知らない世界を、どうすれば知り、信じられるのか?
川原さんが最初に投げかけたのは、成功者の振る舞いや「構え」以前に、その世界があること自体をどう知ればいいのかという問いでした。川原さんは広島の呉で育ち、高校生の頃はインターネットにつながっていても、こうした情報が存在することすら知らなかったと振り返ります。
どうやったら(構えの)もっと手前ですね。その世界があるということを知れるようになるんですかね。
すがけんさんは、自分も30歳で初めて海外に行ったと明かします。それまでは英語も話せず、体の大きな人たちが怖いという理由で、海外は行くものではないと自分に言い聞かせていたそうです。
まあ要は自分の世界を正としていた。
ところが会社の出張で憧れのシリコンバレーに行くと、英語が話せなくても、握手や会話のちょっとしたことだけで刺激だらけだったといいます。すがけんさんは、違和感に気づいて振り返り、言語化する力と、違う世界に飛び込むかどうかが大事だったと話します。
川原さんは、17〜18歳の頃に自分のような人が書いた本に出会えていたら、スタートが全然違っただろうと語ります。これに対してすがけんさんは、問題は出会えるかではなく、その内容を信じられたかどうかだと指摘します。
今まで信じてきたものとは違う何かに出会った時に、わーこれ面白そうって思うのか、異物だと思って排除しようとするのかっていうのはすごく重要。
川原さんも、当時なら「そんな綺麗事ねえよ」と思ったかもしれないと認めます。そのうえで、二人が実際に「劇的ビフォーアフター」を経験しているからこそ、このラジオは信じてもらってよい情報を届けられている、と川原さんは手応えを語りました。
過去の経験を捨て、リスクを取って信じてみることで変われる
今まで信じてきた自分の世界を正とし、変化が起きない
ギバーとテイカーは、発信だけでは見分けられない
海外に移住してシリコンバレーで構えを学んだ川原さんは、日本のコミュニティで上っていきたい人はどうすればいいのかを、すがけんさんに尋ねます。すがけんさんの答えは、ビジネスで成功した人の中にいる優しい人たちに、ちゃんと会うことでした。
自分の環境とは違うところに短期的にでも身を置く。当たり前が違う生物たちと共同生活をちゃんとしてみるみたいなのは大事なんじゃないですかね。
川原さんは、発信して人を引き上げようとしている成功者は、時間を割いている分だけいい人である確率が高いと考えます。ただし、自分を知ってもらって巻き込もうとするテイカーも同じ動きをするため、選ぶ側から見ると「陳列棚」で必ず混ざってしまう難しさがあると話します。
すがけんさんはその例として、オンラインサロンを挙げます。本業で成功した人がそのノウハウを有料で教えるのはありだとしたうえで、本業がないままサロンで成功した人がサロンの作り方を教えるケースは、振る舞いが同じでも中身が全然違うといいます。
だってサロンに1万人にいますよ。いやいや、それ実績じゃないからみたいな。
すがけんさんによれば、そうした人は何人かに担がれて一段上がり、成功者に見えることで人が集まり、さらに成功者になっていっただけだといいます。だからこそ、助けてくれる人か奪う人かを見る以前に、受け手が実績の有無を判断しなければならないと話します。
川原さんはこれを厚利少売の言葉で、「この人が提供できている変化量は何なのか」という問いに置き換えます。すがけんさんは、宝くじに当たった人が当て方を教えるようなものは偶然にすぎないと見極める必要があると続けました。
本業を成功させたノウハウを授業料を取って教える。再現性のある実績がある
本業の実績がないまま担がれて成功者になり、サロンの作り方を教える
Kiyoさんとの出会いが会社売却につながった経緯
川原さんは前回すがけんさんがさらっと触れた「会社売却は友人との関係によってできた」という話を、もう少し詳しく聞きたいと切り出します。すがけんさんは30歳頃にシリコンバレーのイベントでギブの文化に感動し、以来1年に1回は必ず行くようにしていたと話します。
当時すがけんさんがいたのは、アドテクノロジー ── インターネット広告の配信・最適化・効果測定などを支える技術の総称。略してアドテクとも呼ばれますの会社でした。そこで日本で出会ったのが、同じアドテク領域でビジネスをしていたKiyoさんです。
下手したらライバルでもあるし、なんでこんなにサポートしてくれるんだろうみたいな。すごいギバーだったんですよね。もうシリコンバレーをそのまま人間にした人みたいな感じで。
