年末の雑談から始まる「リアルなプランニング」の回
12月30日ごろ配信の年末回は、すがけんさんの「実家には帰らない」という話から始まります。すがけんさんは母親のことは大好きだと強調しつつ、自分は陰キャなので実家にさえあまり帰りたがらないのだと笑います。
あんなに僕母ちゃんラブな話するのに全然。やばい。もう最近これも聞いてる可能性あるんで。怖いな。
すがけんさんは子どもの頃、母親と妹が話しているのを端で聞いているだけの無口な子だったそうです。最近は「マフィア」というキャラが定着し、真面目なアドバイザー業務でも怖くなったと言われるとこぼし、川原さんは座り方の癖は昔から変わらないと笑います。
そこから川原さんが持ち込んだテーマが、「すがけん、川原卓巳のリアルなプランニングどうしてるの?」です。来年の計画や予測、どんな振り返りをしているかまで、二人のやり方をオープンに話すという趣旨です。
来年の未来の計画、予測、考え方、なんだったらどんな振り返りしてんのかみたいなのも含めて、結構ざっくばらんにオープンにリアリティのあるトークをお届けしたら、リスナーの皆さんの役に立つんじゃないかと。
すがけんさんは何を見て振り返るのか?
すがけんさんは冒頭、ここ5〜8年はほとんど振り返りをしていないと明かします。そのため、この回では「昔、今のリスナーのような立場だった頃にどうしていたか」を思い出しながら話すと前置きします。
川原さんがGoogleカレンダーで1年を振り返ったと話すと、すがけんさんは自分は請求書で振り返ると返します。ここで言う請求書は紙1枚ではなく、毎月どの会社にいくら請求するかを記録したExcelのことです。
請求書っていうと皆さん紙一枚を思い出すと思いますけど、僕エクセルで毎月どの会社にいくら請求するっていうのを書いてあるから。
すがけんさんの請求書Excelは、縦に会社名、横に期間が並ぶ形です。2010年代から付け続けていて、横にスクロールすると、古い取引先が抜け、新しい会社が下に加わり、長く続く顧客がずっと横に伸びていく様子が見えるといいます。
すがけんさんにとっての計画は、このExcelに今後どう書き込まれてほしいかを考えることです。縦にあと何社入ってほしいか、横にいくらずつ伸びてほしいかを決め、そのために何をするかを逆算します。
過去を横に眺める
2010年代からの請求記録を横スクロールし、取引先の入れ替わりを振り返る
理想の帳簿を描く
縦に何社、横にいくら書かれていてほしいかを考える
やることを逆算する
その帳簿に近づくために何をするかを決める
結構エクセルのその紙が横にスクロールすると時系列だから、ある種戦略表みたいになっていて。
アンケートは「仕上がり」から設計する
すがけんさんは計画の考え方を、仕事でよくあるアンケートリサーチ ── 質問票を作り、調査会社が抱える回答者の集団(パネル)に配信して回答を集める調査手法。商品開発やマーケティングの判断材料に使われますの例で説明します。リサーチ会社のパネルに1万人ほど質問票を送り、回答を回収するような調査です。
すがけんさんが違和感を持つのは、多くの人がアンケートを取った後の集計イメージを持たないまま調査を始める点です。結果がどうなるかを予想して書いておかないため、回収後の使い道が決まっていません。
僕は逆で集計してエクセルがこんな形になるよなとか、それをパワポに貼り付けるとこうなって何ページになるよなとか(を最初に考える)。
すがけんさんは、質問17と質問30を縦横に掛け合わせて何ページに置くか、というところまで先に作ってしまうそうです。川原さんがNetflixの映像を作る際に完成のビジュアルを想定して撮影・演出するのと同じだと例えます。
すがけんさんは、これはアウトプットのためにデータを捏造するという意味ではなく、「このデータを取らないとこのページは作れない」と考えてから動くことだと補足します。イメージなしに調査するのは、曲がれるかわからないカーブに時速100キロで突っ込むようなものだと表現します。
大した結果が出なかったデータから何かを見つけるのも得意だとしつつ、すがけんさんは、そんな大変なことをしなくて済むように計画しようと話します。年末の計画も、どんな商売に変わっていたいかという帳簿をアウトプットとして置き、そこから逆算しているといいます。
仕事を手放したすがけんさんの「死活プライス」とは?
