月20万回叩くから本気で選ぶ──「打鍵感より効率」を貫く分割キーボード沼の思想
限界突破ライフハックの第2回は、キーボードについて。けんすうさんは1日8000文字を書く中で、分割キーボードや30〜40%キーボードに行き着いたと言います。打鍵感よりも効率と負担軽減を重視し、肩甲骨や手首の角度まで考え抜いた結果、たどり着いたのは「スマホから手を離す」という集中力の守り方でした。その内容をまとめます。
100%→30%への道──キーの数が少ないほど速い理由
田中さんが使っているのは、けんすうさんの勧めで買ったリアルフォース東プレが製造する高級キーボード。静電容量無接点方式を採用し、打鍵感の良さと耐久性で知られる。価格は2〜5万円台。。一体型の100%キーボード(テンキー付き)ですが、けんすうさん自身は今、40%キーボードを使っています。
キーボードには「100%」「80%」「60%」といったサイズ区分があり、数字が小さいほどキーの数が減ります。上級者になると30〜40%キーボードを使うそうです。キーが少ないと場所を覚えやすく、指の移動距離が減るため、速く・疲れにくくなります。
けんすうさんは「レイヤー特定のキーを押している間だけキー配列が切り替わる仕組み。Shiftキーの拡張版のようなもの。」という概念を活用し、1つのキーに複数の役割を持たせています。例えば、「レイヤー2」を押しながらだと右側のキーが数字になる、といった具合です。これによってホームポジションを崩さずに数字や記号を打てるため、タイピング速度が上がります。
分割キーボードで胸が開く──肩甲骨と呼吸の関係
けんすうさんが分割キーボードを使い始めたのは1〜2年前。きっかけは「体を壊したくない」という思いでした。
手が内向きになると肩が巻いちゃうと。さらにノートパソコンとか使ってると視点も下になるので、すごい体壊すなと。
一体型キーボードでは手が内向きになり、肩が巻いて胸が閉じてしまいます。分割キーボードなら肩甲骨を寄せて下げられるため、胸が開き、呼吸が深くなります。呼吸が深くなると横隔膜が下がり、集中力も持続しやすくなるそうです。
手が内向き → 肩が巻く → 胸が閉じる → 呼吸が浅くなる
肩甲骨を寄せられる → 胸が開く → 呼吸が深くなる → 疲れにくい
実際に分割キーボードを使い始めてから、「全然疲れなくなった」とけんすうさんは話します。月に20万回叩くものだからこそ、体への負担を減らす工夫が重要です。
テンティングという発想──手首を自然な角度に
分割キーボードならではの利点として、テンティングキーボードをテント状に傾けて使うこと。手首を自然な角度に保ち、手首や前腕の負担を軽減する。があります。これはキーボードをテント状に傾けて使う方法で、手首が自然な角度になるため、手首の痛みが激減するそうです。
普通に打つとやっぱ曲がってんすよね、手首の位置って。テンティングすると手首の位置が一番自然になるので。
田中さんも「手首が外側に開いてここ(手首の外側)が痛くなる」と共感。手首が固まると首や肩にも影響し、睡眠の質まで下がる可能性があるため、テンティングは体全体の健康につながります。
ただし、テンティングをすると軽いキーボードではズレてしまうため、ある程度の重量が必要です。けんすうさんが使っているCornix完全無線の分割キーボード。左右のキーボード同士も無線でつながり、Bluetooth接続でPC・タブレット・スマホと切り替えられる。価格は2万円台前半。は重厚感があり、安定して打てるそうです。
レイヤー機能と伸ばし棒の冷遇問題
40%キーボードになると、数字キーすら本体にはありません。代わりにレイヤー機能を使います。けんすうさんは「レイヤー2」を押すと右側のキーが数字になるよう設定しているそうです。
さらに、電卓のような配置(1・2・3、4・5・6…)も併用し、数字を素早く打てるようにしています。ビックリマークやハテナマークも、日本語では左上と右下にバラバラに配置されているため、句読点の近くに割り当て直すと覚えやすいと言います。
日本語だと伸ばし棒めっちゃ使うじゃないですか。まさにキーボードとか。ただ英語だと使わないんで冷遇されてるんですよ。伸ばし棒。
「キーボード」「コーヒー」など、日本語では頻繁に使う伸ばし棒(ー)は、英語圏のキー配列では右上の遠い位置に置かれています。けんすうさんはこれを打ちやすい位置に割り当て直しているそうです。
田中さんからは「親指シフト親指でシフトキーを押しながら打つことで、日本語の入力効率を上げるキー配列。勝間和代さんなどが愛用。や大西配列日本語入力を効率化するキー配列。母音を左手、子音を右手に配置し、左右交互打鍵を最大化する。は試さないのか?」という質問も。けんすうさんも一度検討したそうですが、「普通のキーボードが打てなくなるのが怖い」とのこと。分割キーボードぐらいなら、ノートパソコンに戻ってもギリギリ対応できるため、そこまでは変えていないそうです。
完全無線「Cornix」とトラックボール付きキーボード
分割キーボードは有線接続が主流でしたが、最近は完全無線の製品も出てきました。けんすうさんが使っているCornix完全無線の分割キーボード。左右のキーボード同士も無線でつながり、Bluetooth接続でPC・タブレット・スマホと切り替えられる。は、左右のキーボード同士も無線でつながり、パソコンともBluetooth接続できます。
