受賞後の初収録は「社名を言うか迷う」カジュアルさから
厚利少売ラジオは、薄利多売のビジネスモデルから抜け出すための考え方や行動のヒントを語るビジネス対談型のPodcastです。今回の収録は、すがけんさんが台本から消えていた社名「Moonshot」を名乗るかどうかで慌てる場面から始まりました。
(台本に社名が)なくて目が泳いじゃって。言わなくていいの?言わなくて。いや、でもムーンショットだし言うよってなっちゃいました。すいません。
川原さんは冗談まじりに、JAPAN PODCAST AWARDS ── 日本のPodcast作品を表彰するアワード。リスナーやクリエイターの間で注目度が高く、受賞作は新たなリスナーを集めやすい傾向がありますの企画賞最優秀賞に選ばれた番組として「品格のある番組運営」をしたいと切り出します。
すがけんさんは、ABEMAで配信された番組で審査に関わった伊藤あわさんが、企業・ビジネス系の作品について聞きやすかったという趣旨を話していたと紹介しました。そのうえで、この番組は堅さよりもカジュアルさでいいのでは、と返しています。
収録日は4月2日です。新年度を迎え、新しい会社や部署、チーム、役割でスタートを切る人が多い時期に合わせて、今回は「春が来た!新しい環境で成果を出す方法」をテーマに、二人が新しい環境で何を意識してきたかを振り返ることになりました。
新卒研修で同期16人にマウント、すがけんさんの盛大なスタートダッシュ失敗
新しいプロジェクトばかり手がけてきたすがけんさんは、まず自身の失敗談から話し始めます。すがけんさんは20歳で高専 ── 国立工業高等専門学校の略称。中学卒業後に5年間かけて工学系の専門教育を受ける学校で、在学中から実践的な技術を学びますを卒業し、三井物産の子会社にあたる東京のシステム開発会社に入社しました。
(高専は)5年分、先いった知識をひけらかしながら、自分含め16人なんで、15人の同期にマウントを取るみたいな感じで。もう盛大にスタートダッシュを間違えましたね。
すがけんさんによると、その16人の同期とは今も仲がよく、結果的に全員が会社を辞めて、消防士や市議会議員などそれぞれ別の道に進んだそうです。職を変えてもずっと続く関係は珍しいので、同期は宝として大切にしたほうがいい、というのがすがけんさんの1つ目のメッセージです。
余談として語られたのが、システム開発が向いていないと言って辞めた同期の話です。その同期は消防士に転職したものの、配属されたのはシステム課でした。
消防士になって配属されたのシステム課なんですよね。お前、システムやってたんだろって言われて。
すがけんさんは、この同期の話を笑い話で終わらせず、市場を考えるうえで重要な例だと捉えています。ある場所で二軍でも、場所を変えれば一軍になれることがあるという見方です。
最初の数年で勝った負けたとかやってるとすごい大変なんで、新しい環境の時は、この会社はどんな力学で動いてるのかなとか、どういう人たちがいるのかなとか、丁寧に人と仲良くなった方がいいなって思いましたね。
同じ負荷でも「つらくやるか楽しくやるか」は選べたのか
川原卓巳さんも新卒時代を振り返ります。川原さんが入社した人材系コンサルティング会社は営業色が強く、内定者の段階から商品を渡され、電話帳を上から順にかけてアポを取る日々だったといいます。
内定者期間に契約を取ってくる同期もいる中で、川原さんは最後に1件取れるまで結果が出ず、自分を「劣等生オブ劣等生」と感じていました。
(契約が)1件出たか0なのかって、正直生涯のキャリアからいうと誤差でしかないのに、それだけで自分という存在の無価値だって決めつけて、どんどん負のスパイラルに落ち込んでいった。
川原さんは電話をかけるのも怖くなり、行動量が減っていったそうです。この経験から、新しい環境では短期的な結果を意識しすぎないことが大事だと語ります。
すがけんさんも、20代でうつ病を経験した話を重ねます。高専で得たプログラミングの先行分は、大卒や院卒の優秀な同期にみるみる追い抜かれ、すがけんさんは会社に行けなくなってしまいました。
すがけんさんが回復したきっかけは、追い抜かれたのはスタートラインの差が出ているだけで、定年まで長く働くと考えればこの数年の勝ち負けはあまり関係ない、と自分を納得させられたことでした。
