デジタルゲームの話から生まれた「移植」というテーマ
この回のテーマは「ボードゲームの移植」です。きっかけは、Manaさんが友人と交わしたデジタルゲームの雑談でした。
その友人は普段ボードゲームはやらないものの、STEAMというデジタルゲームのプラットフォームで、有名ではないものも含めていろいろ遊んでいるといいます。
どんなゲームが流行っているのかを話す中で、面白そうな1本として出てきたのが「シックスティーンセカンズ」というゲームでした。
Manaさんはこの話を聞きながら、これってボードゲームに移植できるんじゃないかと考え始めたと話します。そこから記事は思考実験へと進みます。
1分で核シェルターへ、シックスティーンセカンズという題材
シックスティーンセカンズは、生き残りを目指すサバイバル型のゲームだとManaさんは説明します。最終的には脱出、あるいは救出を目指します。
世界観としては、いきなり核爆弾が落ちてくるというものです。プレイヤーは急いで核シェルターに逃げ込み、その中で生き残って救助隊に救出されることを目指します。
状況によってバッドエンドからハッピーエンドまで、様々なエンディングが用意されているとのことです。
Manaさんが面白いと感じたのは、まず逃げ込む場面です。核爆弾が来るとわかった段階から、1分以内に核シェルターへ逃げ込まなければいけません。
その1分の間に、部屋や家からアイテムをかき集めて持ち込みます。アイテムには重量があり、一度に持っていける量は限られています。
さらに家族もいて、たとえば娘を抱きかかえながらだと小さなアイテムしか持てないなど、様々な制限があります。
家族をたくさん連れて入ると、今度はシェルター内で食料が足りなくなります。何を持ち、誰を連れて行くのかを、1分以内に選び切る必要があります。
シェルターの中での生き残りと、外への冒険
シェルターに入ってからは、ただ耐え忍ぶだけではなく、外へ冒険しに行くこともできるとManaさんは続けます。
外に出ると新しいアイテムを手に入れたり、救助隊を呼んだりできます。ただし外は汚染されているため、リスクも伴います。
時系列の変化もあり、前半は外の汚染が強く、冒険すると病気になりやすい状況です。後半になると汚染が和らぎ、外へ出やすくなっていきます。
そのため、ガスマスクを持っていると病気になりにくい、地図があると有利になるなど、アイテムの効果も重要になります。ラジオを持っていれば外の状況が聞こえることもあります。
外や訪問者との出会いもドラマになります。救助隊かと思って招き入れたら略奪者だった、というイベントも起こるといいます。
なんか救助隊かなって思って招き入れたら、実はそれは略奪者だったりだとか、他の核シェルターの食料を奪おうとしている悪い人たち、そういったようなイベントとかも発生したりする。
こうしたやり取りを経て、最後まで生き残るか救助隊に救出されるかを目指すのが、ざっくりとしたゲームの流れだと紹介されました。
1分の準備をボードゲーム化するとどうなるか
Manaさんはここから、シックスティーンセカンズをボードゲームに移植するとしたらどうなるか、という思考実験に入ります。
これをボードゲームに移植するとしたらどうしたら面白いんだろうみたいな、そんなこともいろいろと考えて聞いておりました。
まず「1分以内に持ち物を集める」という要素です。1分という制限時間は砂時計で表現でき、重量制限もルール化できると考えます。
Manaさんが思いついたのは、裏向きのカードをテーブルにランダムで並べる形です。正解かはわからないと前置きしつつ、具体案を挙げます。
各プレイヤーは1分の砂時計の間に、カードをめくって自分の手札を構築します。持てる枚数の上限を設けるかは検討の余地があるとしています。
アイテムごとに重さがあり、自分が持てる最大の重さが決まっています。端数が出ると1個持っていけなくなるなど、何を選ぶかの駆け引きが生まれます。
他人に見せないようにめくり、いらないカードは裏向きに戻します。この作業を1分以内に行う準備フェーズになる、というのがManaさんの案です。
有利なものをガンガン探す、ほんと部屋中のものをひっくり返すみたいな、そんなようなプレイ感になっていきます。
この形なら、各プレイヤーが最終的に何を持ったのかがわからない状態でゲームに参加できる、という利点も生まれます。
ベースはヘルパゴス、生き残りパートの作り方
シェルターに入ってからの生き残りパートについて、Manaさんは「ヘルパゴス」というゲームをイメージだと語ります。
ヘルパゴスでは、木を伐採したり水をくみに行ったりしながら、最終的に筏で脱出します。食料は尽きていき、蛇に噛まれれば病気にもなります。
食料が全員分ないときは、誰を生き残らせるかを投票で決めます。銃のような誰かを脱落させられるアイテムもあり、それが緊張感を生みます。
こいつ全然働いてないからっていうので、それで脱落させるだとか、そういったものが面白いゲーム感になっております。
Manaさんは、ヘルパゴスでは資源を取りに行くと周りから顰蹙を買うと指摘します。ここに移植のアイデアが結びつきます。
シックスティーンセカンズ型では、その資源集めを最初の60秒でまとめて済ませてしまえます。すると各ターンのアクションを一部スキップでき、それはそれで面白くなるのではないか、と考えています。
その中でなんとかやりくりするっていう風にすると、結構そのアクションっていったものをスキップできますし、それはそれで面白いのかなっていうところもあるなと思っております。
イベント、冒険、銃と薬が生む駆け引き
生き残りパートには、イベントカードと外への冒険のアクションを加えられるとManaさんは続けます。
