欲しいものがない誕生日に何を贈る?
すがけんさんは、収録の少し後に誕生日を迎えるところでした。去年は自分へのプレゼントとして高価なバンクリのブレスレットを買ったものの、今年は「そういうのはもういい」と感じていたといいます。
そろそろもう欲しいものもないし。だから、なんかいいプレゼントないかなってずっと探してたんですけど。
すがけんさんがヒントを得たのは、20年来の友人で人事コンサルをしている青田勤さんの過ごし方でした。青田さんは独立時に値段を下げようとしていたところを、すがけんさんに厚利少売の考え方で止められ、その後うまくいって時間に余裕ができたそうです。
時間ができた青田さんが選んだのは、美大への入学でした。絵がうまくなりたいからではなく、「青春を取り戻したい」という理由で、2年制ではなく4年制の学校に通っているといいます。
青春は長い方がいいですから。
美大で青田さんが目にしたのは、学生たちの金銭的な苦しさでした。画材にもお金がかかり、バイトをすると制作や勉強の時間がなくなる、という板挟みです。
そこで青田さんは、学生に自宅で自分の自画像を描いてもらい、学生の相場からするとかなり高い金額を払っていました。すがけんさんによると、4時間描いて1万5000円ほどだったそうです。
上手になるにはやんないとうまくなんないけど、やる時間がない人たちに手伝えることないかなって思ってたから、ちょうどよくそれがハマって。
4時間じっと「見られる」という体験
すがけんさんは青田さんに頼み、美大生3人に自宅まで来てもらって自画像を描いてもらいました。川原さんは「貴族みたいなムーブ」と茶化しつつ、話の続きを促します。
すがけんさんがまず感じたのは、描かれることは「見られる」ことだという点でした。モデルは4時間同じ姿勢でいなければならず、そのあいだ考える時間がたっぷりあったといいます。
映画より何より、その僕の目の前にいる3人が真剣に僕を見てるっていうことが、もう不思議でありがたいわけですよ。
すがけんさんも川原さんもイベントで1000人規模の観客に見られる経験がありますが、すがけんさんは描くために凝視されるのはそれとはまったく違うと話します。目を合わせないよう正面をぼんやり見ながら、視界の端で3人の真剣な姿を感じていたそうです。
こんなにも一生懸命何かをやってくれるってことが、やっぱりなかなかないんで。
今イメージだけでちょっとうるっときてる。
すがけんさんは、自画像に笑顔が少ない理由にも触れます。笑った顔は4時間も保てず、30分ほどで限界が来るだろうという話です。すがけんさんにとってこの4時間は、映画が頭に入らないほど考えごとをする、瞑想に近い時間だったといいます。
顔に描かれるのは、生まれつきか生き様か
すがけんさんが次に考えたのは、「描かれる」ことの意味でした。描き手は目の前の顔をそのまま描くので、どんな表情で生きてきたかが、しわとして絵に残ります。
困った顔をし続けた人生だったら、顔の困った場所のシワが描かれるだろうし、笑った人生だったら、きっと笑った皺が描かれるだろうから。
なんだこのクソほどいいエピソード。
すがけんさんは、映画や自伝のような大げさな話ではないと付け加えます。太ったなら食べたのだろうし、怖い顔になったなら怖いことを考えていたのだろう、というように、顔や体には生まれ持っていない部分が表れるという考えです。
すがけんさんによると、描き手は骨格から描き始めるため、最初の2時間の段階を見た青田さんは「これは20代のスガケンだね」と言ったそうです。先天的な骨格の上に、後天的な生き様が描き足されていく過程を、すがけんさんは目の当たりにしました。
これが自分の意思で作られた顔だし、体だから、自分の全てだから、やっぱり意思を持って生きないとダメだなって思いましたね。
学生への支払いは、なぜ厚利少売なのか?
