シーズン2開幕。なぜ最後まで聴かれる番組になったのか
厚利少売ラジオは、薄利多売のビジネスモデルから抜け出すための考え方や行動のヒントを語るビジネス対談型ポッドキャストです。今回からシーズン2として、従来の音声配信に加えてビデオポッドキャストでも配信するハイブリッド形式に変わりました。
すがけんさんも自身のYouTubeを始め、YouTubeでは前編・後編に分けて届ける形になったといいます。川原さんは、2人が手ぶりで会話していることが多く、音声だけでは伝わらない部分が映像で伝わるようになると話しています。
手とかでめちゃくちゃコミュニケーションしてるから、ここをこっちに持ってってみたいなのがやっと伝わる形になっていけるんじゃないかなと。
厚利少売ラジオは、2024年に出版された書籍『厚利少売』を届けるために9月に始まり、ちょうど1年ほど続いてきました。最新回だけでなく、最初の回まで遡って全部聴くリスナーが多いのがこの番組の特徴だといいます。
すがけんさんは、ビジネスカンファレンスに登壇した際、自分より経営者として格上の人から「聞いてます」とこっそり言われることもあると明かします。くすぐったさとともに、番組が多くの場所に届いている実感があるようです。
完聴率、つまり最初から最後まで聴く人の割合が高いことについて、すがけんさんはエンディングのしゃべりに理由を見ています。毎回その日の話の流れで内容が変わるため、最後まで聴かないと損をする構造になっているという見立てです。
あれ(エンディング)がさ、普通みんな流しで喋ってるやつだけど、僕ら毎回なんか違うじゃないですか。思いついて喋っちゃったりとかして。
ジャッキー・チェンのNGシーンに憧れた、Netflix制作の裏側
映画のエンドロール後のおまけ映像の話から、川原さんはジャッキー・チェン映画のNGシーンが好きだという話題に移ります。すがけんさんは、文字が流れるだけのエンドロールで制作陣のNGを見せるのは、観客への「おもてなし」だと受け止めています。
川原さんはNetflixで近藤麻理恵さんの番組を制作した際、エンドロールにNGシーンを入れたいと提案したそうです。片付けのドキュメンタリーは1日8時間の作業をずっと撮り続けるため、使わない素材が山ほどありました。
もうすでにやるんだったらああいうのやりたいって思ったけど、番組のテイストに合わなすぎて却下されたんだよね。
番組として整った作りに、NGシーンは要らないと判断されたといいます。川原さんはそれを受け入れたものの、その欲望はまだ消化しきれておらず、次に何かを作るときにはエンドロールでやりたいと笑います。
川原さんによれば、撮影中には何かにつまずいたり、物が崩れたり、正体のよくわからない動物が出てきたりと、リアルな場面が実際にあったそうです。
あなたはなぜ薄利多売から抜け出せないのか?
シーズン2の初回は、改めて聴き始める人にも向けて、ベーシックなところから始めたいという川原さんの意図で、テーマが「あなたはなぜ薄利多売から抜け出せないのか」に決まりました。すがけんさんは「夏の怪談のような始まり」と茶化します。
川原さんは、このテーマこそ番組が1年間熱を込めて話してきた根源的な問いだと位置づけます。本来なら、すがけんさんが「価値は相手の変化量」「薄利多売ではなく厚利少売」と一言で言い切り、本にも書いてある以上、それで終わってもよいはずでした。
それでもお便りは届き続け、多くの人がまだ厚利少売に移れていません。川原さんはそこに何らかの問題があると感じ、薄利多売から抜け出せない「あるある」も含めて話す必要があると考えたといいます。
川原さんは例として、身近な人が最近やっと犬を触れるようになった話を挙げます。その人は昔犬に噛まれた経験から、犬を遠ざけていました。
もしかすると(厚利少売を)やろうとして噛まれたみたいなとか。薄利多売が居心地よくて、なんか過ごしちゃったみたいな。
すがけんさんは、過去に痛みがあって取り組めないケースのほか、薄利多売で成功してしまったから離れられないケースもあると付け加えます。2人は、まず厚利少売を目指す理由を話し、その後に抜け出せない理由へ進む流れを、収録しながら決めていきました。
薄利多売が向くのは大企業。小さな事業者にとっての厚利少売
川原さんは、薄利多売がダメだと言っているわけではないと前置きしたうえで、厚利少売の何がよいのかをすがけんさんに尋ねます。すがけんさんの答えは、選択肢を半々で持てる状態にしたい、というものでした。
すがけんさんの実感では、いまの経済の99%ほどが薄利多売で、厚利少売をしている会社は1%ほどです。本来は半々くらいが適切だとすれば、49%の人は間違って薄利多売をしていることになる、という見立てです。
すがけんさんによれば、薄利多売に向いているのは大量に仕入れて安く作れる大きな会社です。1人や10人の会社が薄利多売をしようとすると、大手より安く仕入れられないため、ものすごく大変になります。
安いですって言って安くないみたいになっちゃうから、ちょっと歪んじゃうわけですよね。
