お悩み相談がなぜ緊張する時間なのか?
厚利少売ラジオは、薄利多売から抜け出すための考え方を語るビジネス対談番組です。この回では、長尺の雑談回が続いて扱いきれずにいたお悩み相談のコーナーが復活しました。
川原さんは、リスナーのリアルな悩みを時給30万円 ── すがけんさんの経営アドバイザーとしての報酬を指す番組内での紹介。相談の価値の大きさを示す決まり文句として使われていますで経営アドバイザーをしているすがけんさんにぶつけるコーナーだと紹介します。収録前に「緊張する」と話していたすがけんさんに、その真意を尋ねました。
いや、本当本当。なんか(お悩み相談は)結構責任がある行為じゃないですか。
すがけんさんによると、文章で届いた相談を額面通りに受け取るか、意図を推測して答えるかで、アドバイスが真逆になる可能性もあるといいます。やりとりしながら聞ければまだ良い答えを出しやすい、という前提があります。
もう1つの怖さは、ときどき出てくる「ブラケン」です。前日のイベントでも、答えがYESでもNOでも行動が変わらない質問に、思わずピシャッと返してしまったそうです。
これYESだと何するんですか?NOだと何するんですか?変わんないんでしょ?この質問何なんすか?みたいになっちゃって。
ただ、言われた相手は真意が伝わらないままニコニコしていたそうで、川原さんは「それはそれでやばい」と笑います。こうして真剣勝負のお悩み相談が始まりました。
独立1年目の農家は、師匠と同じ値段をつけてよいのか
1つ目の相談は、ラジオネームあやかさんから届いた完熟イチジクについての悩みです。川原さんが読み上げました。
私は独立1年目の農家で、スーパーなどの市場では流通しにくい完熟のイチジクを栽培しています。通常のイチジクは市場へ流通するために早取りをしますが、それに対して完熟イチジクはとろっとした食感と口の中に広がる甘さが特徴です。
うわ、めっちゃ食べたい。
私の師匠は完熟イチジクを市場の価格の6倍で販売していますが、それでもお客様に好評いただいています。そのため、今後は10倍以上の価格帯の商品も検討されています。私も師匠のように厚利少売を実現していきたいのですが、独立1年目の無名の農家が師匠と同じような価格帯で提供してもいいものかと悩んでおります。数年は薄利商売でいくべきなのか、最初から厚利少売でいくべきなのかなど、アドバイスをいただけますと幸いです。
あやかさんの相談の核心は、実績のない1年目の農家が、最初から高い価格をつけてよいのかという点にあります。
樹上完熟はなぜ美味しく、なぜリスクが高いのか
すがけんさんは開口一番、フルーツの中でイチジクが一番好きだと明かします。川原さんも、すがけんさんがよく美味しそうなイチジクの写真を投稿していると証言しました。
すがけんさんの説明では、イチジクは皮が薄く、木の上で熟させる樹上完熟 ── 果実を収穫せず、木になったまま完全に熟すまで育てること。木から最後まで栄養を受け取るため味がよいとされますにすると中身が柔らかくなり、配送するとすぐ傷んでしまいます。
そのため多くの農家は早めに収穫して、届いたあとの家庭で熟させる「追熟」を前提にします。ただ、早採りのイチジクは木からの栄養が最後まで行き渡らないので、追熟しても入っていない分の栄養は補えないといいます。
樹上完熟にはもう1つのリスクがあります。農家さんたちによると、食べ頃を一番よく知っているのはイノシシなどの動物だそうです。
樹上完熟した瞬間に動物がパッと食べてくる。よし、明日がベストだな、収穫しようっていうと大体食べられちゃうんですよ。
すがけんさんが挙げた早採りと樹上完熟の違いを並べると、完熟イチジクが高くてよい理由が見えてきます。
配送に耐えやすく、動物に食べられる前に収穫できるため個数が取れる。ただし木からの栄養が最後まで届かない
美味しく香りもよい。一方で配送で傷みやすく、動物に先に食べられるリスクが高い
リスクを背負ったうえで美味しくなる以上、普通のイチジクより高くて全然いい、というのがすがけんさんの見立てです。
高い値段の前に、師匠と食べ手に何を聞くべきか
すがけんさんは、価値をわかってくれない相手に送ってしまうと意味がないと指摘します。届くエリアを絞る、傷まない入れ方を工夫するなど、独自の配送方法を作ることを勧めました。
すがけんさんは、届け先によって見られる価値が違う点も挙げます。一般の人は見た目を気にしますが、パティシエは中身を取り出して使うので、皮の状態を気にしない場合もあるといいます。
師匠から弟子として学ばせてもらってるのに、逆に高い値段をつけないっていうのも師匠は悲しいと思うんですよね。
すがけんさんがまず勧めたのは、この相談を師匠にもすることです。独立しても今後また師匠の力を借りるはずで、何十年も続けられる師弟関係を損ねるのはもったいないと考えています。
6倍にしてる師匠が、いや、お前は何もするな、JAに下ろせとか言わないと思うんですよね。
値段については、高くても買いたいという人の数で決まるものだとすがけんさんは話します。1年目は儲けようとせず、料理人や食べ手に送って感想を聞く活動にしてもよい、という提案です。
測れない「香り」はイチジクの武器になるか
すがけんさんは、日本のトップシェフから聞いた話を紹介します。みんな測れるもので頑張りすぎる、という指摘でした。
糖度計が生まれた瞬間、果物も野菜もみんな甘くすることばっかり頑張っちゃって。本当は食べ物っていうのは香りも重要なんだけど、香りは測れないから誰も頑張らないと。
すがけんさんは、イチジクは甘さで勝負するより香りを特徴にするのが大事かもしれないと話します。パティシエの中には、いい香りのするイチジクの葉っぱも欲しいという人がいるそうです。
みかん農家の息子でもある川原さんは、鳥がつついた裏側のみかんが一番うまいという農家の実感を語ります。すがけんさんも、少し傷んだ果実なら加工する店は気にしない場合があると応じました。
川原さんは、あやかさんが興味を持てばすがけんさんに完熟イチジクを食べてもらい、その感想を参考にしてはどうかとDMを呼びかけました。すがけんさんは、イチジクはもうシーズンが終わっていて来年の話になるだろうと補足しています。
ジャパンポッドキャストアワードの投票を終えて
最後のお知らせで、すがけんさんはジャパンポッドキャストアワードの投票が締め切られたことを報告し、XやInstagramでの応援に感謝を述べました。結果を待ちつつ、厚利少売ラジオを引き続き聴いて広めてほしいと呼びかけています。
川原さんは、番組概要欄のお便りフォームで具体的で本気のお悩みを引き続き募集していると伝え、まとめて答える回もやりたいと話しました。
まとめ
完熟イチジクの相談に対するすがけんさんの答えは、高い値段をつけてよいかを悩む前に、価値をわかってくれる相手を探すことでした。師匠との関係を大切にしながら、1年目は食べ手探しに使うという提案です。
- 樹上完熟は配送や動物のリスクを負う分、普通のイチジクより高くてよいとすがけんさんは考えている
- 値付けは師匠に素直に相談するのが、関係性も含めて一番よいという提案
- 値段は高くても買いたい人の数で決まるため、1年目は料理人などに送って感想を集める
- 糖度のように測れる指標だけでなく、測れない香りや葉っぱも価値になりうる
- 厚利少売の本質は、扱ってほしいお客さんを自分で決めること

