なぜ今、プロデュースの話をするのか
この番外編は、川原卓巳さんが緊急ですがけんさんに時間をもらって収録した回です。川原さんは、厚利少売ラジオでプロデュースそのものを正面から話したことがあまりなかったと切り出します。
川原さんはこの番組のプロデュースに携わり、すがけんさんの話を本の形にして届けてきました。一方のすがけんさんも、プログラマーからプロデューサー的な立ち位置へとキャリアを変えてきた人です。
拓さん、どっちかっていうと人物や人物に伴うプロデュースで、僕はどっちかっていうとディズニーとかサービスに伴うプロデュースが多かったですけど、きっとね、本質は近いとこあるでしょうね。
川原さんは、最近いろいろな場所でプロデュースの重要性を耳にするようになったと話します。すがけんさんは、企業や法人格ではなく個人が目立ってよい時代にやっとなってきた、と応じました。
川原さんによれば、企業のメッセージは法人格のままだと届きにくく、経営者や事業責任者が個人として発信することで最終消費者まで届くケースが増えているといいます。だからこそプロデュースがもっと知られる必要がある、というのが川原さんの問題意識です。
川原さんは、最終的には自身が運営する「プロデュースの学校」の生徒募集につなげたい、とオチを先に明かしてから本題に入ります。すがけんさんはこの前置きを「誠実ですね」と受け止めました。
プロデュースの学校に生まれた「セルフプロデュース学科」
プロデュースの学校は今回が2期目で、通算では3回目の募集です。0期生、1期生に続く2期生の募集にあたって、学校はリニューアルされています。
これまでの「プロデューサー学科」は、誰かをサポートしたりプロデュースしたりする、いわば裏方を目指す人向けでした。2期からはそれに加えて、インフルエンサーや起業家、経営者が自分自身をプロデュースする方法を学ぶ「セルフプロデュース学科」が新設されています。
誰かをサポートし、プロデュースする裏方を目指す人向け
インフルエンサー、起業家、経営者などが自分自身をプロデュースする方法を学ぶ
定員は各学科12名ずつ、計24名の予定です。川原さんは、すでに定員以上の申し込みがあるとしながらも、もっと多くの人に知ってもらい挑戦してほしいと話しています。
セルフプロデュースは「5点でもいい」理由
すがけんさんは、2つの学科の違いを点数のたとえで説明します。プロデューサー学科は、プロとしてお金をもらう以上、責任を取り、値付けも厚利少売にしていく必要があります。そのため、80点以上でないとダメという基準が自然と決まってしまうといいます。
一方でセルフプロデュースは、自分自身のことなので、そんな基準を言っている場合ではないというのがすがけんさんの考えです。
でもセルフプロデュースの方は自分なんだから5点でもいいから追加で知っておかないと。
だって結局自分は良くなんないじゃないですか。
すがけんさんはさらに、受かるかどうかもわからないうちから応募を悩む人が多いことに疑問を投げかけます。悩む時間があるなら、受かるための努力をしたほうがいい、という話です。
あなたが悩んでる時間、受かるための努力した方がいいっすよっていうことの方が多いから、そんなことに悩むぐらいならちゃんと応募してみる。
すがけんさんは、自分の現在地を知る意味でも応募してみるのはよいかもしれない、と付け加えました。川原さんも「プラス5点でも10点でも上がれば絶対人生変わる」と強く共感しています。
すがけんさんによれば、自分をプロデュースできなければ、お金を払ってプロデューサーを雇うしかありません。ただ、自分である程度の感覚を持っていないと、誰を雇えばいいか、どう頼めばいいかもわからないといいます。
プロデューサーは「傘の頂点」
川原さんは、マーケティングや経営と同じく、プロデュースは概念として特にわかりにくいものだと前置きし、すがけんさんに定義を尋ねます。
すがけんさんは、辞書的には「生産する、作り出す」という意味だと紹介したうえで、自分の中ではプロデューサーは「プロジェクトにおける傘の頂点」だと答えます。
結局ディレクターがいようが、ADがいようが、演者がいようが、全ての人もちろんリスペクトではあるけど、これやろうよって言う人がプロデューサーだから。
すがけんさんの説明では、プロデューサーはお金を集め、多種多様な才能を集め、俯瞰して形を作る仕事です。映画のクレジットで監督より上にプロデューサーの名前が出るのは、優秀な監督、音楽、演者、予算をすべて集めてくる役割だからだといいます。
この構造を最小単位まで小さくしたものがセルフプロデュースです。演者も編集もプロデュースも自分一人で担う、という捉え方です。
プロデュースとは「世に問う俯瞰した力」
川原さんは、プロデューサーの重要性は業界の中では認知されている一方で、一般消費者や社会には理解されていないと指摘します。特に日本では、セルフプロデュースに欠かせないプロデュース能力が定義されておらず、どう身につければいいかわからない状態だと話します。
すがけんさんは、プロデュースを「世に問う俯瞰した力」だと表現します。
私はこれがやりたいとか、私ってこういう人だっていうことを、演者としては思うけど。でもそれって見たい人いるのかな?とか、もっと違う価値あるんじゃない?みたいな。
