三十代部長からの相談。年上メンバーの本音が引き出せない
今回の相談は、製造業に勤める三十代の部長からのものです。四十代・五十代の部下を持ち、マネジメントに悩んでいるといいます。
年上のメンバーもやりづらそうで、なかなか本音を出してくれない。どうしたら心理的安全性が上がるのか、という問いが投げかけられました。
なんであいつあんな若いのに部長なんだ、みたいな感じになっているかもわからないし、本当はそう思ってないかもしれないけれども、そう思ってるんじゃないかみたいな気持ちに部長さんサイドがなってしまって、なかなかこう、相手とのコミュニケーションを本音でやりづらいみたいなところは、もしかしたらやっぱあるのかもなって聞きながら思ったんですけどね。
河原さんは、抜擢人事が増えるなかで、こうした状況は決して珍しくないのではないかと指摘します。ヒョンチョルさんも、大手企業のクライアントからよく耳にする悩みだと応じました。
優秀さを見せるほど「鎧」になる
ヒョンチョルさんは、三十代で部長になる人はもともと非常に優秀な人が多いと話します。ただ、その優秀さをさらに上に見せ続けようとして、かえって鎧を張ってしまうケースをよく見るといいます。
三十代で部長になられる方ってものすごく優秀なはずだと思っていて、その優秀な方が、こう、さらにこう、優秀さを上にも見せ続けなきゃダメだ、みたいな感じで鎧を張っちゃうみたいなことをよく見るなみたいなことは。
ヒョンチョル自身も、執行役員や役員クラスと向き合う機会が多く、「優秀さだけで戦っても難しい」と感じることが多いそうです。生意気だと思われるのではないかという不安もあるといいます。
そこで彼が意識しているのは、少し昭和的な言葉ですが「可愛がられるためにどうするか」という発想でした。
鎧を脱いで「可愛がられる力」を発揮する
ヒョンチョルさんが実践しているのは、会食などの場で本音を出せるよう準備しておくことです。「若いと思われがちで悩んでいる」といった自分自身の悩みを、あえてそのまま伝えるのだといいます。
顔が若く見られることを気にしてZOOMの髭機能でシミュレーションしたものの、まったく似合わずに諦めた、というエピソードまで話に出しているそうです。
ここで大事なのは、リスペクトと自己開示をセットにすることだとヒョンチョルさんは語ります。
振り返ると社内でも、まあ年上のメンバーいらっしゃって、まあ、あの、もちろんすごく尊敬してるんですけども、リスペクトしていることと同時に、自分の悩みもお伝えするみたいなのは結構やってるかもなっていうふうに思ってますね。
さらにヒョンチョルさんは、多くの人は年下から頼られることを嫌がらない、という前提を挙げます。
僕自身もそうなんですけど、年下とかに頼られて嫌な思いがする人ってそんなにいないと思ってるんですよね。だから「こういうところを頼りにさせてほしいんです」とかっていうのをちゃんとお伝えするとかができると、変な感じで見られなくはなるんじゃないかな。
優秀さを見せ続けようとして武装。年上メンバーとの距離が縮まらず、本音を出してもらいにくい。
リスペクトと自己開示をセットにする。悩みや頼りたい部分を素直に伝えることで、可愛がられやすくなる。
武勇伝より「茶目っ気」のあるエピソードを
自分のエピソードを話すときも、本流の武勇伝ではなく、茶目っ気のある話の方が喜ばれる、とヒョンチョルさんは続けます。
一例として挙げたのが、二千二十三年十一月に甲子園で行われた草野球プロジェクトを手伝った話でした。二千二十年にコロナで甲子園大会が中止となった当時の高校三年生たちが、四十六校集まって行進まで行ったイベントを、大学生の主催者と一緒に支えたのだといいます。
「あ、こういうの子も年下の子を手伝ってる子なんだ」みたいなこと思われると、茶目っけもあって、ちょっとこう、ネタとしても使いやすかったなとかって思ったりとか。
野球嫌いの年配男性はそう多くない、といった小さな観察も交えながら、少しエモくて、しかも自分の茶目っ気が伝わるエピソードは自己開示として有効だと語ります。
ネガティブなことを年上部下に伝えるには
ナビゲーターの黄瀬さんは、会社員時代に年上の部下を持つ人を見てきた経験から、ネガティブなことを伝える場面では、他のメンバーの五倍ほどシミュレーションしていた上司がいた、と共有します。
ヒョンチョルさん自身も、年配の相手には普段の三倍は準備してしまうと明かします。ただし、伝えなければいけない部分はストレートに言うと決めているそうです。
言わなきゃいけないところはどストレートに言おうっていうのは決まって、決めていて。その前にこういう思いもあったし、こういうことが起きてるからって話をちゃんと大事にしようかなっていう風に。
河原さんは、若手部長がベテランに対して抱きがちな「もっとチームでできるはず」という期待とプライドを整理し、価値観の転換が必要だと語ります。
ヒョンチョルさんも、絶対の正解はないと前置きしつつ、「良いチームを作って良いものをやろうと思っている」という価値観がまず伝わることが第一歩だとまとめました。
「こだわりポイント」を共有するワークショップ
話の終盤、ヒョンチョルさんは新しいチームを立ち上げた際に行ったワークショップを紹介します。全員が「仕事においてこだわっていること」を話し合うというものです。
新しいチームを作った時に、あの、その人が仕事においてこだわってることっていうのを全員が話し合うっていう、をしたワークショップがあって。
チーム内の軋轢の多くは、こだわっているポイントの違いから生まれます。それを可視化し、相手のこだわりにリスペクトを向けるコミュニケーションを徹底しようと決めるだけで、チームの動きやすさは大きく変わったといいます。
譲れない部分がわかると、他のところでは譲ってもいいみたいな転換が生まれるから。確かに。それはなんか鎧を脱ぐための大事なステップかもしれないですね。
黄瀬さんも、こだわりポイントを事前に共有しておけば、意図せず「地雷を踏む」ことも減り、安心して心を開きやすくなると納得の反応を見せました。
まとめ
若手リーダーが年上の部下と向き合うとき、優秀さを見せ続ける鎧はむしろ壁になります。リスペクトと自己開示、そして少しの茶目っ気を持ち込み、こだわりポイントを共有していくことが、心理的安全性のあるチームづくりの第一歩になりそうです。
- 三十代で部長になる人ほど「優秀さを見せ続けなきゃ」と鎧を張ってしまいがち
- 年下から頼られて嫌がる人は少ない。悩みや頼りたい部分は素直に伝えたほうがいい
- 自己開示は武勇伝より、茶目っ気のあるエピソードのほうが年配の部下に届きやすい
- ネガティブなことを伝える場面ではストレートに。ただし背景と思いを丁寧に添える
- チームの「こだわりポイント」を可視化すると、軋轢が減り鎧を脱ぎやすくなる