子供が「欲しい」と言っても売れないのはなぜか
今回のテーマは、子供が気に入るだけではボードゲームは売れない、という話です。ボードゲームは子供が遊ぶケースも多く、子供が「楽しい」「欲しい」と思っただけで本当に売れるのかが論点になっています。
Manaさんはゲームマーケットに日曜だけ出店してきたと話します。日曜は家族連れの来場が多く、子供と親御さんが一緒に訪れるパターンが多かったそうです。
Manaさんのブースには、カードが綺麗だったり、ショート動画で見たことがあったりという印象で、子供たちが駆け寄ってきてくれたといいます。
ルールを説明すると、子供は「面白そう」「欲しい」と反応してくれたそうです。しかし、そこまで行っても売れないことが多かったとManaさんは振り返ります。
子供は欲しいって言ってても、なんかお母さん微妙な顔してるだとか、お父さん微妙な顔してるだとか、悩んだ挙句結局買わない、そういったパターンも結構ありました。
ここからManaさんが導き出したのが、遊ぶ人と買う人は違うという気づきです。親子連れの場合、遊ぶのは子供でも、購入を判断するのは親御さんだと指摘します。
カードの見た目やショート動画、ルールの面白さで「欲しい」と反応する
遊んだ結果として何が得られるかを見て、買うかどうかを判断する
親が見ている観点は「体験の結果、何が得られるか」
Manaさんによると、普段のボードゲームの接客では、ゲームの面白さやルールをプレゼンしがちです。しかし親御さんは見ている観点が違うといいます。
ルール説明は、自分で遊んで面白いかどうかを判断できる人向けのプレゼンになってしまう、とManaさんは分析します。
親御さんにとって重要なのは、遊んだ結果として何が得られるのか、という点だとManaさんは話します。だからこそ、子供に買ってあげる理由をちゃんと伝えないと、子供向けゲームは売りにくいと述べています。
子供向けゲームは、決済者と遊ぶ人が違う。この点をふまえた接客の要素を、Manaさんはいくつか紹介していきます。
予算のない家族に効く「価格」という壁
一つ目の要素は価格です。Manaさんは「本末転倒かもしれない」と前置きしつつ、家族連れやお子さん向けの購入では、予算がそこまで多くない人が多いと指摘します。
趣味でボードゲームをたくさん買う大人にはある程度の予算があります。一方で、子供がボードゲーム好きだから、ポケモンやコナンをやっているから来てみた、という親御さんはそもそも予算を確保していないことが多いといいます。
Manaさんのゲームは2500円のものが多いそうですが、それでも高いという感覚をひしひしと感じたと話します。子供に買い与えるおもちゃとしては価格が高い、という受け止めです。
(親御さんに)二千五百円ですよって言うと、ちょっと他も見て回ろうか、って、価格を言った瞬間にサーッと引かれてしまうパターンも結構ありました。
あちこちで何個も買うことはなく、厳選した中で一個となると、より財布の紐は閉められてしまうとManaさんは言います。買われやすい価格帯は、カードゲームなら1000円ほどではないかという見立てです。
Manaさんは、大人向けであればそこまで安売りする必要はないと考えています。ただ子供向けは誰かのために買ってあげる形になるため、価格は普通のボードゲームより強い検討材料になる、と結論づけています。
自分たちだけで遊ぶのか、親子で遊ぶのか
価格以外の要素として、Manaさんは「自分たちだけで遊べるのか」「親子で遊ぶのか」という観点を挙げます。どちらを重視するかは親御さんによって違うといいます。
お父さんと息子で二人で遊べる、親子でコミュニケーションが取れる、といった点を目指すお客様には、大人でも子供でも楽しめる、会話が生まれる、というプレゼンが刺さる印象だったとManaさんは話します。
一方で、兄弟だけ、子供たちだけで遊ぶことを期待する親御さんもいます。その場合は観点が変わるとManaさんは指摘します。
子供たちだけで遊ぶことを想定する親御さんは、自分たちで遊べるほどルールが簡単か、片付けが簡単か、説明書が簡単かを重視するといいます。普段自分はボードゲームを遊ばず、子供の方が詳しいというケースもあるためです。
だからこそ、親御さんと会話をするだけでもアプローチは変わる、とManaさんは述べます。普段親子で遊んでいるのか、子供が好きなだけなのかを聞くだけで、勧め方が全然違ってくるという考えです。
大人でも子供でも楽しめる、会話やコミュニケーションが生まれる点をプレゼンする
ルールが簡単か、片付けが簡単か、説明書がわかりやすいかを重視して伝える
子供に説明しながら、親にも伝わる接客
Manaさんが重要なポイントとして挙げるのが、接客時の説明が子供に向きがちだということです。子供は質問もするしコンポーネントも触るため、つい子供にルールを説明してしまうといいます。
しかし買ってくれるのは親御さんなので、売るためには親御さんと会話しなければならない、とManaさんは強調します。子供が楽しいと思ってくれたら、次は親御さんとの会話に移る必要があるという流れです。
Manaさんは、親御さんから普段の遊び方などの情報を引き出し、そのゲームがその人に最適かどうかを考えると話します。最適でなければ勧める必要はない、とも述べています。