すがけんさんとKiyoさんは毎日のようにやりとりをする仲でした。Kiyoさんの会社がKDDIグループに売却されることになったとき、すがけんさんはKDDIの上層部と知り合いだったことから、「この会社いいっすよ」と伝えたり、どう振る舞えば好まれるかを助言したりしたといいます。
川原さんはそれを「構え案内」と表現します。余談として、白いシャツが定番だったKiyoさんが売却後に黒シャツに変わったというエピソードも披露され、川原さんは「白はビジネスホワイトだったんだ」と笑いました。
その後、ロックアップ ── 企業売却や上場の後、創業者や経営陣が一定期間、株の売却や退任を制限される取り決めの期間が終わったKiyoさんは、シリコンバレーで挑戦するために旅立ちます。KDDIグループからアドテクの責任者がいなくなったため次の会社の買収が必要になり、Kiyoさんの推薦もあって、すがけんさんの会社が買収されることになりました。
(空いちゃったから)やれるやつ必要だなって言って、キヨの推薦もあり、抜けてくやつがよう推薦するわとか思いますけど。
ギブは100人に1人でも、インターネットで拡張できる
Kiyoさんとの出会いは、すがけんさんが31〜32歳頃、同じ広告業界でたまたま会ったのが始まりでした。すがけんさんは、Kiyoさんにとって自分は100人ほど助けている人の1人だったと思うと話します。
すがけんさんはこの話をKiyoさん目線で捉え直します。「ギバーがいない」と言っていても、自分が周りにギブしていった中の1人がギブを返してくれたから、Kiyoさんは売却できたとも言える、というわけです。
自分からすりゃいいんだ、別に。
すがけんさんは、100人にギブして1人が返してくれる程度で効率は悪いと認めます。そのうえで、昔は1時間単位の会議で会う必要があったのが、今はチャットで5分で助けられる時代になり、インターネットがギブを拡大できるようにしたと話します。
川原さんは、インターネットはテイクも同時に拡張しているとし、「拡張機能を拡張させる特性のあるもの」だと表現します。どちらに使うかが問われるという整理です。
ギブする
Kiyoさんが周りの多くの人を助ける
関係が育つ
すがけんさんが助けられ、毎日やりとりする仲になる
ギブが返る
すがけんさんがKiyoさんの売却を手伝う
さらに巡る
Kiyoさんの推薦ですがけんさんの会社が買収される
成功者の振る舞いこそが「構え」になる
川原さんは、会社売却だけを切り取ると急にうまくいったように見えるが、実際はKiyoさんからのギブがあり、途中で手助けをして、それが返ってきた話なのだと受け止めます。すがけんさんは、ギブ1に対してギブ1が返ってくるほど都合よくいくことはないと前置きします。
でも結局ギブしていかないとこういうことは起きない。
すがけんさんは、人を助けられるほど優しくてゆとりのある人のほうが成功しやすいと続けます。そこから、前編のテーマだった成功者の振る舞いと構えが一つにつながりました。
川原さんは、これは体を使う新体操のような話ではなく、今すぐできることだと反応します。すがけんさんも、今日からいろんな人を気にかけようと思うことや、SNSで見かけない人に「大丈夫?」と連絡することだけでも違うと話します。
すがけんさんが今、友人のビジネスパートナーの事業や転職を惜しまず手伝っているのも、友達が自分よりすごくなれば一番幸せなのは自分だと考えているからだといいます。周りがすごければ、自分がへこんでいても引き上げてもらえるという考えです。
すがけんさんは、これを打算的に感じる人もいるかもしれないとしつつ、見返りを求めているわけではないと話します。紹介料を求めるような話ではなく、ちょっとしたサポートで誰かの結果が大きく良くなるならしたい、というシンプルな動機だといいます。
何もない頃に差し出せるのは「元気と時間」
川原さんは、ゆとりがあるからギブできるのではなく、その心持ちをどの時点で持てるかが、その世界に入っていく切符なのだろうと語ります。すがけんさん自身も、何もなかった頃にこの構えを突然覚えたといいます。
川原さんは、昔の自分たちにはスイッチを入れても役に立てる引き出しやカードがなかったと振り返ります。それでも必ず持っているものがあると続けます。
でも絶対あるのは元気と時間なんですよね。
だからこれを惜しまず、この人だって思う人になんか提供してみる。ってか、何で役に立てますか?って聞いてみることだけでもめちゃくちゃいいですよね。
すがけんさんは、人は関心を持たれることが嬉しいのだと応じ、ギブとテイクの違いを関心の向きで説明しました。
相手に関心を持ち、相手そのものを良くしていく
自分に関心を持ち、相手を自分の側に引き込もうとする
自分らしさと利他は両立できるのか?
