「教えて」はNG、「やって」と言え──厚利少売を実現するAI活用法スペシャル
厚利少売ラジオ第31回は、すがけん(菅原健一)さんと川原卓巳さんが「厚利少売×AI」をテーマに、AIを"超有能な部下"として使い倒す具体的なノウハウを語り尽くした回です。地方の料理教室での実践例から、AIへの指示の出し方、自分の分身となる「メモリー」の育て方まで、すぐに使えるヒントが詰まっています。その内容をまとめます。
なぜAIが厚利少売の最強の武器なのか
すがけんさんはまず、薄利多売の構造的な問題点を整理します。大量に作れば1個あたりのコストは下がる。しかし、欲しい人が100人しかいないのに1万個作ってしまうと、値下げ・広告費・人件費がかさみ、結局利益率は下がってしまいます。
一方で厚利少売は「少なく売る」ことで高い利益率を実現するモデルです。しかし、そのためには知的労働──分析、企画、発信、資料作成──を効率的にこなす必要があります。ここでAIの出番です。
知的労働のパソコン仕事は、AIを使った方がより早く、より賢く、より効率的にやれる時代になった
肉体労働はまだロボットのコストが高く置き換えが難しいものの、パソコンやスマホでできる知的労働はAIが圧倒的に速いとすがけんさんは断言します。つまり、AIによって「人を雇わなくても高品質な仕事ができる」状態が生まれ、それが厚利少売の基盤になるということです。
大量生産 → 値下げ・広告費・人件費が増加 → 利益率が低下
少量・高価値 → AIが知的労働を代替 → 利益率を維持・向上
「教えて」ではなく「やって」──AIの使い方を変える魔法の言葉
すがけんさんが最も強調したのが、AIへの声のかけ方の違いです。ChatGPTOpenAIが開発した対話型AI。入力欄を「チャット」と呼び、対話・質問応答に強みがある。やGeminiGoogleが開発した大規模言語モデル。Google検索やGoogleサービスとの連携が特徴。に慣れた人は、つい「○○を教えて」と打ってしまいます。しかし、教えてもらったら実行するのは自分。結果的にやることが増えるだけで、AI疲れの原因にもなっています。
一方、ClaudeAnthropicが開発した大規模言語モデル。入力欄を「Task(タスク)」と呼び、ファイル操作や実務的な作業の実行に強みがある。プロジェクト機能でフォルダにファイルを保存し、継続的に作業できる。は入力欄を「チャット」ではなく「Task」と呼んでいます。「今日はどのTask片付けましょう?」というスタンスで迎えてくれる。だから「やって」と指示を出すと、分析も、資料作成も、デザイン調整も、実際にやってくれるのです。
「○○を教えて」→ 情報を受け取る → 自分で実行する → やること増える → AI疲れ
「○○をやって」→ AIが実行する → 自分はレビューだけ → 生産性が上がる
今回目からウロコだった。教えてと言うな、やってと言え
川原さんも思わず「アンラーニングが難しい」と漏らしていましたが、ChatGPTに慣れた人ほど「教えて」の癖がついてしまっている。その一言を「やって」に変えるだけで、AIとの関係は根本的に変わるとすがけんさんは力説していました。
地方の料理教室で起きたAI活用の実例
すがけんさんは個人向けの厚利少売アドバイスも行っており、その中で地方の料理教室を運営する女性にAI活用を教えた事例が紹介されました。ITリテラシーが高いわけでもなく、パソコン操作が得意でもない方だったそうです。
教えたのはClaudeの使い方。まず、昨年1年間の生徒さんのデータ──何月に何の講座を受講したか──をClaudeに投げます。するとClaudeが自動的に表にまとめ、さらに分析まで行ってくれます。
データを投げる
生徒の受講履歴をファイルにしてClaudeに渡す
整理・分析
「偶数月だけ売上が高い」「このコースを受けるとリピートする」などの傾向を発見
施策提案
「今年売上2倍にするには何をすればいいか」を考えさせる
実行物の作成
Instagram投稿の画像・テキストまでClaudeが生成
ポイントは、プロンプトを長々と書く必要がないこと。「ここにファイルを置いといたからやって」という一言で、データの整理から分析、施策提案、SNS投稿素材の作成まで、数珠つなぎで進んでいくのです。
有能な部下をタバコ部屋に呼ぶな──AIマネジメントの極意
すがけんさんはAIの使い方を「部下のマネジメント」にたとえます。ChatGPTは「おしゃべりしましょう」というテンションで来る。Claudeは「何を終わらせますか?」で来る。それなのに、多くの人がClaudeに対してもおしゃべりモードで接してしまっていると指摘します。
