ミシュラン和食の大将が嘆く「本当の日本料理」の減少とは?
すがけんさんが最近のニュースとして挙げたのは、大阪にあるミシュランを獲得した和食の名店「ホンコゲツ」で、カウンター越しに大将から聞いた話です。大将は75歳ほどで、60年間日本料理を続けてきた人物だといいます。
大将の見立てでは、最近の飲食店は高級割烹のカウンター料理ばかりになり、本当の日本料理は減ってきています。美味しいのは当たり前で、そこに器や旬の食材など日本の文化を織り交ぜて楽しむことが本来の日本料理だ、という考え方です。
美味しい料理を作るのは当たり前で、やっぱそこに日本の文化みたいなものを織り交ぜて、器やその旬の食材、高級なじゃなくて、旬の食材をね、楽しむ考え方とか。
すがけんさんは、作り手がそれをできていないため、食べる側も育っていないという大将の危機感を聞き、伝統文化はこうして失われていくのだと感じたと話します。
川原さんが「わざとなくそうとしているわけではないのに、なぜそうなるのか」と尋ねると、すがけんさんは大将の説明を紹介します。問題はミシュランそのものではなく、評価の基準を西洋に合わせたことだといいます。
ワインを売りたくなると。ワインに合う料理になっちゃう。これって、じゃあ果たしてそれ日本料理なのかって話ですよね。
市場への適応と本物を守ること、どちらが正しい?
川原さんはここで一歩踏み込みます。顧客が求め、高いお金を払うからワインに合う料理を出すのは、ビジネスとしては市場に素直な進化ともいえるのではないか、という問いです。
ただ、その大将がおっしゃってるような本物の良さっていうのはなくなってしまうって、ここってなんか相反しちゃってない?
すがけんさんの答えは「相反しているが、どちらも正解」というものでした。多くの店が高級割烹の方向へ進んだ結果、日本料理を守る店はほとんどなくなり、かえってその名店が目立つようになったといいます。
顧客が求めるワインに合う料理へ進化し、短期的にはビジネスとして合理的
多くの店が離れた結果、本当の日本料理が希少になり、長期的に目立つ存在になる
川原さんはさらに、本来日本料理に合うはずの日本酒が、ブランドや格付け、価格を上げてこなかったために、高く売れるワインに合わせる流れになったのではないかと指摘します。すがけんさんも、日本酒との共同作業がまだ追いついていなかったのだろうと応じ、二人はこれからならそれができるのではないかと語ります。
20歳前のパリで大将が気づいた日本の良さ
すがけんさんによると、この大将は20歳になる少し前にフランスへ渡っています。日本料理が嫌になってパリに行ってみたところ、かえって日本の素晴らしさに気づいたそうです。
現地では1本100万円のようなワインも飲んだうえで、「これもいいけど、日本もいいよね」と感じ、そのまま日本料理を続けられたといいます。川原さんはこれを「一度外への憧れを消した」と受け止め、自身の経験とも重なると話しました。
いやでも世界から見たらこっちが普通だから、このまま日本の良さ出せばよくない?って思えるっていうのが、多分その、何て言うんでしょうね、気負わないスタイルだと思うんですよね。
すがけんさんは、ユニークになりたくて日本の良さを出しているのではなく、俯瞰した結果として正しいと思えたことが大事だと見ています。海外で日本の価値を伝えてきた川原さんも同じだろう、と重ねます。
正しさより「確からしさ」が人を動かすのはなぜ?