川原さんは、自分らしさややりたいことを軸にするのが大事だという今の風潮と、相手に関心を持ち役に立つという利他の構えは、どう両立するのかと疑問を投げかけます。すがけんさんは、ここはすごくシンプルだと答えます。
だから、人とどう接するかと、自分がどうあるかっていうのは別個に考えられるはずなんですよ。
すがけんさんにとっての自分らしさは、アドバイザーの仕事であまり働かず自由に生きることです。それと人に優しくするかどうかは関係がなく、人のサポートを続けたせいで仕事を辞めることにもならないといいます。
ただ、人に関心を持てないと、自分らしく生きた時の自分にも誰も関心を持ってくれない寂しい人生になっちゃうから。
すがけんさんは、自分らしさを応援してほしいなら、まず自分が人を応援したほうがいいと続けます。自分の生き方だけが正しいと言い続ければ友達もできず、みんなを認めればみんなも自分を認めてくれる、という考えです。
川原さんは、相反するものだと思っていた2つが、相反ではなく循環している感覚になったと話します。すがけんさんも、循環するうちに自分がいい人になり、周りもいい人だらけになる「スパイラルアップ」の話だと応じました。
自分らしさを軸にすることと、相手の役に立つ利他は相反するように見える
自分のあり方と人との接し方は別個に考えられ、両輪として循環しながら上がっていく
孫正義さんの「勝率5割以上」は準備の話
川原さんは個人の構えに加えて、孫正義 ── ソフトバンクグループの創業者。大胆な投資と事業拡大で知られる日本を代表する経営者の1人ですさんが言うようなビジネスの構え、つまり誰と組むかや勝てる座組をどう考えているかを尋ねます。すがけんさんは、KDDIの高橋誠社長も大好きだとしつつ、孫さんも好きだと前置きします。
すがけんさんが挙げたのは、孫さんの「事業は勝率5割以上でなければやらない」という話です。最初はビジネスで5割以上うまくいくかなどわからないと思っていたものの、途中で、これは博打をしない、つまり準備がすべてだという話だと気づいたといいます。
やってみてうまくいかなかったっていうのはギャンブルになっちゃうけど、やる前にちゃんと準備をして、備えて構えてやれるかどうかっていうのを判断しようっていう話だな(と気づいて)。
すがけんさんによれば、ビジネスで大事なのは始める前に「こうなればうまくいく」という必然の箇所をどれだけ作れるかです。ところが多くの人は、準備の段階で薄利多売の構えのまま始めてしまうといいます。
すがけんさんのように顧客が10人でいいなら、めちゃくちゃ優しくでき、想像や準備の時間も取れます。一方、薄利多売で多くの人を相手にすると何もしてあげられず、利益も取れないので薄利になる、というのがすがけんさんの整理です。
顧客は10人でよく、一人ひとりに優しくでき、想像や準備の時間も取れる
多くの人を相手にするため何もしてあげられず、利益も取れずに薄利になる
Moonshot創業前の2週間で決めたこと
川原さんは、始める時点で5割以上うまくいくと思えるのはとんでもない基準だと驚きます。すがけんさんは、株式会社Moonshotを作る際、顧客の相談には1時間30万円で何でも答えているにもかかわらず、自分のビジネスは2週間かけて考えたと明かします。
5日、5営業日、2週間として8時間働いて、10掛ける80時間。人の相談の80倍悩んだんですよ、ちゃんと。
すがけんさんはその間に、値段、顧客の数、こういうときはどうするかといったことをすべて定義し、意味づけしたといいます。値段を高くすると、顧客は大事な質問しかしなくなり、すがけんさん自身も質問がよくないときは「この質問のほうがいいのでは」と提案するようになったそうです。
