Tanéが手がける3つの事業とは
番組冒頭、久下さんはゲストの六人部さんとの出会いをふり返ります。決済サービスのコイニー時代に、現在storesの取締役を務める人物の紹介で知り合ったのが最初だったといいます。
その後さまざまな事業を経て、六人部さんは現在web3系のインキュベーターを手がけています。その事業は大きく3つに分かれると説明されました。
1つ目はベンチャーキャピタル。生まれたばかりのスタートアップに投資をする役割です。2つ目がバリデーター、3つ目がDAOの運営です。
ブロックチェーンってブロックがチェーンになって、新しいデータが入ってくる時に検証する人、このデータ正しいよという人が世界中に分散しているんですけど、その役割が英語でバリデーターです。
DAOの運営について、六人部さんは間接民主制にたとえて説明します。トークンを持つ人はそれぞれ一票を持ちますが、専門的な判断は難しいため、代わりにトークンを預かって代議員的に運営するのだといいます。
クリプトとweb3は何が違うのか
久下さんは、web3にはNFTアート系、プロジェクトのコミュニティ運営系、ブロックチェーンのインフラ系など複数のジャンルがあると整理し、六人部さんがどこに注力しているかを尋ねます。
六人部さんの答えはインフラと運営でした。日本で目立ったNFTのコミュニティ運営とは違い、DAOの運営インフラやバリデーターとしての実運用に取り組んでいるといいます。
ここで、トークンが直面する規制の問題が語られます。アメリカの規制上、自分たちのトークンが証券とみなされると、プロジェクト運営が極めて難しくなるのだそうです。
あなたのトークンは証券ですと、米国の規制上の金融の証券になりますって言われてしまうと、もうプロジェクトが終わらない。
それを避けるための要件が分散化です。中央集権的な主体がいないこと、組織も技術もあらゆる面で分散化していること。そのチェックリストのうち、組織運営の分散化をTanéが手伝っているといいます。
話はクリプトとweb3という言葉の違いに移ります。世の中ではweb3が分散型、ビットコイン、メタバースなどを幅広く指す一方、クリプトを扱う人は仕組みと新しい文化を明確に区別していると久下さんは指摘します。
日本企業さんと話する時は面倒くさいからweb3とか合わせて言ってるんですけど、仲良くなってくるとweb3っていうのは、みたいな話してて、やっぱちょっと違うんですよね。
六人部さんによれば、web3という言葉は2021年ごろ、クリプトに悪いイメージがあった時期に、イメージを刷新する形で出てきたものだといいます。
久下さんは、VRやメタバース、ビットコインが一気に盛り上がった時期に、それらがまとめてweb3と呼ばれていた印象があると語ります。六人部さんも、当時メタバースを長くやってきた人たちは「それは違う」と感じていたと応じました。
ファンダメンタルがなくても価値がつくトークン
クリプト界隈は、流行りのものを取り込む面白さがあると六人部さんは語ります。AIが盛り上がると「AI×ブロックチェーン」が登場し、お金が集まっていくのだといいます。
トークンにはなぜ価値がつくのか。日本では「ファンダメンタルがないのに価値がつくのはおかしい」という声も多く、六人部さん自身も資金調達の際に言われたそうです。
しかし六人部さんは、目の前に価値がついているというファクトがあると強調します。ビットコインやイーサリアムの時価総額では、数千億円単位で流動性が動いているのが現実だといいます。
むしろファンダメンタルがないからこそ、期待値が先行してこうした動きが起こる。それを理解しないと「トークンは投機だからダメだ」で止まってしまうと指摘します。
一例として、ソニーが自社でブロックチェーンを作り、トークンを使おうとしている動きが挙げられました。面白く、かつ美味しいところを理解した上でビジネスをしている例だといいます。
Tanéは何に投資しているのか
久下さんは、信用取引や契約など、お金や取引の仕組みに詳しい人ほど、クリプト的なプロジェクトの進め方がすっと理解できると語ります。逆にそこに明るくない人には入ってきにくいのだといいます。
Tanéが投資している対象は何なのか。久下さんの問いに、六人部さんは基本はトークンだと答えます。通常のベンチャーキャピタルが株式に投資するのに対し、Tanéはトークンに投資するのが特徴です。
普通のベンチャーキャピタルだと、日本の株式会社が発行した株式になると思うんですけど、僕らは基本トークンですね。
投資の流れも語られました。多くはプレシードやシードの段階、つまりプロダクトもなくチームだけの時期に、将来発行されるトークンを購入する権利を得る形です。
その後、プロダクトが出るころにトークンも発行され、少しずつDAOへ向かっていきます。このタイミングでDAO運営への参加やバリデーターとしての関与が求められるのだといいます。
つまりTanéは、プロジェクトの始まりで投資として関わり、プロダクトが出る前にインフラとして関わり、その後DAO的な運営に関わる。主要なメニューを一貫して提供しているのが特徴です。
投資
プロダクトもなくチームだけの初期段階で、将来のトークン購入権を得る
インフラ
プロダクトが出る前にバリデーターとしてインフラに関与する
DAO運営
プロダクト発行後、DAOの運営に代議員的に参加する