ただ、すがけんさんは今になって、あのつらさは「なくてもよかった」と振り返ります。必要だったのは同じだけの負荷であって、それをつらく受け止めるか楽しく受け止めるかは選べたはずだ、という考えです。
すがけんさんは、やらされていると感じても、その場所にいることを選んでいるのは自分なので、自分で選んだことにして楽しむと、慌てずに解ける問題も多いと話します。企業の難しい問題を解く仕事をしているすがけんさんでも、焦っているときは問題が解けず、リラックスしていないと全然解けないそうです。
短期の結果で自分の価値を決めつけ、同じ負荷をつらく抱え込んで行動量が落ちる
数年の差は長いキャリアでは小さいと捉え、自分で選んだ環境として負荷を楽しんで引き受ける
新しい環境はアウェイ、最初の一歩は「ホーム」を作ること
すがけんさんの「リラックスしていないと解けない」という話を受けて、川原さんは新しい環境で成果を出すための一歩目がわかった気がすると切り出しました。
すがけんさんは、ホームを作るという考え方は、仕事のパフォーマンス以前の人間関係の話になると応じます。すがけんさん自身も、調子のよかった時期は自分の家にいるような居心地のよさの中で働けていたそうです。
話は日本と海外の撮影現場の違いに広がります。すがけんさんが日本の撮影現場はギスギスしがちだと振ると、Netflixの番組制作に関わってきた川原さんは、海外の現場はエンターテインメントだから最高に楽しいと答えました。
一方で川原さんは、海外の現場はパフォーマンスで測られるので、結果に向かっていないとすぐに解雇される厳しさもあると補足します。すがけんさんは、それでも土台にリラックスできる環境があり、そのうえで成果を出した人の仕事が増えるという点で、いい環境になっていると話しました。
丁稚制度のような厳しさがあり、環境が用意されないまま生き残り戦をやらされがち
人へのリスペクトがありリラックスした土台がある。そのうえで結果に向かっていないとすぐ解雇される厳しさもある
川原さんは、日本では我慢する能力を最初に高め、我慢できるかどうかが優秀さの最初の基準になっていると指摘します。すがけんさんは、自分がそうされてきたから繰り返す負の連鎖であり、生き残った人だけが残る生存者バイアス ── 生き残った人や成功した事例だけを見て判断してしまう偏りのこと。脱落した人の存在が見えなくなるため、そのやり方が正しいと思い込みやすくなりますでもあると応じました。
二人は、高校野球やサッカーでも「楽しむこと」が結果につながり始めている例を挙げます。すがけんさんは、昔の「水を飲むな」という指導にロジックがあるとすれば我慢であり、我慢の許容量が高い人が残るという間違い方をしていた可能性があると話しました。
価値は我慢の許容量だったんだね。
そうそうそうそう。価値は相手の変化量じゃなくてね。
「認めてもらいたいなら認める」というチームの作り方
すがけんさんは、新しく始める人には、まず自分の家のような居心地のよさをみんなで作ることから始めてほしいと話します。そのための方法として、合意形成や相手へのリスペクトを挙げました。
すがけんさんは、自分は相手のいいところを認めないのに、自分のいいところだけわかってもらおうとしがちだと指摘します。そのうえで、行動の優先順位を次のように示しました。
だからしゃべるより聞いた方がいいし、聞くより褒めた方がいいと思うんすよ。
相手の何がいいのかがわかってくると、自分もそれをできるようになる、というのがすがけんさんの考えです。聞く、観察する、褒めることが、チームビルディングの最初に大事だとしています。
川原さんは、新卒の人がいきなり褒めるのは難しいとしつつも、場に早く馴染む意識を持つことが大事だと話します。そして、その多くは何の価値につながるかわからない雑用でも、必要な仕事に自分から取り組むことで作れると付け加えました。
俺も。いかに要領よくやるかって考えてた。
コピー取りの雑用が、先輩の資料作りを任される仕事に変わるまで
すがけんさんは著書『小さく分けて考える』にも書いたエピソードとして、新人時代に雑務の代表であるコピー取りを「最高の仕事」にしようと考えた話を紹介します。
すがけんさんは最初にコピー機のマニュアルを読みましたが、意味がなかったそうです。資料は読めればよく、きれいに写すことが仕事ではないと気づいたからです。
