番組は「聞き流し」で身につくのか?
川原卓巳さんは冒頭で、毎週すがけんさんとビジネスについて好き勝手話せるこの収録が、自分にとって「ときめく」予定になっていると話します。
すがけんさんは、聞いている人のビジネススキルも上がり、だんだん体現できるようになる番組にしたいと応じます。たとえとして挙げたのが英会話です。
毎日何時間かNetflixで海外ドラマを字幕つけずに見てるとできるようになるよみたいな感じで。これ(このラジオ)を流しながらできるだけの時間聞いてると厚利少売ネイティブになってくみたいな感じですよね。
ところが川原さんは、この「海外番組を英語字幕付きで見ると英語の耳になる」というメソッドに、もともと懐疑的だったと切り出します。
TOEICが1年で30点下がった話
川原さんはアメリカに行く前、受験英語は勉強していたものの、文法や発音を気にして声を出すのも億劫だったといいます。全く喋れない人より意識的には「マイナス」だったという自己評価です。
すがけんさんも負けじと失敗談を披露します。TOEICは270点で、990点満点のマークシートを4分の1の確率で塗っても取れそうな点数でした。
褒められるかなと思ってやったら、1年経ってTOEIC受けて240点になって、減ったわけですよ、30点。
内定後に「入社前にスコアを上げれば頑張ったと思われる」と打算的に勉強した結果がこれで、その受験は「闇に葬り去りました」と笑います。川原さんは「運の方が能力より上だった」とツッコみ、自分の「マイナス」もできないという確信を強めていた点で同じだとまとめます。
サンフランシスコの空港で注文すらできなかった
川原さんは、字幕付きの海外番組やスピードラーニングで耳を慣らす努力をしていましたが、体感としては得られたものが何もなかったといいます。
いざアメリカに移住するってなって、やっぱり着いたサンフランシスコの空港のカフェで朝食食べようと思って注文すらやっぱできなかった。
指をさして注文しても思ったものが来ない。すがけんさんも、チーズ抜きを頼んだつもりが「チーズ、チーズ」と連呼したせいでチーズ2倍のバーガーが来た経験を話します。
川原さんにとってアメリカで一番怖い店はSubwayで、選択肢が多くやり取りの回数が増えるため、相手をイラッとさせているストレスが上回ってしまうそうです。日本で言えばラーメン二郎 ── 大盛りで知られる人気ラーメン店。熱心なファンは「ジロリアン」と呼ばれ、独特のトッピングの頼み方(コール)があることで有名ですの独特な注文作法のようなものだとたとえています。
聞くだけで身につけるには何が必要か?
川原さんはここで本題に入ります。前回の放送で話題になった「構えで勝つ成功者の振る舞い」を深掘りしてほしいという要望があり、うまくいっている人のコミュニティに迎え入れてもらえる自分になる方法も含めて話したいといいます。
すがけんさんは、英語の話と結びつけて、川原さんが字幕で英語を覚えられなかった理由をシンプルに説明します。
たくみさんが全然その聞くだけで、字幕を見るだけでうまくいかなかった理由は、シンプルにその日使わなかったからだと思います。
このラジオで聞いたことって、やっぱり「ああ、いい話だな。メモが止まりません」じゃなくて、今日使いましたっていうところに注目すると、本当に聞くだけで使えるようになってくると思いますよ。
成功者を観察し、その言葉を真似してみることで少しずつ近づくという点で、振る舞いの習得は英語の習得と同じ構造だとすがけんさんは考えています。
字幕付きで見る・いい話だとメモするだけで、その日に使わない
聞いたことを「今日使いました」と実際に試し、成功者の言葉を真似してみる
ビジネスにおける「構え」とは何か
川原さんの問いに、すがけんさんは孫さんの話をベースに答えます。達人は構えが違い、構えがちゃんとしていれば相手が達人と認識するので、そもそも争いにならないという意味です。
すがけんさんは、構えには好感度の良し悪しやテイカー的かギバー的かがあり、それを見る相手の側も判断していると話します。いい人はいい振る舞いを好み、悪い人は悪い振る舞いを見て「こいつ俺と一緒だな」と感じてしまうといいます。
