その目標、本当に目指す価値がある?
後編の冒頭で、川原さんは前編の内容を振り返ります。すがけんさんの脳内のフレームワークは、目標と現状を置き、その間のギャップをどう埋めるかを一つずつ答えていくという、とてもシンプルなものでした。
部分ごとに答えるのではなく、考え方も施策も、全体として目標に向かうように調整していく。そのうえで川原さんが投げかけたのは、そもそも目標自体がいけていないケースはどうするのか、という問いです。
え、それ目指しちゃうの?みたいなさ。そういう時ってどう会話で導くのかを知りたい。
すがけんさんが「いけてない目標」の例を尋ねると、川原さんは、今の1.2倍や1.5倍のように、ちょっとした変化で届いてしまう目標を挙げました。多くの人は120%成長くらいが目指せる範囲だと思い込んでいる、というのが川原さんの見立てです。
でもそのためにこの会話してんの?って急にこっちも萎えるし、意味ある?って思っちゃうと、僕のタイムは下がるんですよね。
っていうか、生んだ価値が120パーでしかないですからね。
すがけんさんはこの感覚を、プロ野球選手に草野球での勝ち方を教わるようなものだと例えます。甲子園での勝ち方を聞くならまだしも、相手の力量に見合わない目標では、お互い役に立ちたいと思っている者同士でも手応えが生まれません。
1時間あれば目標は10倍に書き換えられる
すがけんさんは、小さい目標に困るのは立ち話のような15分程度の場面だと言います。お金を払ってもらい、1時間きちんと話せる場では、むしろ困っていないそうです。
すがけんさんの契約の例として、経営者向けには1時間30万円の年間契約(月4回×12か月で1440万円)、個人事業主に近い人向けには月1回10万円の6か月コースなどが挙げられました。
1時間もあれば目標をもっと大きくするぐらい、そのビジネスの可能性が素晴らしいことをその人よりも信じて伝えてあげることが僕はできるんですよ。
具体例として挙がったのが、士業のような顧問ビジネスです。お客さんからの紹介率が5%しかない場合、紹介料を払うより、顧客をきちんと成功させて「いいところがあった」と言ってもらえるようにすれば、紹介率は50%に上げられるかもしれない、とすがけんさんは考えます。
紹介率5%。紹介料を払って紹介をお願いしている
顧客を成功させて自然に勧めてもらい、紹介率50%を狙う。ビジネスが一気に10倍になる可能性
この話を聞いた川原さんは、自分は弁護士ではないのに「そっか」と感動してしまったと反応していました。
「満足しています」は本当か?
すがけんさんが必ず見る数字は、紹介や顧客満足度に近いものです。一度利用した人がまた来るか、一度利用した人が他の人に勧めるか。すがけんさんは、それがプロダクトの答え合わせになると話します。
多くの事業者は「お客さんは満足しています」と答えます。しかし、もう一度買ってくれたか、誰かを紹介してくれたか、洋服なら友達に褒められたという話を聞くか、と尋ねると「そこまではない」という答えが返ってくるといいます。
「満足してます」と言うが、リピートや紹介の話は出てこない
もう一度買う、誰かを紹介する、周りに褒められたという話が聞こえる
すがけんさんは、この厳しい指摘を60分の相談の場でも同じテンションで伝えるそうです。フィードバックは常に一定だと話していました。
ビジネスの「人間ドック」はなぜ一瞬で診断できるのか
すがけんさんは、自分の見立てを医者に例えます。肝臓のガンマなんとかという数値が6.0だと言われても、川原さんには良いのか悪いのか判断できません。15で問題になるのか、3でアウトなのかを知らないからです。
でも僕、あらゆるビジネスを数字に分解して見てきたことがあるから、実際やりながら。
その何何の数字が何パーですって言われた時に、めちゃくちゃいいじゃんとか、それめっちゃ全然ダメですよとかってわかるんですよ。
