なぜ「お客さんが離れる恐怖」は何度も語られるのか
今回のテーマは「既存顧客が離れる恐怖とどう付き合うか。値上げの心理学」です。川原さんは、厚利少売を実践するうえで値上げは欠かせない一方、「今のお客さんが離れていきませんか?」という声が毎回のように出てくると切り出します。
(値上げすると)必ず付きまとって出てくるもう恒例行事が、そんなことしたら今のお客さん離れていっちゃいませんか?という、僕らの耳にタコとして住み着いているやつがいるんですけども。
すがけんさんは、配信を1年ほど、50回以上続けてきた中で、このテーマが一番多く扱ってきた話題かもしれないと振り返ります。川原さんは、それだけ多くの人が悩み、ボトルネックになっている部分だと受け止めます。
まだみんなやってないの?
だってさ、もう1年聞いてるんだから、もうやっちゃいなさいよ。
すがけんさんは冗談めかして、どう言えばリスナーが実際に値上げに踏み切るのか、言い方を試していると話します。
答えは「5万円のノート」の冒頭に書いてある
すがけんさんは今回、普段は番組の最後に触れる自著の話を冒頭から持ち出します。川原さんと作った2,000円の紙の本とは別に、前年の年末に経営者向けに書いた5万円のnoteがあり、それは値上げの恐怖が直らない人のために書き直したようなものだといいます。
だって5万円がまず高いって思ったら(厚利少売は)できないから。
川原さんは、5万円を高いと感じるのは、それ以上の変化量を作れないと言っているのと同じだと応じます。
すがけんさんによると、そのnoteはプロフィール、「はじめに」、シミュレーションと続き、そこまでで約1万字あります。本文の目次はその後に来る構成で、目次より前に大事なことを全部書き、まずシミュレーションをやってほしいという意図だと説明します。
価格1.2倍で利益3倍、客数は3分の1でいい
シミュレーションの例は、売上1億円を目指すケースです。川原さんは「1万円を1万人に売れば1億円」が自分の基準だと話し、すがけんさんも同じ基準を使います。単価を5万円にすれば、必要な販売数は2,000個に減ります。
ここから、単価5万円で利益率10%、つまり1個あたり利益5,000円の商品を6万円に値上げすると考えます。商品は変わらないので、値上げした1万円がそのまま利益に上乗せされ、1個あたり利益は1万5,000円になります。
| 項目 | 単価5万円 | 単価6万円 |
|---|---|---|
| 1個あたりの利益 | 5,000円 | 1万5,000円 |
| 同じ利益に必要な客数 | 2,000人 | 666人 |
| 価格と利益の変化 | 基準 | 価格1.2倍・利益3倍 |
表のとおり、価格をたった1.2倍にしただけで1個あたりの利益は3倍になり、同じ利益額を得るのに必要な客数は3分の1になります。
お客さん3分の1になっても、皆さんのビジネスは今までと変わらないように回るんですね。
すがけんさんは、客数が3分の1になれば雇う社員も、提供するスペースも、作る個数も減ると続けます。同じ利益額を手にするならそちらの方が良いというのが厚利少売の考え方だと説明します。
「安い方が喜ばれる」は本当か?
