AI大好きな跡継ぎが語る、これまでのAI・ITとの関わり
第5回のテーマは、ローカル企業のAIです。桺本さんは老舗を継ぐ跡継ぎでありながら、AIやITに深く関わってきた人物として紹介されます。
桺本さんは2019年ごろからNotionのアンバサダーを務め、その後Canvaのコミュニティマネージャーや、BytedanceのLark ── Bytedanceが提供するチャット・ドキュメント・カレンダーなどを統合したビジネス向けコラボレーションアプリ。桺本さんの会社でも利用されているの中の人としても活動してきたと話します。
さらに少し前までは、東京のAIスタートアップで副業もしていたそうです。
跡継ぎなのに何してんねんっていう感じなんですけど、AIとかITとかDX大好きで、そういう活動も跡継ぎの傍らやってたりします。
小平さんが補足します。Notion ── メモやデータベースを自由に組み合わせられるアプリ。自由度が高く、AIを組み込んだ使い方もできるはデータベースやメモのアプリで、Canvaはプレゼンや画像を作るクラウドサービスだと説明されます。
どちらも学生や一般の人にも広がっていて、小平さんの妻もCanvaでビラやポスターを作っているそうです。
最近使ってよかったAIサービスは?二人のマニアック雑談
本題の前に、最近使ってよかったAIサービスの雑談が交わされます。
小平さんが挙げたのはClaude Code ── Anthropic社のClaudeをターミナルから使い、コマンド操作やツール連携で作業を自動化できる開発者向けの仕組みでした。ターミナルからGmailの処理やスライド作成、Slackの返信までできるよう、一日がかりで環境を構築したと話します。
しかもそれ、声でも命令できるの。ターミナルに音声入力すればいいので。
桺本さんは、非エンジニアでもパソコン内の操作をAIにさせられるCoWorkについて尋ねます。小平さんは、同じことがClaude Code上からもできると答えます。
本当に自分の手を動かさなくてもよくなったり、僕の大嫌いな繰り返し作業みたいなことの自動化を、ようやくできるAIができるようになったなと、すごく嬉しいなと思ってます。
話が深くなりすぎるため、詳細は番外編に回すことになり、本題へ移ります。
3層で考える、コビラ株式会社のAI活用の実態
桺本さんは、AIをやるべきだとわかっていても、実際に活用できている中小企業は少ないと実感していると切り出します。そのうえで、小平さんの会社の使い方を尋ねます。
小平さんは、AI利用を経営者層・管理職層・スタッフ層の3層で考えていると答えます。
現場・スタッフ層
議事録の自動作成、経費の仕分けルールの標準化、請求書送付の簡単な自動化
管理職層
現場と経営をつなぐ層。ITリテラシー次第でボトルネックになりやすい
経営者層
情報収集と出力を高速化し、意思決定に活用する
現場では、GeminiのGemやNotebookLM ── Googleが提供する、資料を読み込ませてその内容に基づき要約や質問応答ができるAIツールで仕分けの知識を平均化したり、GAS(簡単なマクロ)をAIに作らせて請求書送付を自動化したりしているそうです。
AI活用の基盤はGoogleに一本化していると話します。
Gemini3.0が出てからは、もうGoogleに今一択ですね。だから社員全員にGoogleのワークスペースは付与してあります。
全員向けにAI研修を実施したところ、利用率は想定の3割を大きく上回り、7割強に達していたそうです。
一方で桺本さんの会社は、LarkとMicrosoftの環境で運用しているため、Lark側のAI機能がまだリリースされておらず、組織としての活用はこれからだと話します。
そのため現状は、個人ベースでChatGPTを使ってもらう形が中心だといいます。
経営者の意思決定を変えるAI、そして「余った時間」問題
小平さんは、経営者として使っていると、使っていない時代にはもう戻れない感覚があると語ります。
ちょっとこういうことを知りたいなと思ったら、ディープリサーチを行ってレポート作って、それをスライドにパッとまとめさせるみたいなことが、すごく精度高く簡単にできるようになった。
