厚利少売が広がると、海外のスタバはどう見える?
2025年の新年最初の配信で、川原さんは「厚利少売が浸透した社会とは?」というテーマを掲げました。これまでの回は厚利少売になる方法が中心でしたが、この回では実現した後の社会を描く未来予想図の話をするとしています。
すがけんさんは、あるべき姿を想像できないと、人は足元の課題からしか考えられなくなると指摘します。周囲が変わっていない状態で自分だけ値上げしても買ってもらえるのか、料金を2倍にするのが怖い、といった不安に戻ってしまうからです。
今日は一旦そういう(足元の課題)のは聞いてる皆さんも一切忘れて、ひとまずこういう社会になったらいいよねっていう希望の話をメインにやっていけたらいいなと思ってます。
すがけんさんが最初に挙げたのは、海外旅行での体験です。かつて各国の景気を測るマクドナルド指数 ── 各国のマクドナルドのハンバーガー価格を比べて、通貨の購買力や物価水準の違いを見る指標。一般にはビッグマック指数として知られていますという考え方がありましたが、スタバ好きのすがけんさんは独自に「スターバックス指数」を見ているといいます。
すがけんさんによると、海外ではどの国でもスタバのトールが1,000円ほどで、日本から行くとまず高いと感じてしまいます。けれど現地の人にとってスタバは高級品ではなく、普通の人が当たり前に並んで買っています。
すがけんさんは、日本は国際的に価値がおよそ半分ほどに見られているという大きな問題があると話します。みんなが厚利少売になれば国の価値も上がり、海外のスタバを「日本と変わらないじゃん」という感覚で楽しめるようになる、というのが1つ目の未来像です。
mixi2で突きつけられた「自分が何を好きか思い出せない」問題
すがけんさんは、日本国内に目を向けても、今はみんな時間もお金も足りていないと話します。厚利少売は少なく売り、厚い利益をいただく考え方なので、働く時間は短くなり、キツキツに働かなくていい世の中になるはずだといいます。
その先にあるのが「趣味に没頭できる」状態です。すがけんさんがそう考えるきっかけになったのが、2004年にできたmixiの20周年に登場した新SNS「mixi2」でした。
すがけんさんは、mixi2が復活したことに驚いた一方で、周囲の人がみんな時間が足りず、新しいSNSに飛び込めていないことにも驚いたといいます。
すがけんさんの説明では、かつてのmixiは人と人の繋がりよりも、コミュニティという題材をもとに繋がるSNSでした。myspace ── 2000年代に人気を集めた海外のSNS。音楽アーティストのページが充実し、音楽の発信や交流の場として知られていましたも好きなアーティストのコミュニティで繋がるものでした。
インフルエンサーとかってなって、私が私が私が私がって炎上もいとわず私が私がっていうSNSに変わっちゃって。
関心ごと軸から人軸へと変わったSNSが十何年続いた結果、すがけんさんは、mixi2で昔の感覚でコミュニティに入ろうとして手が止まりました。
(mixi2で)あの時のミクシィの感じでコミュニティ入ろうと思っても、自分が何好きか思い出せないんですよ。
そう、これ働きすぎだなと思って。
川原さんも同じ状態だったといいます。久しぶりの人からの申請に応じて繋がった後、何をすればいいのかわからなくなり、「mixi2って何すればいいの?」と投稿していました。
なんか浮かばない、浮かべない。なんかその脳みそしばらく使ってなくて、シナプスが、「あれ?どこ?」ってなるのが分かった。
すがけんさんは、AIが仕事を奪いベーシックインカムで自由に生きられるという説もある中で、自由になっても好きなコミュニティすら思い出せない人間になっていたと振り返ります。
趣味を取り戻すリハビリは、ピアノのレンタルから
川原さんに「どうしたのか」と聞かれ、すがけんさんは、何が好きか、何を買っているかから無理やり趣味を引っ張り出したと答えます。まず思い出したのが藤井風で、mixi2の藤井風コミュニティに入りました。
すがけんさんは、さすがに趣味がなさすぎると感じて、ピアノもレンタルしたといいます。妹がピアノをやっていて実家にアップライトがあったため、「猫踏んじゃった」プラスアルファくらいは弾けるそうです。今はYouTubeのコード解説を見れば、和音で藤井風の曲を少し弾くだけでも楽しめると話します。