すがけんさんは、「安い方がお客さんは喜ぶ」という考えも誤解されがちだと指摘します。喜んでくれるのは当然、5万円より6万円を払うお客さんの方だといいます。
例として挙げるのは、自分の5万円のnoteです。「10万円以上の価値があった」と言ってくれる人と、「5万円は高いので4万円にしてくれませんか」と言う人が目の前に現れたら、どちらを大事にするかという話だと説明します。
すがけんさんはさらに、昔は「ケチな人がいいビジネスマン」と言われていたが、それも薄利多売の思考だと語ります。コストを切り詰めるビジネスは基本的に薄利多売で、厚利少売は喜びを増やす方向で考えるべきだといいます。
どこ行ってもニコニコして気持ちよくお金を払う人になってれば、逆にそれをしてくれるようなお客さんと出会って、自分もそうしてもらえばいいだけだから。
それでも怖いのはなぜか?自分で数字を打つ意味
川原さんは、聞けば当たり前の話なのに、なぜみんなにとって難しいのかと問いかけます。すがけんさんの答えは「心理」です。心理は頭の中の話なので、数字で確かめることが効くといいます。
すがけんさんは、noteのシミュレーションをあえて関数入りのGoogleドキュメントで配らず、読者に自分で表計算に打ち込んでもらう形にしたと明かします。半分は面倒くさかったからと笑いつつ、自分で打つと納得できるからだと説明します。
(自分で打つと)値段1.2倍にするだけで、お客さんって3分の1になっても今までと一緒なんだって気づくから。
川原さんは、それには「喜ばれている商品やサービスであれば」という前提が付くと補足します。すがけんさんはそれに同意したうえで、意外な視点を示します。
業界最安値はボリュームディスカウントができる大企業にしか実現できません。だからこそ、すでに高い商品の高さを際立たせていけば、もっといいものが作れるという考え方です。
すがけんさんは、値上げで客数が3分の1まで減っても、ようやく以前とトントンになるだけで大ダメージではないと強調します。数字で見れば、驚くほど安全圏で意思決定ができるといいます。
値上げすると「理不尽な客」が来るという誤解
川原さんは自身の体験として、値上げすると価値をより感じてくれるお客さんが来るうえ、今いるお客さんの中で本当に大事にすべき人もわかるようになると話します。数字以外にも二重に良い変化があるという見方です。
すがけんさんは、値上げに踏み切れない人は「値段を上げると怖いお客さんが来る」と思い込んでいると指摘します。二人は、粗探しをする小姑のような客が「ここの窓が拭けてないわよ」と言ってくるイメージを冗談交じりに再現します。
めっちゃ気さくないい人ばっかりが来て、めっちゃ喜んでくれて、え、いいんですか?この値段でって言って6万円払って帰ってく人ばっかりだからね。
1.2倍の値段に見合う理不尽な要求をする、粗探しの客が来ると思い込む
気さくで満たされた人が来て、喜んで6万円を払って帰っていく
すがけんさんは、増えた0.2倍分は本質価値で返すべきだと続けます。本質価値は、満たされている人ほど多く感じてくれやすいからです。
そこです。皆さん聞いてください。そこです、大事なのは。
この部分は番組内で繰り返し流れ、二人は「何度も染み込ませた方がいいマインドセット」だと笑い合います。
1,000万円のクラブで、5万円のnoteが1日50個売れた
すがけんさんは、5万円のnoteを最初に売った相手がリアルバリュークラブのメンバーだったと明かします。ホリエモンさんらが関わり、入会に1,000万円が必要なコミュニティで、当時は約150人がいたといいます。
そのLINEグループで「経営者向けに利益を増やせるnoteを書いた、5万円です」と案内したところ、1日で50個売れたそうです。買った人たちは、すがけんさんのことをよく知らないにもかかわらず、内容に強く感謝してくれたといいます。
一年で利益2倍とかにできちゃう人があんなん読んだらなんか500万円でも安いのに、それ5万円で売っちゃうってなんかのバグですか?みたいな。
一方ですがけんさんは、5万円を高いと感じる人がいることも知っています。世の中には価値に喜んでお金を払う人たちがいて、リスナーの身近にもそういうお客さんがいるはずだと語ります。
減った客数で生まれた時間を、本質価値に回す