これによってスマホやiPadにも簡単に切り替えられるため、外出先でもiPadと分割キーボードを持ち歩くスタイルになったそうです。
片側がほんとスマホ一個分ぐらいだし、それが二個あるだけなんで、ポケットサイズでいけますよね。
さらに上級者向けには、Keyballトラックボールが組み込まれた分割キーボード。親指でトラックボールを操作し、マウスを使わずにカーソル移動やスクロールができる。というトラックボール付き分割キーボードもあります。親指でトラックボールを操作し、特定のキーを押しながらKとLを押すと右クリック・左クリックになる、といった設定も可能です。
GS時代に「マウス1回で帰宅1分遅れる」って教えられてたんですよ。
田中さんも金融業界時代に「マウスを1回触ると家に帰る時間が1分遅くなると思え」と叩き込まれたそうです。ショートカットやマクロを駆使し、マウスに手を伸ばさない工夫が、生産性を大きく左右します。
音声入力とAIの併用──喋って打って整える
田中さんからは「音声入力に移行しないのか?」という質問も。けんすうさんは音声入力とキーボード入力を併用しているそうです。
音声入力で喋って、AIによって直してもらって、さらにLLMでいい感じに文章を直して、それ見ながらもう一回タイピングしてます。
音声入力はタイピングより4倍速いと言われていますが、「喋ってるとわけわかんなくなる」という問題もあります。けんすうさんはAquaVoice音声をリアルタイムでテキスト化するツール。議事録作成や文章の下書き作成に使われる。で音声を文字起こしし、AIで整形した後、目次を作り、章ごとのファイルに分けて、さらにキーボードで微調整するという流れを取っています。
田中さんも同様の方法で本を書いているそうです。2〜3分喋ると、A4で2〜3枚分の内容になるため、まず雑多に喋ってしまい、AIで構成を整え、最後にキーボードで「AIっぽい文章」を人間らしく直すというスタイルです。
けんすうさんはMacやiPadのライブ変換ひらがなを打つと自動的に漢字に変換される機能。MacやiPadに標準搭載。機能も活用しています。これは変換キーを押さずに自動で漢字変換される機能で、「Enterを押さなくていいので、だいぶ楽」とのこと。田中さんは普段Windowsを使っているため、この機能を知らなかったそうですが、「情弱すぎる」と驚いていました。
スマホから手を離すと集中できる理由
けんすうさんが最近重視しているのが、「スマホから手を離す」ことです。
スマホだと親指の微細な動きだけでX(旧Twitter)を開いたり、LINEを見たりできます。この手軽さが、タスクスイッチング複数のタスクを切り替えること。人間は同時並行ではなく、高速で切り替えているだけ。切り替えのたびに集中力が途切れ、元のタスクに戻るのに平均24分かかると言われる。を誘発します。
田中さんも「文章打ってる最中に調べものしたくなっちゃって、ふっと文章の画面から離れて、あ、LINEの通知が来た。で、何してたんだっけ?」と共感。けんすうさんは「Amazonでこれ買ってなかった」と気づいてしまい、連鎖的にいろんなことが起きてしまうと話します。
キーボードだけを打っていると、「文章を打つこと以外めんどくさくなる」ため、原稿が進むそうです。分割キーボードはコンパクトなので、一蘭のようなカウンター席でも作業ができます。場所を選ばず、集中環境を作れるのも大きな利点です。
まとめ
けんすうさんのキーボード選びは、打鍵感ではなく「効率」と「負担軽減」を軸にしています。月に20万回叩くものだからこそ、体を壊さない工夫が重要です。分割キーボードで肩甲骨を寄せ、テンティングで手首を自然な角度に保ち、レイヤー機能で指の移動距離を減らす。さらに、スマホから手を離すことで、タスクスイッチングを防ぎ、集中力を守る。
田中さんも「全然買います」と即決。金融業界で「マウス1回で帰宅1分遅れる」と叩き込まれた経験と、キーボードへの投資の重要性が重なり、分割キーボードの価値を実感したようです。
音声入力とAIの併用、ライブ変換、マクロ機能など、けんすうさんの思考スピードを支える技術はまだまだありそうです。次回以降、AIの使い方やショートカット術についても深掘りしていく予定です。
- キーの数が少ないほど指の移動距離が減り、速く・疲れにくくなる。上級者は30〜40%キーボードを使う
- 分割キーボードで肩甲骨を寄せると胸が開き、呼吸が深くなり、疲れにくくなる
- テンティング(キーボードをテント状に傾ける)で手首が自然な角度になり、手首痛が激減する
- レイヤー機能で1つのキーに複数の役割を持たせ、ホームポジションを崩さずに数字や記号を打てる
- 完全無線のCornixなら、スマホやiPadにも簡単に切り替えられる
- 音声入力で下書きを作り、AIで整形し、キーボードで微調整するのが効率的
- スマホから手を離すことで、タスクスイッチングを防ぎ、集中力を守る
- 月20万回叩くものだからこそ、体への負担を減らすキーボード選びが重要
