話者を増やす方針はどうなる? 3人体制に戻すという結論
コテンラジオはこれまで、人文学編やニキさんの出演などを通じて、話者を増やしていく方針を掲げていました。深井さんは番組の属人性 ── 特定の人物に依存している状態のこと。ビジネスでは、その人がいないと成り立たないためリスクとされることが多いを良い意味で剥がし、自分の出演割合をゼロにはせずとも大きく減らすと話していました。
樋口さんがその方針の今後を尋ねると、深井さんは「かなり悩んだ」と前置きしたうえで、方針転換を明かします。
ちょっと僕たち3人のオリジナルに基本的に戻そうと実は今思ってるんですよね。
深井さんは、また変わる可能性もあると断りつつ、現時点ではオリジナルメンバーの3人に戻す想定だと話します。樋口さんは「あの時飲み屋で会った我々3人」と応じています。
(コテンラジオが)属人に縛られていることを企業として認知しながら、それはそれで企業戦略としても、それでいいっていう風に今僕は思っている。
なぜ属人的でいいのか?「コテンラジオは事業じゃない」という気づき
深井さんが最初に挙げた理由は、コテンラジオがバンドのような存在だということです。ニキさん編も非常に良かったとしたうえで、他のメンバーの問題ではなく、話者を増やしてスケールさせること自体が会社にとってどういう意味を持つかを、実際にやってから見直したといいます。
事業として考えれば、3人しか担い手がいない状態は避けるべきで、樋口さんも「一般的に言うとリスクでしかない」と応じます。ただ深井さんは、そこで大きな気づきがあったと語ります。
深井さんによれば、コテンラジオはブランディング活動であり、世の中にメッセージを送る活動でもあります。コテンの核がまだ確立されていない段階で、いろいろなパターンを入れて振れ幅が大きくなるのは避けたほうがいい、というのが1つ目の理由です。
室越さんの退社が促した「強制的なレビュー」
2つ目の理由として深井さんが挙げたのは、話者を増やすうえで重要なスピーカーだった室越さんの退社です。それが原因でやめたわけではないものの、いずれにせよ一度仕切り直す必要が生まれました。
その仕切り直しの場面で深井さんが改めて考えたのは、自分がコテンラジオに出て伝えているメッセージの大きさです。手前味噌だと断りながら、それはまだ大きいと感じたといいます。
深井さんは、自分以外の話者でスケールさせる方針と、自分が核となるメッセージを伝え続けて核をぶらさない方針を比べ、今の段階ではどちらがビジョンの推進に役立つかを見直しました。
深井さん以外の話者を出し、属人性を剥がしながら番組を広げる
深井さん自身が核となるメッセージを伝え続け、核をぶらさない
結論はコテンラジオは属人的でよく、それ以外の場所で属人性を剥がすというものでした。非属人的な取り組みとしてはデータベースなどがあり、「人文知と社会の架け橋になってメタ認知のきっかけを提供する」というミッションはそちらでも担えると深井さんは話します。
コテンラジオ属人的である以上さ、どっかで飽きられてどっかで終わると思うんですよ。
深井さんは、その時にはコテンが手がける音声コンテンツが一度終わるくらいの気持ちでもいい、とまで考えていると明かします。普段は企業方針をここまで話さないものの、以前リスナーに伝えた方針を大きく変える話なので伝えておきたかった、というのが今回の番外編の趣旨です。
言っていたことと違う? やってみて分かったこと
樋口さんは、今回の変更は「嘘つき」ということではなく、一度実際に検証した結果だと整理します。深井さんも、権限委譲やラジオの移管はかなりうまくいっていたと振り返ります。
深井さんによれば、深井さん以外のメンバーで一定の価値が出る音声コンテンツを担保すること自体は、できる感覚がすでにあったそうです。人文学の領域でも、まだスタートダッシュ中ながら、成長させればいけるという手応えがあったといいます。
できないからやめたというよりは、なんか本当、方針を変換するっていう感覚ですかね。
