スリッパとジェラピケで解決した冬の足元
厚利少売ラジオの今回は、川原卓巳さんが「冬の寒いときの部屋の足元はどうしてる?」とすがけんさんに尋ねる雑談から始まります。
すがけんさんはもともとスリッパを履かない人でしたが、今の家はヴィンテージで古く、床がただのフローリングで冷えます。この家に越してから、人生で初めてスリッパの暖かさに気づいたといいます。
全然ペラペラのやつなんですけど。でもほら、直で拾わないじゃないですか、寒さを。
すがけんさんの家は天窓があるため室内は意外と暖かく、23度で汗をかくほどだそうです。課題は床だけで、もう1つの対策として最近ジェラピケのもこもこシーツを買ったと話します。
ジェラピケのシーツは、足元だけがポケット状になっているのがポイントです。すがけんさんは暑くて布団をはいでしまうことが多く、足だけ冷える悩みがありました。
(足元のポケットで)足だけ常に入り続けてるから、これめっちゃいいなと思って。
すがけんさんは末端冷え性で、寝るときはミイラのように動かない「ツタンカーメン寝」をするとも明かします。スリッパとシーツを1か月ほど前に替えてから、布団をはいでも足だけは温かく、だいたい何とかなるようになったそうです。
ホテルのシーツはどうする? 小さなこだわりと1日3万回の意思決定
足元の話題は、出張の多い2人がよく泊まるホテルのベッドへ移ります。すがけんさんは年に100泊ほどホテルに泊まり、川原さんもそれに近いといいます。
川原さんの問いは、ホテルが足元に「グン」と差し込んでいるシーツをどう扱うか、というものです。すがけんさんは身長のわりに足のサイズが大きく、ツタンカーメン寝ではつま先が立ってしまうため、最初の儀式としてシーツを引き出すと答えます。
一方で、日中も部屋で過ごす滞在では、すがけんさんは入室時ではなく寝る前にシーツを引き出すそうです。2人はリスナーにも「何スタイル寝か、つま先をどう扱っているか」をコメントで聞いてみたいと笑います。
この雑談から、人には言わないけれど持っている小さなこだわりの話になります。すがけんさんは、現代人は1日に3万回意思決定しているらしいと紹介します。
全部AかBかをBだけで選ぶ人とAだけで選ぶ人がいて、そのAだけの人とBだけの人の3万回の着地点は全然違うとこ行っちゃうわけだから。
この「日々の選択の積み重ね」という考え方は、後半の本題で、すがけんさんがリスナーに新しい視点を早めに持っておいてほしいと語る場面にもつながっていきます。
こだわりの話は、アートに囲まれたすがけんさんの家や、スイッチを切り替えるためにオフィスを持つ知人の話にも広がりました。
ミーティングが始まれば勝手にオンになる、すがけん流の働き方
オフィスでオンとオフを分ける話を受けて、川原さんはすがけんさん自身はどう切り替えているのかを尋ねます。すがけんさんの答えは「ないですよ」というものでした。
すがけんさんの仕事は、ミーティングだけをする「壁打ちビジネス」として設計されています。そのため、ミーティングが始まると自然にオンになるといいます。
その5秒前までどんなに具合悪くても、なんか(恋愛リアリティ番組)見て泣いてても、何にも引きずらない。
人と喋って、なんかその人を変化するお手伝いをするなんて、なんて素敵な仕事だと思いながらやってるから。
川原さんは、本来の自分が一番したいことを仕事にしているからだと受け止めます。すがけんさんも、仕事から仲良くなった人にもプライベートから仕事を始めた人にも「あまり変わらない」と言われるそうです。
出演中の番組でも、すがけんさんは一人だけ話すペースが変わらないといいます。2人は、周りのテンポが速いなかで自分のリズムを守る姿を「マフィアではなくマフィン」と呼んで笑い合い、ようやく本題へ入ります。
「AIと厚利少売のときめく関係」と、すがけんさんの起業構想
この回のテーマは、すがけんさんの持ち込み企画である「AIと厚利少売のときめく関係」です。川原さんは、収録前にすがけんさんが「AIと厚利少売はすごく相性がいい」と話していたことを掘り下げます。
すがけんさんは、来年また起業するかもしれないと明かします。起業しようと思って事業を探したのではなく、「これはいいぞ」と思えたから起業を考えた、という順番だそうです。
本当はまだ全然言いたくないんですよ、この話。
スタートアップ向けのポッドキャストで話せば、聞いた人が翌日に起業してしまうかもしれません。すがけんさんは、厚利少売ラジオのリスナーなら競合せず、今ある事業をどうするか考えている人たちだからこそ早めに伝えたいと話します。
でもここの皆さんは今日聞いて明日起業するわけでもないし、今あるビジネスをどうしようかなとかって考えてる皆さんだからこそ、なんか早めに知っといてもらえば面白いことになるんじゃないかなと。
