毎日25キロ走る男が「運動は1日で一番嫌いなこと」と言い切る理由
限界突破ライフハックの第3回では、田中渓さんの運動習慣について深掘りしました。毎朝25キロのランニング、70キロのサイクリング、9,000メートルの水泳のいずれかをこなす田中さんですが、実は「運動は1日で一番嫌いなこと」と断言します。それでも続けられる理由、そして習慣化の仕組みについて、その内容をまとめます。
毎朝2時間の運動メニュー
田中さんの1日は、朝3時45分の起床から始まります。そこから2時間から2時間半をかけて、次の3つのメニューのいずれかをこなします。
25キロといえばハーフマラソン一般的なハーフマラソンは21.0975km。25キロはそれを超える距離で、フルマラソン(42.195km)の約6割に相当します。を超える距離です。毎日ハーフマラソン以上を走る人は、ランナーの中でもかなり珍しいと言えます。
健康に悪くないですか?
悪いです。体にはここまでやると良くないと。今は健康をちょっと飛び越えちゃってる感じだと思います。
田中さん自身も認めるように、この運動量は健康を飛び越えています。では、なぜここまでやるのでしょうか。その答えは、彼の食生活にありました。
入社2ヶ月で15kg増えた過去
田中さんの運動習慣は、会社員時代の激務から始まりました。朝から夜中まで働き続ける日々の中で、夜は叙々苑高級焼肉チェーン店。脂の乗った高級肉を提供することで知られ、弁当も人気商品の一つです。弁当のような油っこい食事が出され、深夜にも別枠で食事が提供される環境でした。
適正体重65キロだった田中さんは、わずか2ヶ月で80キロまで増加しました。15キロの増加は、体重の約23%に相当します。この危機感が、彼の運動習慣の原点になったのです。
食事制限が続かなかった理由
田中さんは、まず一般的なダイエット法を試しました。レコーディングダイエット食べたものを記録することで食生活を可視化し、意識的に改善していくダイエット法。岡田斗司夫氏の著書『いつまでもデブと思うなよ』で広く知られるようになりました。や食事制限、適度な運動など、月並みな方法です。しかし、それは長続きしませんでした。
食べたい、食べたいってなって、それを我慢したくないっていう風になって。そうすると自ずと運動する量を増やしていかなきゃいけない。
田中さんは「腹八分目で終われない」自分を受け入れた上で、別の道を選びました。食事制限を諦め、運動量を増やす方向にシフトしたのです。
現在の田中さんの食生活は、朝食抜き、昼は玄米と卵という素食、そして夜は一食で肉1.2キロを食べることもあるという極端なものです。しかし、それでも運動によって体重を維持できているのです。
習慣化と負荷アップは分けて考える
運動習慣を作る上で、田中さんが最も重視するのは「習慣化と負荷アップを分けて考える」ことです。多くの人は、やる気に満ちているうちに負荷を上げすぎて挫折します。
「5キロぐらいならいける」と飛び級してしまうと、すぐに「また5キロか」と億劫になります。そして一日やめてしまうと、そのまま二度とやらなくなるのです。
朝に運動すべき理由
田中さんは、運動を夜ではなく朝にすることを強く推奨します。その理由は、トリガーの確実性にあります。
「仕事が終わったら」は不確実すぎるトリガー。仕事の終わる時間は日によって異なり、疲れや予定で簡単にスキップしてしまう。
「朝起きたら」は確実なトリガー。必ず起きるタイミングを使うため、習慣化しやすい。時間を決めればシンプル。
さらに、田中さんには独特の考え方があります。
運動って正直一番めんどくさいんで、僕だってもこんなにやってますけど、一番嫌なことなんですよね。だけど、朝一番面倒くさいものだから、片付けるとすごい幸せで。
1日で一番嫌なことを朝に片付けると、残りの時間が楽になります。朝の時点で「今日の一番大きい仕事」が終わっているという感覚が、精神的な余裕を生むのです。
脳のオートパイロット機能を活用する
田中さんの運動時間は、単なる運動時間ではありません。脳が勝手に問題を解決してくれる時間でもあります。
朝起きてすぐに、1日の予定やメール、チャットをざっと目を通しておきます。そして運動を始めると、走っている間・泳いでいる間に、脳が勝手にそれらを整理してくれるのです。
運動終わって、朝会社行くと、僕の作業っていうのはそれをただただなんとなくほぼ無意識でパーって打ち出して、午前中には仕事が大体終わってる。
脳科学的には、一定のリズム運動は脳の邪魔にならないため、思考のための余力が生まれます。さらに、未解決の問題があると、脳はそれを解決しようとする性質があります。この2つが組み合わさることで、運動中に自動的に問題が整理されていくのです。
運動の隠れた効果
運動には、体重管理以外にもさまざまな効果があります。田中さんが挙げるのは、次のようなものです。
ふくらはぎを使う有酸素運動によって、血液が心臓に戻される作用。第二の心臓とも呼ばれ、自律神経のバランスを整える効果があります。
疲れている時こそ、会話できるペースでの軽い運動をすることで、疲労物質が抜けて回復が早まる考え方。完全休養よりも効果的とされます。
フィジカルの体力とは別に、風邪を引かない・病気にならない免疫力のこと。有酸素運動や筋トレによって高めることができます。
特に注目すべきは、自律神経への効果です。交感神経と副交感神経自律神経は、交感神経(活動モード)と副交感神経(リラックスモード)の2つから成ります。両者のバランスが崩れると、不眠・うつ・疲労感などの症状が現れます。のバランスが整うことで、うつの改善や前向きな気持ちを保ちやすくなります。また、夜の睡眠の質が上がることで、日中のパフォーマンスも向上するのです。
初心者は1キロから始める
番組の最後、けんすうさんが「どれくらいから走るといいか」と尋ねました。田中さんの答えは明確でした。
成人男性の適正運動量は、田中さんの3分の1程度、つまり7〜10キロ程度と考えられます。それだけでも、基礎体力と防衛体力は十分につくのです。
じゃあやろう。やります。三十分ぐらい早く起きて。五時四十分に起きて、一キロ走ってやる。
けんすうさんも、番組の中で「やります」と宣言しました。寒い季節こそ、汗をかかずカラッと終われるため、実は運動には最適なのです。
まとめ
田中さんの運動習慣は、「健康のため」というよりも、「好きなことを我慢しないため」の手段として発展してきました。食事制限が続かなかった彼は、運動量を増やすことで、好きなだけ食べる生活を実現したのです。
重要なのは、意志の力に頼らないこと。習慣化と負荷アップを分けて考え、朝という確実なトリガーを使い、脳のオートパイロット機能を活用する。これらの仕組みが、田中さんの習慣を支えています。
そして何より、田中さんは「運動は1日で一番嫌いなこと」と言い切ります。それでも続けられるのは、報酬系を設計し、環境をデザインしているからです。朝一番に嫌なことを片付けることで、残りの1日が「勝ち確定」になる。この感覚が、彼の原動力になっているのです。
- 食事制限が続かないなら、運動量を増やす方向にシフトする
- 習慣化と負荷アップは分けて考える。初心者は1キロ、会話できるペースで2週間
- 「仕事が終わったら」は不確実なトリガー。「朝起きたら」は確実
- 朝に運動すると、脳のオートパイロット機能で仕事の整理ができる
- 有酸素運動は自律神経を整え、うつの改善や睡眠の質向上につながる
- 1日で一番嫌なことを朝に片付けると、残りの時間が「勝ち確定」になる