桺本さんも、メールの返信や資料作成、CSVを取り込んだ分析など、業務で幅広く使えると応じます。ニュース記事を音声化し、長い通勤時間に聞いて情報収集することもあるそうです。
小平さんは、私設秘書のようなエージェントを作った例を紹介します。朝ログインすると、SlackやGoogleの議事録、ToDoアプリ、Gmailを横断して、その日やるべきことを重要度別に整理してくれるといいます。
これは前日にClaudeで作ったばかりで、Skills ── Claudeで一連の作業を1つのパッケージとして実行できるようにする機能。小平さんはこれを使って毎朝の秘書機能を構築したという機能を使って組んだそうです。
一方で、AIで効率化した結果、余った時間の使い方が話題になります。
AIを使って業務効率化してるんですけど、余った時間、ほんまどうしよう問題はありますね。
余った時間こそ、接待ゴルフと接待飲み会、AIできないから。人に会いに行くとか、旅行に行くとか、そっちの方に時間使おうかなって思ってます。
中小企業がAIを使うべき2つの理由
桺本さんは、中小企業がなぜAIを使うべきか聞かれることが多いとして、小平さんに考えを尋ねます。小平さんは、使った方がいいと答え、大きく2つの理由を挙げます。
1つ目は、専門性の補完です。地方では優れた専門家を見つけるのが難しく、レベルの判定も、費用の妥当性も判断しづらいと指摘します。
AIにはベストプラクティスが入っているため、経営者の壁打ち相手として使え、専門家を1人雇うよりも成果が出る場合があると話します。
2つ目は、地方で深刻な人手不足の解消です。議事録作成や帳票の突合のような、人間でなくてもよい作業はAIに任せるべきだといいます。
昔だったら新人さんが全部聞いて議事録を一日がかりで作るみたいなことがあったけど、そんな無駄なことをしてる暇があったら稼いでこいと思うので。
桺本さんは、人間が何をして、AIに何をやらせるかを区別することが、これからの組織づくりのあり方だと応じます。
小平さんも、ガス会社を例に、工事や顧客対応など人でしかできない仕事にリソースを割き、オフィスでのエクセル作業などはシステムに任せるべきだと語ります。
現場へのAI導入と、音声入力が持つ可能性
小平さんが特に探求したいテーマとして挙げるのが、現場の人たちに使ってもらうAIの使い方です。
桺本さんは、フィジカルな業務はAIを取り込めないと言われがちだが、音声入力ができると状況が大きく変わると指摘します。
工事やってる時とかって、でっかい軍手みたいなやつが取れなかったりするので、フリックで入力するのは難しいんですけど、それが音声入力できるようになると、いろんなことが変わる。
これまで一度事務所へ戻って日報を入力していた作業を、現場でできるようにするだけでも生産性は上がると話します。バックオフィスだけでなく、現場への導入こそ地方でのインパクトが大きいという見立てです。
予測不能なAIの進化と、3年後の仕事のかたち
AIの進化スピードの速さに、二人とも驚きを共有します。ディープリサーチが登場したのが1年ほど前、Manusもまだ1年経っていないという状況です。
1年後、3年後、5年後にどういう時代になってるのかを逆算して、組織を作っていかないといけない。
小平さんは、今後のAIについて2つの見立てを示します。
1つは、AIエージェントが半自律的に動く仕事環境が広がることです。エンジニアでなくても、業務フローに合わせてエージェントを短時間で作れるようになると話します。
その結果、人がやることが減り、現地に行くなど人でしかできないことの価値が上がると考えています。ただし歴史上、効率化しても仕事は不思議と減らないとも付け加えます。
もう1つは、ITの仕事の変化です。かつて5人のチームで3ヶ月かけて作っていたサービスが、1人でエージェントを並行して動かすことで短時間で完成する事例が実際に起きていると語ります。
ただコードを書く人っていう役割はなくなってきて、プロマネであるとか、それを導入するSEとかSIerみたいなところに価値が移っていくのかなと思ったりしてます。
AI導入が失敗する典型と、社長が触るべき理由
桺本さんは、予測不能な時代だからこそ、中小企業の経営者がAIを触りまくることが今やるべきことだと述べます。