(最小単位で言うと)演者と視聴者の間、重なりを見つけるところがプロデューサーって感じが僕はしますね。
川原さんは「全く同じことを言おうとしていた」と応じ、自分の言葉でプロデュースを定義します。
本人の思う魅力や強み、伝えたいこと、やりたいこと、できることの輪と、世の中が求めている、自分に特に求めてくれるものっていうのの重なりの一番際でパワーが強いところに点を打ち、それを事を成していくっていうのがプロデュースだと思って。
二人の定義を並べると、プロデュースは「本人がやりたいこと」と「世の中が求めること」を掛け合わせる作業だと整理できます。
謀反も起きる、中身ゼロから始めた学校
川原さんは、プロデュースは一人で完結する場合もあるものの、最終的には人を巻き込み、人・物・金・情報を統合するチームづくりが必要だと話します。プロデュースの学校では、誰をチームに入れるかまで含めて学ぶといいます。
驚かされるのは0期の進め方です。川原さんは「プロデュースの学校を始めます。中身はゼロです。この中身を作るプロデュースをあなたたちがやってください」というお題で学校を始めたと明かしました。
だって全部の世界が整ってからやることをやりますっていうのって、それ演者なんですよね。
プロデューサーってまだ何もないところから一人の情熱だけで、もうどんどん突き進んでいく人じゃないといけないから。
すがけんさんは、この形式を、川原さんから答え合わせをしてもらえるOJTだと評価します。テキストを読んでできた気になるより、実際に作ってフィードバックをもらうほうが実戦的だという見方です。
ただ川原さんによれば、実際には思いのほか大変で、謀反や反乱まで起きたそうです。そのぶん全員が痛みを伴う学びをして、大きく成長したといいます。
謀反の捌き方とか書いてない。
すがけんさんは、やりたくない人が出る、方針が違うと言われる、お金を出す出さないで揉めるといった出来事こそプロデュースのリアルだと話します。テキストやゲームなら削ぎ落とされるダメージコントロールや利害調整を体験できる点が、この学校の良さだという評価です。
川原さんは、プロデュースができる人が増えることが国力を上げる鍵の一つであり、自分にできる最大の社会貢献だと考えています。キャリアで得た人脈やリソースをフルに解放し、次の面白いプロデューサーが生まれてほしいと語りました。
「作り出す」から「世に問う」へ
すがけんさんは、冒頭で調べた「生産する、作り出す」という辞書的な意味を振り返ります。間違いではないものの、今の話を聞くと「世に出す」「世に問う」というニュアンスのほうが強いと感じたといいます。
すがけんさんの見立てでは、ものがなかった昔は作り出すことがプロデュースでした。しかし今はものも人も演者もあふれていて、「この私どうですか?」を問わなければならない時代です。
もうね、隙間探ししかないっすよ。
もうメジャーなものは全部埋まってるんだから。
すがけんさんは、新しく生まれた視聴者や購入者の欲望に目をつけ、「こんな私、こんなものいかがですか」を問うことが、今のプロデューサーの能力かもしれないと話します。
川原さんは、起こせる変化は足す・引く・掛ける・割るの4つしかないとし、そのどこに自分という命をはめると世の中に一番役立つかを探すのがプロデュースだと続けました。
ものが少なかった時代。生産する、作り出すことがプロデュース
ものも人もあふれる時代。新しい欲望の隙間を見つけ、世に問うことがプロデュース
数年ごとに肩書きを変える、すがけんさんのセルフプロデュース
川原さんは、すがけんさんが数年ごとにキャリアや肩書きを変えるときのやり方が、まさにセルフプロデュースだと指摘します。
川原さんの描写では、すがけんさんは未来を自分の頭で考え、その領域で一番賢い人とお茶を飲みながら壁打ちし、数年先の世界地図を作ります。そのうえで、これまでの道と次に役立てそうな場所を重ねていくといいます。
すがけんさんは今、仕事のほとんどを辞めた状態にあり、わざわざ痛みを伴いながら進めていると話します。川原さんはこれを、日々のコストは変わらないまま収入を減らす「マイナス」の選択だと表現しました。
すがけんさんがそれを選べる理由は、「問う力」は多分あるだろうという自信です。すがけんさんは、ジブリの鈴木さん ── スタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫さん。宮崎駿監督の作品を世に送り出してきた人物として知られていますと宮崎駿さん ── スタジオジブリのアニメーション映画監督。『千と千尋の神隠し』などで知られますの関係を引き合いに出します。
鈴木さんがやっぱりプロデューサーだから、ああいう目線で自分を見てみて、僕から全部一旦取り上げないと、この演者は何も演じないっていうのが(わかった)。
川原さんの「満たされて豊かだと、お前演じへんやろうと」という合いの手に、すがけんさんは惰性で生きてしまうからだと応じます。そして、自分の中のプロデューサーに、演者としての自分は全てを取り上げられたと語りました。
演者の自分とプロデューサーの自分、2つを飼う