樋口さんは、深井さんの「事業じゃないと思った」という一言が一番のキーだと受け止めます。深井さんは、この場がメッセージを伝える場所であり、自分が出て喋ることの重要性はあと数年は強く存在すると話します。
それ(出演を続けること)は要は僕が社長として使える時間を減らすっていう決断でもあるわけじゃないですか。けど、やっぱり社長としてやることがこれだなっていう感じなんですよね、今は。
樋口さんは、ビジョンを世の中に伝え続ける一番の力を持つのは創始者である社長だと応じ、2人はこれが苦渋の決断だったことを確かめ合います。
バンドでありながら資本主義のルールも探る、特殊な取り組み
楊さんは、コテンラジオの難しさを「バンド活動でありながら、資本主義社会のルールにはめていくかどうか」の絶妙なバランスを探している点にあると表現します。樋口さんは「プロミュージシャンなんですね」と返しています。
楊さんによれば、コテンラジオは企業の純粋な対外向けメディアでもなく、当初メディアとしてやろうとしたものの、良い意味で想像しなかった形に育った取り組みです。中の一員から見ても、かなり特殊なコンテンツだと語ります。
深井さんは、参考になるモデルがあまりない中での手探りだとしつつ、あえて逆に振り切る考えを示します。
やっぱり一回もうゴリゴリの属人性でやった方がいいなと思ってます、今。逆に。
何らかの理由で続けられなくなったらそれは仕方ないとして、リスクヘッジに力を割くより、この体制で続けられる限り続けるほうがミッションに対して直接的にも間接的にも効果が高い、というのが深井さんの判断です。
ほぼ休まず続けてきた3人の「グルーヴ感」
樋口さんは、属人性を剥がすもう1つの理由として、3人の誰かが怪我や病気をしたときに番組を継続可能にすることがあったと振り返ります。そのうえで、3人がほぼ休まずに配信を続けてきたことを指摘します。
月木必ず上げると。で、休む時は絶対になんか理由があったじゃないですか。例えば年末年始だったり。
もともと営利目的ではないのに、続けると決めてやってきたことはすごいと樋口さんは語り、これだけ属人性の強い番組ならたまには休んでもいいと提案します。この番外編自体も、休み明けの回だと深井さんは補足しています。
僕たち3人のこのグルーヴ感みたいなのと、あと我々しか出せない価値みたいなのが、本当に社会に意味がなくなって、ニーズが完全になくなるぐらいまではやってもいいなって思ってますね。
一方で楊さんは、属人性を極めるほど3人が語れる範囲が固定され、容赦ない評価も下されるだろうと冷静に見ています。樋口さんは、特に女性がいないことをよく指摘されてきたと触れ、その意味でもニキさんの出演はとても良かったと振り返ります。
それでも深井さんは、音声コンテンツは事業ではなく、日本の人々に人文知の重要性を面白おかしく理解してもらうことが大切で、そのためにはまだこの3人でやることが重要だと考えています。
深井さんの体は大丈夫? メディア露出を控えた2023年
樋口さんは、リスナーには方針変更を「最善を選んだ結果」として理解してほしいと話したうえで、次に気になるのは「深井さんは体を壊さないのか」という点だろうと切り出します。
深井さんは、2023年はあまりメディアに出ないようにしており、働き方がだいぶコントロールできていると答えます。一方で2022年は無茶苦茶な働き方をしたと振り返ります。
2022年は無茶苦茶な働き方で、確実に疲れていた
2023年はメディア露出を控え、若干暇なくらいを目指している
体壊さないとやっぱ止めらんないんだよね、自分でね。
会社のためになることをやりたくなってしまうため、過労で体を壊すまで止められなかったと深井さんは話します。今は新しいことをやるためにも、エネルギッシュな自分であることが重要だと考えています。メンバーのおかげもあり、出雲に頻繁に帰って仕事をしない時間も取れているそうです。
