画像を生成しないのに動画ができる、という矛盾
冒頭で投げかけられたのは、AIで一番早く解説動画を作るコツは、AIに一切画像を生成させないことという、一見矛盾した主張でした。
動画を作るのに画像を作らない。この一言だけを聞くと、では何で動画を組み立てるのかという疑問が残ります。
今回紹介されたのは、大手AI動画サービスのHeyGenが無料公開した「HyperFrames」というツールです。記事のテキストを投げるだけで、音声もアニメーションも付いた5分半の動画が完成すると説明されています。
しかも、動画制作で最も時間がかかって重たい画像生成を一切行わず、追加課金もゼロだという点が強調されました。
記事は、前半の無料エリアで動画生成の仕組みを紹介し、後半の有料エリアでAIとの試行錯誤の記録を明かす構成になっています。
画像生成の「待ち時間」と「一貫性の欠如」という壁
通常、AIで解説動画を作ろうとすると、スライド用の画像をAIに生成させ、それを並べて動かす手順になります。しかし発行者のテツメモさんは、ここに強いフラストレーションを感じていたと語られます。
最大のネックとして挙げられたのは、待ち時間と一貫性の欠如の2つでした。
例えば5分間の動画のために20枚のスライド用画像を生成させると、プロンプトを投げてから約15分は待たされるといいます。作業のテンポが大きく損なわれる時間です。
さらに厄介なのが一貫性の問題です。AIは毎回少し違う絵を出すため、同じ解説者を指定しても、スライドが切り替わるたびに顔が変わってしまうのです。
毎回違う顔の俳優が勝手にキャスティングされて登場するようなものですね。それは視聴者も気が散っちゃいます。
動画シリーズとしての統一感が失われるこの問題が、画像生成に頼るやり方の弱点として整理されました。
HTMLとアイコンで動画を組み上げる仕組み
そこで登場するのがHyperFramesです。これはAIに絵を描かせるのではなく、HTMLとCSSで動画を組み上げるという発想です。
絵の代わりに使われるのが、13万点以上ある手描き風の無料アイコン集です。AIが文脈を読み取り、自動でアイコンを選んで配置します。
売上の話ならコインのアイコン、アイディアなら電球のアイコンといった具合に、AIが意味を汲み取って素材を選んでくるとされます。
画像生成という最も重たい工程を丸ごと外したことで、待ち時間がほぼゼロになります。後から文字を修正してもデザインが崩れず、Claudeなどのサブスク代だけで完結するため、動画ごとの追加API課金もかかりません。
1本あたり約15分待つ。切り替えのたびに絵が変わり統一感が崩れる。動画ごとに課金がかかることもある
アイコンをAIが選んで配置。待ち時間ほぼゼロ。文字修正でも崩れず、サブスク代だけで完結
プログラミング不要で「指さして直す」編集
HTMLで動画を作ると聞くと難しそうですが、プログラミングの知識は一切不要だと説明されます。
HyperFramesには「Studio」というブラウザ上の編集画面があります。画面上の文字や色をクリックして選び、AIに自然言語で伝えるだけで修正できる仕組みです。
座標をいくつにしてとかじゃなくて、本当に指さしてアシスタントに頼むような感覚で通じるってことですか?