ビジネスの場面に置き換えるとどうなるのか。すがけんさんの答えは、人となりはおよそ5分でわかってしまうという感覚でした。
打ち合わせやパーティーでの最初の数分の振る舞いで印象が決まり、慣れてくると大体当たる。その領域こそが構えだとすがけんさんは説明します。
ただし川原さんは、想定するリスナーは「昔の僕ら」だとして、成功者を身近に見たことがない人にもわかるまで言語化したいと求めます。
Clubhouseで人が騙されていった理由
すがけんさんが例に出したのはClubhouse ── 2021年頃に日本でも流行した音声SNS。ルームに入って誰とでも音声で会話でき、普段出会わない人同士がつながる場になりましたです。普段ビジネスでは出会わない人とつながれた良い面がある一方、かなりの人が騙されていたといいます。
でもちょっと気をつけた方がいいよって言って。なんでですかって会いに行って、やっぱちゃっかり騙されて帰ってくるとか。
すがけんさんには相手の構えやスタンスが見えていたので注意を促せましたが、その友人には見抜けませんでした。典型的なサインは、初対面でいきなり美味しい話をする人と、それに飛びつく人だといいます。
川原さんはこれを、相手がギバーなのかテイカーなのかに気づけるかどうかの問題だと整理します。
ギバーは引き上げ、テイカーは引き込む
すがけんさんによると、ギバーとテイカーは最初の一言で違いが出ます。
ギブする人って「なんかできることない?」って聞いてあげるんですよね。
要はその人を助けようとする人っていうのがギバーですと。で、テイカーっていうのは、「こんないい話あるんだけど」って引き込む人なんですよ。
ギバーは相手が今いる場所で上がる方法を考え、テイカーは「こっちにおいでよ」と自分の側へ連れていきます。Clubhouseの友人は、引き上げられたのではなく引き込まれてしまったのだとすがけんさんは振り返ります。
「なんかできることない?」と聞き、相手が立っている場所のまま引き上げる方法を考える
「こんないい話あるんだけど」と、相手を自分の側へ引き込む
川原さんは、構えの面でリスナーがまずできることは、相手がギブの振る舞いかテイクの振る舞いかを一生懸命見抜くことだと受け取ります。慣れれば呼吸するようにわかるようになるといいます。
さらに川原さんは、間違ってテイクの人と会うと会話自体がちぐはぐで気持ち悪いと話します。すがけんさんも、被害も何もないうちから会話が続かないほど、最初の姿勢で違いが出ると同意します。
昔はそうした人のほうが多く見えていたという川原さんに、すがけんさんは「我々の構えが良くなくて、そういうところにしかいられなかった時代」があったと応じます。
シリコンバレーで受けたカルチャーショック
何で変わったのかという川原さんの問いに、すがけんさんは30歳ごろIT会社に入り、最初の海外出張で行ったシリコンバレーの体験を挙げます。IT長者が集まるイベントに参加できたそうです。
成功してても成功してなくても、人を引き上げていくっていうのがシリコンバレーのカルチャーだから、もうそこにいた時点で、もうみんなが「君は何してるの?もっと良くなるといいよね」ってずっと言ってくれるんですよ。
一方で、リンゴを素手でかじった果汁まみれの手でいきなり握手を求められたという、衛生面に気をつけたいすがけんさんにとっての別のショックも笑い話として語られます。
会話の中身は日本と全く違い、めちゃくちゃ聞いてくれて、褒めてくれて、アイデアを出してくれたといいます。
余裕のある人ほど、二度と会わないかもしれない相手にも無条件に興味を持ち、質問をしてくれた。自己紹介をまくし立てる人も、引き込もうとする人もいなかったそうです。
当時の日本では、エンジニアは「パソコンオタク」と呼ばれ、壊れたパソコンを直す便利屋のような扱いでした。対してシリコンバレーでは、イベントのオープニングで国歌を斉唱し、国を背負い、与え合う前提で働いていたといいます。
