2回に1回が「お悩み相談」になる番組とは?
厚利少売ラジオは、すがけんこと菅原健一さんと川原卓巳さんが、薄利多売のビジネスモデルから抜け出すための考え方やヒントを話すビジネス対談型ポッドキャストです。この回はリスナーから寄せられた悩みに答える「お悩み相談」のコーナーです。
川原さんは、コーナー企画と言いながら2回に1回はお悩み相談をしていると笑います。すがけんさんは、YouTubeの藤本美貴さんのチャンネルが毎週のように悩み相談から始まることを引き合いに出し、番組もそうなりたいと話します。
僕らもそうなりたいと。皆さんの尽きない悩みを一個一個解決していきたい。
この回で取り上げる相談は2つです。1つ目はAI時代のエンジニアの生存戦略、2つ目は値上げがうまくいかなかったときのリカバリーです。
20年のQAエンジニアは、AI時代にどこへ向かうべきか
1つ目の相談は、ITスタートアップでQAエンジニアのマネジメントをしているリスナーからです。プロダクトの不具合を検知し、予防する仕事を20年近く続けてきたといいます。
私はITスタートアップ企業でQAエンジニアのマネジメントをしています。プロダクトの不具合を検知し、予防する仕事を20年近く続けてきました。私の一番の強みは、そのプロダクトがどう使われるかというユースケースを想定し、システムの穴を見つけることです。企画資料を見ただけで障害になり得る箇所が浮かぶほど、ユーザーの感情や行動とプロダクトの状況を考えている時が一番幸せです。
天職だ。
ただ今、会社の先行きが難しくなり、転職を考えています。同じQA職種だと年齢や転職回数の多さから給料が下がる可能性が高いです。プロンプトエンジニアやAIトレーナーなどの道も考えられますが、実際に出ている求人は本格的なAIエンジニアばかりで手が出せません。自分の本質的な価値や自分のお客様がわからず悩んでいます。この経験や特性を高い価値に転換するにはどうアプローチすればいいでしょうか?
川原さんは、この相談を「すごく今にある悩み」と受け止めます。AIの進化で自分の職種がどうなるのかという不安は、多くの専門職に共通するテーマです。
AIで仕事がなくなるのは誰か?二極化する見方
すがけんさんは、弁護士やエンジニア、コンサルタントなど頭脳労働者と「AIで仕事がなくなるか」を話すと、答えが二極化すると言います。能力がない人や若手は「なくなる」と言い、能力のある人やシニアは「なくならない」と言うそうです。
これはシニアの人がテクノロジーに無知で、バカで、なんかそんなのないっしょみたいなことを言ってるわけではなくて、むしろしっかり使ってる人ほどなくならないって言っていると。
すがけんさんによれば、シニアの仕事がなくならない理由は2つあります。1つ目は、AIを使いこなす人が必要になることです。会社の社長が自分でプロンプトを入れてQAエンジニアの代わりをするわけではなく、誰かがAIを操作しなければなりません。
(AIの)使い方を覚えればいいけど、この仕事ってどうやったらできるんだろうがわかってる人がAIを使いこなすことができるんですね。
2つ目は、AIが出してきたレポートや指摘をチェックする人が必要になることです。AIも間違えますし、指示が間違っていればAIの出力も間違います。それを鵜呑みにすれば、さらに間違いが広がります。
仕事のやり方がわかっている人ほど、AIに正しく指示を出せる
AIの出力が合っているか間違っているかを判断できる
このQAエンジニアのリスナーは、どんな状態で問題が起きるか、どんな状態ならよいかがわかる20年選手です。すがけんさんは、だからこそAIを作るのではなく、AIを使いこなせばいいと答えます。
むしろ年齢や転職回数の多さから給料は上がるはずだと思うんですよね、それができたら。
給料が半分でも年収2.5倍になる働き方とは
すがけんさんは、自分自身の働き方を例に挙げます。コンサルタントは1年に4プロジェクトほどしか担当しないため、20年続けても80プロジェクトにとどまるといいます。
一方のすがけんさんは、年間20社のクライアントに加え、そのお金でスタートアップ20社に投資して問題を引き受けているため、8年間で240プロジェクトを手がけたと話します。コンサルタントの一生分の数倍を経験したことになります。
この発想をQAエンジニアに当てはめると、仮に転職で給料が下がっても、AIで仕事が速くなるなら複数の会社と働けます。すがけんさんは「5社に勤めましょう」と提案します。
給料が大げさに言うと半分になったって、5倍の仕事ができるので、年収は2.5倍になるみたいなことさえ考えられますよ。
