新橋の人混みで見えた「介入」の多さ
今回のアップデートログは、デジタル庁の公務で自動運転車に試乗した体験からはじまります。
デジタル庁を出発し、新橋のSL広場周辺という、ランチタイムでかなり人が多い場所を自動運転で走ったそうです。
ベースとなった車種はアルファードで、乗り心地そのものはとても良かったと話されています。
ただ、実際に走ってみると、ハードルの高さが見えました。ドライバーがハンドルやアクセルを操作して制御を引き取ることを「介入」と呼びますが、その介入が何度も必要になったといいます。
歩行者が明らかに渡らないのは人間の感覚ではわかるんだけれども、全然止まって動かなかったり、逆に人が歩いているのに、この速度で突っ込んで大丈夫?みたいな。なかなか怖かったんですよね。
歩行者が渡るかどうかの判断が難しく、止まりすぎたり、逆に速度を落とさず進んだりする場面があったようです。こうした介入が何度も起きたことから、実用化にはまだ難しさが残ると感じたと話されています。
自動運転AIは「走行データ」で運転を覚える
そもそも自動運転はどう動いているのか。今回試乗した車は、判断をすべてAIが行っていたそうです。
興味深いのは、その学習方法です。道交法のルールを事前に教え込んでいるわけではないといいます。
たとえば「黄色い車線では車線変更してはいけない」「赤になったら止まる」といったルールを事前に学習させるのではなく、ひたすら走行データを学習させることで運転を習得させる仕組みだそうです。
僕らだって車の免許を取る時は、教習所へ行って学科と実技の両方をやるじゃない。なんだけど、このAI自動運転は実技のみで学習していく、そういう仕組みなんですよ。
人間は学科と実技の両方を学びますが、このAIは実技にあたる走行データだけで学んでいく。そこに川崎さんは驚いたと話されています。
この仕組みだからこそ、どれだけ大量の走行データを学習させられるかが、開発の重要なポイントになります。
事前ルール学習をしない
道交法などをあらかじめ教え込む方式ではない
走行データを大量に学習
実際の走行映像などをひたすら学ばせる
運転を習得
データを通じてAIが判断を学び、走行できるようになる
開発会社の悩みは「データ量が足りない」
走行データが鍵になる一方で、それが開発会社の悩みでもありました。
開発会社は自前で走り回ってデータを生成し、AIに学習させてきたそうです。しかし規模の大きな会社ではないため、リソースが限られ、集められるデータ量が少ないという課題がありました。
では、日頃から常に街中を走っているものは何か。川崎さんが挙げたのが、タクシーと宅配便です。
ヤマトさんとか佐川さんとか、そういう宅配事業者、あと郵便局。こうしたところの車はもう常にドラレコをつけて走り回っているから、走行データの量が半端ないんですよね。
これらの車両は常にドライブレコーダーを付けて走っているため、走行データの量が非常に多い。開発会社としては、そのデータを使わせてほしいというわけです。
重要な資源となるのはドライブレコーダーの動画で、さらに将来的には街の音なども学習材料になり得ると話されています。
データ提供を阻んでいた「個人情報」の壁
では、宅配事業者やタクシー会社にデータ提供を働きかけているのか。アプローチはしているものの、事業者はデータを出したがらないといいます。
その大きな理由が個人情報でした。ドライブレコーダーに映る人の表情なども、身体的特徴として個人情報に該当する恐れがあるためです。
そのため事業者が提供に踏み切れず、データが集まらないという実態がありました。
これまでは提供する場合でも、個人情報に配慮してモザイクをかけることが一般的でした。しかし自動運転の開発では、歩行者の表情なども判断材料になるため、モザイクがかかると使えないデータになってしまうそうです。
モザイクなんかかけずにそのままくださいよって言うと、事業者側は、いや、それだと個人情報保護法に抵触するかもしれないから出せません、という風にデータ提供を拒んでしまう。
個人情報保護法改正で日本のAI開発を守る
この課題に対して、川崎さんが今国会で手がけたのが個人情報保護法の改正です。
改正のポイントは、AIの開発のためであれば、個人情報の扱いを一定緩めるというものだと説明されています。
具体的には、受け取る側がしっかりとした管理体制を整え、秘密保持契約なども結んでおけば、モザイクをかけずにデータを提供しても問題ないという特例を作ったそうです。
個人情報への配慮からモザイク処理が必要で、開発に使いづらいデータになりがちだった
適切な管理体制と秘密保持契約のもとで、モザイクなしのデータ提供が可能に
タクシーのドライブレコーダーに入っている音声なども、消さずに提供できるようになるといいます。
この改正について、自動運転の会社は大きな期待を寄せていたそうです。一方で、国会では野党から反対され、修正が出される状況にもなったと話されています。
皆様の生活に役立つAI開発が、どんどんアメリカなどの大国にやられていって、日本が全く太刀打ちできなくなってしまう。そういうことを危惧されていたんですって。
野党の懸念と、これから必要な説明努力
人口が減り人手が足りなくなる日本において、AI開発のために個人情報保護法とデータ利活用法を改正できたことを、大きな成果だと川崎さんは振り返ります。
同時に、野党が心配する内容については「心配いらない」としながらも、その点をきちんと説明しきれていなかったと反省も語られています。
そのうえで、政治家の言葉よりも、事業者の直接の声のほうが伝わりやすいと考えていると話されています。
AI開発事業者の皆様も、自分たちの開発の現状や日本の状況、他国の開発状況などを、与野党問わずいろんな国会議員に説明をしてほしい。
最終的にAI開発は、日本の産業の成長や生活の利便性をゴールにすべきだと述べ、そうした世の中になればいいと締めくくっています。
まとめ
自動運転車の試乗で見えた介入の多さから、AIが走行データで運転を学ぶ仕組み、そしてそのデータ活用を阻んでいた個人情報の壁と、それを解決する個人情報保護法改正まで、一連の流れが語られた回でした。
- 新橋の人混みでの試乗では、歩行者判断の難しさから何度もドライバーの介入が必要だった
- 今回の自動運転AIは道交法を事前学習せず、走行データだけで運転を習得する仕組みだった
- タクシーや宅配便の膨大な走行データが求められる一方、個人情報の壁で提供が進まなかった
- 今国会の個人情報保護法改正で、管理体制と秘密保持契約を前提にデータ活用が可能になった
- 日本のAI開発を守るには、事業者自身が与野党へ現状を説明していく必要があると語られた