そのうえでManaさんは、子供にルールを説明しながらも、親に説明している風の意識を向けることが大切だと言います。意識を向けるだけでもだいぶ違うそうです。
子供にルールを説明しているんだけれども、ちゃんと親に説明している風な感じもしないといけない。意識を向けるってだけでもだいぶ違うんですね。
親がその段階で内容を理解できれば、親が子供にルールを教えたり、説明書を見ながら一緒に遊んだりするイメージが持てます。だからこそ親御さんとちゃんとコミュニケーションを取ろう、というのがこのポイントだとManaさんはまとめます。
「楽しい」だけでなく「子供のためになる」が買う理由
Manaさんは、何のために買うのか、という点もポイントだと続けます。コミュニケーションを取りたい、子供と遊びたいという理由でも、ただの遊びだと買ってくれないケースがあるといいます。
親心としては、子供に楽しんでもらいたい、楽しい姿が見たいという気持ちがまずあります。加えて、頭が良くなる、コミュニケーション力が身につくといった、子供の成長に寄与するゲームを買ってあげたいと思うのではないか、とManaさんは推測します。
ただ楽しいだけですと、おもちゃを買い与えたみたいな形で終わってしまいますが、何かしら子供のためになるよねっていうものですと、結構買ってもらいやすいのかな。
この観点を、Manaさんは自分がボードゲームを始めたきっかけとも重ねます。もともと昔から遊んでいたわけではないと明かします。
トイザらスで知育全振りのゲームを買わなかった理由
Manaさんがボードゲームに入ったきっかけは、娘と遊ぶためという理由と、ボードゲームは頭が良さそう、思考力が身につきそうと思ったことでした。
娘がそろそろ遊べる年齢になり、いい方向になればいいなと思ってトイザらスに行ったそうです。そこには、知育に全振りして「頭が良くなる」と打ち出したゲームもたくさんあったといいます。
気持ちとしては勉強になればいいと思っていたものの、Manaさんはそれらを「面白そうじゃなかった」と感じました。娘とコミュニケーションを取りつつ、勉強にもなればという気持ちだったため、知育全振りの表現のものは買わなかったといいます。
代わりにManaさんが選んだのは、少し考える系でルールが簡単なものでした。最初に買ったのはマンカラカラハだったと振り返ります。
マンカラカラハは駒を取って動かすだけのルールですが、考えようと思えば考えられるゲームだとManaさんは説明します。これをスタートに、論理的思考や戦略的思考、先を読む力を身につけてほしいと考えたそうです。
成長とともに遊び方が変わる、という売り文句
Manaさんは娘の成長とともに、少しずつゲームの難易度を上げていったといいます。この経験から、学びになるか、コミュニケーションが取れるかが自分にとって重要だったと整理します。そして多くの親御さんも同じ点を重視するのではないかと述べます。
どちらをより重視するかは聞いてみないとわからないので、むしろ聞いてしまって構わない、とManaさんは言います。そのうえで、自分のゲームがどうかを誠実に説明することが、子供向けゲームを売るために必要だと考えています。
Manaさんが初めの頃に遊んでいたのは、ノッカノッカやオストル、チェスといったアブストラクトゲームが中心でした。考える力をつけさせたかったためです。
最初はManaさんが勝ち、娘が悔しがっていたそうです。負ける悔しさを覚えていく様子を微笑ましく見ていたといいます。
続けるうちに娘は強くなり、Manaさんは成長を実感できたと話します。これが醍醐味であり嬉しいポイントだったと振り返ります。
強くなっていくと、あ、成長したんだなみたいな娘の成長実感も得られたりします。これはある意味醍醐味というか、嬉しいポイントなわけなんですよ。
ここからManaさんは、長期的に遊べるか、成長とともに遊び方が変わっていくかも刺さるポイントだと述べます。「頭が良くなる」「コミュニケーションが取れる」はありきたりで常套句に思われかねません。
一方で、成長とともに変わっていく、実感できるという売り文句は、そう聞く言葉ではないとManaさんは指摘します。ゲーム性にもよるものの、こうした伝え方は親御さん受けするのではないか、という見立てです。当時の自分なら間違いなく買っていた、とも話しています。
まとめ
子供向けボードゲームは、遊ぶ子供が気に入っても、決済者である親御さんが納得しなければ売れません。Manaさんは、価格・遊ぶ相手・買う理由といった親御さんの観点をふまえ、子供に説明しながら親御さんとコミュニケーションを取ることの大切さを説きました。
- 遊ぶ人(子供)と買う人(親)は違い、購入を判断するのは親御さんである
- 子供向けは予算の少ない家族が多く、価格は普通のボードゲームより強い検討材料になる
- 親御さんが親子で遊びたいのか、子供たちだけで遊ばせたいのかで、刺さるプレゼンは変わる
- ルール説明は子供に向きがちだが、売るためには親御さんにも伝わる意識が必要
- 「楽しい」だけでなく「子供のためになる」「成長とともに遊び方が変わる」という理由が親の購入を後押しする