着想のきっかけを聞かれたすがけんさんは、世の中の変化をいろいろな側面から見ていくうちに、全部まとめると「こっちなんだ」と思えたと答えます。
日本のスタートアップはなぜ大きくならなかったのか
すがけんさんは本題の前提として、日本のスタートアップが残念ながらあまり大きくならなかったという話から始めます。根拠として挙げるのが、国の生産の内訳であるGDP ── 国内総生産。一定期間に国内で生み出されたモノやサービスの付加価値の合計で、産業別の内訳を見ると国の産業構造がわかりますの構成です。
すがけんさんによると、成長する国はまず製造業から始まります。アメリカは早々に金融業やスタートアップの産業へ移りましたが、日本は今も製造業が中心だといいます。
製造業
成長する国はまず製造業から入る
アメリカ
早々に金融業とスタートアップの産業へ移った
日本
今も製造業が中心で、金融業もスタートアップも強くない
上場の場面でも、日本のスタートアップは「小粒」と言われます。すがけんさんは、時価総額100億円以上という規制が設けられそうなことに触れ、100億円に届かない会社はイノベーションになっていないと指摘します。
そんなのすぐ1,000億とかに行かなきゃいけないのに、アメリカが何で行くかっていうと、アメリカが採用すると世界が採用するんで。
すがけんさんは、ヨーロッパも日本に近く、既存産業が強すぎてイノベーションが起きにくいと見ています。ベンチャーキャピタルが若い会社に投資する仕組みはあっても、お金が流れた割に大きな会社が育たなかった、というのが日本とヨーロッパの共通点だといいます。
ヨーロッパに学ぶ「イノベーション」ではなく「リノベーション」
すがけんさんによると、スタートアップに流れたお金の行き先では、ヨーロッパが日本より先に進んでいます。そこで生まれたのがサーチファンド ── 経営者候補が投資家の支援を受けて承継先の中小企業を探し、買収して自ら経営する投資の仕組み。事業承継の手段としても注目されていますです。
サーチファンドの仕組みは、うまくいきそうな中小企業を見つけて10億円ほどで買収し、30億円ほどまで成長させて売るというものです。投資家から見れば3倍の利益になります。
既存産業を壊して良くする「ディスラプト」
既存産業を壊さずに手を入れ、価値を上げて成長させる
川原さんは、家のリノベーションが多い日本ではこの言葉がわかりやすいと応じます。すがけんさんは、日本が向いているのはイノベーションではなくリノベーション側だろうとずっと考えていたといいます。
会社の価値を10億円から30億円に上げる方法として、すがけんさんは効率化を挙げます。売上を上げること、コストを下げること、人の能力を上げることを同時に考える必要があります。
日本は一人当たりGDPが低く、効率が悪いと言われてきました。すがけんさんは、薄利多売では頑張って働いても高く買ってもらえないため、効率が悪くなるのは当然だと話します。そのうえで、効率化を進める手段としてAIの相性が非常に良いと気づいたといいます。
30人の仕事を3人とAIで回すと何が起きるか
すがけんさんの構想は、まだない産業を立ち上げることではありません。ティラミス屋のように、リスナーが営んでいるのと同じような業種で、AIを組み合わせて事業を回すことです。
30人の人員が必要で、人件費がかさむ
3人にそれぞれ多数のAIアシスタントを付け、30人分の生産性を出す
同じものを作れるなら、3人の会社のほうがコストがほとんどかからず、すぐに利益が出ます。すがけんさんは、人件費が10分の1になるため、AIで厚利少売を実現できそうだと考えたといいます。
それやってると永遠に薄利多売だし、永遠に人件費が増えていくんで、利益が全然出なくなっちゃうので。
普通の会社は、一定の売上を保とうとすると「10人必要」「30人必要」と人を増やしていきます。すがけんさんは逆に、たった3人でビジネスが回る会社を作れば大きな利益が出ると考え始めたそうです。
川原さんは、かつてのDX推進やIT化も一人当たりの生産性を上げる取り組みだったと整理します。そのうえで、今はAIを使えば人自体がいらなくなる場面もある時代だとまとめ、リノベーションの作法はまだきちんと提唱されていないと指摘しました。
「リストラ」は首切りではなく構造改革
すがけんさんは、会社を立て直す仕事は本来、プライベートエクイティファンド ── 未上場企業などに投資し、経営に関与して企業価値を高めたうえで売却し、利益を得る投資ファンド。PEファンドとも呼ばれますなどが担ってきたと説明します。
すがけんさんはもう1つ、リストラクチャー、つまり構造改革を挙げます。リストラというと人を切る話だと思われがちですが、それは本質ではないといいます。
リストラの元ってリストラクチャーなの?