誰かが外へ冒険しに行くと、山札から冒険カードを引きます。新しいアイテムを手に入れることもあれば、敵が攻めてきたり、敵を招き入れてしまったり、病気になったりします。
アイテムを拾う行動には、周りに見えない状態でアイテムを得られる利点があります。一方で、冒険に行かないと脱出は絶対にできない、という緊張も生まれます。
部屋の中からは銃が拾えます。食料が尽きたときや自分の要望を通したいとき、他のプレイヤーを脅す手段にもなり、侵略者を打ち負かす道具にもなります。
薬も駆け引きの種になります。病気になって帰ってきた人を助けるのか、自分が次に冒険へ行くために取っておくのか、選択を迫られます。
薬をゲットしてたとしても、誰か病気になって帰ってきた人を助けてあげるのか、自分が冒険行った時用に取っておくのか、結構いろんな様々なことができる。
もちろん、食料の減り方や、冒険に出なかったときのタイムリミットなど、ゲーム化するには詰めるべき点がたくさんあるとも述べています。
移植で得られる「粒のアイデア」の使いみち
Manaさんは、ここまでの案はそのまま移植した近い形だとしつつ、大事なのは「粒のアイデア」だと話します。
デジタルゲームはゲームの楽しさを凝縮した媒体でもあります。そこから要素を取り出して当てはめると、日々のボードゲーム作りに活かせるといいます。
たとえば「急いで集める、集めきれない、その中で持っていくものを選ぶ」という要素は、アクションゲームにも手札構築にもなり得ます。
生き残りの部分でも、リスクを取らないと脱出できないが、行けばランダムなリスクを伴う、という要素は山札からのチャレンジとして表現できます。
タイムリミットがあるよだとか、コミュニケーションを取りながらユーザー同士で蹴落としたり協力したりいろいろできるよね。そういう要素とかも全然使えると思うんですね。
Manaさん自身はデジタルゲームをあまりやらず、特に何かを参考にしているわけではないと前置きします。それでもSTEAMのインディーズは動きが活発なので、アイデアのエッセンスを参考にするのはありだと考えています。
アイデアのストックが多いManaさんは今は困っていないものの、アイデアが枯渇している人や面白さの一点が足りない人には、いったんボードゲームから離れてデジタルを参考にする手もあると勧めます。
逆向きの移植は「別物」になるのか
続いてManaさんは、逆方向の移植について考えます。デジタルからボードゲームへ移すと、様々な制約に合わせてアレンジが必要になります。
まるっとパクることはできず、そのまま再現するのも無理なので、何かしらアレンジが加わります。その結果、デジタルゲームとボードゲームは別物になる、というのがManaさんの見立てです。
ところが逆に、ボードゲームをデジタル化した場合を考えると、それはデジタルでもボードゲームのままだと指摘します。
違いは、実際の駒を手で動かすか、マウスや画面上で動かすか、そして演出が加わるかどうかです。ひっくり返したときに音が鳴る、進化時にエフェクトがかかる、といった要素です。
つまり、ベースのボードゲームがオンラインになり、表現の幅や便利なデジタル処理が加わるだけで、ゲームとして大きく変わるイメージがあまりないとManaさんは話します。
例として、オセロをベースにした対戦ゲーム「オセロニア」を挙げ、能力がついても結局オセロだよねとなる、と説明します。
元はボードゲームなのに大きな進化を遂げたみたいな、全然ゲーム性が違うよみたいなものがあれば、ちょっと教えてをいただきたいんですけども、なかなか難しいんじゃないのかな。
制約に合わせたアレンジが必要で、別物になりやすい
演出や便利な処理は加わるが、ゲーム性はほぼ変わらない
デジタル制作者への問いかけと、視点をずらす発想
Manaさんは、デジタルゲームをインディーズで作る人が、ボードゲームを参考に別物を作っているのかも気になると話します。
ただ、参考にしたボードゲームはそのままボードゲームになってしまうのではないか、とも感じています。謎解きの一部やミニゲームとして要素を取り込む形になるのではないか、という見立てです。
そこでManaさんは、デジタルゲームを作っている人がこの番組を聴いていたら、この観点をコメントで教えてほしいと呼びかけます。
番組が配信されているAppleのポッドキャストのゲームカテゴリーには、デジタルもボードゲームも入り乱れています。だからこそ、作り手からの声が届くことを期待しています。
ボードゲームを作る人には、様々な媒体から刺激を得てアイデアを集める方法を勧めます。普段デジタルで遊ぶ人にも、アイデアになりそうな気づきがあれば教えてほしいと伝えます。
最後にManaさんは、移植の対象はデジタルに限らないと締めくくります。昔遊びや手遊びを近代版にアレンジすることもでき、視点をずらして他分野から持ってくるのも一つの手だと話します。
まとめ
この回は、友人から聞いたデジタルゲーム「シックスティーンセカンズ」を題材に、それをボードゲームへ移植する思考実験を通じて、アイデアを他分野から持ってくる発想を語った回でした。
- 1分での持ち物選びは砂時計や重量制限、裏向きカードの手札構築でボードゲーム化できる
- 生き残りパートはヘルパゴスをベースに、冒険カードや銃・薬の駆け引きを重ねる案が示された
- 移植で大事なのは丸ごとの再現ではなく、楽しさを凝縮した「粒のアイデア」を取り出すこと
- ボードゲームをデジタル化してもゲーム性はほぼ変わらず、逆向きの移植とは非対称だという見立て
- アイデアは専門やゼロからの発想に閉じず、視点をずらして他分野から持ってくるのも有効




