なぜ個人向けボードゲームレンタルは成り立ちにくいのか
この回でManaさんが取り上げるのは、ボードゲームのレンタル事業です。普段からボードゲームを盛り上げる方法やビジネスアイデアを考える中で、レンタルは面白いのではないかと思いついたテーマだと話されています。
ボードゲームのレンタル自体は、これまでも取り組んできた人たちがいて、今もいるだろうとManaさんは前置きします。よくある形は、個人への貸し出しや、会社の研修用の貸し出し、インスト付きでイベントに出張してレンタルする形です。
研修やレクリエーションに絡めた貸し出しはよいとしても、特に通販のような形で個人に貸し出すやり方は大変だろう、というのがManaさんの見立てです。
理由の1つが単価の低さです。ボードゲームはおもちゃとしては高額でも、ビジネスで見れば数千円と少額な部類になります。買っても数千円のものを、それより安く貸し出す必要があるため、利益が出にくいと指摘します。
結構ビジネスの中では、その少額で取引をするっていったものって結構大変なんですね。利益が出にくいといいますか。
さらにボードゲーム特有の手間もあります。貸したものが返ってきたとき、コンポーネントが揃っているかの確認や、汚れの清掃が必要で、それを繰り返して回していく管理が負担になります。
個人間で少額の取引を成り立たせるには、数百円規模の取引先を大量に抱え、在庫も多く持つ必要があります。Manaさんは、昔調べたときも個人向けは難しそうだと感じていたと振り返ります。
個人ではなく法人向け、しかもサブスク型という発想
そのうえでManaさんが最近思いついたのが、個人ではなく法人に向けた純粋なレンタルサービスです。研修やインスト付きレクリエーションではなく、あくまでレンタルとして成立させられないか、という切り口です。
仕組みとしては、サブスクのような形をイメージしています。決まった金額を払っていれば、好きなボードゲームを借りたり返却したり、入れ替えたりできるというものです。
ターゲットとして挙げるのは、遊ぶ個人ユーザーではなく事業者です。具体的には、ボードゲームカフェや託児所、児童館、旅館、健康ランドのような大きなお風呂屋さんを想定しています。
ボードゲームカフェにとってのメリットはどこにあるのか
Manaさんがまずボードゲームカフェに注目するのは、仕入れとスペースの問題があるからです。今のカフェはほとんど新作を定価で買って棚に並べており、仕入れコストがかかります。
店舗の広さには限りがあるため、新しいものを入れ続ければいずれパンクします。稼働していない作品は破棄するか中古で売るしかありません。固定費で仕入れと返却ができれば、こうした購入費とスペースの問題を解決できると考えられます。
もう1つの利点が、これから開業する人への効果です。手持ちのボードゲームが少ない状態で開業しようとすると、数を揃えるために自己資金が大きく消費され、開業のハードルが上がります。
そこでサブスク型のレンタルを使えば、購入費を抑えつつスペースも順繰りに調整できます。いくらでどの程度の商品価格まで自由に借りられるかというプラン設計で提供する形を、Manaさんは想定しています。
児童館や旅館では「何を置くか」の提案まで含める
ターゲットは、ボードゲームカフェ以外にも広がります。児童館や老人ホーム、旅館なども、サービスレベルやおもてなしの一環としてボードゲームをプレイスペースに置けると話します。
旅館では囲碁将棋を客室にレンタルで置くことがあります。そのラインアップにボードゲームを含めるのもありだろう、という具体例を挙げています。
ただし、こうした場所はボードゲームに詳しくないため、何を仕入れればよいか分からないはずだとManaさんは言います。そこで、置く場所の客層に合わせて商品を選ぶプランニングまで提供する形を考えています。
たとえば子供向けなら対象年齢を絞り、小さい子が来る場所ではコンポーネントの小さいものを避けます。年配の方向けなら簡単なものを選ぶ、といった具合に、置く場所ごとに中身を組み立てるイメージです。
その事業所、置く場所に何を置いたらいいのかっていったものをプランニングするっていうのもありなのかなと思います。
さらに、定期的な差し替えもこちら側で管理します。3ヶ月に1回新しいものが届き、他のものは返却する、といった運用を組み込めば、レンタルに付加価値が出てくると考えられます。
モデルの元ネタは漫画のレンタル管理業者
なぜこの発想に至ったのか。Manaさんは、漫画には似たサービスが既にあると説明します。お風呂屋さんの漫画スペースに最新刊まで並んでいるのは、専門の業者が管理しているからだそうです。
そうした業者は、漫画をレンタルで大量に卸し、最新作も定期的に入れ、その管理を請け負っています。そのボードゲーム版だとイメージすると分かりやすい、というのがManaさんの説明です。
専門業者が漫画を大量に貸し出す
お風呂屋さんなどに最新刊まで並べる