コテンラジオ以外に出演していたポッドキャストもやめ、雑誌などの依頼もかなり断ったといいます。深井さんは、断ると二度と取り上げられないかもしれないという恐怖があったと明かしつつ、今は経営や社内に時間を使うべきフェーズだと判断しました。
一旦もうよっぽど事業に関係してるものじゃない限りは、今メディア露出を控えてる。これによってめっちゃリスナー減ってきたりしたらまた出ると思います。
コロコロ変わる方針と、いろいろなスピード感
深井さんは、方針について「コロコロ変わるじゃないか」とは言われるだろうと認めます。樋口さんは、それはすごいスピードで検証しているということだと受け止めます。
樋口さんは、業界や働き方によってはピンとこない話かもしれないと前置きし、自身もすぐ判断して変えたがるタイプだと話します。日本には「石の上にも三年」のような美徳もある中で、いろいろなスピード感の人がいていいと考えていると語ります。
深井さんも、自分はかなり方針を変えていて、社内はだいぶ振り回されていると笑いながら認めています。
サラディンとハンニバルで感じた原点回帰の気分
話題はこれからのシリーズへ移ります。樋口さんは、サラディンと十字軍、ハンニバルのシリーズを続けて収録したあと、一人でエモい気持ちになったと明かします。
アレキサンドロス編やった時ぐらいの感覚やったんですよ。
樋口さんによれば、ヒーローがいて戦いがあるというストーリーの運びが似ていて、当時の気持ちを思い出したそうです。室越さんがいない寂しさはとてもあるとしつつ、これはこれで楽しく、いろいろな価値を出せていると感じています。
深井さんは、ハンニバルの次はシンドラー編で、話数はいつもの半分くらいになりそうだと予想します。内容がそれほど多くなく、みんなで話すパートが多そうなため、シンドラー編も原点回帰系になるのではないかと話しています。
頭を使わなくても分かるシリーズと、その反動
深井さんは、最近のシリーズは聞く側も集中しないと意味がわからないものが多かったと振り返り、今は「頭を使わなくても分かるシリーズ」をやっていると説明します。
サラディン
集中して聞く必要がある直近のシリーズより分かりやすい
ハンニバル
サラディンより少し分かりやすかった
シンドラー
ハンニバルよりさらに頭を使わずに分かりそう
樋口さんが「頭を使わないというより、刺さる部分が変わっている」と言い換えると、深井さんも、集中しないと意味がわからない系ではないという意味だと同意します。
多分この反動でその後ものすごく頭を使わないとわからない系をやっちゃいそうな気がします。
樋口さんは、番組には第二次世界大戦をいずれ扱うという遠い目標があると触れます。深井さんは、今の流れは障害の歴史、老いの歴史と社会保障といった構造系3部作の反動で、構造系はしばらくお腹いっぱいだと話しています。
3人のオリジナルコテンラジオをこれからも
最後に深井さんは、室越さんやニキさんがいなくなって寂しく感じる人もいるだろうと気遣います。
諸行無常を感じてもらいながら、またこの3人のシリーズを楽しんでもらえたら嬉しいなと思ってます。
樋口さんが「樋口、ヤンヤン、そして深井をよろしくお願いします」と締めくくり、今回の番外編は終わります。
まとめ
今回の番外編では、話者を増やす方針を実際に試したうえで、コテンラジオを3人の属人的な番組として続けると決めた理由が語られました。背景には、番組は事業ではなくメッセージを伝える場だという気づきと、室越さんの退社による仕切り直しがありました。
- コテンラジオは深井さん、楊さん、樋口さんのオリジナル3人体制に基本的に戻す
- 番組はブランディングとメッセージを伝える場であり、属人性を剥がすのは他の取り組みで行う
- 方針変更は「できなかったから」ではなく、検証した結果の方針転換とされている
- 深井さんは2023年はメディア露出を控え、働き方をコントロールしている
- サラディン、ハンニバル、シンドラーと、比較的分かりやすいシリーズが続く見通し





