なぜ「発信しているのに伝わらない」のか
この回のテーマは「伝わらないを卒業する、あなたの価値を10倍にする届け方・話し方」です。お悩み相談ではなく、久しぶりのトークテーマ回として進みます。
川原さんは、厚利少売を実践するうえで発信は非常に重要なポイントであり、書籍でも厚めに取り扱っていると話します。そのうえで、ただ発信していればよいのではなく、自分の価値が高く伝わる伝え方・届け方ができているかが大事だと問題を提起します。
川原さんによると、番組で今も聞かれ続けている人気回は、エレベーターピッチを扱った回だそうです。その回も、価値が高く伝わるようにいかに端的に伝えるかという話だったといいます。
すがけんさんはこのテーマを「初心に帰る話」と受け止め、川原さんも「基本こそ大事」と応じます。すがけんさんの伝え方はすごく上手だと感じている川原さんが、話すときに何を考えているのかを尋ねるところから本題に入ります。
寿司屋の大将が明かした「カウンターが静かになる瞬間」
すがけんさんが切り出したのは、テーマと「似てそうに見えて全然違う話」でした。最近、大好きなお寿司屋さんの大将と、遠方のジェラート屋までドライブに出かけたというエピソードです。
車を持っていないすがけんさんがストーリーで同行者を募ったところ、手を挙げたのがその寿司屋の大将でした。大将は運転まで買って出てくれ、昼にはイタリアンでピザも食べたそうです。川原さんは「素敵女子の1日みたいな話」とツッコミを入れます。
その道中で大将が、すがけんさんに「会話ってどうやって学んだんですか?」と聞いてきました。大将は自分で口下手だと話すタイプなので、すがけんさんは最初、話し方の悩みの相談かと思って聞いていたといいます。
ところが大将の話は違いました。年間で何百人も来る人気店のお客さんの中に、喋り始めるとカウンターのみんながそぶりを見せずにこっそり聞いている人が2人だけいて、その1人がすがけんさんだというのです。女将も同じことを言っていたそうです。
うちのお店でお客さん中で2人だけいるんですけど、喋り始めるとカウンターみんながそんなそぶりはしないままこっそり聞いてるんですよね、話を。
すがけんさん自身は声が大きいタイプではなく、カウンターの端から逆の端まで声が届くのはよくないと考えている人です。川原さんも「ボソボソしてますよ」と認めます。そのため、すがけんさんにとってこの指摘は意外なものでした。
周りが聞き入るのは「自分の話」をしていないから
すがけんさんは大将の言葉をきっかけに、なぜ周りが聞き入るのかを人生で初めて考えたといいます。行き着いた答えは、他の人が聞いてもつまらない話はしていない、ということでした。
すがけんさんによると、大将と「この前のあれ、なんでしたっけ」と話すのは仲のいいアピールにすぎず、周りから見れば面白くもないうえに、嫌味にも聞こえかねません。川原さんも「俺お前らと違うんだぜみたいな」と同調します。
代わりにすがけんさんがしているのは、大将が出したものを美味しいと思ったら美味しいと言う、前に食べたものと違うと話す、大将に聞かれたら少し答える、といったことだけだといいます。どれも、その場の全員が関心を持つご飯の話です。
自分が言いたいことじゃなくて、相手が聞きたいことをやっぱ喋るんですよね、確かに。
すがけんさんは、ここでいう「相手」は大将だけでなく、カウンターにいるみんなかもしれないと補足します。ウニやマグロ、見たことのない食材の話は全員が聞きたい話かもしれず、「何を聞きたいのかな」と考える癖は意外とみんな持っていないと指摘します。
講演の準備は「何を話すか」より「誰が来るか」から
すがけんさんは講演の内容をその日の朝に考え、最近は資料も作らないそうです。そのとき考えるのは「今日何を喋ろうか」ではなく、「今日は何を聞きたいのか」「来ている人は誰だろう」だといいます。川原さんも、すがけんさんがよく「誰が来るんですか」と聞いていることを証言します。
だって意味ないんだもん、僕が話したいことなんて。だって僕が話せることってもう僕は知ってることだから、僕にあんま関係ないじゃない。
すがけんさんは、この考え方をエレベーターピッチにも当てはめます。投資家に話す内容、同僚に話す内容、引き抜きたいCTOや人事担当者に話す内容は、それぞれの相手が知りたいことに合わせて変えるべきだという考えです。
今日何を話そうか、自分が今興味のある話から始める
今日は誰が来るのか、何を聞きたいのかから始める
すがけんさんによれば、1対1ならなおさら相手に合わせられます。カウンターの8人や10人、講演の100人や1000人になると的中率は下がりますが、集団の8割ほどが知りたいことをつかめたら勝ちだといいます。