川原さんが「怠惰と言いながら頭の中はガチガチだ」と感心すると、すがけんさんは、このやり方がうまくいきすぎて5〜8年は見なくてもよくなっていたのだと説明します。そのうえで今年は、あえて困る状況を作るために顧客をすべて断ったと明かします。
今年は困りたくて、そのお客さんたちも全部断っちゃったから。
すがけんさんはこれまで、1社あたり月120万円が12カ月分並ぶ帳簿だったと説明します。1時間30万円で週1時間、月4時間という契約を1社ずつ積み上げる形でした。
来年は、縦にもっと多くの社数を、別の料金体系で並べたいとすがけんさんは話します。個人や小さな会社向け、あるいはプラットフォームで情報を発信・販売する形もありうると考えています。
そのきっかけの一つが、澤円さん、小柳津さん、トヨログさん、イセオサムさんがボードメンバーを務めるハイブリッドサラリーマンクラブの会です。7年続くこのクラブは「副業って何?」という時代から活動していて、約40人の参加者のうち半分ほどがすでに会社員ではなくなっていたそうです。
その会ですがけんさんは、ある参加者の重い質問に応えるため、提案・説得・交渉の3つを上手に進める方法をまとめた自作の資料を見せました。気づくと周りに人が集まっていて、澤さんからは情報商材として売らないのかと言われたといいます。
本業がなくなった今、何でもニュートラルに、「あれ、こういうお誘いがあるんだったら、ちょっとやってみようかな」ってなるっていうのが、僕はだから計画には大事で。
すがけんさんは、本業で手一杯だった頃なら断っていた誘いも、手放した今は兆しとして受け止められると話します。捨てたからこそいい計画ができるというのが、すがけんさんの今年の実感です。
川原さんが「2026年には提案・説得・交渉の情報が手に入るかも」と振ると、すがけんさんは「お金がないので高いと思う」と即答します。需要と供給を超えた価格設定を、二人は「死活プライス」と名づけて笑い合います。
時価じゃないです。死活プライスなんで。
川原さんはなぜGoogleドキュメントで振り返るのか?
プロデューサーの川原さんの仕事はプロジェクト単位です。そのため川原さんの振り返りは、カレンダーに何が書いてあったか、誰と打ち合わせをし、それがどう世に出て広まったかを見るところから始まります。
すがけんさんは、川原さんのやり方を「いい時間の使い方をしたかを最初に振り返る方法」と受け止めます。川原さん自身は、自分のほうが一般的かもしれないが、タイプが違うだけだと話します。
川原さんが振り返りに使うのは、スプレッドシートではなくGoogleドキュメントです。数字のデータはスプレッドシートが見やすいと認めつつ、プロジェクトの整理はドキュメントのほうが発想しやすいといいます。
スプシだと思考が枠の中に収まっていっちゃって、自分に向かないんですよ。
川原さんはドキュメントを縦に伸ばし、箇条書きをツリー状に増やしていきます。最後は全プロジェクトがA4で6枚程度に収まるようにまとめ、何のプロジェクトがあり、誰と関わり、今後どうするかを俯瞰できるようにしています。
請求書Excel。縦に会社、横に期間を並べ、取引先と金額の推移から理想の帳簿を描く
GoogleカレンダーとGoogleドキュメント。誰と何をしたかを起点に、全プロジェクトをA4で6枚程度に整理する
川原さんのドキュメントは、近藤麻理恵さんの会社、川原さん自身の会社、個人的に応援しているものという3つのレイヤーに分かれています。書き進めると、時間的にこれ以上関われないプロジェクトが最後に山ほど並ぶそうです。
そこで川原さんは、関わりきれない案件を誰に託すかを書き出した「引き継ぎリスト」を作ります。託す先はプロデュースの学校に来てくれた人や協力者で、年末にその人たちへ連絡するのが恒例になっています。
すがけんさんは、同じ状況なら自分は「忘れる」と笑います。川原さんも学校を始める前は同じだったといい、今は難しい案件でも「やらせてみたら何か起きるかも」と思えるようになったのが変化だと話します。
川原さんは2026年、こうした案件を並べて受講生に手を挙げてもらう「逆ピッチ」「逆求人」のような選抜の仕組みを始めようとしています。話はそこから「マフィア」の呼び名や、タキシード姿のすがけんさんの表情を「リストラされたおじさんの顔」と評する脱線へと広がっていきます。
まだない仕事を、先に思い描く
脱線から戻った川原さんは、二人のやり方に共通する点として、来年どんなプロジェクトに関わっていたいかという理想を必ず考えることを挙げます。理想がなければ、仕事は過去の延長線上にしか来ないからです。