すがけんさんによると、値上げして残ったお客さんの中には「倍でも払ってくれる良いお客さんだった」とわかる人がいます。そして客数が減った分、提供側には時間の余白が生まれます。
施術だけじゃなくて、カウンセリングの時間とか、お茶飲む時間とかをちょっと増やして満足度を高めてもいいんですよ。
サロンを例にしたこの話のように、余った時間を使えば、値上げ以上の本質価値をお客さんに感じてもらえるようになるといいます。
川原さんは、値上げ後に残る人や新たに来る人の方が実行力があり、結果を出してくれる点も大きいと話します。すがけんさんは、提供者が関与できるのはお客さんの時間の1%にすぎず、残り99%が満ちている人ほど結果が出やすいと説明します。
値上げする
価格を1.2倍にしても同じ利益で客数は3分の1でよい
余白が生まれる
客数が減った分、時間とリソースが空く
本質価値を高める
カウンセリングや対話など、余った時間で満足度を上げる
良い客に届く
満たされた実行力のある人が結果を出し、喜んでくれる
お客さんを選ばなきゃいけないっていうのを値上げでやりましょうって言ってるだけだから。
お客さんを選ぶなら、リストより値上げが早い
すがけんさんは、あえて逆のやり方を想像してみようと提案します。表計算に顧客の名前、住所、年齢、所得、家族構成を全部入れ、そこから5割のお客さんを選んでくださいと言われても、できないはずだという話です。
川原さんも、どんな判断軸にすればいいかわからないと同意します。すがけんさんは、商品や店舗によって軸が変わるため、値上げして残った人を正解とする方が明日からできて早いと考えています。
全顧客の属性を表にまとめて選別する。判断軸が商品や店舗で変わり、決めきれない
値上げして残った人を正解とする。明日からすぐ実行できる
勘のいい皆さん、まずはこのラジオ終わったら値上げしてください。
服屋に通う理由は服ではなく会話
すがけんさんは、むやみに値段を上げようという話ではないと念を押します。表面上は似た商品があっても本質価値は全く違うので、それを見つけていくことが大事だといいます。
例として語られるのは、すがけんさん自身が服を大量に買っていた時期の話です。服を買うこと自体より、売り場のお兄さんとの会話が楽しくて通っていたといいます。
だって本質価値は会話なんで。
センスのいい同年代のお兄さんと、週に1回2時間ほどかけて服を選びながら話すことに価値を感じ、その結果として服をたくさん買っていただけだと説明します。その店の価値は「いい服を揃えること」ではないという話です。
話の終わりに、川原さんは「クローゼットはどうなっているのか」と尋ねます。すがけんさんはサマリーポケット ── 段ボール単位で荷物を預けられる宅配型の保管サービス。預けた物をスマートフォンから管理できますに送っていると答え、片付けのプロである川原さんから「別途お話があります」と返されて笑いが起きます。
5万円を払う方が、1年迷うより早い
番組のお知らせで、すがけんさんは改めて5万円のnoteを買ってすぐ実践してほしいと呼びかけます。1年迷っている時間より、5万円を払ってやった方がいいという考えです。
川原さんも、5万1,000円稼げればそれだけで元が取れると応じ、本という物は1冊に大きく稼ぐ知恵が入っている「バグ」のような存在だと話します。川原さんは自著も紹介し、自由に生きたい人に向けた本だと語りました。
最後に二人は、翌週に大きな厚利少売企画を公開すると予告し、その中身を当てるクイズをSNSで募集します。
まとめ
値上げで既存顧客が離れる恐怖は、数字で確かめると多くの場合は消えます。価格1.2倍で利益は3倍になり、客数が3分の1になってもようやくトントンです。増えた分は本質価値で返すことで、満たされた良いお客さんが残り、さらに結果が出るという好循環が生まれます。
- 単価5万円・利益率10%の商品を6万円にすると、1個あたり利益は3倍、必要な客数は3分の1になる
- 恐怖は心理の問題なので、シミュレーションを自分で打ち込んで体感するのが近道
- 業界最安値でない限り商品はすでに高く、その高さを際立たせればよい
- 値上げ後に来るのは理不尽な客ではなく、喜んで払う満たされた人が多い
- 減った客数で生まれた時間を本質価値に回すことが、値上げを正解にする