なぜか先輩はすぐにコピー取ってっていつも言うから急いでんだなと思って。なんで急いでんだろうなと思ったら、資料を作るのが遅かったんですよ、その先輩が。
経営会議の資料を毎回コピーしていたすがけんさんは、何を作ればいいかがわかってきたので、先輩に「この資料作りますよ」と申し出て仕事をもらえるようになりました。
雑務を引き受ける
誰でもできるコピー取りを、率先してやろうと考える
目的を考える
先輩がいつも急いでいる理由を探り、資料作りが遅いことに気づく
中身を把握する
毎週コピーする中で、経営会議に配る資料の内容がわかってくる
仕事を取りに行く
資料作りを申し出て、先輩の負担を軽くする
すがけんさんは、待つのではなく自分から仕事を取りに行き、どんどん先輩を軽くしていく感覚で働いたことで、頼られ、重宝され、役に立っている実感を持てたと話しています。
川原さんはこの話を、言われたことを作業としてやらないことだとまとめました。すがけんさんは、今ならメール送信でさえ「なぜやるのか」「なくてもいいのか」「代わりにやれないか」「前後に何があるのか」を想像すれば人を助けられると語り、それもホームになる感覚だとしています。
転職した経営者でも、成果を出す人は最初の1か月に人と会う
すがけんさんは、ホームを作る話は新卒に限らないと続けます。新年度に転職する人や、経営者として新しい会社に入る人は、3か月から半年で短期的な成果、いわゆるクイックウィン ── 新しい役職や組織に入った直後に、早めに出す小さな成果のこと。周囲の信頼を得るきっかけとして重視されますを出したいと考えがちです。
それでも、すがけんさんが見てきた成果を出す人は、みんないろいろな人と会話する人だといいます。川原さんも、そうした人は最初に1on1をしたり、多くの人に話を聞きに行ったりしていると同意しました。
一番合理的じゃなさそうな、めんどくさいことなんだけど、やっぱ成果出す人はちゃんとやってますよね。
川原さんは、人と会うことで自分の知見が整理されるだけでなく、人との関係がメッシュのように張りめぐらされ、助けてもらえるようになるのだろうと話します。
一方ですがけんさんは、就任前から考えた戦略をどうやらせるかで始める人は、周囲のアレルギーにあって嫌われ、1年もたないことも多いという印象を語りました。
最初の1か月は人と会い、1on1や聞き取りで知見と人間関係を広げる
就任前に考えた戦略をどうやらせるかから始め、反発を受けて1年もたないことも多い
二人は、ホームにすることが自分たちの経験と見てきた人たちの「総論」だと確認し合います。すがけんさんは30年前に聞きたかったと言い、覚えておくのは「ホームにする」の1つでいいとまとめました。
お便り紹介その1、友人と番組を語り合うダイヤモンドアツシさん
後半は、2回目となるお便り紹介のコーナーです。最初に川原さんが読み上げたのは、ラジオネームダイヤモンドアツシさんからの感想でした。
ダイヤモンドアツシさんは、朝の通勤中に番組を聴き、週末にはこのラジオを勧めた友人と感想を語り合っているそうです。お便りには「お互いに壁打ちしながら、自分たちの商売にどう生かせるかを考えるのがちょっとした楽しみになっています」と書かれていました。
さらにお便りでは「タクミさんのスガケン愛が溢れすぎていて、あのいちゃつき加減が愛おしいです」と触れられ、川原さんは嬉しさより恥ずかしさが上回ったと笑います。
まあでもおっしゃってる通り、一番好きな話してるだけなんで楽しいですよね。
すがけんさんは、ダイヤモンドアツシさんと友人が語り合う時間は、今の自分たち二人のような時間になっているのかもしれないと話します。川原さんも、厚利少売を共通テーマに語れる仲間がいるのはいいことだと応じ、すがけんさんは趣味の欄に「厚利少売を語る」と書いてほしいと冗談を飛ばしました。
すがけんさんは、相談のお便りはまとめ方に悩むけれど、聴いた感想や聴いて何をしているかを書くだけなら誰にでもできると話します。アワード受賞でリスナーが増えたこともあり、二人をもともと知らなかった人が番組だけを聴いてどう感じたのかを聞きたいと呼びかけました。
川原さんが直接よく聞く感想は「二人が似ている」で、声も似ていてどちらが話しているかわからないと言われたそうです。川原さんは、これからは低めの声を担当しようかと笑っていました。
お便り紹介その2、報告書を送って20倍褒められた実践報告
