわかった分、1か月どれだけ頑張っても理解できないこともよくわかったといいます。
樋口さんは、「分かった」と思えないこと自体が大事なのかもしれないと受け止めます。
仏教はなぜ社会に合わせてカスタマイズされたのか
楊さんは、仏教が難しすぎるからこそ、生活や時間に余裕のある人でなければ極められないものだとわかったと話します。
楊さんによると、誰もが出家したり難しい本を読んだりできるわけではないため、大乗仏教は社会の信仰のニーズに応じて、関わりやすい形へとカスタマイズされていきます。樋口さんが言うように、レベルをある程度抑えたり、簡易的なやり方に進化したりすることもあったといいます。
出家や難解な本の読解が必要で、余裕のある人でないと極められない
社会の信仰のニーズに応じて、関わりやすく簡易的な形にカスタマイズされる
最澄と空海が山にこもった理由を体感する
深井さんによると、平安時代は山にこもって修行する山岳仏教 ── 山を修行の場とし、山中で厳しい修行を重ねる仏教のあり方。平安時代初期に最澄と空海が比叡山や高野山を拠点として広めましたが流行り始めた時期でした。最澄は比叡山延暦寺を、空海は高野山金剛峯寺を開いています。
深井さんは、本を読んでいて「山にこもる気持ちが分かった」と語ります。書かれている内容がデタラメではなく、死ぬほど頭のいい人が考え抜いた結果だとわかる一方で、今の自分の素の感覚では理解できないこともわかってしまうからです。
自分を確変しないといけないんだってことをすごく感じるわけ、読んでて。
深井さんの考えでは、自分を確変させるには普段と違うことをする必要があり、その答えが山にこもることでした。普通の感覚では仏教の真理に迫れないという感覚は、ビジネスをしている日常ではなかなか持たないものだと深井さんは話します。
深井さんは、仏教が単なるロジックの突き詰めではなく、宇宙がどうあるかという存在の話をロジックで語っているため、パッとは理解できないのだと説明します。それでも、普通に本を読むより分かりやすく伝える自信はあると話し、樋口さんの「悟りを開く可能性は?」という問いには「無理ですね」と即答します。
総合大学を作った二人と、呪術が生きる古代日本
深井さんは本題の前に、最澄と空海がどういう人物かを補足します。二人は山岳仏教を進めるなかで、山の中に教育機関、いわば総合大学のようなものを作っていました。
深井さんによると、当時の仏教は今の感覚でいう宗教というより学問の一つであり、医学、建築、法学といった技術面まで包含するものとして捉えられていた側面があります。二人はそれを教える、日本で初めての総合大学的な場を作ったといいます。
深井さんは、二人が生きた平安時代はまだ古代であり、当時の日本人は今とまったく違う感覚で生きていたと話します。呪術が重要で、言霊 ── 言葉に宿ると信じられた不思議な力。口にした言葉が現実に影響を与えると考えられていましたが重視され、悪霊や怨霊が本気で怖がられていました。
その恐れは単なるオカルトではなく、仏教の世界観や学問とつながった状態で対処されていたといいます。深井さんは、この世界観を理解しないと、最澄と空海がなぜこの時代にセンセーショナルに登場したのかがわからないと強調します。
仏教という総合学問の天才たちが日本の何を変えたのかがシリーズの主題で、最後まで聴けば「なるほどね」となるはずだと深井さんは話します。次回はまず仏教そのものの話から始まります。
まとめ
最澄と空海シリーズの初回は、深井さんが仏教の深さに打ちのめされた体験を通して、二人の凄さと平安時代初期という時代の特異さを予告する導入回でした。
- 最澄と空海は同時代の天才で、鎌倉仏教へ続く日本仏教の方向性を決定づけた
- 仏教は哲学要素が濃く、密教の理解には華厳経や唯識、さらにはブッダまでさかのぼる必要があった
- 理屈だけでは届かない領域だからこそ、自分を確変させるために山にこもる発想が生まれたと深井さんは語る
- 二人は総合大学的な教育機関を作り、呪術や言霊が生きる古代日本の世界観の中で登場した



