なぜボドゲのタイトルは悩ましいのか
番組「ボドゲの天下取り」、略して「ボド天」は、ボドゲで天下を取るためにビジネス的な視点を交えて考察するチャンネルです。この回のテーマは「ボドゲのタイトルどうする?」です。
Manaさんは、ボードゲームを自分で作ったときに名前をどうするかは大きな悩みどころだと話します。世界観推しにするのか、かっこよくつけるのか、ゲームルールを体現させるのか、造語か既存の言葉か、迷う要素が多いと言います。
さらにタイトルは、一度つけると長く呼ばれ続けるものであり、販売を促進する上でも重要な要素だと位置づけられています。だからこそ、どういう名前がよいのかを考察していく、という導入でこの回は始まります。
「マッチ売りの大富豪」が秀逸な理由
最初の実例として挙がるのが、ヒット作を多く持つサークル「HEY!」の作品「マッチ売りの大富豪」です。ManaさんはXでも度々発言しているほど、この名前が大好きだと語ります。
ゲーム内容は大富豪がベースで、手持ちのマッチ棒でカードの数字を変えられる仕組みです。パッケージも「マッチ売りの少女」を思わせる可愛らしいものになっているといいます。
Manaさんが注目するのは、貧しい「マッチ売りの少女」と、裕福さを表す「大富豪」を組み合わせた逆説性です。この意外性が名前だけで人を引きつけると考えています。
マッチ売りの大富豪って何さっていう話なわけです。新しい物語があるよって言われたとしても、結構気になる物語だと個人的には思います。
加えて、ゲームシステムが大富豪をベースにしているため、タイトルの「大富豪」がそのまま中身とかみ合っている点も評価されています。名前の面白さと、中身の分かりやすさが両立しているという指摘です。
作者が明かした「意外性は狙っていなかった」
Manaさんがこの名前の物語性を絶賛してポストしたところ、作者のウナムさんからコメントがあったといいます。そこで明かされたのは、意外な制作の裏側でした。
実はなんか物語性といったものは特に考えていなかったようですね。
作者は「マッチ売りの少女」の逆転性をはじめから意識していたわけではなく、ただ「大富豪」という言葉はタイトルに入れたいと考えていたそうです。
案出しの過程では「マッチ棒大富豪」や「大富豪マッチ」なども出ていたといいます。マッチを使うなら「マッチ売りの少女」かな、というところから、そこに「大富豪」を合成する形で今の名前に落ち着いたようです。
つまり物語の逆転性は狙ったものではなく、ゲームシステムが伝わるように「大富豪」という言葉を入れた結果だったわけです。Manaさんは、この経緯そのものが参考になると受け止めています。
「国旗王」に見る、語尾を合わせる工夫
同じ作者の作品として「国旗王」も紹介されます。漢字では「国旗の王様」と書いて「コッキング」と読ませるゲームです。
世界各国の国旗を使い、その国の広さや人口といったスペック情報を元に競う内容で、知識を活かせるゲームだといいます。知識で勝負するイメージから、Manaさんは当初「クイズ王」のような連想を持ったと語ります。
Manaさんが秀逸だと評価するのは、「国旗」の「旗」と「キング」を重ね、読みを「キング」にすることで語尾をそろえ、ひとつの名詞のように扱えるようにした点です。
ただしこの作品も、作者は「クイズ王」のことは特に考えていなかったと明かしています。Manaさんは、自分がつい裏読みや考察をしてしまう傾向があると振り返ります。
作る人ってそういった勢いだったりとかもするのかなっていうふうにも思いますと。意味は後からついてくるというか。
当初は「コッキング」ではなく、国を取っていくトリックテイキングにかけた「国取りックテイキング」という案もあったそうです。それが右往左往して「国旗王」に落ち着いたといいます。
Manaさんは、「国取りックテイキング」よりも「国旗王」のほうが断然よいと評価します。マッチ売りの大富豪も含め、試行錯誤を繰り返した結果、いい名前にたどり着いたという点を重視しています。
「新古」と読ませる「ニューオールド」の仕掛け
もうひとつのHEYの作品「ニューオールド」も取り上げられます。新しいカードと古いカードを使うゲームで、名前自体は「ニュー」と「オールド」を並べたシンプルなものだといいます。
Manaさんがビビッときたのは名前そのものより、宣伝バナーの見せ方でした。新しい「新」と古い「古」を並べた「新古」という漢字を、宣伝用の呼び方として当てていたといいます。
新古っていう漢字にした、そしてそれを読み替えるとシンプルになるよと。
Manaさんは、この見せ方から「シンプルなカードゲームだが、古臭さも新しさもある、今までにないプレイ体験が来る」というところまで感じ取ったと話します。名前と表記の工夫が、ゲームの印象づけまで担っている例です。
