長年使った決済代行会社、全東信の突然の破綻
この回の冒頭は、株式投資の話ではなく、林さんのお店を襲ったトラブルから始まります。
林さんのお店では、お客さんがクレジットカードで支払った代金を、決済代行会社の全東信経由で受け取っていました。その全東信が突然倒産してしまったのです。
そもそも、なぜ全東信を選んだのか。話は開店当時までさかのぼります。
林さんのお店は1997年に開店。当初は現金払いがメインでしたが、クレジットカードの要望が増え、1990年代の終わりに大手のクレジット会社へ相談したそうです。
バーとかキャバレーとか、スナックとかって、手数料が10パーセントって言われたんですよ。
1万円の売上の中の1000円がクレジットカードで持っていかれちゃうんで、ちょっとそれは無理だなと思って諦めたんですね。
一度はクレジットカード導入をあきらめた林さんですが、友人から全東信を紹介されます。手数料が3.6パーセント程度と聞き、これならやれると導入したそうです。
導入は2004年か2005年ごろ。それ以来、ずっと全東信を使い続けてきました。
破綻の兆しと、営業への影響
後から振り返ると、破綻の兆しはあったといいます。林さんは、全東信の内部の人が長い付き合いの店に危険をほのめかしていたという話をインターネットで見たそうです。
「うちそろそろ危ないですよ」「変えた方がいいですよ」みたいなっていうことで、変えてよかったっていうこともなんか。
林さんの妻も、「率が上がりますよ、他のところがいいですよ」といったほのめかしを受けていたようだと話します。それでも乗り換えず、そのままにしていたところ、会社が潰れて入金が入らなくなってしまいました。
テレビのニュースでは、営業中に突然カードが使えなくなった店もあったと報じられていましたが、林さんのお店ではそれはなかったといいます。
林さんが異変を知ったのは、営業中にスマホでSNSを見ていたときでした。
営業中にスレッズを見たら、一番上に「全東信が」っていうのが出てきて。「え、どうしよう」と思って。みんな「気をつけて」みたいなことが書いてあったんで。
そのタイミングで、たまたま現金のお客さんばかりだったため、「カードが使えません」と伝える場面はなかったそうです。翌日には倒産のニュースが出ていました。
Squareへの即日切り替えと、集中していたお金の流れ
倒産の翌日、当然カードは使えません。林さんは大急ぎで別の決済サービスを探し、Squareに申し込みました。
夜の商売のため、審査に1週間ほどかかることを一番心配していたそうです。ところが、審査は1日で通りました。
クレジットカード今日ダメなんですよって言ったのは1日だけだったんですよね。その時に「じゃあ私たち帰ります」って言ったの一組だけだったんで。
林さんのお店では、若いお客さんが多い日はカード払いが8割から9割に達することもあるといいます。それでも影響を最小限に抑えられました。
話は、こうしたお金の流れの「集中」に及びます。レニーさんは、自分が勤めていた業界では取引先を分散させ、一か所に集中させないよう言われていたと振り返ります。
一方、バーはお客さん自体は分散していても、入金の流れは決済代行会社の一か所に集中していました。
でもまさかクレジットカードの会社が潰れるとは思わなかったんで。
未入金だった代金は、ほぼ全部が回収できない状態になったといいます。国が無利子でお金を貸すという情報も一時流れましたが、そもそも借りて返す話ではなく、本来受け取るべきものを返してもらう話だと二人は指摘します。
林さんがお店の状況を発信したことで、久しぶりに来店するお客さんも増え、なんとか乗り越えているそうです。
noteが描く「広告に見えない広告」の可能性
話題は、この番組のもとになっているnoteへ移ります。レニーさんは、個人投資家が集まる湘南投資勉強会で、noteのCFO・鹿島さんのプレゼンテーションを聞いてきたといいます。
林さんのようなnoteユーザーにとって、記事に広告が出ないことは大きな魅力の一つです。株主総会でも「広告を出してもいいのでは」という声が出ることがあったといいます。
鹿島さんは、ユーザーやアクセスが増えている一方で、企業からの売り上げはまだ伸ばせるという課題を挙げたそうです。
ただし、林さんが書いた個々の記事に直接広告を出すことは考えていない様子だったといいます。そこで出てきたのが、ハッシュタグページの活用でした。
noteでは、映画やドラマ、本などのハッシュタグを押すと、その作品に関するページが表示されます。上部にAmazonなどへのリンクがあり、その下にユーザーの感想記事がずらりと並ぶ仕組みです。
そういう動線をすぐ下に貼った、その下にnoteの中の記事をAIでバンバン上げていくみたいなページを作っているんですよね。
鹿島さんが語ったのは、このページに対して、TBSやNetflixといった作品の作り手側から広告費を得られないか、という構想でした。