川原さんは、自分の中に2つの生き物を飼う感覚があると表現します。すがけんさんは今、プロデューサーの自分が指示するよりも、演者の自分が何を演じたいのかを見てみたいといいます。
これを見た時に、瞬間的に多分プロデューサー脳の僕がそんな踊れんだったらこっちじゃんって(言う)。
川原さんはこれを「人生で待つというチョイス」と呼びます。今は繋がりすぎていて何でも入れ込めるため、待てる人は少ないのではないかという指摘です。
すがけんさんは、成功を急ぎすぎる傾向にも触れます。映画のプロデュースなら期間中にお金を回収できるかが重要ですが、セルフプロデュースは爆当たりより失敗しないことのほうが大切だといいます。
大抵のことはやっぱりTikTokみたいに一投稿で大当たりすることはないから、自分がやれる範囲で続けられるってことも結構重要だと思うんで。
すがけんさんは、無理をして嫌にならないためにも、演者の自分を素直に見てあげる必要があると話します。やったことはないのにやってみたらドハマりするものを見つけることが、プロデューサーの醍醐味だといいます。
5年後に答えが出る、魂が続けられる場所に点を打つ
川原さんは、自分がプロデューサーとして関わるときに一番大事にしていることを語ります。映画やタレント、本のように一定期間うまくいけばよいものなら、社会の流れに合わせて半歩ずらすのもよいといいます。
でもなんか人生の単位、もしくは僕死んだ後まで考えて関与しようとすると、やっぱ本人の本当の魂があって、やり続けられるところに点を打たないと。
映画、タレント、本など。社会の流れにフィットするよう半歩ずらしてもよい
本人の本当の魂があり、やり続けられるところに点を打つ
川原さんによれば、その判断が正しいかどうかは5年後にしかわかりません。毎回答えがない中で問い続ける仕事であり、その観点を共有することで命の扱い方がより尊くなっていくのではないか、という思いで学校を運営しているそうです。
すがけんさんは、明日どうしてもバズりたい人はセルフプロデュースに向いていないと話します。薄利多売的な発想と同じく、同じことばかりを繰り返してしまうからです。
明日勝つためのことばっかりやってて、気づいたらそれで3年経っちゃうんだったら、じゃあ3年かけてしっかりやればよかったじゃんってなっちゃうもんね。
川原さんは、どちらが良い悪いではなく流派の違いだとしたうえで、自分の魂が喜ぶ仕事をして多くの人に価値を届けたい人に来てほしいと語りました。
台本ゼロの収録と、学校の募集案内
川原さんは、打ち合わせも台本もないのに、一番話したいコアがすがけんさんの側から出てくるのが気持ちいいと振り返ります。台本を作ったほうがいいかと聞いたすがけんさんに、川原さんが「いける気がします」と答えたやりとりも明かされました。
番組の概要欄には、川原さんがプロデュースについて話す60分の映像と、30分の学校説明のオンラインセミナーが期間限定で掲載されています。2期の募集は6月13日ごろまでと川原さんは話しています。
さらに、入試にエントリーした人には、川原さんが独自開発している「プロデューサー川原卓巳AI」がプレゼントされるそうです。川原さんのプロデュースを体感できるものだと紹介されました。
発信しているのに届かない人に欠けている「片手」
最後にすがけんさんは、自著『小さく分けて考える』に触れます。この本では、80パーセントは無駄であり、本当に努力すべきことを見つけようという話をしているといいます。
すがけんさんは、事業やSNSで演者として発信している人の多くは、よく考え、努力もお金もかけているはずだと前置きします。そのうえで、プロデュースという観念が一つ抜けているだけで、すべてが意味をなくしてしまうと指摘しました。
なぜなら世に問うてないし、見る人を置いてっちゃってるし。
すがけんさんは、大抵の人はプロデュースを一度も気にしたことがないとし、両手のうちの片手にプロデュースを持つことが重要だと呼びかけます。
川原さんは、アメリカでやれば商売になるとわかっていても、日本の国力を上げたい思いが強く、そのほうが魂が喜ぶと語ります。すがけんさんは、演者とプロデューサーを両立する川原さんの姿を大谷翔平選手の二刀流になぞらえ、収録を締めくくりました。
まとめ
この番外編では、プロデュースを「作り出す」ことではなく「世に問う」ことだと捉え直しました。演者としての自分がやりたいことと、世の中が求めることの重なりに点を打ち、5年後も続けられる形にしていく視点が、厚利少売にもセルフプロデュースにも欠かせないと語られています。
- すがけんさんと川原さんは、プロデュースを「本人のやりたいこと」と「世の中が求めること」の重なりを見つける力だと定義している
- セルフプロデュースは自分自身のことなので、5点でも10点でも上げれば人生が変わるとすがけんさんは話す
- 自分の中に演者とプロデューサーを飼い、演者の自分が何をしたいかを待つことも大切だとされる
- セルフプロデュースでは爆当たりより失敗しないこと、魂が続けられる場所に点を打つことが重視される
- 発信や努力をしていても、プロデュースという片手が欠けていると世に問えず、見る人を置いていってしまう