関連して、以前の配信で触れた「ボブ辞典」も秀逸だと挙げます。「ボブ」という人名的な語で用語を作っていくイメージを出しつつ、「辞典」で内容を表す構成がよいという評価です。
Manaさんが挙げるタイトルの5つの条件
ここからManaさんは、よいネーミングの条件を自分なりに整理していきます。まず前提として、自分のボードゲームはネーミングでかっこつけてしまいがちで、あまり伝わらないという反省も語られます。
1つ目は「覚えやすさ」です。意味の分からない言葉は文字が記号のように感じられて記憶に残りにくく、「マッチ売りの大富豪」「国旗王」「ニューオールド」のように意味が取れる名前は覚えやすいといいます。
その裏返しとして、かっこつけた長い英語は覚えにくく、SNSで投稿する人にも負担をかけると指摘します。Manaさん自身の英語タイトルの作品では、投稿の多くがカタカナで、スペルを間違えられることもあるそうです。
2つ目は「エゴサのしやすさ」です。プレイ報告の投稿を見つけて拡散したいのに、一般名詞だと埋もれてしまうという実感が語られます。
麒麟っていう作品もあるんですけど、もうこれ最悪ですよね。ビールは出てくるわ、大河ドラマは出てくるわ、そもそも神獣として麒麟いるわ、もう全然自分の作品ヒットしないです。
3つ目は「呼びやすさ」で、できるだけ短く、略しやすいことが望ましいとされます。フルネームでなくあだ名のように略して呼べる名前がよいという考えです。ただし「マッチ売りの大富豪」は少し長く、略している人をあまり聞かないとも認めています。
4つ目は「システムがイメージしやすいこと」です。「マッチ売りの大富豪」なら大富豪系だと伝わるように、中身を示す要素を入れたほうがよいといいます。
5つ目は「楽しそう・親しみやすいこと」です。難しそう、堅苦しそうな印象を与えると、ルールが分かりにくそうと敬遠されかねないため、あんまりかっこつけずに楽しそうと思ってもらえるタイトルを目指すべきだと話します。
一般名詞でも勝てる「修羅の道」
ここまでは販売戦略としての話ですが、Manaさんはそれを全部ぶち壊す方向にも期待を持っていると語ります。一般名詞をあえて使い、「それといえば自分のボードゲーム」と認知される状態にできたらかっこいい、という思いです。
その根拠として挙げるのが漫画「ワンピース」です。本来「ワンピース」は洋服を指す一般名詞で、少し前まで検索するとネットショップなどが上位に出ていたといいます。
それが漫画のヒットとともに検索結果でも漫画が上に来るようになり、一般用語でも認知が浸透すれば通用すると説明します。ただしそこに至るのは「修羅の道」だとも言い添えています。
Manaさん自身の最新作「ザ・セント・オブ・ジェラシー」も、発売当初は同名の音楽や文章のページが検索上位に出ていたそうです。直訳すると「嫉妬の香り」で、一般に使われる表現でもあるためです。
しかし発売後、YouTubeやSNSでの露出が増えたことで状況が変わったといいます。
ザ・セント・オブ・ジェラシーで調べると、私のボードゲームが一番上に出ますし、AIでもマナが作っているトリックテイキングのゲームですよみたいな、そういう回答が出てくるわけなんですよ。
Manaさんは、こうして認知される状態は嬉しいとしつつ、やはりエゴサはしにくいと本音を漏らします。一般名詞での命名には、認知が浸透するまでの難しさがつきまとうという整理です。
インディーズなら「満足できる名前」を
最後にManaさんは、タイトル付けは非常に深いテーマだとまとめます。セールスレターやキャッチコピーを専門にする職種があるほど、商品名は重要だと位置づけています。
一方で、インディーズであれば商業的に売り込むことを最優先しなくてもよく、自分が満足できる内容や名前を選ぶのもひとつの道だと話します。売れやすさと自分のこだわりのあいだで、どこに軸を置くかは作り手次第だという着地です。
まとめ
この回は、「マッチ売りの大富豪」「国旗王」「ニューオールド」といった実例を手がかりに、売れるボードゲームのタイトルの付け方をManaさんが考察した内容でした。名前の面白さと中身の分かりやすさをどう両立させるかが、一貫したテーマです。
- タイトルは長く呼ばれ続け、販売を左右する重要な要素
- 「マッチ売りの大富豪」は意外性とシステムの分かりやすさを両立させた好例
- 作者本人は物語性を狙わず、試行錯誤の末にいい名前にたどり着いていた
- 覚えやすさ・エゴサしやすさ・呼びやすさ・システムが伝わる・楽しそう、が命名の5条件
- 一般名詞での命名は認知が浸透すれば強いが「修羅の道」でもある