だってそれなかったら、それこそ絶対仕事って過去やったものの延長線上しか来ないじゃん。
すがけんさんも、かつてはExcelの縦に入れたい社名や、憧れの人のような案件を思い描いて書いていたと振り返ります。会社やアーティストを支援するときも、実力に関係なくどんな仕事をしたいかを聞くことを大切にしているそうです。
すがけんさんは、アーティストなら「K-POPのアーティストとサウンドプロデュースをしたい」と思うだけで言語化でき、あとはそれを周りに言うことだと話します。新年の挨拶は、その絶好の機会です。
発注する側はね、結構覚えてるんですよ、こうやって。なんでやっぱ思っといて、ちゃんと言っとく。
仕事を出す側は「誰かこれをやりたいと言っていたな」と、本人がいない場で思い出すものだとすがけんさんは言います。年末に振り返り、年始の挨拶やメッセンジャーで感謝とともにやりたいことを伝えるのがよいと勧めます。
逆に、何をやりたいのかわからない人には「元気?」くらいしか話しかけられないと二人はうなずき合います。やりたいことを決めておけば、会う人ごとに「あれはできた?」と聞いてもらえる共通の話題になります。
思い描く
実力に関係なく、どんな仕事をしたいかを考える
言語化する
具体的な言葉にする
周りに言う
年始の挨拶などで感謝とともに伝える
声がかかる
発注側が思い出し、会うたびに共通の話題になる
川原さんが来年始めたい一次産業のプロデュース学校
その実例として、川原さんはこの場で来年やりたいことを宣言します。今のプロジェクトはどれも理想的だとしたうえで、まだ取り組めておらず、今やらないと手遅れになりそうなのが一次産業者のプロデュースだといいます。
日本にとって本当に誇るべき世界一の価値を持つものたくさんあるのに、やっぱそこって作ることには専念してきたけど、売ることだったり、プロデュースはどうしてもやってきてないじゃんか。
川原さんの実家はみかん農家で、いつか取り組まなければと思いながら横目に置いてきたテーマでした。プロデュースの学校でシャインマスカットを手がける生徒など、農業分野でも成果が出る事例が増えたことで、一次産業に特化した学校を来年始めると決めたそうです。
一方で川原さんは、誰が来て、どんな行動ができるのかを考えると難易度が高すぎるとも打ち明けます。すがけんさんも、デジタルに弱い人が多いかもしれないと指摘します。
(一次産業の人は)作ることに専念してるからクオリティ出せてるのに。え?しかもそれでもう目いっぱいやってるよね。
川原さんは、どう役に立てるかの答えがまだ出きっていないまま、それでも絶対にやると決めている状態だと話します。いい飲食店に食材を提供している生産者のように、残すべき価値のある人たちの役に立つ形にしたいという思いがあります。
一次産業と二次産業がペアで学ぶアイデア
川原さんの悩みを聞いたすがけんさんは、その場でアイデアを出します。課題は川原さんがどう教えるかより、受講する側がどうやり切れるかであり、そこを解決してから募集しないとうまくいかないという見立てです。
すがけんさんが例に挙げたのが、エンジニアのペアプログラミング ── 2人のプログラマーが1台の画面を共有し、交互に書いたり確認し合ったりしながらコードを作る開発手法。品質向上や知識共有の効果があるとされますです。1人では続かない作業も、ペアで交互に進め、見合うことで続けられるといいます。
一次産業の方がその加工してくれてる人たちとかを、もしくは何だろう、それこそイチジク農家さんだったらケーキ屋さんととかを誘ってペアで来てもらう。
すがけんさんの案では、一次産業の人はおいしいものを作ることに専念し、実際に手を動かすのは比較的リテラシーの高い二次産業の人が担います。二次産業側も、学んだノウハウを自分のケーキ屋などで使えるというメリットがあります。
おいしいものを作ることに専念し、学校の主な対象として参加する
手を動かして実行を担い、学んだノウハウを自分の店でも活かす
川原さんは、今のプロデュースの学校もプロデューサー学科とセルフプロデューサー学科に分けたことで、ペアやチームが組めて格段に良くなったと応じます。すがけんさんの案はその農業版だと受け止めます。
すがけんさんは、収穫自体がもともと1人ではできず、農家は普段から手伝いのチームや加工会社と組んでいるので、ペアを作る難易度は高くないと説明します。さらに、学んだ後に「周りの誰が信じてくれるのか」という問題に必ず直面するなら、始める前に解決したほうがいいと話します。