2通目は、ラジオネーム「ドイツで博士号を取ったナギサ」さんからの実践報告です。ナギサさんは3月16日にネットで検索して、番組の企画賞受賞を知ったそうです。
ナギサさんは昨年12月から業務委託で子ども向けの英語教室を始めました。お便りによると、習い事を掛け持ちする家庭が多い中で、英語以外の得意なことも保護者にアピールし、いずれは自分の何かを立ち上げたいと考えているといいます。
ナギサさんが実践したのは、第31回の業務委託のお悩み相談会で語られた「お客さんは目の前の人ではなく大元の方」という話でした。お便りには、業務提携元にキャンペーンの報告書を送り、「この報告書はお役に立ちますか?」と聞いたところ、「思っていた20倍くらい褒められました」と書かれていました。
すがけんさんは、この報告書は誰にやれと言われたものでもなく、今日でなくても毎日は過ぎていくものだと話します。来週でいい、来年でいいと先延ばしにしがちなところを、やってみようと思って実際に動いたことがとても大事だと評価しました。
この番組をね、厚利少売ラジオを聴いて、ちょっと信じてみようかなって思っていただいた形の表れだと思うから、なんかそれもすごい嬉しいですよね。
川原さんも、各回の大事なポイントをつかんで生かしてもらっていることが伝わるお便りだったと話し、いろいろなことを番組に散りばめてきたと感慨深い気持ちになったそうです。
本はカレンダーに入れて試す、二人の著書と「捨てる」働き方
最後はお知らせのコーナーです。すがけんさんは、番組のもとになった書籍『厚利少売』を紹介しました。番組は幅広い話題を扱う一方で、本のほうは体系立っていると説明しています。
すがけんさんのおすすめは、本でもラジオでも「これいいな」と思ったことをカレンダーに入れることです。カレンダーに入れれば、それはそのための時間になるので、自分に変化が起きる行動を意識的に予定に組み込んでほしいと呼びかけました。
川原さんは新刊『人生は、捨て。』を紹介します。新しいことを始めると、やるべきことややったほうがいいことが勝手に増えてしまうため、何を手放し、何を残すかを見極められるかで成果の出し方が変わる、と川原さんは話し、その基準を知る本として47の秘訣が書かれていると説明しました。
すがけんさんは、この本は片付けの達人であるこんまり ── 片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんの愛称。著書『人生がときめく片づけの魔法』シリーズは世界的なベストセラーになり、Netflixの番組でも知られていますさんの夫であり、Netflixの番組で多くの人の人生が変わる場面を見てきた川原さんだから書けるものだと話します。
すがけんさんによれば、お金を払って増やしたものを捨てれば普通は損をするはずなのに、なぜか幸せになっていく、という点が川原さんの本の不思議なところです。すがけんさんは、厚利少売も「あまり働かなくても価値を上げればお金をいただける」という、いわば仕事を捨てる話だと重ねました。
清貧に生きていきましょうっていう本でもなくて、お役に立てば時給30万円もらえますよっていう本だし、拓巳さんも、いや、捨てても人生むしろ豊かになりますけどねっていう、なんか本当に今までにない感覚で書いてらっしゃる本だから。
番組の最後には、お便りフォームで悩み相談や感想、実践の結果報告を募集していること、番組のフォローと評価、ハッシュタグ「#厚利少売」を付けたSNSでの発信をお願いしたいことが伝えられました。
まとめ
今回の厚利少売ラジオで、すがけんさんと川原卓巳さんは新人時代の失敗をさらけ出しながら、新しい環境で成果を出すにはまずその場を「ホーム」にすることが大切だという結論に至りました。短期の勝ち負けにとらわれず、人と会い、認め、雑用の目的まで考えて動くことが、新卒にも転職者にも共通する一歩として語られています。
- 新しい環境は誰にとってもアウェイ。いかに早くホームな空気を作れるかが、自分にも周りにも成果につながる
- 最初の数年の勝ち負けは長いキャリアでは小さな差であり、負荷はかけてもつらく思い込む必要はない
- 認めてもらいたいなら、まず相手を認める。話すより聞き、聞くより褒める
- コピー取りのような雑用でも目的を考えれば、相手を助ける仕事に変えられる
- 本やラジオで得たヒントはカレンダーに入れて、実際に試す時間を確保する