川原さんは、大将の話で大事なのは、正解があったことではなく、本人が一次情報として体験し、味わった結果「こっちがいい」と思えたことだと述べます。そこから、最近しっくりきている考え方を紹介しました。
今って世の中的に確かさとか正しさよりも確からしさを作れるかどうかの方が重要だと思っていて。
AIだったりとか、科学的な分析するとこっちの方が旨味が多いとかさ、正しさは出せるんだと思うんですよ。でもそうじゃなくて、この人が言うからそれに動いてみようっていう、その動かす動機を作るのって、実は確かさではなく、確からしさなんですよね。
すがけんさんはこれに強く同意し、その理由を「未来はわからないから」と説明します。わからない未来に向けては、確からしさで賛同する人を増やすことが大切になる、という見方です。
コトラーの新刊『企業家的マーケティング』の衝撃
川原さんの話に刺激されたすがけんさんは、収録中に1冊の本を持ってきます。普段は本を読まないというすがけんさんが買ったのは、2025年4月30日刊行の『コトラーの企業家的マーケティング』でした。
すがけんさんは、フィリップ・コトラー ── アメリカの経営学者で「近代マーケティングの父」と呼ばれる人物。『マーケティング・マネジメント』などの著作で世界的に知られていますの名を冠したコトラーアワードの審査員を務めています。審査員に選ばれた理由は、人々にマーケティングを教えてきたことと、スタートアップ業界にマーケティングを広めたことの2つだといいます。
新刊の主張は、レガシーなマーケティングをやめ、スタートアップや起業家のようにマーケティングしようというものです。すがけんさんは「僕がやってることなんですよ」と話し、コトラーさんのほうがこちらに来た、と表現します。
すがけんさんの紹介によると、本書では、伝統的アプローチは今ほど世界が接続されていなかった時代には適していたが、急速に変化する今日には機敏なマーケティング戦略が必要だと述べられています。日本でテレビからSNSへの移行がなかなか進まないことも、その例として挙げられました。
川原さんは80代のコトラーさんが、自らの権威ある立ち位置を崩すような主張をあえて出したことに注目します。すがけんさんも、逃げ切ることもできる立場でこれを出せるのは本当に素晴らしい、と話しました。
だから失敗するとご自身の立場でさえ危うくなるような話を、そこのね、権威の上にいらっしゃる方が、いやそれじゃダメなんだよって言うってなかなかのリスクじゃないですか。
ラグジュアリーブランドは何を変え、何を守るのか
川原さんは、ここまでの日本料理とコトラーの話を「変わることの大切さも、変わらないことで生まれる価値もある」とまとめます。すがけんさんは、それが両極端ではいけないと応じました。
すがけんさんが例に挙げたのは、自身が支援するフランスのラグジュアリーブランドです。クリエイティブディレクターは数年に一度入れ替える一方で、アトリエと呼ばれる制作チームや伝統的な技法は変えないといいます。
クリエイティブディレクター(デザイナー)や、時代のトレンドに合わせた作品
アトリエと呼ばれる制作チームや、伝統的な技法
そこの線引きを間違うと、大抵がなんか奇をてらったものになっちゃったり、大抵が古臭いものになっちゃったりするんだろうなっていう感じがしますね。
守破離は順番に移るものではない?
すがけんさんは、ここで守破離 ── 茶道や武道などで使われる修業の段階を表す言葉。型を守り、型を破り、型から離れて独自の境地に至る流れを示しますを持ち出します。一般には段階を順に移る感覚で捉えられがちですが、すがけんさんの解釈は違います。
守るものを残しながら破るものを見つけ、それが結果的に離れたことになってくみたいな話。
すべてをコンプリートしたから全部変えようとすると、そもそもやってきた意味がなくなってしまいます。すがけんさんは、守るものと変えるもののバランスを取ることこそが最もクリエイティブだと話しました。
川原さんは、そのバランスがブランドや価値が長く愛されるかどうかの差になると補足します。すがけんさんも、全部変えれば今まで信じてくれた人がどこかへ行ってしまうとして、残る企業はその加減が上手なのだろうと語りました。
毎週の「最近どう?」から学びが生まれる理由
話が盛り上がり、二人は経営学者の入山さんに解説してほしい、変えるもの・変えないもので悩むリスナーの相談に答えたい、と脱線を楽しみます。すがけんさんは、毎週の雑談からこうした話が出てくる体験をありがたいと話しました。
川原さんは、それはすがけんさんが求めて動き、時間とお金を使っているからだと指摘します。すがけんさんは、多くの人も何かに触れてはいるものの、それをキャッチしていないのではないかと応じました。
カレンダーの前に決める「現在地」と「目的地」
ここで川原さんが今回の本題を切り出します。テーマは「未来の自分を変革するカレンダーの使い方」で、これまでの回で何度か出つつ深掘りしてこなかったスケジュール決めの話です。
すがけんさんは、「夢に日付を」のように手帳に願い事を書くタイプではないといいます。代わりに、カレンダーより前に現在地と目的地を決めることを最初にやっています。
目的地、つまり目標は5W1Hで詳細に決めます。すがけんさんは、ゴールを数字にすることを重視しています。
数字じゃないとダメなのはゴールが曖昧になっちゃうんですよ。だって大成功するって言って、それが100万円の人もいれば、1億円の人もいれば100億円の人もいるから。
次に考えるのが現在地です。すがけんさんによれば、現在地を考える人はほとんどいません。自分に何ができるのか、今どこにいるのかを、これも5W1H的に詳しく書き出します。
すがけんさんが挙げた例は、2025年に年商1000万円の人が、2030年に年商1億円を目指すケースです。5年で10倍にすると分かれば、時系列で割って1年ごとの伸び方がおおよそ見えてきます。
今渋谷にいる人が赤坂に行きたいって言ってるのと、六本木にいる人が赤坂に行きたいっていうのはルートが全然違くなっちゃうから、まずは現在地もわかってないとカーナビみたいに動かないですね。
年単位から月単位へ、予定をどう積み上げる?