これまでのAIへの指示は、全部丸投げして妥協するか、自分でコードを開いてドツボにはまりながら直すかの二択でした。自分で直そうとして全体を壊してしまう経験に、心当たりのある人は多いはずです。
Studio機能は、AIに作らせて、気になるところだけ画面で指さして直すという第三の道を開いたと位置づけられました。
一日6回作り直した、AIとの試行錯誤
ここからが有料エリアの内容です。テツメモさんは、読者が記事を投げるだけで動画ができる状態にするためのツール一式を自作しましたが、一日で6回も根本から作り直したといいます。
賢いAIと、指さして直せるツールがあるのに、なぜそこまで苦労するのか。その背景にはAI特有の性質があると語られます。
最初に「これを動画にして」と頼んだところ、できあがったのはなんと25秒の動画でした。解説動画ではなく、ショート動画のような長さです。
テツメモさんの中には5分前後という暗黙の了解がありましたが、それが伝わっていなかったため、AIは最短で要点だけをまとめて終わらせてしまったのです。
人間のアシスタントなら空気を読んで5分程度で作るところを、AIには「デフォルトは5分」と明確に伝える必要がある。ここに人間との違いが表れています。
同じ画面が続く単調さを、12種類の「型」で解決
長さを直させた後、今度は別の問題が起きました。そのまま作らせると、たった2種類のレイアウトを10回以上繰り返す、退屈な動画になってしまったのです。
5分間ずっと同じような画面を見せられる状態は、視聴者にとって苦痛になりかねません。
そこでテツメモさんは、比較や大数字、タイムラインといった12種類の型を定義し、ルールを書き足しました。
- 比較・大数字・タイムラインなど12種類の型を定義する
- 同じ型を3回続けない
- 最低5種類は使う
一発で完璧な指示を書こうとするのではなく、動くものを見て違和感を言葉にしてぶつけていく。この対話のプロセスこそが重要だと整理されました。
違和感をルールに変換していくようなコツなんですよ。
エラーは出ないのに使い物にならない「3つの罠」
話の中でも印象的なのが、自動チェックツールでは「エラーなし」の合格が出るのに、人間が見ると全く使い物にならないケースです。システムが合格と言っていても意味が破綻しているという、見落としやすい落とし穴でした。
1つ目はアイコンの勘違いです。メモという意味で「ノート」という言葉を使ったところ、AIは音楽の音符のアイコンを取ってきてしまいました。
画像自体は壊れていないためシステム上はエラーになりませんが、真面目な解説の途中に音符が出れば文脈は破綻します。機械は意味まではチェックしてくれないのです。
2つ目は日本語の壁です。フリーのVOICEVOXを連携させた際、字幕は「ブース」と合っているのに、音声は「ボース」と誤読していました。目でスライドを確認するだけでは見抜けず、耳で聞かないと気づけない罠です。
3つ目は、その読み間違いを直そうとして起きた「プロンプトの衝突」です。台本に「ブース|ブース」とふりがなを指定したところ、動画の長さが50秒も短くなってしまいました。
原因は、台本をマークダウン形式の表で作らせていたため、AIが縦棒を表のセルの区切りと認識し、そこで文章が切断されたことでした。最終的にはイコールを使った書き方に落ち着いたといいます。
予測ではなく「実測値」で合わせる逆転の発想
もう一つ紹介されたのが、AIが勘で決めた秒数と、実際の音声の長さに38秒ものズレが生じたエピソードです。
AIは文字数から時間を予測するだけなので、音声構成特有の「ため」や「間」までは計算できません。
そこで必要だったのが、AIに予測させるのではなく、先に音声を作って実測値でスライドを合わせるという逆転の発想でした。
予測ではなく実測値ベースにするという考え方はすごく本質的ですよね。
泥臭い検証を重ねた結果として、予測ではなく実測に基づくという本質的な考え方にたどり着いた過程が語られました。
配られるのは「完成品」ではなく「出発点」
テツメモさんは、これらの試行錯誤を経て完成したエラー回避のプロンプトや各種テンプレート、設定ファイル一式を、ZIPファイルで有料購読者に配布しています。
使うためにマニュアルを人間が読む必要はなく、読者は指定された文章をClaude CodeなどのAIエージェントにコピペするだけです。不足しているツールのインストールから動画生成まで、AIが案内してくれます。
ただし、テツメモさんはこれを完成品ではなく「出発点」と呼んでいます。
完成品を配るのではなく、読者が自分のブランド色や好きな音声にカスタマイズするための土台を配るという考え方です。
一番重たい工程を、丸ごとなくしてみる
最後に、動画制作以外にも応用できる問いかけが示されました。今回で言えば画像生成にあたる、一番時間がかかっている工程を、思い切って丸ごとなくしてみるという発想です。
普段の仕事の中で、実はやらなくても別の方法で代替できる重たい工程はないか。そう探してみることが提案されました。
まとめ
この回は、画像を生成しない動画制作という手法と、その裏側にあったAIとの格闘の記録を紹介するものでした。AIに意味を理解させる難しさと、それを乗り越える対話の面白さが詰まった内容です。
- HyperFramesは画像生成の代わりにHTMLとアイコンで動画を組み、待ち時間と一貫性の問題を解消する
- AIは言われたことは正確にやるが、言われていないことはやらない。長さや構成は明示する必要がある
- エラーチェックが通っても意味は破綻しうる。アイコンの誤選択や読み間違い、記号の衝突は目と耳で確認する
- 時間は予測ではなく、先に音声を作って実測値で合わせるのが本質的
- 配られるツール一式は完成品ではなく出発点であり、自分の環境に合わせ込むことが学びになる