寝られたら1週間引きずる、すがけんさんの「相手への興味」
川原さんは、大きな会場で一緒に登壇したとき、すがけんさんが「寝られるのは嫌だから、絶対みんなを寝かせないように頑張る」と宣言していたことを思い出します。すがけんさんは、寝ている人に出ていけと言うわけではなく、覚悟の表明だったと説明します。
すがけんさんは、会社の都合で仕方なく来ている聴衆がいる場でも、「サラリーマンだから仕方ない」とは思えないといいます。寝ている人がいると怒りではなく落ち込み、1週間ほど食事の量が減るほど引きずるそうです。川原さんは「マジなのよ」と念を押します。
満足度アンケート100件来てて、99件最高って書いてあって、1件何か書いてあったら、もうそれでなんか心臓ギュッってされたみたいになって。
すがけんさんは、そこから始まっているからこそ相手にとても興味がある、と話します。なぜ眠いのか、会場が暗すぎないかといったことまで考えるといいます。
最近のセッションでは、前の登壇者の時間に、聴衆がパソコンを開いて自分の仕事をしていること、会場が暗くて眠くなりそうなことに気づきました。そこで会場の担当者に頼み、休憩時間の明るさのまま進めてもらったそうです。その結果、満足度は1位か2位ぐらいだったといいます。
観察
前の登壇中、聴衆がパソコンで仕事をし、会場が暗い
判断
このままでは聞いてもらえず、眠くなる
行動
休憩時の明るさのまま進めるよう会場に依頼
結果
満足度は1位か2位ぐらい
相手の関心の円に、自分の話を何パーセント入れられるか
すがけんさんは、話し方の技術以前に、相手を寝かせたくない、こっちを向いてほしい、相手に損をさせたくないと考えることが前提だと話します。相手が聞きたいことをわかってから、その中に自分の話をどう入れるかを考える順番です。
すがけんさんは、普通の人と自分の考え方を円にたとえて比べます。
自分の話したいことの円の中に、相手の興味をどこまで入れられるかを考える
相手が気にしている円の中に、自分の話を何パーセント入れられるか、どこまでなら嫌がらせにならないかを考える
川原さんは、すがけんさんが話す場を一緒に作ってきたからこそ、「何を聞きたいですかね」と尋ねる姿を何度も見ていて、この話は本当にリアルだと感じると話します。
AobaBBTの審査でスベったプレゼンが3位になった理由
すがけんさんは続いて、大前研一さんのビジネススクール「AobaBBT ── 大前研一さんが創業したビジネス・ブレークスルーを母体とする教育事業。経営やビジネスの授業を動画コンテンツで提供しています」での経験を語ります。厚利少売の授業コンテンツを審査する会議で、すがけんさんは「スベり散らかした」といいます。川原さんは今でもこのネタが大好きだと笑います。
すがけんさんは、審査会議でのプレゼンは全く上手くいかなかったと認めます。それでも折れずに「やらせてください」と頼み、全4回の授業コンテンツが採択されました。
1本目が公開された月のランキングは、1位と2位が大前研一さんのコンテンツで、3位に厚利少売の授業が入ったそうです。初めて出たコンテンツとしては、大前さんの人気コンテンツに次ぐ結果でした。
すがけんさんは、成功の理由も「相手が知りたいこと」にあったと振り返ります。
「厚利少売とは」より「薄利多売を抜け出せた企業3選」
全4話の構成なら、本来は1話目で「厚利少売とは何か」を話したくなります。川原さんも「作りとしてはそうなる」と同意します。
しかしすがけんさんは、受講者の大半が「厚利少売をやりたいと思っていない」なら、最初に成功企業の事例を見せたほうがよいと考えました。厚利少売は新しい言葉なので、受講者が知りたいのは厚利少売のやり方ではなく、薄利多売の抜け出し方だからです。
伝わらないっていうのは、自分が言いたい(厚利少売の)説明させてくださいになっちゃうけど、相手に伝わるっていうのは、相手が知りたいことって薄利多売の抜け出し方なんですよね。
すがけんさんは、伝える順番は相手によってめちゃくちゃ重要だとまとめます。川原さんは、順番が大事なのは、相手が頭の中でどこまで理解しているかが違うからだと言い換えます。
相手の頭の上の「もやもや」を想像しながら話す
すがけんさんは、寿司屋の大将に聞かれたときにも、本当は同じことを答えたといいます。気にしているのはただ1つで、相手の頭の上に浮かぶ吹き出しのような「もやもや」の中身が何なのかを考えているそうです。
すがけんさんによると、そのもやもやの中に短い言葉をポンポンと置いたとき、相手が「難しい」となるのか「よくわかった」となるのかが変わります。この「よくわかった」を作れたらいい、というのがすがけんさんの考えです。