なるほど、広告に見えない広告ですね。バナーじゃない。
レニーさんは、これはYahooのトップページに広告を載せるのに近いかもしれないと言いつつ、あるキーワードに関心を持つ人が集まる分、広告が出ても不快に感じにくい点が違うと整理します。
化粧品なら、そのページ自体が口コミサイトのようになるという例も挙がりました。AIが、やらせっぽい記事か本気の記事かを拾ってページを作れるのではないか、という話です。
ハッシュタグ
作品や商品ごとのページにユーザーの感想記事が集まる
動線
上部にAmazonや視聴先などへのリンクを配置する
広告
作品の作り手側がこのページに広告費を払う
体験
バナーではなく、感想の集合として自然に届く
記事の書き手への還元と、noteらしさ
鹿島さんの構想はあくまで一つのシナリオだと前置きしつつ、レニーさんは印象的な可能性を紹介します。希望する書き手には、AIの事例のように広告収入を還元することもあり得るという話です。
一方で、レニーさんは懸念も口にします。収入が絡むと、中立的な記事が減り、推している人の記事ばかりになる可能性があるのではないか、という点です。
Googleってどうしても気に入らなかった人たちばかりが書いちゃうじゃないですか。それよりはポジティブなのが多くて、noteのポジティブ性には合ってるかもしれないですよね。
関連して、note利用者から出た別のアイデアも紹介されました。美術館や博物館の図録を、noteでデジタルコンテンツとして売るという発想です。
図録はかさばり、カラーで5000円ほどと高価なこともあります。デジタルなら保管の手間も減り、災害にも強い。イベントとの相性のよい取り組みではないか、という話でした。
新刊『おじさんになっても』ができるまで
後半は、8月に発売される林さんの新刊の話です。タイトルは『おじさんになっても』で、ディスカヴァー・トゥエンティワンから刊行されます。
「おじさんはちょっとダメだよ」という内容ではなく、これから人生を楽しもうという希望を持てる本だといいます。
これから楽しく人生楽しもうよみたいな、いろんな希望的なことも思えるような、そういうおじさんの本です。
きっかけは約2年前。もともとお店の常連だった編集者が、社長の提案を受けて林さんに声をかけたそうです。この編集者と本を作るのは今回が初めてでした。
当初、林さんが書いていたのはネガティブな内容が中心でした。
「おじさんこういうことすると女性に嫌われるよ」とか、「こういうおじさんってもうモテないから、やめた方がいいよ」とか、そういうことばかり書いてました。
これでは、肝心のおじさんが読んでくれない本になってしまいます。編集者からは、もっとポジティブに書いてほしいと求められたそうです。
転機になったのが、noteの創作大賞で入選した「おじさんお店やろうよ」という記事でした。これを軸に、退職や早期退職後に自分の場所を作るという章が加わり、本がまとまっていったといいます。
おじさんだからこそできること
本には、実際に頑張っているおじさんも登場します。編集者の友人で、航空会社を早期退職してライブハウスを始めた人へのインタビューなどが収められているそうです。
その人はもともと航空会社の一社員で、一音楽ファンでした。それが自分の場所を作ったことで、日本の若いミュージシャンを紹介する場を運営し、やりがいを得ているといいます。
その若い人に何か場所を作ってあげるっていうのもいいよみたいな。
レニーさんは、これはある種の投資家のようだと受け止めます。若い人にチャンスや場所を与えることは、おじさんだからこそできることだ、という視点です。
林さんのお店の出会い会のように、若い人が出会い結婚するような場も、おじさんだからこそ作れるといいます。
本のタイトルは「おじさん」ですが、内容はおばさんにも当てはまるものです。狙いは35歳以上で、おじさん・おばさん予備軍も含まれるといいます。
今AIが出てきて、これからどうしようって考える人がすごく多いんで、リアルなお店とか場所を作るのが楽しいよっていう、そういう本ではあるんですけどね。
原稿はすでに完成し、装丁はイラストレーターに発注したイラストになる予定です。レニーさんも、自分の本屋で扱いたいと話します。
まとめ
決済代行会社の突然の破綻という経営のリアルから、noteが描く新しい広告の可能性、そして新刊誕生の背景まで、渋谷のバーオーナーの日常と発信が交差した回でした。
- 長年使った決済代行会社・全東信の破綻でも、Squareへの即日切り替えとお客さんの来店で乗り越えている
- 入金の流れが一か所に集中するリスクは、決済代行会社の倒産という想定外の形で現れた
- noteはハッシュタグページを使い、バナーではない「広告に見えない広告」の可能性を探っている
- 新刊『おじさんになっても』は、孤独に負けず、場所を作って人生を楽しむことを描く一冊