数字の良し悪しがわかると、どこを直せばいいか、何が悪さをしているかまで一気に飛べる、とすがけんさんは言います。川原さんも「本当に診察と診断をしている」と受け止めていました。
数値を聞く
相手のビジネスの数字を表に埋めていく
良し悪しを判定
過去の経験から、その数字が良いかダメかがすぐわかる
原因を特定
どこを直せばいいか、何が悪さをしているかに飛ぶ
処方を出す
やめること、頼むこと、プロダクトの作り直しなどを提案
すがけんさんはさらに、患者が気にしている数字が、そもそも見るべき数字ではないこともあると続けます。痛風を気にしているのに関係ない数値を挙げる例に、川原さんは「血糖値のことを言ってるけど今そこじゃない」と重ねました。
厚利少売的なビジネスで、どの数字を見るべきか、KPIをどこに何%で置くかは、すがけんさんの頭に全部入っているそうです。だから「あれを直せば10倍狙える」がすぐわかり、1回目の相談で大体そこまで到達するといいます。
いい人すぎるファイナンシャルプランナーの話
具体例として、すがけんさんが今支援しているファイナンシャルプランナーの話が始まります。その人は税理士からの評判が良く、たくさん紹介を受けていました。
すがけんさんは、幼少期からシングルマザーの母と妹の3人で暮らしてきたため、男性がわからず怖いと打ち明けます。この人も男性で、引き受けたくなくて何度か断ったそうです。
(10万円を)十万円包んで持ってきてくれてるのに、いやもうこれやめましょうよって言って。
すがけんさんの話は「10万円を包んで」と言っており、上の発言の数字表記は書き起こしのままです。それでも、その人があまりにいい人で、毎回お土産も持ってきてくれるため、すがけんさんは引き受けることにしました。
これはわかったぞと。あなた紹介めちゃくちゃいいでしょと。だっていい人だから。
さらに、その人は1回目に6か月分の60万円を一括で払ってしまいました。すがけんさんは、そのせいで辞められなくなったと笑います。川原さんは、先にお金を渡せば断りにくいと考えるそのやり取りにセンスを感じたと話しました。
信頼は細部に宿る。プロが見ている態度
すがけんさんは、相手の細かいところを見ているといいます。例として挙げたのが、わざと混むカフェで待ち合わせをし、相手が早めに着いて席を取ってくれるかどうかを見ることです。
だって(損するのは)あちらなんで。自分の10万円をどんだけ大事にしてるかってことでしょ?それって。
川原さんは、それはお金だけでなく、相手の時間をもらっていることへの想像力だと言い換えます。すがけんさんは、やりたくなければやらないとまで伝えているのに、それでも依頼してギリギリに来るのはありえない、と話します。
実はこのファイナンシャルプランナーは、初回にギリギリに来てしまいました。すがけんさんはかなり嫌味を言い、川原さんは「ちゃんと地雷を踏んだ話だったんだ」と驚きます。
お金持ちがそういう取引をするときって、何を信じていいかわかんないから、そういうとこしかもう見る場所ないんだから、そういうとこ見ますよって。
すがけんさんは、遅刻を自分に対してするのは構わないが、取引では相手が何を見てどう信じるかをわからないと信じてもらえない、と伝えました。バタバタしているほど薄利多売で忙しい人に、大金持ちがお金を預けるとは思えない、という理屈です。
その後、その人の成果は見る見るうちに伸びていきました。いい人だという強みを生かして、紹介してほしい人を具体的にお願いする、チラシで煽らず笑顔を出して信用してもらう、といった工夫が効いたそうです。
弱点を直すな、強みを伸ばせ
川原さんは、すがけんさんがプロデューサーでもあると感じたと話します。会ったこともないのに、話を聞くだけでその人をいいなと思えるからです。すがけんさんは、ちょっとでも喜んでもらいたいとお土産を持ってくるような人には、その仕事への適性があると見ています。