最新作を定期的に入れ替え・管理する
店側は仕入れや管理をしなくてよい
これをボードゲームに置き換える
事業者向けにサブスク型レンタルとして提供する
サブスクなので収益が安定しやすく、今後ボードゲームの需要も高まると見込めることから、この形はありだろうとManaさんは話しています。
紛失や劣化のリスクは法人向けなら小さくできる
冒頭で挙げた「低単価ゆえに取引先が増えて大変」という懸念について、Manaさんは法人向けなら緩和できると説明します。ある程度のロットをまとめて貸すため、個人相手より取引先は多くならない想定です。
コンポーネントの紛失については、基本的に買い取ってもらう方針です。大量に貸した中で数個紛失があっても、1つあたり数千円に収まるため、法人にとって大きなリスクにはならないと考えられます。
箱のすり切れや経年劣化も、使い回す前提なので多少は許容する方針です。あとは営業力や営業の仕方次第でうまく回るのではないか、とManaさんは見ています。
大量在庫の倉庫を、そのままボードゲームカフェにする
一方で、懸念として残るのが在庫量です。最新作から旧作まで、場所ごとのプランニングに対応するには、幅広いラインアップを大量に揃える必要があります。
その大量の在庫を倉庫に眠らせておくのはもったいないため、Manaさんは自社でボードゲームカフェも併営する案を挙げます。メインはレンタル事業なので、繁華街に出す必要はないと言います。
むしろ倉庫が必要になるため、郊外の家賃の安い場所に大きな倉庫を借り、そこで在庫を管理しつつ、プレイスペースをカフェとして開放する形を思い描いています。
本格的にやれば、日本一のボードゲームの種類が揃っている状態になり得るとManaさんは言います。レアなものや昔のもの、インディーズ作品まで、いろいろ触りたい人がわざわざ来る場所にできれば面白い、という発想です。
天井まで壁中に、とにかくボードゲームを並べまくるみたいな、インスタ映えするような店内にしたら面白いなと思っております。
これらはまだ思いつきの妄想段階だと断りつつ、休眠在庫をみんなで遊べる形にできれば一石二鳥だと話します。ボロボロになったものや動かないものは、中古販売に回す出口も想定しています。
Xで指摘された最大の壁は「権利関係」
ManaさんはこのアイデアをXに投稿したところ、さまざまな意見が集まったと言います。中でも大きな論点として出てきたのが、権利関係でした。
漫画のレンタルがなぜ成立するのかを調べると、貸与権という権利があり、それを管理する出版物貸与権管理センターのような団体があるそうです。音楽のJASRACの漫画版にあたるものだと説明します。
一方でボードゲームには、そうした管理団体がまだないそうです。そもそもゲームルールに著作権があるかどうかという議論から始まる複雑さや、市場がまだ小さく管理団体を運営するメリットが薄いことが背景だと考えられます。
そのため、実際にレンタルをやるとなると権利関係はグレーになりがちです。きれいにやるなら作者一人ひとりに許諾を取り、署名を回して進める必要がありますが、それは大変で、大手が手を出していない理由でもあるとManaさんは話します。
図書館や海外の前例から見える可能性
ただしManaさんは、意外な前例として全国の図書館を挙げます。調べると、ボードゲームを貸し出している図書館が結構あるのです。
これについては、図書館には図書館法という別の法律があるようだと説明します。詳しくはないと断りつつ、私設図書館もその対象になり、最近は図書館にボードゲームが置かれていることもあると話します。
図書館法が適用されるかどうかは分からないとしつつ、実際に同じようにボードゲームを貸している図書館がある以上、この問題は根が深く難しいところだと受け止めています。
さらにトーク内では、ドイツなど海外ではボードゲームのレンタルサービスが主流だという話も出たそうです。真偽は今後調べたいとしつつ、前例がある可能性に触れています。
先立つ資金や時間の問題はあるものの、こうしたビジネスアイデアを常に考えながらやっていくのは面白い、とManaさんはこの回を締めくくっています。
まとめ
この回は、個人向けでは成り立ちにくいボードゲームレンタルを、法人向けサブスク型として捉え直す事業アイデアの考察でした。メリットと運用の工夫、そして権利関係という壁までを、Manaさん自身の思考の流れに沿って語っています。
- 個人向けレンタルは単価が低く管理も手間がかかるため、利益を出しにくい
- 法人向けサブスク型なら、仕入れ費やスペースに悩むボードゲームカフェや、開業前の人に価値を提供できる
- 児童館や旅館など、置く場所の客層に合わせた商品選びと定期差し替えを提案することで付加価値を出せる
- 大量在庫は郊外倉庫で管理し、そのままカフェとして開放する併営案も構想されている
- 最大の課題は貸与権など権利関係のグレーさで、図書館や海外の前例が突破口になり得る