すがけんさんは、現在地と目的地がわかればルートが見えてくるといいます。新年に一度ルートを作ると、今年どう動くべきかがおおよそ決まります。
たとえば2025年から2030年の目標なら、初年度はいろいろ挑戦し、2027年頃にはそのどれかが花を咲かせて特化する、という進み方が見えてきます。逆に2027年になっても何もしていなければ、2025年と同じことをやり直すことになり、目標は叶いにくくなります。
目的地を決める
いつまでに何をいくらか、5W1Hと数字で具体的に書く
現在地を書き出す
自分に何ができ、今どこにいるかを詳しく把握する
ルートを描く
新年に一度、数年間の進み方と今年の動き方を考える
月単位に落とす
人と会う時間、休み、新しい挑戦などの量を決める
カレンダーに入れる
予定を先に入れ、それを成立させるために行動する
年間のバランスが見えたら、あとは月単位で積み上げます。人と会う時間、休む時間、新しい挑戦の量などが決まり、それを月のカレンダーに入れておかなければ実行できません。
会社員時代のすがけんさんは何を目標にしていた?
川原さんは、すがけんさんの働き方を会社員時代、経営者時代、個人の経営アドバイザー時代の3つに分け、それぞれのスケジュールの組み方を尋ねます。
すがけんさんによると、会社員の時期はキャリアが軸になるのが一般的です。転職や昇進のために英語や資格が必要だと分かれば、ゲームのクエストのようにやるべきことが発生します。今なら副業も変数に入ってくるといいます。
ただ、すがけんさん自身は事業が大好きで、事業が成功すれば自分のキャリアも成功するという考えで、ひたすら事業の成功だけを狙っていたそうです。
だって転職する時とか仕事もらう時なんて、あなたがどんな人ですか?じゃないわけですよ。あなたは何の役に立ちますか?だから。
エンジニアだったすがけんさんは、途中でプロデューサー側に回るよう言われても受け入れました。自分のキャリアだけを考えていたら断っていただろうといい、エンジニアに固執していたら三流のまま終わっていた、と振り返ります。
川原さんの人事異動とセレンディピティ
川原さんにも似た経験があります。新卒でコンサル会社の営業として入り、1年間結果が出なかったものの、最後の1か月で成果を出せた矢先に人事への異動を言われました。
担当したお客さんと長く付き合う約束をしたばかりだったため、川原さんは強く嫌がりましたが、最終的には人事を務めました。その時も「何が大事なのか」と考え、向いていると言われるならやってみようと判断したといいます。
自分でわかんないことを、やっぱ自分よりも年上とか経験がある人が考えてくれたのであれば、それはなんかそういう思し召しなんだなと思って、まあやってみるのがいいと思うんですよね。
すがけんさんはこれをセレンディピティ ── 思いがけない偶然から価値ある発見や幸運を得ること。予定外の出来事を前向きに活かす姿勢を指して使われることも多い言葉ですだと表現します。キャリアは考えず、仕事の成果だけを考える働き方をしていたのが会社員時代でした。
経営者は「理想の時間配分」から逆算する
複数人をマネジメントする立場になってからのすがけんさんは、まず理想の時間配分を作ったといいます。メンバーとどれくらい話すべきか、経営会議とその準備にどれくらい使うべきか、といった配分です。
ポイントは、今の状態や自分の感覚を入れず、一般論として「こんなもの」という理想を置くことです。そのうえで自分のカレンダーと見比べると、理想に対する現状がわかります。
今の感覚に引きずられ、目の前の会議を捨てる判断ができない
理想があるので、社員と話す時間のために会議をやめるなどトレードオフを決められる
そのトレードオフのトレードするものを最初に見つけとくからトレードオフできちゃう。
(理想の時間配分に)あまり主観を入れちゃダメなんですよね。今の自分の感覚を入れると、絶対に今の自分に忖度してプランを考えちゃうから。
