ホワイトペーパーとウェブ記事の決定的な違い
こばやしさんはライターとデザイナーを兼ね、BtoBマーケティングのホワイトペーパー制作をしています。この回のテーマは「ライターは最終成果物を文章で捉えない」という考え方です。
まず前提として、SEO記事や取材記事のような一般的なウェブ記事と、ホワイトペーパーには制約の違いがあると話します。
その違いとは、掲載できる面積に区切りがあることです。書籍であれば紙の面積があり、印刷費もかかるため、収まる量にする制約が強くかかります。
一方でPDFで配布されるホワイトペーパーは電子データなので、物理的な制約はウェブ記事と同じようにほとんどありません。
ただしそれでも紙面という空間があるとこばやしさんは言います。A4縦1ページや、16対9のスライド1枚といった面積の中に内容を収める必要があるということです。
その制約の中で、文章、図、レイアウトを編集していくのがホワイトペーパー制作だと説明します。
ページ割りという二段階の構成づくり
ウェブ記事と違うのは「ページ割り」という工程がある点です。どのページにどんな情報を並べていくかを決める作業です。
SEO記事やインタビュー記事なら、見出しがいくつかあって記事の骨子ができます。しかしホワイトペーパーの構成づくりは二段階になるとこばやしさんは話します。
1段階目がページ割りです。どのページでざっくり何を語るのかを決めます。
その上で、各ページの中にある細かい見出し群に対して「誰向けに、何を、どの順番で」を細かく設計していきます。
課題解決型ホワイトペーパーと準顕在層
よくある課題解決型のホワイトペーパーを例に、こばやしさんは説明を進めます。想定される読者は、課題には気づいている層です。
たとえばIT業界では、人事システムや給与システムが古くなり、UIも古臭く、リモートからアクセスしにくいといった不満が社内で出てくる状況です。
そこで、スマホからもアクセスでき、サーバーの保守メンテナンスもいらないSaaS型の人事システムで再構築したらどうか、という課題が生まれます。
この、課題は認識しているが、どの商材で解決するかは決まっていない状態を準顕在層と呼びます。
準顕在層は、課題をまったく持っていない層に比べて成約までのコストが低くなります。顧客の数も多く、コスパもよいため、この層に向けてコンテンツを作ることが多いそうです。
「誰に・何を・どの順番で」を逆算する
準顕在層に向けて作る場合、まず「誰向けに」で業界や業種、業態が決まります。
次に「こういう課題ありませんか」という課題感を示します。その課題を分解し、これとこれとこれで成り立っている、この3つを潰せばよくなる、といった課題の解説へつなげます。
その後に解決策を1つずつ解説します。解決策には一般的な手法やノウハウで解決できるものもあれば、そのノウハウを自動化・効率化する自社商材で解決できるものもあります。
つまり構成は逆算だとこばやしさんは言います。何を売りたいかという商材があり、その商材がどんな解決方法を満たすのか、それに対する課題は何かを切り出していきます。
何を売りたいか商材があって、この商材はどういう解決方法を満たすものなのか、そこに対する課題って何なのか、というところを切り出していく感じですね。
こうして上からも下からも、顧客が抱える課題と、それを解決する商材の切り口を考えながら、誰に何をどの順番で並べるかを組み立てていきます。
売りたい商材
最終的に提案したい自社の商品を起点にする
解決方法
その商材がどんな解決方法を満たすのかを整理する
課題
その解決方法に対応する顧客の課題を切り出す
構成
誰に何をどの順番で並べるかを組み立てる
紙面に情報量が収まるかという編集力
ページ割りでは、その紙面に情報量が収まるのかという観点が欠かせません。載せたい情報が全部そこに収まるかを考える必要があります。
ウェブ記事と違い、紙面には面積の制約があります。ここにはこれだけ載せきれない、といった判断が出てくるため、編集力を含めたスキルがページ割りには必要になります。
複雑な内容は図解がないとわかりにくく、価格表のように複雑なものを載せると丸々1面を使うこともあります。価格も構成も導入事例も載せたいとなれば、ページはすぐに埋まっていきます。
そこで、このフェーズで本当に必要なページはどれかを精査することも、ページ割りの段階で必要になるとこばやしさんは話します。
導入事例を差し込むかはタッチポイント次第
同じ準顕在層でも、潜在層寄りか顕在層寄りかで構成は変わります。その一例が、導入事例のページを差し込むかどうかです。
導入事例は、商材を導入したらどうなるのかという不安を解消したり、似た規模の会社への導入実績が裏付けになったりする要素です。
ただし導入事例は、自社の商材で課題を解決したいと思っている顕在層寄りの顧客でないと響きにくいとこばやしさんは指摘します。
買うか決めてもない商材に対して導入事例を渡しても、「いや、別に」ってなるわけですよ。どんな機能があるのか、うちに合うのかがやっぱり気になりますから。
商品の機能説明に特化したものや、表層の課題感を扱うものであれば、導入事例は最初のフェーズでは不要かもしれません。関連リンクで「導入事例集はこちら」と飛ばせばよい場合もあります。
このコンテンツに触れるタッチポイントはいつか、届ける情報がその相手にとって適切かを見極めた上で、どこに何をどの順番で置くか、情報量が収まるかを考えます。
ページを増やすと予算もかかるため、優先度をつけてページ割りをすることがホワイトペーパー制作では重要になります。
最終成果物はレイアウト、だから文章だけを見ない
どこに何をどの順番で書くかだけなら、紙面の制約を意識せずに文章で完結してしまいます。しかし情報量が収まるかという観点で見ると、文章だけを見ていてはいけません。
紙面全体のレイアウト、情報の大小、組み方といったデザインの要素まで考える必要があります。図解にすれば収まる、あるいは図解にすると面積がもっと必要になる、といった判断がページ割りに影響します。
こばやしさんは、ライターであっても最終成果物であるデザイン後のレイアウトを意識して編集することで、最終的なギャップが埋まっていくと話します。
こばやしさん自身はデザインとライティングを一気通貫で手がけているため、初稿やページ割りの段階である程度レイアウトを出し、ギャップをなるべく生まないよう工夫しているそうです。
紙面の制約がなく、文章の構成で完結できる
紙面の面積が制約になり、レイアウトまで意識して編集する
なお、こばやしさんは抱えている案件が終われば制作本数が80本に到達する見込みで、100本を超えるまで続けたいと話していました。
まとめ
ホワイトペーパー制作では、紙面の面積という制約があるため、ライターは文章だけでなく最終的なレイアウトまで見据えて編集する必要があります。ページ割りという工程で、誰に何をどの順番で届け、それが紙面に収まるかを逆算しながら設計していく考え方が語られました。
- ホワイトペーパーはウェブ記事と違い、紙面の面積という制約がある
- 構成づくりは、ページ割りと各ページ内の設計という二段階で進む
- 課題解決型では、売りたい商材から解決方法・課題へと逆算して構成する
- 導入事例を入れるかは、顧客のタッチポイントと顕在度で判断する
- ライターは文章を最終成果物とせず、デザイン後のレイアウトを意識して編集する