日本代表の戦いから見えた「トップダウンかボトムアップか」
この回は、村上さんがワールドカップの話を持ち出すところから始まります。大長さんは日本代表戦を朝4時に起きて息子さんと全試合フルで見ていたそうです。
見てましたよ、日本代表。朝4時に起きて。息子と一緒に見てました。
今年はなんかすごい期待があって、見てても面白かったし。
村上さんはもともと野球少年でサッカーに詳しいわけではないと前置きしつつ、振り返り動画を見て感じた論点を挙げます。
それは、チームの和を重視する森保監督のやり方と、過去に外国人監督が大会ごとに戦略を変えながらトップダウンで率いてきたやり方の対比でした。
この外国人監督みたいにトップダウンでやるんだなのか、森保さん流でいうボトムアップでやるべきなんだ。どっちの方が良かったのかな。
村上さんは、この構図がbridgeでよく話す企業組織の話と通じると感じ、大長さんに問いを投げます。
トップダウンがいいのか、ボトムアップがいいのか。大長さんの中で答えみたいなものは持たれていますか。
新規事業はトップダウンが強い。でも日本企業には難しい
大長さんはまず、新規事業という文脈ではトップダウンのほうが大きな事業を作りやすいと答えます。人・もの・金を動員でき、リーダーが旗を振って前に進められるからです。
新しい価値を作っていくってリーダーの仕事だと思うんで、経験的には圧倒的トップダウンでやってる会社が前に進めるだろうなって思ってます。
一方で、そうした会社はまだ少ないとも話します。既存の本業を何十年も育てながら新しいことをやる日本企業には、培ってきたカルチャーがあるからです。
そこで大長さんが著書でも提案しているのが「ミドルアップダウン」という進め方でした。
日本的にやっていこうと思うと、ミドルアップダウンっていう、ちょっと分科会形式で協議しながら進めていくっていうやり方もいけるなって思ってる。
リーダーが旗を振り人・もの・金を動員する。大きな事業を作りやすく前に進みやすい。
次世代リーダーが一度経営の視座に上がり、そこから下ろしていく。日本企業のカルチャーに合いやすい。
ミドルアップダウンの進め方と「ミドル」とは誰か
村上さんは、ミドルアップダウンの具体的なステップを尋ねます。トップダウンがあってからミドルが動くのか、ゼロからミドルが考えるのか、という問いです。
大長さんは両方あると答えつつ、起点はトップの発信だと整理します。ただし具体的な進め方や領域までは、待っていても降りてこないと言います。
中期として次の柱立てようというメッセージがあったとしても、具体的な進め方のところはミドルが預かるところで、結構それ待ってても降りてこないんですよ。
そこでミドルが進め方や領域、期間、規模を議論し、経営に当てに行きます。すると経営陣の解像度も上がり、そこで初めて対話が始まると大長さんは話します。
村上さんは、こうした活動をボトムアップと呼ぶ企業もあるのではと指摘し、「ミドル」とは誰を指すのかを確認します。
執行役員とか部長。あとは経営企画の人とかね。ボトムって言ってるのは、もうちょっと一個一個の案件に入り込んで動かしてるメンバー。
大長さんによれば、ミドルとは仕組みを議論する人たちです。評価制度や予算配分、人の稼働の割り当てといった仕組み作りは、次世代のリーダーが担う活動だと分けて考えています。
人数は10人いかないぐらいで、広報・経営企画・人事・研究開発など多様な部署から中核メンバーを集めるのがよいと話します。
よくある失敗。提案制度だけが走り、尻すぼみになる
大長さんは、よくある失敗としてボトムから上がった声だけで動くケースを挙げます。
ボトムのメンバーが「もっとこんなアイデアやりたいので実現できる仕組みが欲しいです」と上がってきて、「じゃあ社内提案制度だけ作ろう」と。そこだけ走ってしまうと、大体2、3年で尻すぼみになっていくんですよ。
その原因は、横断した議論や経営との対話がないまま、アイデアの良し悪しだけを議論してしまう点にあると言います。
村上さんは、判断のよりどころとなるトップの戦略について、どこまでトップが決め、どこからミドルに預けるのかを尋ねます。
大長さんは、トップが示すのは「どの期間でどれぐらいの規模の事業を作りたいか」という大きな方針と、なぜやるのかという部分だと答えます。領域まで具体的に指示することは少なく、そこはミドルが預かって議論し、承認を取ると言います。
いつまでにどこまで行くかっていう、射程みたいなものだけトップが決める。
規模の大きい事業をