動画配信サービスを全部契約する理由とは?
番外編のテーマは「Netflixのおすすめ作品」です。家で過ごす時間が増え、動画や映画を見る人も増えているのではないか、という樋口さんの前置きから話が始まります。
樋口さん自身はNetflixを見ていませんが、深井さんはNetflixに限らず、ほとんどの動画配信サービスを契約しているといいます。どんなウェブサービスなのか知りたい、という興味もあるそうです。
もうマジで全部入ってますよ。U-NEXTも入ってるし、Huluも入ってるしみたいな。ディズニーチャンネルも別に全然ディズニー好きじゃないですけど、ディズニーチャンネルも入ってますし。
深井さんはもともと映画が大好きです。一番好きな映画は、ホームページのプロフィールにも書いているクリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』だと話します。
クリント・イーストウッドは、なぜずっと最盛期なのか
深井さんは、『グラン・トリノ』の監督・主演であるクリント・イーストウッドという人物そのものを尊敬しています。若い頃は長身のイケメンでありながら、40代ぐらいでようやくブレイクした遅咲きの役者だった、と深井さんは説明します。
深井さんによると、イーストウッドは西部劇から出てきて、『ダーティハリー』などで上り詰めたあと、自分で映画を監督するようになりました。そして、若い頃より年を取ってから作った映画のほうが良いと感じているそうです。
もうほんとヨボヨボのおじいさんなわけ、もう。本人がね。だけど本人は監督で主役で出てて。
深井さんは、以前の配信で取り上げた百里奚 ── 中国の春秋時代、秦の穆公に仕えた宰相。高齢になってから登用され、国を強くしたとされる人物ですの回でも同じことを話したとしつつ、ほとんどの人間は途中で最盛期が終わって下降していくと言います。
引退しない、だから引退もしないし、後任にも譲ってないじゃん、全然。後発を育てようとかも思ってないわけ。自分が最先端で走ってるだけじゃん、ずっと。
『グラン・トリノ』に描かれる「人間臭さ」とは?
深井さんがイーストウッド作品を好むもう一つの理由は、作中の人間がとてもリアルに感じられることです。逆に、深井さんが嫌だと思う映画は「そんな人間いねーよ」と感じる映画だといいます。
ヒューマンドラマでありながら現実味のない人物が出てくると、深井さんは感情移入も感動もできないそうです。イーストウッドの映画は、自分とまったく違う人生を歩んできた主人公でも感情移入させてしまう、と深井さんは話します。
『グラン・トリノ』の主人公は、イーストウッド本人が演じる老人です。仕事一辺倒でフォードの工員を続けてきた男性が、定年退職後に家族との付き合い方がわからず、ぎくしゃくしながら暮らしています。
主人公はひどい人種差別主義者ですが、貧困地帯に住んでいるため、隣にアジアからの移民がやってきます。深井さんが紹介した主人公の心の変化は、次のように整理できます。
隣に来たアジア移民を軽蔑し、家族ともうまくいかない
家族とすれ違うなかで、アジア移民の家族と心が繋がっていく
深井さんは、主人公と家族、アジア移民の子どもたちとの心の変遷がしっかり描かれている点を評価しています。「面白いというより、映画としてすごい」というのが深井さんの感想です。
樋口さんが、直前のシリーズで扱ったアメリカ開拓史に通じるものがあると指摘すると、深井さんも同意します。そのうえで、イーストウッド監督作の許されざる者 ── 1992年公開の西部劇映画。イーストウッドが監督・主演を務め、アカデミー賞作品賞と監督賞を受賞しました、『ミリオンダラー・ベイビー』、『ミスティック・リバー』も素晴らしいと挙げています。
人間扱いされなかった男が尊厳を取り戻す『エレファントマン』
深井さんがもう1本挙げた映画が『エレファントマン』です。主人公のジョン・メリックは重い身体の変形をもって生まれ、「象人間」と呼ばれて見世物小屋で暮らしていた人物です。
深井さんの説明によると、ジョン・メリックは生まれたときから人間扱いされてこなかったため、自分が人間であるという感覚を持てずにいました。その彼を、初めて人間として扱う医師と出会います。
見世物小屋
「象人間」として見世物にされ、人間扱いされない
医師との出会い
初めて自分を人間として扱う医師と出会う
尊厳の回復
急速に人間としての尊厳を取り戻していく
深井さんは、白黒映画でアンソニー・ホプキンスも出演していると付け加えます。楊さんはストーリーを聞いただけでゾクゾクすると反応し、樋口さんと深井さんは実在した人物の実話だと説明しています。
『クィア・アイ』は日本の変身バラエティと何が違う?