川原さんは、特化した領域で複数社と働く道を「めっちゃいい」と評価します。監修を請け負う形でも、一緒にシステムを作る形でもよいとすがけんさんは付け加えます。
肩書きは「QAコンサルタント」?経営者の近くで活きる知見
川原さんは、すがけんさんの強みは仕事に名前をつけることにあると話し、どんな肩書きならその仕事が成立するのかを尋ねます。時代が求めていて、芯を食った名前がつけば、相談者の人生が大きく変わる気がするといいます。
すがけんさんの答えは、QAコンサルタントやQAアドバイザーです。マネージャーとして入るのではなく、AIを使えばどれだけ簡単に、早く、網羅的になるか、社内でどこをチェックすべきかを助言する役割です。
エンジニアの仕事にアドバイザーとかコンサルっていうのはちょっと珍しいんで。そこが面白いのかもしれないですね。
川原さんは、相談者の知見を経営者の近くに置けば、本来開発しなくていいものを先に潰せて助かりそうだと話します。すがけんさんも、上流や上級の役職に近い仕事をするとよいと同意し、川原さんは「CTO的な」役割を挙げます。
すがけんさんは、AIを使えば値段を半分にしても働く時間は10分の1ほどになっているかもしれないと話し、半額でも薄利ではないと説明します。
(AIに)取って代わられることはないので、嫌いにならないで使いこなすっていう方法で仲良くなってもらえるといいと思います、皆さん。
すがけんさん自身も、問題解決という曖昧な仕事だけをたくさんやりたくて今の働き方を生み出したといいます。やりたいところだけを切り出して仕事にするのがよい、というのが1つ目の相談への締めくくりです。
15%の値上げでコンバージョンが3分の1に。何が問題か?
2つ目の相談は、財布を販売しているリスナーからです。厚利少売の考えに基づいて売れ筋の財布を15%値上げしたところ、コンバージョンが3分の1以下に激減したといいます。
この度、売れ筋の財布を厚利少売の考えに基づいて15%値上げしたのですが、コンバージョンが3分の1以下に激減してしまいました。商材の特徴は価格帯が4から6万円。販売形態は買い切り型の財布のみ。強みは技術力にこだわり、ベネフィットをしっかり説明。リピート率はもともと低く、顧客離れが影響している可能性は低い。広告運用はMetaのFacebook、InstagramとGoogleでアルゴリズムに任せたブロード配信を実施し、価格改定前後で広告の設定や配信状況、LPは変更なし。値上げした際に売れ行きが想定以上に落ち込んだ場合の対策について、具体的なアドバイスをいただけると嬉しいです。
すがけんさんはまず、商品ページのURLや月にいくつ売れているかも知りたかったと話します。そのうえで、はっきりと指摘します。
キリさんダメですよ、これは。(僕らが)ラジオで言ってることはこれではないわけじゃないですか。
すがけんさんによると、15%の値上げは同じ客に15%増しで買ってもらうことになるため、売上は必ず減ります。一方で2倍にすれば、その財布を別の人が買うようになります。売れ方が変わるのが厚利少売の考え方だと説明します。
同じ客に高く買ってもらうため、必ず買う人が減る
別の客が買うようになり、売れ方そのものが変わる
2倍にしたとき、誰が買うのか?強みを作り直す
すがけんさんは、値段を2倍にするだけでなく、2倍にしたときに誰が買いそうかを考える必要があると話します。今の客のなかで最も満足している人がどんな人かから考えてもよいといいます。
4万円が8万円、6万円が12万円になれば、今の強みでは通用しないかもしれません。さらに、相談に書かれた強み「技術力にこだわり、ベネフィットをしっかり説明」は曖昧で、みんなが言っていることだと指摘します。
あ、これは私しか買う人がいないぐらいとんがってるなと。個性が強いなっていうものをちゃんと作らないと売れないので。
当面の対応については、慌てているなら単純に値段を戻してしまってよいとすがけんさんは話し、川原さんも「一旦ね」と応じます。
川原さんは、過去のお悩み相談で伝えたように、既存商品はそのままにして、超ラグジュアリーな商品を別に作って試すほうがよかったと話します。届くのか、満足を作れるのかを試すところから始める方法です。
15%で止まったのはなぜ?具体的に書くことの大切さ
すがけんさんは、厚利少売が誤解され、中途半端なやり方になっているのかもしれないと話します。あるいは、わかってはいたけれど怖くて15%にとどまったのかもしれません。