足りなければあと何単語入れたら「ピカーン」となるか、相手が左の道に行きそうならどんな言葉で右に曲がってもらえるか。すがけんさんは、そうしたことを考えながら喋っていると説明します。
目をつぶって話していないか?相手を見るための4つの指示器
川原さんは、自分も感覚はわかるようになったものの、多くの人にとっては難しいのではないかと尋ねます。すがけんさんの答えは、まずはやってみること、そして相手を見て話すことでした。
川原さんは、そもそも緊張していて相手のことを考える余裕がない人も多いと指摘します。すがけんさんはそれを認めたうえで、講演中に目をつぶったら話す内容が変わり、早口で暴走し続けるだろうとたとえます。
でも多分今聞いてる皆さんは目つぶってる時と同じことやってんですよ。
川原さんも、伝わらない人は自分が喋る原稿だけを見ていると同調します。すがけんさんは、どの言葉を言うためにどんなストーリーで相手を導き、どこで化学反応を起こすかを考えるべきで、会話は当たり前すぎるほど相手ありきだと話します。
すがけんさんによれば、相手をちゃんと見れば、少なくとも「グッドかバッドか」「理解したか、していないか」はわかります。このシンプルな4つの指示器をもとに会話をコントロールしていくといいます。
うんうんと頷いている(理解していて、よいと思っている)ならスピードを出してよい
リアクションが遅い、背もたれに寄りかかって腕を組む、首をかしげるならブレーキをかけ、話の方向を変える
つかみがないときは、例え話で抽象度を上げる
すがけんさんは、相手をつかめていないときは、極端に言えば例え話のほうが大事だと話します。自分たちの話そのものは相手との共通点を作りにくいので、一段抽象度を上げて何かに例え、相手との共通点を作るという考えです。
すがけんさんは例として、社長に提案するセールスの場面を挙げます。多くの会社が「売上が上がります」と提案するなかで、「本当に大事なのは最近は利益ですよね」と切り出し、「今日する話はその話です」とつなげると、相手をちゃんとつかめるといいます。
いやもうそっから耳ダンボよ。
すがけんさんは、相手が聞きたい話をまず見つければ伝わらないことはなく、その中に自分の話をどれだけ入れられるかがトークの努力の部分だと話します。川原さんはそれを「また今日も神髄だな」と受け止めます。
概念と抽象だけでは人は動けない
川原さんは、冒頭の寿司屋の話も含めて、聞いて面白い話にするには具体をどれだけ話すかが大事だと感じたと話します。伝わらない人は、ずっと概念と抽象で喋りがちだという指摘です。
すがけんさんも同意し、抽象的な話をやりすぎると「IQテストをされているのか」「こちらが『つまりこれですね』と言うのを待っているのか」と感じさせてしまうと話します。川原さんは「絵が浮かぶんだよな」と、具体の大切さを強調します。
相手と密結合すれば、価値は勝手に10倍になる
すがけんさんは、今日は価値を10倍にする話をあまりしていないように見えて、実はずっとその話をしていたと説明します。お客さんの知りたいことでつかめれば、商品を10倍欲しいと思ってもらえ、それが「高くても買いたい」の入り口になるからです。
川原さんは、価値が10倍になるとは、相手にとって10倍欲しい状態になっているだけだと整理します。すがけんさんは、相手が欲しいものとピタッとはまって「密結合」できれば、値段はいくらでも決められると応じます。
一方で、自分ベースで話すと相手との接地面積がほとんどなく、点と点でしかくっつきません。すがけんさんは、立場が上の人ほど利益を出したいのだから、そこにくっつけていけば、商品は自然と10倍価値のあるものにチューニングされると話します。
川原さんは「以上終わり、完璧だ」と締め、すがけんさんは「証明完了」と応じます。最後に、書籍の感想をSNSで共有してほしいこと、周りの人が先に厚利少売で豊かになれば自分の商品を高く買ってくれる可能性も増えることなどが告知されました。
まとめ
この回では、寿司屋のカウンターや講演、AobaBBTの授業づくりといった具体例を通して、伝わる話し方の出発点は相手にあることが語られました。相手の頭の中を想像しながら話すことが、伝わる話し方と価値を10倍に届けることの両方につながるという結論です。
- 話す前に「何を話すか」ではなく「誰が来て、何を聞きたいか」を考える
- 相手の関心の円の中に、自分の話を何パーセント入れられるかで組み立てる
- 伝える順番は相手の理解度に合わせる。新しい概念より先に、相手が知りたい事例を見せる
- 頷き、腕組み、首かしげなどの反応を見て、話のスピードと方向を変える
- つかめないときは例え話と具体で共通点を作る。相手と密結合できれば価値は勝手に10倍になる