なんかダメなとこを直せ直せって言うより、そこがいいとこなんだから、この数字だけ伸ばすように頑張ってみたらどうですかって言える仕事なんで。
すがけんさんは、ダメなコンサルはレーダーチャートを書いてダメな部分を全部直させようとするため、続かないと指摘します。川原さんも、それは合っていないことを頑張れと言われるのと同じだと応じました。
弱点を全部直そうとし、ひたすらマッチョに頑張らせるので続かない
その人や会社の強みを見つけ、その数字だけを伸ばす
すがけんさんによれば、個人ならなおさら、大企業でもその会社ならではの癖や強みがあります。すがけんさんは、説明を受ける前から業界の他社も含めて数字がある程度頭に入っていて、相手が何を説明してくれるかを知りたくて聞いているだけだといいます。
相手には見せない「裏カルテ」
すがけんさんが知りたいのは、相手がどこまで理解して言語化するかです。肝臓の話で言えば、尿酸値まで出す人なのか、体重で終わる人なのか、「お腹がポチャポチャしてきた」という感覚の話で終わる人なのか、を見ています。
相談の場では、A4の紙を横にし、左下に現在地、右上に目標値を書き、そこへ至る階段を課題として作っていきます。すがけんさんは同時に、頭の中で同じ紙をもう1枚描いているそうです。
その経営者の現在地とその経営者の目標値、どこまでどのいい経営者まで育てられるのかなっていう風に考えながら、
この人今どこにいるから、この階段を提供しないと越えてくんないと困るなとかを、その人には一切言わずに僕やってんですよ。
川原さんはこれを「裏カルテ」と名付けました。すがけんさんは、会社のカルテとは別に、個人の経営者としてのカルテを毎回頭の中に作っていると説明します。
| 項目 | 表のカルテ | 裏カルテ |
|---|---|---|
| 対象 | 会社のビジネス | 経営者個人 |
| 現在地と目標 | 事業の現状と目標値 | 経営者としての現状と、育てたい姿 |
| 相手への共有 | 一緒に作る | 一切言わずに頭の中だけで行う |
早く卒業させたいアドバイザー
すがけんさんは、例のファイナンシャルプランナーには早く辞めるか、30万円の契約に移るよう言っているそうです。すでに普通にうまくいっているのに、お試しの10万円枠でいるのはずるい、と最初から伝えていたといいます。
川原さんはここで、喜ばれる行動は相手によって変わると注意を促します。手土産を山ほどもらう人にさらに渡すと、迷惑になることもあります。川原さん自身は旅が多いため、持ち運びの手間まで想像してほしいと付け加えました。
すがけんさんも、相手を知ることが大切だと同意します。ファイナンシャルプランナーは年上の人に可愛がられ、信じてもらい、お金を預けてもらう仕事なので、その強みをひたすら伸ばしているそうです。支援は残り2回で終わる予定です。
いやいやだって僕は本当医者なんで。そんなダラダラ。次の患者さんどうぞだから。
川原さんは、言語化されていない当たり前の行動を根掘り葉掘り聞くと面白いと話し、また「脳内シリーズ」をやりたいと締めくくりました。番組の最後には、すがけんさんの書籍と5万円のnote、川原さんの著書の案内、お便りフォームへの相談の呼びかけがありました。
まとめ
この回では、すがけんさんが目標・数字・態度をどう見て、相手を診断しているかが語られました。小さな目標を大きく書き換え、行動で満足度を測り、弱点ではなく強みを伸ばすという一貫した考え方が見えてきます。
- 目標が小さいと生む価値も小さい。数字を整理すれば、10倍を狙える可能性に気づける
- 顧客満足度は自己申告ではなく、リピートや紹介という行動で測る
- あらゆる数字の良し悪しを知っているから、医者のように一瞬で原因と処方にたどり着ける
- 弱点を全部直すより、強みを見つけてその数字だけを伸ばすほうが続く
- 遅刻しない、席を取るといった細部の態度こそ、取引相手が信頼を判断する材料になる