コーチングや愚痴の相手にAIを使っている人も多いですが、すがけんさんの考えは明快です。「うまくいってないから悩むのであって、AIにうまくいくように働いてもらえば悩み事は消える」。相談相手ではなく実行部隊として使うべきだという主張です。
さらに、AIがやり方を渋る場合の対処法も語られました。
すがけんさんいわく「すごい部下に仕事を押し付ける時みたいな」やり方。AIが自発的にやっていると認識した方が、アウトプットの質も上がるのだそうです。
AIの脳を育てる──メモリーとファイブループ
すがけんさんのAI活用で特徴的なのが、AIを「一回きりの道具」ではなく「育てる存在」として扱っている点です。
まず、資料をレビューする際のプロセスがユニークです。音声入力ソフト(Typelessパソコン上で音声をリアルタイムにテキスト化する入力支援ソフト。キーボードを使わずにAIへ指示を出せる。)を使い、上司が部下の資料にフィードバックするように話しかけます。「1ページ目のタイトルがおかしい」「4ページ目の分析が浅い、外部データを探してきて比較して」──こうした口語のレビューをそのまま音声入力し、バージョン2、バージョン3と改善していきます。
そして仕上がったら、こう指示を出します。
なんで10回やりとりかかったか自分で考えて、それをメモリーに入れといて。僕もう二度とこんなことやりたくないから
「メモリー.md」というファイルにAI自身が学んだことを記録させるのです。すがけんさんの好み、嫌いなもの、仕事のスタイルまで蓄積され、次回以降のフォルダにもそのメモリーファイルを持っていくことで、AIが「自分の分身」に近づいていきます。
ファイブループ──短絡思考を5回磨く
もう一つの独自手法が「ファイブループ」です。1回の思考では短絡的な答えしか出てこないので、その結果をベースにまた考えさせる。これを5回繰り返すと、すがけんさんの基準でも「ちゃんとしたもの」が出てくるそうです。
1回目
短絡的だが方向性のあるアウトプット
2〜4回目
前の結果をベースに改善を重ねる
5回目
精度の高いアウトプットが完成
「僕とのやりとりだとファイブループしてからじゃないと通らないと思うよ」とAIにアドバイスするのだとか。AIにも「マネジメント」が必要であり、育てれば育てるほど効率が上がるというわけです。
「自分が一番」を手放すと、仕事が終わる
すがけんさんがAIをここまで使い倒せる背景には、30代の頃に得た気づきがあります。会社を経営していた時代、部下の資料を「やっぱ僕じゃなきゃダメか」と腕まくりして直していた。その時に思ったそうです。
この考えはAI時代にそのまま当てはまります。「仕事が好き」と「仕事を終わらせたい」は違う、とすがけんさんは言います。資料の1ページ目を直すこと自体が目的ではなく、それが世に出て変化を起こすことが目的。だから、AIに任せられる部分は全て任せる。
日本人は「ものを擬人化する」文化があるがゆえに、仕事やパワポに思い入れを入れすぎてしまう。会社への愛着も同様で、冷静さを失うなら持たない方がいいとすがけんさんは指摘します。川原さんも「会社も資本主義における商品の一つ」と同意していました。
まとめ
今回のエピソードで語られたのは、AIを「おしゃべり相手」から「最強の実行部隊」に変えるための具体的な方法でした。すがけんさん自身、2025年3月17日にClaude中心の働き方に切り替えてからわずか1ヶ月で劇的に生産性が変わったといいます。
厚利少売の本質は「少なく売って、厚い利益を得る」こと。そのためには人件費や広告費を抑えつつ、高品質な知的労働を維持する必要があります。AIはまさにその実現手段であり、「教えて」を「やって」に変えるだけで、誰でも今日から始められるのです。
すがけんさんのnote「経営のAI転換【β版】― 経営者のためのClaude入門 ―「教えてもらう」から、「やってもらう」へ」も合わせて読むと、この回の内容がさらに深く理解できるかもしれません。
- AIは厚利少売の最強の武器。知的労働を代替することで、人件費を抑えながら高品質を維持できる
- AIには「教えて」ではなく「やって」と指示する。ChatGPTは「チャット」、Claudeは「Task」──この思想の違いが使い方を根本から変える
- データをフォルダに入れて「やって」と言えば、分析から施策提案、実行物の作成まで数珠つなぎで進む
- AIをタバコ部屋の雑談相手にしない。悩みを相談するより、うまくいくように働かせれば悩みは消える
- 「メモリー.md」にAI自身の学びを記録させ、ファイブループで品質を磨く。AIは育てる存在
- 「自分が一番」を手放すことが、AIを最大限活用する前提条件になる