セコイアに言われた「時間の8割を採用に」
川原さんはここで、セコイア ── アメリカの著名なベンチャーキャピタル、Sequoia Capitalのこと。AppleやGoogleなどへの初期投資で知られていますから投資を受けた時の経験を思い出します。最も強く言われたのが時間の使い方でした。
(セコイアに)自分の時間ね、使い方カレンダー見せながらこんな感じだよつったら全然ダメだって言われて。8割採用に使えてなかった会社は必ず衰退するって言われて。
お金や事業のことはいったん置いて、自分より優秀な人とだけ面談していろと言われ、川原さんは「強制ギプスをはめられた」ようだったと振り返ります。
すがけんさんはその理由を、採用は社長以外もできるが社長がやるのが一番いい仕事だからだと説明します。相手も社長に口説かれたいもので、人事担当に任せると条件やお金で来てもらうしかなくなり、かえってコスパが悪くなるといいます。
すがけんさん自身もスマートニュース時代、最後に面接する役職者の立場でしたが、それでは人が来ないとして最初の面接を担当させてもらったそうです。合わない人はその場で判断でき、良い人はその場で口説けるため、一見コスパが悪くても結果的に最もコスパがいいという考えです。
個人アドバイザーとして働く時間の決め方
個人の経営アドバイザーになってからのすがけんさんは、厚利少売で働きすぎない、余計な宿題を安易に請け負わないという時間の決め方をしていたといいます。サービス精神で何でもやるのは、自分だけでなく相手にも良くないからです。
そのうえで来月何をやるかといった未来の予定を最初に入れ、知識やネットワークが広がるように計画していました。川原さんはこれを、個人でできる厚利少売の時間の使い方の究極形だと評します。
すがけんさんは、数十時間しか働かずに人の10倍ほどの仕事をさせてもらっていると話します。3つの時期に共通するのは、未来の予定をあらかじめ思い描き、カレンダーに仮押さえしてしまうことでした。
それ(仮押さえの予定を)消す時ね、めちゃくちゃ罪悪感なんですよ。
他のを埋める時めちゃめちゃ心がチクッとするんで入れときゃいいんですよね。そのチクが嫌だったらやるんで。
川原さんも、YouTube収録の枠を会議に入れ替える時に強い罪悪感があると共感します。すがけんさんは、未来の自分が助かる予定を消す痛みこそが重要だと強調しました。
書籍もカレンダーに入れて読む
最後のお知らせでは、二人の著書が紹介されます。すがけんさんは共著『厚利少売』について、「ありがたすぎて読めない」という声に「読んでくれよ」と笑い、読む時間を来週のカレンダーに入れてほしいと呼びかけました。
川原さんは新刊『人生は捨て』で自由に生きるための47の秘訣を紹介し、捨てることは何を変え何を変えないかを決める意思決定だと話します。お便りフォームでは、変えるもの・変えないものに関する相談や、現在の単価と目標の数値を添えた相談を募集しているとのことです。
まとめ
日本料理の名店、コトラーの新刊、ラグジュアリーブランドの話はいずれも、変えるものと守るものの線引きにつながっていました。その考え方は時間の使い方にも当てはまり、すがけんさんは現在地と目的地から逆算した未来の予定を、先にカレンダーへ入れることを勧めています。
- 日本料理がワインに合わせて変わる流れは、短期と長期のどちらで見るかで評価が分かれる
- 守破離は順番に移るものではなく、守るものを残しながら破るものを見つける営みとして語られた
- 目標は数字で具体的に決め、現在地も詳しく書き出すことでルートが見える
- 理想の時間配分を主観抜きで置くと、何を捨てるかのトレードオフを決められる
- 予定は発生してから入れず、仮押さえしておくことで消す時の罪悪感が行動を後押しする