そうですよ。構造改革なだけですよ。
すがけんさんによれば、リストラの目的は人を減らすことではありません。構造を変えた結果として人があまり必要なくなったり、製造業の人員よりソフトウェアエンジニアが必要になったりする、という話です。
人を切ること、痛みの強い人員削減
事業の構造を変えることで、人員の変化はその途中で起きる結果
川原さんは、これまで「プロ経営者」と呼ばれた人たちは、このリストラクチャーの能力を買われていたのだろうと整理します。そこに現代のテクノロジーを加えたものがリノベーションであり、それができれば日本の国力も上がる、という見立てに2人は同意しました。
すがけんさんはリスナーに対し、リストラを勧めているのではないと念を押します。今の仕事にAIを使い、他社と同じ作業の時間を減らし、空いた時間で自社だけの本質価値を考えて増やすことが大切だといいます。
もっと人が必要だよねっていうのは、皆さんが忙しいから人が必要なだけで、どうやって今やってる、なんだろう、隣のお店でもやってるような仕事を効率化できるのか。
厚利少売はリノベーションへの第一歩になる
川原さんは、厚利少売という考え方の位置づけが見えてきたと話します。リノベーションに取り組むための資源的な余白を作るうえで、最初に取り組める一歩が厚利少売なのではないか、という見立てです。
そうだと思います。単価上げれば効率良くなるんで。
厚利少売
単価を上げて利益率を高める
余白
自分の稼働時間が減る
リノベーション
空いた時間でAI活用と本質価値の追求に取り組む
川原さんは、取り組むべき大きなテーマが決まる瞬間が一番楽しいと語ります。そのうえで、好きな本として浜口秀志さんの『イノベーションの作法』を挙げました。
川原さんは、すがけんさんと浜口さんを、難しい問題にしか興味がなく、考え尽くして答えにたどり着く同じタイプの人だと見ています。だからこそ、すがけんさんに『リノベーションの作法』を書いてほしいと提案します。
日本にイノベーションスタートアップでこんだけね、人もお金も機運も作ってこの状態だから、多分違うんだよねって結論付けてもいい時期ですよね。
不満の少ない日本では、なぜイノベーションが起きにくいのか
すがけんさんは、日本では既存産業が大きすぎてイノベーションで崩せないと話します。川原さんは、アメリカに住んで気づいたこととして、イノベーションに必要なのは日常の不満や不快だと続けます。
で、日本ってそれ(不満や不快)が異常に少ないんだよ。
2人が例に挙げるのはコンビニのレジです。日本では秒で会計が終わりますが、アメリカでは愛想の悪い店員と一生懸命やりとりして、ようやく支払える世界だと川原さんは話します。
Uberも、アメリカでタクシーが捕まらない不満から生まれました。一方で日本はもともとタクシーが捕まりやすく、配車アプリが普及した結果、流しのタクシーが予約車ばかりになって逆に不満が生まれた、という皮肉もすがけんさんは指摘します。
レジもタクシーも不便で、ペインが大きいためイノベーションの種が多い
提供側が快適にしてくれており、不満が小さくイノベーションの余地が少ない
すがけんさんは、日本で今後満たされていないと感じられるのは富裕層向けのサービスだろうと見ています。ただし、それはイノベーションの話ではないといいます。
既存産業が快適で、企業が努力しすぎているからこそ薄利になっている、というのがすがけんさんの見立てです。人口が減り、お金を持つインバウンド客もいるなかで、厚利少売的にリノベーションをかけることが、リスナーの勤め先やスモールビジネスを見直すきっかけになると話します。
人口が減る国で、現状維持すらできなくなる前に
川原さんは、日本で人が減っていくことがリノベーションに取り組まざるを得ない理由になっていると指摘します。人が必要なビジネスのままでは、人が採れずに自然と縮小してしまうからです。
今の時点である程度人の負担、一人当たりの生産性を上げていくやり方しとかんと、今のままでさえいられないですよね。
すがけんさんは、子どもが3人いる川原さんの家庭を引き合いに出しつつ、全員が結婚して3人産むわけではないため、数十年後には人口が必ず減ると話します。
川原さんが、AIや二次元のキャラクターと結婚式を挙げる人がいるというニュースに触れると、すがけんさんは「それはどうぞですけど、人口は増えません」と応じます。ビジネスの観点では、人口と納税額が減り、1.2億人を支えたインフラは維持できなくなるという見方です。
国単位でも企業単位でもリノベーションが必要だという話から、川原さんは、都市を自然に戻していったオランダの例を挙げます。人口が減るとわかっているなら、都市を都市として発展させ続ける必要はないという考え方です。
前編はここまでです。次回も、すがけんさんと現代のAIの使い方について話が続くと予告されています。
まとめ
すがけんさんは、日本ではスタートアップによるイノベーションより、既存の事業に手を入れるリノベーションが合っていると考えています。その手段としてAIを使い、厚利少売で生まれた余白を本質価値の追求に回すことが、人口が減る日本で事業を続ける道だと語られました。
- 日本は既存産業が強く不満も少ないため、イノベーションよりリノベーションが合っているという見立て
- AIを組み合わせ、30人の仕事を3人で回せれば人件費が大きく下がり、厚利少売が実現しやすくなる
- リストラの本質は人員削減ではなく構造改革であるという捉え直し
- 単価を上げる厚利少売は、リノベーションに必要な時間的な余白を生む第一歩になる
- 人口減少の日本では、一人当たりの生産性を上げなければ現状維持すら難しい