これに対し、小平さんはAI導入の典型的な失敗例を挙げます。
触ったこともない社長が雑誌を読んで、部下に「お前、AI会社で使えるようにしろ」って言って。これ、絶対失敗するんですよね。
一方で、ずっと触っていればAIの限界も見えてくるといいます。小平さんは、AIが作った文章には独特の「匂い」があると話します。
さらに、AIが増えることで手書きの文章や手作りのカップなど、人が作ったものの価値が上がるのではないかという海外記事の話にも触れます。
採用面接がAIのアバターで行われる時代が来たとしても、逆に一次面接から社長が出てくる会社が新鮮に映るといった、逆張りの動きも出てくると予想します。
だからこそ、人がいる意味のある部分は残し、どうでもいい部分はAIに代替する、メリハリをつけた設計を社長以下でしていく必要があると語ります。
生成AIの特性理解と、人事領域という相性のよさ
桺本さんは、社長が生成AIの特性を理解することの重要性を強調します。参考として、noteの深津さんが書いた記事に触れます。
その記事では、完璧性を要求する仕事や、ステップが長く連鎖する仕事は生成AIにやらせない方がいいという点が書かれていたと紹介します。
生成AIは同じことを100パーセント再現するのが不得意で、それを魔法のように誤解すると失敗すると指摘します。同じ処理を繰り返すだけならRPA ── 定型的なパソコン操作を自動化するソフトウェア。決まった手順を正確に繰り返す用途に向くの方が向いており、生成AIは毎回改善してしまうこともあると説明します。
小平さんは、日置市とオンライン学習のスクーと組み、地元企業向けの生成AI講座を半年かけて行っていると話します。ここでも経営層・管理職・現場層に分けて実施しているそうです。
すると、経営層と現場はやる気があるのに、管理職がボトルネックになりやすいと語ります。
管理職の人をいかに残業を減らし、楽にするかみたいなことをちゃんとこしらえて行うと、会社の中で一気に進んでいく。
具体例として挙がったのが人事評価です。計測可能でない曖昧な目標をAIで書き換えやすくしたり、行動規範にどれだけ沿えたかをメッセージのログから一次評価させたりして、上司の負担を減らしているといいます。
桺本さんも、人事制度はAIと相性がよいと応じます。目標管理でSMARTの法則 ── 目標をSpecific(具体的)・Measurable(測定可能)・Achievable(達成可能)・Relevant(関連性)・Time-bound(期限)で整理する考え方に沿っているかをチェックさせたり、1on1の録音を分析してフィードバックの仕方を助言させたりすることを準備中だと話します。
明日から何をすべきか。まず社長が有料版を使う
最後に、これからAIを導入する中小企業に向けたメッセージがまとめられます。
小平さんは、地方企業がAIを導入する意味を、専門性の補完と、コア業務のAI化による人手不足・ノウハウ不足の解消の2つに整理します。特に人事系での活用がよいと述べます。
そのうえで、明日から何をすべきかを示します。
有料と無料では精度や確からしさが違うとされているため、月3、4000円ほどの有料プランを契約し、社長自身がしっかり使うことを勧めます。
桺本さんも、気になる有料サービスを3つ4つ契約して使ってみると、AIのことがかなり理解できると後押しします。次回はAIの番外編として、より踏み込んだ話をする予定だと告知されます。
まとめ
中小企業こそAIを使うべき理由は、専門性の補完と人手不足の解消にあります。そして成功の鍵は、まず社長自身がAIを触り、その特性を理解することだと語られました。
- AI活用は経営者・管理職・現場の3層で設計し、管理職の負担軽減が全体を進める鍵になる
- 専門家を見つけにくい地方でも、AIは月数千円で専門性を補完する壁打ち相手になりうる
- 議事録や帳票突合など人でなくてよい作業はAIに任せ、人でしかできない仕事に時間を割く
- 生成AIは完璧性や長い連鎖処理が苦手で、その特性理解が導入の成否を分ける
- 明日からの第一歩は、有料プランを契約して社長自身が限界まで使ってみること