川原さんは、少人数でやっているからこそ厚利少売以外の勝ち方はない、というすがけんさんの持論を確認します。勝負になるのは高付加価値、高本質価値の戦略だという点で、2人の意見は一致しています。
大量に仕入れて安く作れる大きな会社に向く。小規模でやると、大手より安くできず「安くない安売り」に歪む
1人や少人数の事業者に向く。高付加価値で選ばれる以外に勝ち方がない
単価を2倍にすると何が起きるのか
すがけんさんは、小さな事業者が寝ずに大量に作る方向で頑張るのは方向違いだと指摘します。そのうえで提案するのが、値段を2倍にするという選択です。
倍にしたら買ってくれる人半分ぐらいになっちゃうかもしれないけど、半分以下には大体ならないもんなんで。
川原さんは、まさにこの感覚がポイントで、多くの人はそこが怖くて踏み込めないのだと応じます。すがけんさんは、そもそも安く作っているのだから、2倍にしても大した金額にはならないと続けます。
すがけんさんの考え方の土台は、売上は単価×人数というシンプルな式です。単価を2倍にして人数が半分にならなければ、売上は同じか少し上になり、提供のための時間は減ります。
すがけんさんは、余った時間を、2倍の値段でも買ってくれたお客さんにもっと価値を感じてもらうために使えばよいと話します。価格を上げた分の努力はしたほうがよい、というのがすがけんさんの考え方です。
厚利少売を止める「罪悪感」の正体
川原さんは冒頭の問いに戻り、番組を続けるなかで感じてきた「薄利多売から抜け出せない理由」の1つとして、罪悪感を挙げます。値上げを考える人の多くが、この感情を抱えているというのです。
すがけんさん自身には罪悪感はまったくないものの、相談を受ける人たちにはそれを強く感じるといいます。典型的なのが「今のお客さんはどうするんですか?」という問いです。
あなたのことを大切に思ってくれるなら残るし、あなたのことを大切に思ってくれる人が新たに現れるよっていうだけなのに。
なんでこの人はそんなに今のお客さんに縛られてるんだろう。DVなの?みたいに思っちゃう。
すがけんさんは、本来は主体が自分なのだから、値段を上げればいいだけだと言い切ります。顧客に縛られているという感覚こそが、厚利少売への一歩を止めているという指摘です。
YouTubeで露呈した「謝罪会見顔」
この日のすがけんさんは「ドーン」を連発し、川原さんから、1人でYouTubeを撮るときは怖い顔なのに、対談だとリラックスしていると指摘されます。そこから、すがけんさんのYouTube撮影の失敗談が始まります。
すがけんさんは編集も自分でやると決めており、青いシャツで30分ほど撮った動画を編集し始めたところ、開始1分ほどで異変に気づいたそうです。
顔が謝罪会見みたいな顔してるんですよ。
音を消して顔だけ見ると、完全に何かを謝っているように見える映像が全編続き、結局撮り直したといいます。Instagramに上げたところ、友人から「本当に謝罪してるの?」というメッセージが大量に届いたそうです。
川原さんは、ドーンと言って生き生きしているすがけんさんを見て、50歳も近くなってこれだけ笑いながら過ごせるのは幸せだと話します。すがけんさんも「YouTube楽しいっす」と応え、シリアスなテーマが笑いに引っ張られていきました。
北欧の食器から始まったクラシコムの成り立ち
すがけんさんは前日、友人である青木耕平さんが率いるクラシコムのイベントに参加しました。クラシコムは「北欧、暮らしの道具店」を運営する会社で、来年で創立20周年を迎えます。
すがけんさんによれば、クラシコムはもともと会社が潰れそうな状況にありました。残っていた100万円ほどで最後に社員旅行をして終わろうと北欧へ行ったことが、事業の出発点になったといいます。
最後の百万をそうやって使う時点でさ。
北欧に魅せられて大量の食器を買ってきたものの、6割が割れて届くという滑り出しでした。残った食器を洗って磨いて出品する、個人商店のような通販が始まりです。
少人数で磨いて出品する作業に追われたため、出品日は1週間に1日だけでした。出品するとすぐに売れてしまい、残りの6日間に来たお客さんには何もありません。
申し訳なさから「せめて読み物でも」と書き始めたコラムが人気になり、見る人が増えていきました。そこから商品紹介を始め、おすすめすると売れるようになり、ついには記事制作を広告として請け負う事業にまで発展します。
北欧食器の通販
洗って磨いて、週1日だけ出品する
コラム
出品のない6日間の来訪者のために読み物を書く
商品紹介
暮らしを豊かにするミッションのもと商品をすすめる
ブランドソリューション
タイアップ記事などの記事制作を事業化
このブランドソリューション事業が10周年を迎え、そのお祝いの場ですすがけんさんは青木さんと登壇しました。すがけんさんは、商品をすすめることはクラシコムのミッションを体現することであり、悪いことではないと捉えています。