すがけんさんが使ったのは、電子ピアノを借りられるレンタルサービスのレンティオ ── 家電やカメラなどを月額で借りられるレンタルサービス。購入前のお試しにも使われ、一定期間借りると自分のものにできる商品もありますです。12ヶ月ほど払うと自分のものになる仕組みだといいます。
すがけんさんがレンタルを気に入っている理由は、賢い消費者でいたいと思うほど、購入では比較検討に数ヶ月かかってしまうからです。月1万円で3ヶ月借りれば、3万円で十何万円の商品を試せます。
返品できないので比較検討を重ね、弾き始めるまでに数ヶ月かかる
失敗してもいいから借りる。1週間後に届いてすぐ弾き始められる
とにかく返せるんだから失敗していいやつを借りようって言って、どんどん借りるようになってるんですよ。
ピアノのコミュニティ、好きなm-floのコミュニティ、グルメと、たどってたどって、すがけんさんはやっとmixi2のコミュニティに10個、20個入ったといいます。タイムラインでみんなの楽しみ方を観察することが、人間らしさを取り戻すエクササイズになっているそうです。
ある種のリハビリな感じですね。
リハビリでしょう、これ。薄利多売ビジネスをやりすぎた結果、趣味の時間が何も持てず、喜びを見失ってしまってたから、2年ぐらい。
すがけんさんは「ワークライフバランス」という言葉はあまり好きではないとしたうえで、ライフの中にワークがあり、残りは趣味という生活を描きます。厚利少売になれば時間が余るので、それを実現できることこそが厚利少売を目指す意味ではないか、と話しています。
厚利少売の友達が増えると、遊びが次のビジネスになる
川原さんは、厚利少売が実現すると短い時間で利益が取れ、時間にもお金にもゆとりが生まれると整理します。そのうえで、バカンスのために生きているようなヨーロッパの人の世界観が、日本でも身近になるのかとすがけんさんに尋ねました。
すがけんさんは「すると思います」と答え、海外にも国内旅行にも行けると話します。さらに、周りの友達も厚利少売になっていれば一緒に遊べるため、最近は自分の友達をみんな手伝って厚利少売にしているといいます。
「明日何してる?遊ぼう」って言って空いてるんですよ、結構みんな。
趣味がないと、年を取ってから友達を作るのも大変です。すがけんさんの周りでは、厚利少売を実現した友達と「じゃあサウナ行くか」と遊べるようになり、整いながらビジネスの話になるといいます。
時間が空く
厚利少売を実現した友達は平日でも予定が空いている
一緒に遊ぶ
サウナなどで気軽に集まる
ビジネスの話になる
単価アップや時間の削減、新しいビジネスの話が自然に出る
さらに厚利少売に
成功している友達同士がさらに良い状態になっていく
川原さんは、オンライン会議で「今からビジネスのアイデアを思いつきましょう」と考える状況との違いを挙げます。すがけんさんも、会議室でやると絶対に当てなければいけない話になり、結局みんなが知っているものになってしまうと応じました。
AIに聞いたら出るがな、それっていうものを、人が一生懸命膝つき合わせて考えても大差ないですよね。その環境だと。
すがけんさんはここで、山口周さんの著書『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』とされる名著を引きます(書き起こしでは『世界のエリートはなぜアートを学ぶのか』と言及)。同じデータを見れば賢い人の選択は同じになり、みんなが参入してしまうので、独自の解釈ができる脳を作るためにアートを学ぶ、という内容です。書名
すがけんさんは、ゆとりを持つことも解釈の幅を広げるために必要だと話します。働いても時間が足りず、安くてもやらないよりマシと受けてしまうスパイラルを断ち切った先に、友達が増え、豊かになり、いいアイデアが出てくる世界があるという見方です。
お金・時間・人間関係、厚利少売で得られる3つのもの
川原さんはここまでの話を整理し、厚利少売が実現した社会で得られるものは大きく3つだと話します。お金的な余裕、時間的な自由、そして豊かな人間関係です。すがけんさんは3つ目を「友達だよね」と言い換えました。
やっぱどんなうまいもんでもやっぱそれ美味しいよねって分かち合える人いなかったら良さ半減するよね。
すがけんさんも、料理人さんとの会話を楽しむことはできても、隣に誰もいない状態で一人で食べるのは楽しくないと同意しています。