投資判断の基準は、web2のスタートアップ投資とほぼ変わらないといいます。どの領域で戦っているか、伸びるのか、競争環境はどうかを見て、その後にチームを見る流れです。
どこで戦うかがいいかどうかを見て、その後でやっとチームを見る。ここが多分成功の8割ぐらい。
クリプト特有の要素として、トークンにちゃんと価値がつく仕組みがあるかも重視されます。トークンがなくても成立しそうなプロジェクトは、価値がつきにくいのだといいます。
なぜイーサリアムは勝ち続けるのか
Tanéが投資するDAOの多くは、クリプトのエコシステムを支える基礎的な道具を作っているという印象を久下さんは語ります。六人部さんもこれに同意しました。
取引が遅い、ガス代がかかる、データを隠したいのに隠せない。こうした基本的なことがまだできていない中で、その基礎を提供するプロジェクトに投資しているのだといいます。
例として、トークン同士を交換できる分散型取引所や、クリプト上でプログラムを書く土台となったイーサリアムが挙げられました。基礎的でみんなが最初に入るところに価値がつきやすいといいます。
久下さんは、こうした基礎技術は同時多発的に生まれるのではないかと問います。六人部さんは、お金が動く領域なので後発のプロジェクトが次々に立ち上がると認めつつ、多くの場合は最初に出てきたものが勝つと語ります。
なぜ先行者が勝つのか。六人部さんはネットワーク効果を挙げます。イーサリアムには「イーサリアムキラー」を掲げる競合が数多く登場しましたが、結局はイーサリアムが勝ち続けているといいます。
いや我々はイーサリアムより早い、安い、イーサリアムのダメなところを裏返した、みたいなやついっぱい出てきて、お金も調達したんですけど、結局イーサリアムが勝ってて。
最初に開発者を大量に引きつけ、流動性、つまりお金が集まると、そのネットワーク効果を超えるのは難しくなります。イーサリアムは7〜8年にわたって勝ち続けているといいます。
その背景には分散化があると六人部さんは分析します。十分に分散化していれば、国や誰かが入ってきて資産を没収するリスクが低く、安心してお金を置いておける。分散が弱いチェーンにはそのリスクが残るといいます。
久下さんは、これはAWSのようなサーバービジネスに似ていると指摘します。多少使いやすいものが出ても、使い慣れていてみんなが知っている方がやりやすいという構図です。
最先端の技術と、昔ながらのワークフロー
話題はクリプト界隈の働き方に移ります。久下さんは、インターネットサービスを作る人からは、この界隈がどう動いているか想像しにくいだろうと語ります。
開発言語としては、スマートコントラクトを書くSolidityが基本で、最近はRustで書こうという動きもあるといいます。六人部さんは非エンジニアと断りつつ、Rustはグローバルプロダクトを作る機会が少ないため魅力的なのではないかと聞いた話を紹介しました。
コミュニティとのやりとりはDiscordが基本で、チャンネルごとに声を吸い上げながら一緒に作っていきます。DAOになるとフォーラム(掲示板)で提案が出され、議論を経て投票にかけられる流れです。
さらに週1回のコミュニティコールもあり、ZoomやGoogle Meetで今週の状況を共有します。ただ参加者にアジアの人が多いと、開催がアジア時間の深夜になってしまうという事情も語られました。
見て何が起こってるかを把握するのは結構難しい。
久下さんは、技術は最先端なのにワークフローは昔のインターネットに似ていて、寄せ集めたツールで頑張っている印象があると指摘します。
六人部さんによれば、2023年ごろは「DAOの年」と言われ、ワンストップで全部できるプラットフォームが多く登場しましたが、どれも立ち上がらなかったといいます。ユースケースが広すぎたことや、まだ意識が向いていなかったことが理由です。
通知が分かりにくい、投票期日前のリマインダーがない。web2なら当たり前にありそうな機能がいまいちだったといいます。久下さんは、技術や概念のスマートさと、その使い勝手のバランスが取れていない点が面白いと語ります。
それは多分分散的にやってるからだと思うんですよ。スパッと誰かが決めれば、会社みたいにこのツール入れようとなるんですけど、そうでもない。
ただ、この1年でDAOを本格的にやるところが増え、使い勝手への意識も上がってきていると六人部さんは締めくくりました。
まとめ
web3やクリプトの本質は「分散化」にあり、それが検閲耐性やパーミッションレスといった価値を生み、ネットワーク効果と結びついてイーサリアムの強さを支えています。前編では、トークンへの投資、DAO運営、そして最先端の技術と昔ながらのワークフローが同居する現状が語られました。
- Tanéはベンチャーキャピタル、バリデーター、DAO運営の3つを軸に、クリプトの基礎的な道具を作るプロジェクトへ投資している
- トークンが証券とみなされないための要件が分散化であり、その組織運営の分散化をTanéが支援している
- ファンダメンタルがなくても価値がつくのは事実であり、それを理解した上で事業に組み込むことが重要
- 先行者が勝つのはネットワーク効果と分散化による検閲耐性が背景にあり、イーサリアムは7〜8年勝ち続けている
- クリプトは技術が最先端な一方、DAO運営のワークフローや使い勝手はまだ発展途上にある