川原さんは、すがけんさんの話が冒頭の余談のつもりだったのに、リスナーにとって示唆が深いと指摘します。欲しいものがなくなった後に何にお金を使い、そこからどんな喜びや変化量を得るかが、そのまま表れているからです。
川原さんはさらに、学生側から見た価値の変化にも注目します。本来なら、学生がモデルにお願いして無料で描かせてもらうか、来てもらうためにお金を払うこともありえます。
対象者をスガケンさんや青田さんに変えた瞬間に、そこに価値が生まれるわけじゃないですか。これでもまさに厚利少売だと思うわ。
すがけんさんは、学生たちにもいつかそのことに気づいてほしいと話します。1万5000円の約束だったところ、お釣りがなかったので3人に2万円ずつ渡したそうです。
なんであの人はそれ(多めの支払い)をするんだろう、できるんだろう、したいと思ってするんだろうっていうのも、きっと何かに残るだろうから。
すがけんさんは、アートにもビジネスの側面が強いと考えています。まだ20歳や25歳の学生たちが早めにそこに気づけたら嬉しく、それも自分にできる影響力の一つだと話しています。
当日はアテンドしてくれた青田さんにもお礼を払ったところ、青田さんはそのお金で学生たちとその後とんかつを食べに行ったそうです。すがけんさんは、青田さんが「ちゃんとみんなに返してる」と受け止めています。
3枚の絵は「人生の通知表」
収録中、すがけんさんは描いてもらった絵を持ってきて川原さんに見せました。リスナーには見えないため、川原さんが代わりにリアクションする形で進みます。
「こう映ってるんだ」が、すごい僕にとっては価値で。
1枚目の白黒の絵について、二人は俳優のきたろうさんに似ていると盛り上がります。川原さんは、リスナー向けに「きたろうさんと仲野太賀くんを足して2で割ったぐらい」と表現しました。
すがけんさんが強調したのは、最初の2時間と残りの2時間での変化です。2時間時点の写真と完成した絵では、印象がまったく違ったといいます。
最初の2時間は骨格から描かれ、青田さんが「20代のスガケン」と言う姿
残りの2時間で生き様が描き足され、49歳手前のすがけんさんの顔になった
2枚目はカラーで、1枚目とはテイストがまったく違いました。もう1枚はデジタルで描かれ、3人がそれぞれ別の側面を捉えていたことになります。
僕を何も知らない人に、僕はこう見えるんだと思ったんですよ。
面白い通知表だね。
すがけんさんは、絵が悪かったわけではなく、むしろ素晴らしかったからこそ、なおさら良く生きなければと思ったと話します。可愛く写りたい、綺麗でいたいということではなく、いいしわが刻まれているか、いい人生を生きているかが投影されると感じたそうです。
みんなのためにやったつもりが、結局やっぱり一番自分に跳ね返ってきて、ありがたい回だったなと思いましたね。
100万円のブレスレットより価値がある買い物
川原さんは、時間の使い方としても、お金の使い方としても、返ってきたものの質としても、最近聞いた中で一番美しい話だったと語ります。良すぎて「本題をしゃべる気がなくなった」とまで言い、この回はこの話で終えることになりました。
買った僕より、売ったみんなが幸せになるような、いい買い物だなと思って。
あえてタイトルをつけるなら、と問われた川原さんは「価値とは何か」の話かもしれないと答えます。すがけんさんは、美大生にとっての高い価値と、ある程度お金を手にした49歳の自分にとっての価値が、この買い物で重なったと話しています。
すがけんさんは、この自画像を去年のブレスレットと比べています。違いは、買ったことで売り手の人生に何かが起きるかどうかです。
自分が喜んだら終わり。販売する人は仕事で売っており、買っても売り手の人生は変わらない
売り手の描く絵が少し増えたり、考え方が多様になったりするきっかけになりうる
これで人生変わるとは到底思わないけど、ちょっとだけ描く絵が増えたりとか、考え方が多様になったりとかする、いい買い物であってほしいなっていう感覚ですかね。
川原さんは別のタイトルとして「スモールビジネスでこそ得られる喜び」も挙げます。売り手にとっても買い手にとっても、顔が見えるお金の流通は豊かになるという見方です。
お金を「使う側」にも責任を持つ
すがけんさんは、稼ぐことは少数の相手と深くやる一方で、お金を使う側をとても気にしていると話します。以前に払ってくれたお客さんが「そんな使い方をするのか、嫌だな」と思わないよう、自分で仕事を始めて8年ほど、責任を持って使ってきたそうです。
すがけんさんのお金の使い道は、フェーズによって移り変わってきました。
それがただの甘やかしではなくて、ちゃんとプロとしての一歩をお手伝いできるみたいなきっかけになるんだったら、いいお支払いの仕方だなと思って。
川原さんは、まったく同じことを真似できなくても、心掛けだけでも変えられることだと話します。すがけんさんも、金額は2万円ではなく2000円でもいいと応じました。
すごい嫉妬深い回だったな。今日。
経営者向けノートと書籍の使い分け
番組の最後は告知コーナーです。すがけんさんは、厚利少売の書籍と、5万円のnote「経営者になれる利益が増えるノート」を紹介しました。
すがけんさんは、冒頭から自分の事業をシミュレーションするパートまで一気に読むと、事業の解像度が大きく上がると勧めています。読者からは、何をやるか・やらないかを決めることで変化が出てきているそうです。
川原さんは、厚利少売を基礎から学ぶなら書籍、自分の事業に生かす段階ならnoteと、用途の違いを説明しました。あわせて、何をやらないか・何を手放すかに注力した自著『人生は捨てて自由に生きるための47の秘訣』や、お便りフォームも案内しています。
まとめ
すがけんさんが美大生に自画像を依頼した体験は、見られることのありがたさ、顔に刻まれる生き様、そして売り手の人生にも何かを残すお金の使い方へとつながりました。川原さんはそれを、価値とは何か、そして厚利少売そのものの話として受け止めています。
- 描かれることは4時間真剣に見られることで、すがけんさんには瞑想に近い時間だった
- 絵には骨格という先天的な部分の上に、しわや表情という後天的な生き様が描かれる
- 自分が喜んで終わる買い物より、売り手の成長にもつながる買い物に価値がある
- 払う側の顔が見えるお金の流通は、売り手も買い手も豊かにする
- 金額が小さくても、お金の使い方の心掛けは誰でも変えられる


