一日所長・倉貫義人さん登場
この回は、いつも所長を務める金亨哲さんが一日お休みし、ゲストの倉貫義人さんが一日所長を務める特別回です。
倉貫さんはソニックガーデンという会社を経営していて、元々はエンジニアだったと話されています。管理をしない会社、納品しない開発、エンジニアの徒弟制度など、独自の取り組みを続けてきた人物です。
雑草という、雑談相談、雑な相談するといいよという本まで出させてもらってます
番組冒頭は金さんとあずささんの好きな食べ物の雑談から始まります。焼き鳥やズッキーニの話で場が温まったところに、倉貫さんが登場する流れです。
「特にありません」と言われる会議
一件目の相談は、金融業界の課長マネージャー、ラジオネームユタカさんからのものです。
事務処理を行う部署のため、定例会議がメンバーからの業務報告になりがちです。何を聞いても「特にありません」という回答が返ってきます。困っていることや改善したいことを発言してほしいのですが、どんな工夫をすれば話してもらえるでしょうか。
倉貫さんはまず、本当に困っていないなら発言しなくてもいいのでは、と切り出します。問題は「何を聞くか」にあるかもしれない、という視点です。
「困ってることありますか?」って聞かれるのって、僕も結構困るんですよね。「そこまで困ってないな」みたいな感じになるので
そのうえで倉貫さんは、聞き方を変える工夫を挙げます。たとえば「最近気になってることありますか?」という言い方です。
もう一つの鍵は、聞く前の関係性です。倉貫さんは、相談の前に雑談がないと相談は難しいと話されています。
雑談の中で「あ、この人話しても怒んないな」とか「話したら話聞いてくれんな」っていうのがわかれば、公式の場でも話してくれるようになるかもしれない
金さんは、これは関係性の話なのか、場のデザインの話なのかが気になると加えます。会議の場では「特にありません」と言いやすいと指摘します。
たとえば次の会議の5分前に「困ってることありますか」と聞かれても、早く終わらせたい状況では答えは返ってこない、というシチュエーションの影響も話題になりました。
倉貫さんは、自身の会社では「振り返り」と呼ぶ一対一の時間をつくってもらっていると紹介します。大人数の前で話すのはハードルが高いためです。
そこでなんか「それは違う」とかって言われたら、もうなんか嫌だなってなりますしね
聞く耳を持たない上司にどう向き合うか
二件目は、医療福祉業界のプロジェクトリーダー、ラジオネームカズノリさんからの相談です。
上司が「お山の大将」で、自分の思い通りにならないことは聞く耳を持たず、チームで練った案も通らず、全体が不穏な雰囲気になっています。この雰囲気を良くするために、倉貫さんならどんなアクションを起こしますか。
倉貫さんは、雰囲気を良くすること自体が目的ではないのでは、と問い返します。本当にやりたいのはチームで練った案を通すこと、より良いチームにすることのはずだと整理します。
さらに倉貫さんは、「上司がお山の大将である」というのはこの相談者のバイアスかもしれない、と指摘します。
人の行動には本人なりの理由がある、というのが倉貫さんの人間観です。上司が話を聞かないのにも理由があるはずだと考えます。
「あいつ話聞かねえから、もうお山の大将なんだよ」って決めつけてしまうと、もうこれ国交断絶になっちゃうので。相互理解なくなっちゃうんですよね
だからこそ、バイアスをなくして相手の理由を確認し、対話で解決していくべきだと倉貫さんは話します。本気でチームを良くしたいなら、そこまで取り組む価値があるという立場です。
「自分でやった方が早い」上司と手放すもの
三件目は、サービス業の課長、宮沢さんからの相談です。二件目と重なるテーマとして紹介されました。
メンバーとの目線合わせを重ねていたところ、経験者の上司から「そんなやり方では間に合わない」とダメ出しが続き、メンバーの表情も曇っていきました。経験がある人ほど「自分でやった方が早い」と口を出してしまいます。任せる側に回るとき、何を手放せるとうまくいくと思いますか。
倉貫さんはここでも、経験者からのいい話なら聞けばいいのでは、とシンプルに返します。せっかくの経験を活かさない理由がわからない、という視点です。
大切なのは、自分たちのやり方を通すことではなく、仕事がうまくいくことだと倉貫さんは強調します。
事業活動において良いパフォーマンスを出し、良い価値を提供し、良い成果を上げるということが一番重要視されることではないか
金さんは「メンバーの表情も曇っていきました」という一文に着目します。実際には誰も言葉にしていないのでは、と指摘します。
全員が同じ気持ちとは限らないのに、相談者自身の気持ちが投影されているのかもしれない、と金さんは読み解きます。
多分全員本当に全部が同じ気持ちであるはずがないので、この方の気持ちがすごく投影されちゃってる瞬間かなっていう印象を持った
一方で金さんは、相談者自身が嫌な気持ちになっている部分は認めていいと補います。そのうえで、上司に「そういう言い方をされると私はこう思う」と伝えられているかが次の課題だと話します。
倉貫さんもこれに同意し、メンバーを言い訳にせず、自分が嫌なら自分の言葉で言えばいい、と重ねました。
メンバーのことを言い訳にして、自分のことを言ってるみたいな感じがするんですよね。自分が嫌だと思ったら自分が嫌だということを言えばいい
「問題vs私たち」というチーム論
あずささんが、こうしたネガティブな空気がチームに伝染し始めたときの対策を尋ねます。倉貫さんの答えは、そもそも起きないように予防することです。
予防の鍵は、プロジェクトのゴールを共有することだと倉貫さんは話します。何のために集まった人たちなのか、その認識を揃えることが出発点です。
目的が揃っていないと、それは思惑同士のぶつかり合いになってしまうと倉貫さんは指摘します。そして、自社で掲げるスタンスを紹介します。
やるべきは「あなたVS私」ではなく、問題があって、「問題に対して私たちで取り組みましょうね」ってことだと思うんですよね
どちらかの思惑を通す形になり、負けた側に不満が残る。思惑が強い同士だと決着がつかない
共通のゴールや問題に向かって全員で取り組む。同じ方向を向くので思惑の衝突が起きにくい
金さんは、これに強く共感します。心理的安全性は単に「コミュニケーションできる組織」ではなく、何の問題に向き合うかが前提にあると話します。
見ている問題がバラバラだとやっぱ意見って全部食い違うなっていうふうに思うので、我々も実は課題VS私たちってスライドを作ったりしてるんですけど
あずささんは、仮想敵をつくると一見一体感が出るように見えても、結果的に誰も幸せにしないと話します。目的に立ち返り、最適な行動を全員で考えることが心理的安全性につながる、とまとめました。
まとめ
一日所長を務めた倉貫義人さんの相談への向き合い方に共通していたのは、相手を決めつけず、目的に立ち返るという姿勢でした。「問題vs私たち」という視点は、チームの掛け違いをほどく手がかりになりそうです。
- 相談の前に雑談を挟み、話しても大丈夫だと感じられる関係性をつくる
- 「困ってることは」ではなく「気になってることは」など、聞き方を変える工夫をする
- 「お山の大将」「表情が曇る」といった見方が、自分のバイアスや投影ではないか確認する
- 嫌な気持ちはメンバーを言い訳にせず、自分の言葉で伝える
- 「あなたvs私」ではなく「問題vs私たち」の構図で、共通のゴールに向き合う