さらに、顧客が驚くほど成功すると口コミで広がるため、営業を1回もせずに顧客が増え続けているといいます。これらもすべて準備段階で決めたことだと、すがけんさんは話します。
スーツを着ないことも準備で決めた構えの一つです。スーツを着るとコンサルや広告代理店の構えになってしまい、資料作りも見えない場所での作業になって明朗会計でなくなるため、あえてやめたといいます。
すがけんさんは、これからビジネスをする人も今している人も、準備や下ごしらえをもっと丁寧に決めるべきだと話します。構えが変わらないなら、準備が悪いのではないかと疑ってみることも大事だといいます。
構えを変えるにはカレンダーと口癖を決める
川原さんは、準備で構えを変える話は「言うは易し」で、自分に落とし込むのは難しいと感じます。すがけんさんがすすめるのは、この回を聞きながら、自分のカレンダーに予定を入れることです。
だから未来を変えたかったら、未来の予定にこういう分量を増やすっていうのが一番いいと思うんで。
たとえば、この回を聞き返す1時間を予定に入れ、A4で3枚ぎっちり書き、何をするかのアクションを明確にして、またカレンダーに入れていきます。予定して動いたこと自体が成功体験になると、すがけんさんは話します。
もう一つの方法が、口癖を決めることです。すがけんさんは、何かが起きたときにこう言おうと決めることは構えの話であり、自分の構えをちゃんと定義することが大事だと話します。
「それ面白いね」と「でも」が分けるギブしがい
川原さんは最近、ChatGPTを育てて「川原卓巳のプロデューサーAI」を作っていると話します。社員に試してもらうと、「まだ卓巳さんっぽくない」と言われたといいます。
え、たくみさんっぽさって何なの?って言ったら、え、絶対返しで、「え、それ面白いね、どういうこと?」っていうのと、え、ウケるっていうことを言うと。
社員の指摘から、川原さんは自分がずっと相手に興味を持って楽しみ続けている人だと気づき、それが解像度の高い構えだったと話します。すがけんさんは、相手を引き込むのではなく相手そのものを良くしていくのがギブの根底だと応じました。
一方で、すがけんさんは、口癖レベルで否定的な人もいると指摘します。何を言っても「でも」から始まる人には、川原さんも「もう話す気ないな」と感じるといいます。
やっぱり相手が答えたくなる構えになってない人っているから、そうすると気づいたら、なんかギバーが近づいてもやっぱ帰っちゃうわけですよ。
川原さんはこれを「ギブしがい」と表現します。肯定的な口癖は相手がギブしたくなる構えになり、否定的な口癖はギバーを遠ざけてしまう、という対比で対談は締めくくられました。
最後に二人は、Podcastでの評価やコメント、JAPAN PODCAST AWARDSへの投票を呼びかけました。川原さんは大賞を取ってこのラジオを聞く人を増やし、厚利少売な人を増やしたいと話しています。
まとめ
この後編では、ギブの精神が出会いや会社売却を生み、事業の準備が厚利少売の構えをつくるという話が一つにつながりました。成功者の振る舞いは特別な才能ではなく、相手に関心を持ち、準備で自分の構えを定義することから始められると語られています。
- 新しい世界に出会ったとき、異物として排除せず面白がって信じられるかが変化の分かれ目になる
- すがけんさんの会社売却は、Kiyoさんのギブと、それに応えた手助けが巡った結果だった
- ギブは相手への関心、テイクは自分への関心であり、自分らしさと利他は両輪として循環する
- 孫正義さんの勝率5割以上は準備の話で、厚利少売の構えは始める前の設計で決まる
- カレンダーに予定を入れ、口癖を決めることで、構えを具体的に変えていける