川原さんはもう1つの観点として、星野リゾート ── 日本各地で旅館やホテルを運営する企業。代表の星野佳路さんは観光業の経営について積極的に発信していますの星野さんの話を紹介します。星野さんは、インバウンドだけでなく、実は国内の内需のほうがもっと伸びしろがあると話していたそうです。
川原さんによると、みんなが月金で働いて週末だけを余暇に使うため、ホテル側は月金の稼働を上げるのに苦労します。厚利少売が実現すれば、好きな時に休み、比較的安い時に好きな場所へ行けるので、幸福度が高いと川原さんは考えています。
すがけんさんも平日の移動が基本だといい、お金があるのに安く移動できてしまう現状を、得する人が得する状態だと話します。実現したい側の頭で考えると格差が広がると感じるため、早くそちら側に来てほしいという思いを語りました。
余裕が生む「ケーキ会」と、損得を気にしないつながり
すがけんさんは、川原さんとのこのラジオのプロジェクトも、鼻息荒く年商何億を狙うのではなく、余裕があるからこそ手弁当でやれていると話します。うまくいけばビジネスになるかもしれないし、そうでなくても考えをお裾分けできるという姿勢です。
やっぱ結局この時間やお金や、もう何だったらこの精神的なゆとりを持つってところがすんごい大事だと思うんですよね。
すがけんさんは最近、周りの友達をみんなうまくいくように手伝う「フックアップ」を積極的にしているといいます。友達がみんな自分よりすごい人になれば、もっと頑張れると思えるし「俺の友達すげえぞ」という状態になるので、自分が一番得だという考え方です。
成功した友達はT字型人材 ── 1つの専門分野を深く掘り下げつつ、幅広い分野の知識も持つ人材のこと。Tの縦棒が専門性、横棒が幅広さを表しますの縦棒を深く掘った人たちなので、つなげるとビジネスになり、相乗効果が生まれているとすがけんさんは話します。
そのつながりの場の1つが、すがけんさんの自宅で開く「ケーキ会」です。ケーキ10個、20個で10万、20万円かかりますが、場所代は取らず全部自腹で振る舞っているといいます。
ビジネスで成功した先輩から「俺のスペースでやってくれない?」と頼まれ、タダでやっていると伝えたところ、「ちょっと信じられない」と驚かれたそうです。
いやいやいや、まあ年末だし。とか年始だし、友達いっぱい呼んで、いろんな人つなげて、まあ僕の利益還元祭みたいなやつですかね、年に何回かやる。
すがけんさんは、厚利少売でビジネスができているので、ケーキ代を気にしなくていい状態になっていると話します。お世話になっているケーキ屋さんに「普段チャレンジできない高くていいものを作ってください」とお願いもでき、みんなが嬉しい状態になるといいます。
川原さんは、金銭的にはマイナスでも、心の面や与えられているという意味ではすがけんさんにとって大きなプラスだと指摘します。すがけんさんは、ゆとりがないと会費の取り方などを考えてしまうと応じました。
すがけんさんによると、助けられた人たちはすごい人だからこそ何かで返そうと思ってくれます。奪い合いじゃないので、小さなコミュニティの中で成功者が少しずつ生まれ、みんなが優しくなって周りを手伝うようになるといいます。
時給30万円の相手を、なぜケーキ会に誘えるのか
川原さんは、以前話した、すがけんさんがシリコンバレーで最初に経験した状態と同じだと振り返ります。すがけんさんがまず思い出したのは、リンゴを食べてびちょびちょの手で握手された場面で、2人の笑いを誘いました。
川原さんがこの話に美しさを感じるのは、すがけんさん自身の厚利少売が、高い時給をもらいながらそれ以上の価値を企業に返すことで成り立っている点です。払う側も喜び、そのお金でケーキ会まで開ける、全員がハッピーな好循環だと話しています。
仕事で結果を出すのは、それはもらったお金の対価だから、割と当然にやっぱ返さなきゃいけなくて。で、いっぱい返したいからいっぱいもらいたいみたいなところもあるんで。
すがけんさんは、会社対会社ではあっても個人対個人だと考えており、仕事相手がケーキ会や別のイベントに来ることもあるそうです。
川原さんは、時給30万円の壁打ちの場はプロ対プロでピリッとしているのに、その相手をケーキ会に誘う温度差に驚いたと踏み込みます。すがけんさんの答えはシンプルでした。
ケーキ好きなら食べたくないですか?