エンジニアは「パソコンオタク」と呼ばれ、総務に呼ばれてパソコンを直す便利屋のようなステータス
イベントで国歌斉唱し国を背負うと語り、互いに高め合い与え合う前提で働く
恩を「誰か」に返す、助ける人の総量
川原さんは、日本という変わった生態系の中で、今のすがけんさんこそシリコンバレー的に生きようとしていると指摘します。すがけんさんは照れつつ、そう生きたいと答えます。
すがけんさんにとってそれは、あの時してもらったことを、当時の相手ではなく周りのみんなへ返していく恩送りのような感覚です。
AさんにやってあげたんだからAさんに返してもらわなきゃじゃなくて、100人ぐらいにやって、誰か3人ぐらいが返ってきたら(いい)。
その100人の何割かがうまくいき、また他の人に良いことをすれば世の中はずっと良くなる。困っている人を助ける人の総量を増やすという思想がシリコンバレーにはあり、自分もその一員でいたいとすがけんさんは語ります。
川原さんはこれを「すがけんさんの根底にある構え」と表現し、すがけんさんも、その構えの有無は初手でわかると応じます。
構えは今この瞬間から変えられる
川原さんは、すがけんさんは偶然にもシリコンバレーに触れられたが、聞いている人がそうした機会に巻き込まれる再現性はあるのかと問いかけます。
それ(その場)はだからその場に行くしかないけど。でも構えを変えれるかは聞いちゃえばできることだと思うんですよ。
すがけんさんは、精神的・思考的なものは納得した瞬間からスイッチを入れられると説明します。対比に出したのが、高い跳び箱を跳ぶような男子体操でした。
あれ(体操)は動画見ようがこうやってトークして知ろうが、スイッチをパンなんて入れてやったら骨折ですよ。初手。
身体的な技術は理解しただけでは真似できませんが、精神的なものは分かればその日からできる。それがビジネスや精神性の良いところだとすがけんさんは考えています。
体操のように、動画や話で知ってもいきなり真似すれば骨折する
納得すれば「今日からこの3つ気をつけよう」とすぐ実践できる
ただし、自分が変わっても環境が変わらないこともあります。すがけんさんは、自分にとってのシリコンバレー的な高みを見つけ、移動し、人を集めることも必要だといいます。
その点でインターネットのバーチャル空間なら、秋田の田舎に住んでいても村の掟に縛られずにつながれる、とすがけんさんは前向きに語ります。
Googleトレンドで伸びる「厚利少売」
話は後編へ続くとして区切られ、川原さんはJAPAN PODCAST AWARDS ── リスナー投票による一次選考などを経て、その年に聴くべきポッドキャストを選ぶ日本のアワードですへの投票を呼びかけます。大賞を取ることが、厚利少売な人を増やす一番効果的な一歩だと考えているそうです。
すがけんさんは、Googleトレンドで「厚利少売」が伸びていると報告します。まだ「薄利多売」の100分の1ほどですが、いつか追い抜いたとき、日本はテイカーではなくギバーにあふれる社会になっていてほしいと語りました。
これは一人一人がやればなっていくからっていうつもりでやってるので、ぜひ皆さんで作りましょう。
川原さんも、ラジオや本以外で「厚利少売」という言葉を聞く機会が増えたと実感を語り、書籍を年末の課題図書として勧めて前編を締めくくっています。
まとめ
前編では、「構えで勝つ」を、最初の数分で相手に伝わってしまう姿勢として言語化し、ギバーとテイカーの見分け方、シリコンバレーで学んだ与える文化、そして構えは納得した瞬間から変えられるという点までが語られました。
- 構えとは、初対面の最初の数分の振る舞いで伝わる人となりのこと
- ギバーは「できることない?」と相手をその場で引き上げ、テイカーは「いい話がある」と引き込む
- シリコンバレーでは、成功の有無にかかわらず相手に興味を持ち、引き上げる文化があった
- 聞いた話は「今日使った」ことで初めて身につく
- 精神的な構えは納得すれば今日から変えられ、環境はインターネットでも選べる