登壇の場では、すがけんさんがカジュアルな話し方に寄せようとしても、青木さんはずっとフォーマルな姿勢を崩さなかったそうです。川原さんはこれを「トークの階段昇降」と表現し、場を沸かせました。
クラシコムは図らずも厚利少売にたどり着いた
川原さんは、クラシコムが図らずも厚利少売にたどり着いた会社だと感じており、その経緯に薄利多売から抜け出すヒントがありそうだと話します。すがけんさんも、理想的な厚利少売企業かもしれないと応じます。
よーし儲けよう、俺たちは厚利少売企業を目指そうとか、何にも打算的に考えずに。
すがけんさんは5年ほどクラシコムと仕事をしており、本来なら守秘義務がある立場です。それでも青木さんから、すがけんさんの視点で解説して公開してよいと言われたといいます。
すがけんさんは、上場後にそう言える青木さんを「さすが」と評価します。2人は、この話を後編などでじっくり扱おうと約束しました。
AIで「たくみ節」を再現する文章づくり
クラシコムの話に入る前に、川原さんは最近の発見として、AIを使った文章作成の話を始めます。チューニングによって、出てくる文章の95%ほどが自分の文体になったといいます。
川原さんの言う「たくみ節」とは、冒頭で問いかける、短文でフックをかける、体言止めの頻度や使い方といった、自分らしい文章の癖です。過去に書いたnoteを精査し、自分が使いがちな表現を法則化してAIに学ばせました。
すがけんさんは、学びを抜き出すのはAIの得意分野だとしたうえで、要約したものを本人らしい言い方で書けるところまで来たことを評価します。出版の現場では、著者とライターの文章が合わず、大きく直すことになって互いに不幸になりがちだからです。
いざ文字の成果物として見たら、これ自分じゃないっていうめちゃくちゃあるんだよね。
すがけんさんは、著者は違和感はわかってもルールは説明できないと指摘します。そこで、まずAIで著者らしい文体について合意を取り、そのあとで量を増やすという進め方ができると話しています。
本も動画も、打率より打席数
すがけんさんは、これからは本をたくさん出す出版戦略に変えようと考えていると明かします。きっかけは、登録者800数十人のYouTubeを続けるなかで得た気づきでした。
すがけんさんによれば、YouTubeはどの動画が当たるかわからず、待っていても伸びません。たくさん作り続けて、どれが当たるかを見るしかないといいます。
本も同じで、新刊は1日200冊ほど出ており、1年に1冊や2年に1冊書いて当てるのは相当難しいとすがけんさんは考えます。出版のプロセスが明確になって簡単になるなら、たくさん書いたほうが当たりやすく、書店で面も取れるという見立てです。
十冊出る頃には菅原健一コーナーができるかもしれないし。
堀江貴文さんに見る、つらい時期を物語の途中にする力
すがけんさんは、この多作の戦略を昔から実践している人として堀江貴文さんを挙げ、川原さんも大悟さんもそうだと続けます。川原さんは、堀江さんは理にかなったことを早くから試す先駆者だと評価します。
すがけんさん自身、当時は堀江さんと似たガラケーのコンテンツ事業をしており、堀江さんの会社でモバイル部門を担っていたのが、現在のLINEヤフー ── LINEとヤフーが統合して生まれたIT企業。メッセージアプリのLINEや、検索・ニュースのYahoo! JAPANなどを運営しています社長の出澤剛さんだと振り返ります。フジテレビ買収の動きから逮捕を経た堀江さんの歩みを、スティーブ・ジョブズがAppleに戻ってきたような胸の熱くなる物語に重ねています。
人生ってやっぱその瞬間悲劇でもなんかゆくゆくでいうとどういう意味を持つか本当わかんないって思うよね。
すがけんさんは、つらいときにやめれば不幸な物語で終わるが、続ければ違う展開が起こるかもしれないと話します。つらい時期を全部ではなく物語の一部と捉え、繋がる点を作るつもりでやり過ごすことが大切だという考えです。
最後に2人は、薄利多売のあるあるを話すはずだったと我に返ります。川原さんは、薄利多売でつらい状況にあることも、途中のストーリーにできると結びつけました。
だから今からやればいいんですよ。
まとめ
シーズン2初回は、脱線を重ねながらも、小さな事業者ほど厚利少売を選ぶべき理由と、その一歩を止める罪悪感に光を当てる回になりました。クラシコムの成り立ちや、つらい時期を物語の途中と捉える考え方も、薄利多売から抜け出すヒントとして語られています。
- 薄利多売は大量に安く仕入れられる大企業向けで、少人数の事業者は高付加価値で勝負するしかない
- 売上は単価×人数。単価を2倍にしても顧客は半分以下になりにくく、余った時間を残った顧客に使える
- 値上げを阻むのは「今のお客さんはどうするのか」という罪悪感で、主体は自分だと捉え直すことが鍵になる
- クラシコムは打算なく顧客のための工夫を重ねた結果、図らずも厚利少売にたどり着いた
- 今つらい状況でも、物語の途中と捉えて今から厚利少売に動き出せばよい