ニュートンとアインシュタインに学ぶ、ケーキ会の本音
すがけんさんは、目指しているのはニュートンとアインシュタインだと語ります。ニュートンはリンゴが落ちるのを見て引力を見つけましたが、物が落ちるところは誰でも見ているので、本当は誰でも気づけたはずだといいます。
友達3人と歩いていてリンゴが落ちても、普通は「それ普通じゃん」と話が流れていきます。すがけんさんは、そこで「何か気づいたぞ」となれるかどうかの「気づき力」が大事だと話しています。
もう1つはアインシュタインの逸話です。すがけんさんによると、アインシュタインを抜こうとした弟子が1日何時間勉強しているのかを尋ねたところ、アインシュタインは確か「24時間」と答えたといいます。
すがけんさんにとって、ケーキ会もこの「24時間の学び」の場です。一流のシェフが作り、きちんと評価されているケーキとはどういうものか、老若男女15人ほどの参加者が何を評価するのか。その観察がビジネスのヒントだらけだといいます。
一流とは何か。一流はどう評価されるのか、一流は何が仕事が違うのかみたいなのはよそからも学べるはずなので、そういうのを提供したくてやってるのが本当は本音ですね。
ただし、ケーキ会の場ではこうした話は一切しないそうです。料理人さんへのリスペクトとして楽しむ側を優先しており、川原さんも「すると(場が)ピリつくからね」と笑っていました。
ネガティブなスパイラルを、どこで断ち切るか
川原さんは、こうした心持ちで生きられるようになることこそが、厚利少売が浸透した後の社会だとまとめます。すがけんさんは、厚利少売になるまでには勇気が必要でも、なった後はめちゃくちゃ与え合う世界になると話しました。
お金がない、時間がない、余裕がないから、新しいことができない
与え合い、趣味も楽しく、仕事のレベルも上がってますますうまくいく
ちょっとずつ勇気を持っていらないものを捨て、ゆとりをちょっとだけ増やしてチャレンジをしてみるっていうのがすごく大事な気がします。
川原さんは、厚利少売を知り実践する人を増やした先にしか浸透した社会は起こらないとして、もっと伝えていきたいと話します。
すがけんさんは、この雑談型ラジオからエッセンスに気づき、会議の仕方を変える、やめることリストを10個書き出すといった行動につなげてほしいと呼びかけます。気づいたことをカレンダーに入れることで未来の予定を変えていく、週1回の配信ごとのゲームでもあると話しています。
ショート動画とJAPAN PODCAST AWARDSのお知らせ
お知らせのコーナーでは、すがけんさんがショート動画を始めたことを紹介しました。X、TikTok、YouTubeショート、Instagramなどで公開しており、感想やフィードバックを寄せてほしいと話しています。
川原さんは、ショート動画は前後の文脈がないぶん意味深に聞こえて面白いと、視聴者目線で語りました。2人は、運営スタッフの編集の妙だとたたえています。
最後に川原さんは、締め切り間近のJAPAN PODCAST AWARDSへの投票を呼びかけました。番組名は「厚い利益に少なく売る」で「厚利少売」です。すがけんさんの以前の著書『小さく分けて考える』に引っ張られて「小さく売る」と間違えやすいので、注意してほしいと念を押しています。
次回はお悩み相談のコーナーを扱う予定で、お便りフォームで具体的な悩みを募集していると告知されました。
まとめ
この回では、厚利少売が浸透した社会の姿が、海外の物価、mixi2で失っていた趣味、友達との遊び、ケーキ会といった具体的な体験から描かれました。すがけんさんと川原さんは、ゆとりが人間関係と気づきを生み、さらにうまくいく循環をつくると語っています。
- 厚利少売が広がれば国の価値が上がり、海外のスタバを「日本と変わらない」と感じられる可能性がある
- すがけんさんはmixi2で好きなものを思い出せず、働きすぎに気づいて趣味のリハビリを始めた
- 厚利少売で得られるのは、お金の余裕、時間の自由、豊かな人間関係の3つだと整理された
- 損得を気にしないケーキ会は、一流から学ぶ「24時間の学び」の場にもなっている
- ネガティブなスパイラルは、いらないものを捨て、少しずつゆとりを増やすことで断ち切れるとすがけんさんは話した