川原さんは、利益を2倍にするなら15%程度で足りると読んだ可能性もあると補います。ただ、いずれにせよ強みの書き方が抽象的だと、具体的なアドバイスは難しいとすがけんさんは言います。
でもね、そういうことを気にしないっていうのも結構重要で。だって良くなるまではそりゃ試行錯誤もするし、大変なこともあるから。
知り合いにばれるといった理由で具体的に書けない事情もあり得ますが、明かしてもらえないと的確に答えられません。すがけんさんは、この相談自体が「具体的に書いてね」と伝えるお便りにもなっていると話します。
広告の配信を変えずに値上げした落とし穴
川原さんは、相談者が広告運用の状況を詳しく書いていることから、広告がうまくはまっていないと感じているのではないかと推測します。すがけんさんは、広告に依存しているだけだと見立てます。
広告って値段変えただけだと、ほぼ同じ人に今までと同じ人に見せてるんで、それは売上は下がると思います。
川原さんも、予算が変わっていない人に高いものを売れば減るのは当然だと応じます。すがけんさんは、Metaの広告は同じ人により多く見せる仕組みのはずなので、価格改定前後で設定やLPを変えていないことが問題だと指摘します。
対策として、すがけんさんは値上げバージョン用に広告配信の設定とLPを別に作ることを挙げます。そのうえで、やはり値段は倍にしてみるのが一番よいと話します。
価格だけを15%上げ、広告設定・配信・LPは同じまま同じ客に見せる
価格を2倍にし、広告配信とLPを分けて新しい客に届ける
川原さんは、欲しい人に1人出会えれば、なぜその人が買ったのかがわかるようになると話します。すがけんさんは、そこを深掘りすればよいと同意します。
広告ではなくフォロワーに売るという選択肢
すがけんさんは、Instagramで広告を出しているならアカウントとフォロワーがいるはずだと話し、広告ではなくフォロワーに売るほうがよいと提案します。
だからフォロワーさん限定の高価格帯ラインみたいな風にして。
すがけんさんは、自社を好きだと言ってくれる人に向けて売らないことが、リピート率の低さにも影響しているのではないかと見ています。
さらに、厚利少売の本を読み直すことも勧めます。川原さんも、体系立てて読むことでどこを押さえられているかがわかるはずだと話します。
すがけんさんは、本にある「提供価値に責任を持つ」という話に触れ、技術力へのこだわりだけでは提供価値に責任を持てていないと指摘します。4〜6万円の商品なら、8〜12万円の商品がどんな約束をしているかを調べ、それと同じかそれ以上の約束ができるかを見るとよいといいます。
そのうえで、すがけんさんは失敗したこと自体を責めません。多くの人は話を聞いても実行しないなかで、やってみたことがすごく偉いと話します。
やったことがすごく偉いから、自分を褒めてください。
よりよい相談のために、お便りフォームを見直す
2つの相談を終えて、川原さんは、もっと役に立つにはどうすればよいか課題感を持てた回だったと振り返ります。必ず書いてほしい項目を提示したほうがよいのではないかと話します。
すがけんさんも、お便りフォームを自由記述ではなく項目のある形に調整したほうがよいと応じます。
番組からのお知らせとして、すがけんさんは著書『厚利少売 薄利多売から抜け出す思考・行動様式』を紹介します。数時間で読める内容なので、付箋を貼りながら読み、自分で答えを導いたうえで相談してほしいと話します。
川原さんは、厚利少売の本は順番に使えるよう構成されていると読み方のコツを添えます。また、徳間書店から出した自著『人生は捨て自由に生きるための47の秘訣』書名表記も紹介し、捨てる力を身につけることが人生を変えると話します。
最後に川原さんは、本気で解決したい悩みを定量的な情報も交えて具体的に送ってほしいと呼びかけます。相談者、リスナー、番組の三方にとって価値が生まれる仕組みだと説明しています。
まとめ
2つの相談に共通するのは、中途半端な守りではなく、自分の価値を大胆に定義し直すことです。ベテランのQAエンジニアはAIを使いこなす側に回り、財布ブランドは価格を2倍にして新しい客に向けた強みを作ることが勧められました。
- AI時代には、仕事のやり方がわかり、AIの出力を監修できるシニアこそ必要とされる
- 単価が半分でもAIで5社と働けば、年収2.5倍という発想も成り立つ
- 厚利少売の値上げは15%ではなく2倍。同じ客ではなく別の客に買ってもらう
- 値上げ時は広告配信とLPを分け、フォロワー限定の高価格ラインなども検討する
- 相談は具体的な数字や強みを書くほど、的確なアドバイスにつながる