映画の話からNetflixのオリジナル番組に話が戻ります。深井さんはプロフェッショナルの仕事ぶりを感じるのが好きで、そうした番組がNetflixには多いといいます。
1つ目は『クィア・アイ』です。5人のゲイが、ファッションに自信がない人などをトータルコーディネートする番組だと深井さんは紹介します。
見た目を良くして「綺麗になって良かったね」で終わる
本人が自分を素晴らしいと思えるところまで、精神面もトータルにサポートする
深井さんは、5人のゲイのコメントから、彼らが重ねてきた苦労や豊かな人生が伝わってくると話します。単純に人間として立派で、それがとても面白いそうです。
5人はそれぞれ、ファッション、髪型、料理、インテリアといった領域のプロでもあります。深井さんは、相手の生活を考え抜いたクローゼットの作り方に、プロらしさを感じたといいます。
ファッションが苦手な人が、普段自分がいなくなった後、服を選ぶために、選ぶことができるようにどうするかとかを考えてクローゼットを作ったりしてる感じ。
出演者にゲイの人がいる回では、母親にまだカミングアウトできていない悩みを、5人が精神的に支えることもあるそうです。樋口さんの「表面的じゃないってことだね」という言葉に、深井さんは「全然表面的じゃない」と強く同意します。
樋口さんが、深井さんの好きなポイントは人間のリアリティだとまとめると、深井さんはそれを認め、歴史を見るときも同じだと話します。
2日に1回ランウェイに立つ『ネクスト・イン・ファッション』
『クィア・アイ』のファッション担当の人物は、深井さんの記憶では確かバングラデシュ系アメリカ人で、Netflixで別の番組も持っています。それが『ネクスト・イン・ファッション』です。
深井さんは『ネクスト・イン・ファッション』を、デザイナーたちが2人組のチームで競い、毎回脱落者が出るファッション版の「テレビチャンピオン」のような番組だと説明します。
深井さんが驚いたのは、得意不得意に関係なく、その瞬間の最大限を出して世界中に見られながら評価される経験を、2日に1回繰り返すことです。
起業家でそのサービスとか出したりしたらそれに近いことは起こるんだけど、テンポが違うじゃん。2日に1回だよ。やばいよ。
深井さんは、人生で一度でもそんな経験をすれば、酷評されても絶賛されても大きな学びがあるはずだと考えています。途中で絶対諦めずに悩みながら納得できるところまで持っていく姿に、深井さんは感動したと話しています。
歴史ドラマは現地の言葉でなければ見ない?
楊さんに歴史系のおすすめを聞かれた深井さんは、Netflixには歴史系の作品が多く、当然たくさん見ていると答えます。モンゴル帝国やアメリカ開拓史を扱ったものもありますが、モンゴル帝国の作品はそれほど面白くはなかったそうです。
深井さんによると、これらはドキュメンタリーというよりドラマです。ローマ、オスマン帝国、ニコライ2世を描く『ラスト・ツァーリ』などもあるといいます。
ただし深井さんには、現地の言葉で演じていない歴史ドラマは見ないというこだわりがあります。ロシアの王朝を英語で演じられると「スーパー萎える」ため、『ラスト・ツァーリ』は見ていないそうです。
時代劇でさ、じゃあ日本の時代劇で日本人の侍が中国語喋っとってみ?見る気失せるよ。
深井さんは、英語圏の作品は平気でそういうことをすると疑問を示しつつ、メル・ギブソン監督はそういうことを絶対にやらないと付け加えています。
Netflixのコンテンツはなぜ質が高いのか
楊さんの「Netflixはなぜ質の高いコンテンツが多いのか」という問いに対し、深井さんはお金をかけていることに加え、世界中の国が番組を作って載せていることを挙げます。韓国も日本も番組を出していて、日本の作品には『テラスハウス』などがあるそうです。
深井さんは、他国のバラエティやドキュメンタリーも見られることで、国同士が競い合い、刺激し合える環境があるのではないかと考えています。「テレビ局の次のバージョン」だと感じる一方で、会員が減っているという話も聞いたと述べています。
さらに深井さんは、テレビ局ではないため放送倫理のような縛りが緩く、残酷表現なども比較的自由にできていると指摘します。これに対して聞き手側からは、収益の仕組みの違いが理由ではないかという見方が出ました。
スポンサーのイメージアップや商品販売が目的で、不適切な表現は広告主の迷惑になる
面白いと思った人が直接お金を払うため、面白いものを作ることだけをゴールにできる
話は、コテンラジオもNetflixで何か作れたらいいという方向に広がります。深井さんは「100億とかで作ってみたい」と冗談めかしつつ、実写でもアニメでも映像化はやってみたいと話します。
深井さんは、リアリティと面白さの間には究極のせめぎ合いがあるとしたうえで、リアリティがあって面白い作品は確かにあると話を締めています。
2時間座っていられない樋口さんと、映画の見方
深井さんが樋口さんに映画は見ないのかと尋ねると、樋口さんは見たい気持ちはあるものの、ほとんど見ないと答えます。
いや、2時間ずっと見てられないんですよ。
だからもう見るんやったら映画館行くとかになるんです、なんか。
だから僕小説も読めない、本も読めないし、映画も見れないんですよ。
深井さんは気持ちはわかると言い、映画館なら没入しやすいと応じます。深井さん自身も、家で見るときは2時間じっと見ているわけではなく、何回か中断していると明かしています。
最後に深井さんは、紹介した『グラン・トリノ』と『エレファントマン』は本当にいい映画だとして、リスナーにも薦めます。「深井を形成したと言っても過言ではない」という茶化しに、深井さんが「形成してない」と返して番外編は終わります。
まとめ
深井さんのおすすめ作品は、映画でもNetflixのオリジナル番組でも、実在しそうな人間の姿と、プロが本気で仕事をする姿を感じられるかどうかで選ばれています。その視点は、歴史を見るときの深井さんの姿勢にもつながっています。
- 一番好きな映画はクリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』で、イーストウッドの生き方と人間描写のリアルさを深井さんは尊敬している
- 『エレファントマン』は、人間扱いされなかった男性が尊厳を取り戻していく実話として薦められた
- 『クィア・アイ』と『ネクスト・イン・ファッション』では、出演者の人間性とプロフェッショナリズムが見どころとして挙げられた
- 歴史ドラマは現地の言葉で演じられているかどうかを、深井さんは重視している
- Netflixの質の高さについては、世界中の国による競争と、広告ではない課金モデルが理由として語られた