これってだってスタートアップの投資も結構近くて、投資家は投資してほしいならチームを作れって言うんですよ。
川原さんはこれを「少なくとも一番身近な誰かを巻き込めるだけの証明をしてくれ、ということ」と言い換え、ペア制度に手応えを感じます。
反対しながら背中を押した、父親の推薦文
川原さんは、プロデュースの学校の入試で、受験者に一番近い人からの推薦文をもらってきてもらっていると明かします。身近な人を巻き込むという点で、すがけんさんのペア案に近い要素です。
川原さんが印象に残っているのは、笑顔ファーム笑顔ファームを営む青木春平青木春平さんのケースです。父親から届いた推薦文は入学に強く反対する内容でしたが、最後にだけ一言が添えられていました。
ただ最後にこいつはやるやつだと思いますってだけ書いてあったの。超反対されてんのに。
青木さんは子どもの頃からの夢だった消防士として公務員をしていた人でした。川原さんは、親に反対されながら門を叩いてきた姿に泣けたと同時に、自分は責任を取れるのかと強く感じたそうです。
そういう思いをちゃんと受け止めて、ね、成果につなげてあげられるか、人生変えれるレベルで変化をお届けできるかのね、商売だから、お互い。
だからこそ入学前に試験や保険のような仕組みを置き、最初につまずく問題をクリアしてから来てもらうほうが双方にとっていい、と二人の意見は一致します。川原さんは、言葉にしたからこうしたアイデアが出てきたのだとリスナーに呼びかけます。
年末に「行き先」だけでも考えておく
締めくくりとして、すがけんさんは、川原さん型でもすがけん型でも、両方でも振り返ってみてほしいと話します。過去の延長線をそのまま引くのではなく、少し飛躍した場所に自分を置けないかを考えることを勧めます。
じゃあどうするのは新年考えてもいいんだけど、この辺行きたいよなみたいな。行き先みたいなのはなんか年末にぼんやりでも含め考えてみるといいなと思います。
川原さんは、違いを生むのは世の中が休んでいる時に未来を考えて動くかどうかだと応じます。すがけんさんは、自分の時間の投資家として時間を使えるかどうかだと続けます。
良くも悪くも人生は惰性で続いちゃうんで。
最後に二人は、1月4日まで受け付けているJAPAN PODCAST AWARDSJAPAN PODCAST AWARDSへのエントリーを呼びかけます。昨年の企画賞の上を狙いたいとして、番組名は表記を間違えると無効になるので概要欄からコピーして貼り付けてほしいと念を押します。
おまけトーク:二人が推すビジネス系ポッドキャスト
本編後のおまけトークでは、アワードの会場でビジネス系ポッドキャストの仲間に会えたら面白いという話から、推し番組の紹介が始まります。川原さんはFRAGMENTSFRAGMENTSや、クリエイターが仕事を作ってきた道のりを聞くWhy are you?Why are you?を挙げます。
すがけんさんが推すのは、カミデさんが手がけるBadPharmacyBadPharmacyです。藤原ヒロシ藤原ヒロシさんが出演していると聞いた川原さんは、レジェンドがインディーズでこうした活動をするのはカルチャーとしてかっこいいと感心します。
ほかにも二人は、UnpluggedUnpluggedや、五味さんのながらAIながらAIを挙げます。すがけんさんは、ガチなビジネス論より、1時間ながらで聞けてメモを取らなくていい番組だから自分たちが評価されたのだろうと分析します。
いいいいいい。ね、フックアップする側でもあるんで、我々。
最優秀企画賞の受賞者として業界を盛り上げる役目も勝手に担いたい、と二人は話します。すがけんさんは、年末年始に聞きたいビジネス系ポッドキャストをおすすめ文付きでnoteにまとめることを約束します。
まとめ
すがけんさんは請求書Excelで理想の帳簿を描き、川原さんはGoogleドキュメントでプロジェクトを俯瞰して引き継ぎまで決めます。方法は対照的でも、まだない仕事を先に思い描いて言葉にするという点は共通しています。
- すがけんさんは、縦に会社・横に期間を並べた請求書Excelを戦略表として使い、理想の帳簿から逆算して計画を立てる
- アンケートも計画も、仕上がりのアウトプットを先に描いてからインプットを決めるのがすがけんさんの鉄則
- 川原さんは全プロジェクトをA4で6枚程度にまとめ、関わりきれない案件は引き継ぎリストで託す
- やりたい仕事を言語化し、年始の挨拶などで周りに伝えておくと、発注側が思い出して声をかけてくれる
- 川原さんが構想する一次産業特化の学校には、生産者と加工・販売の担い手がペアで参加する案が出た




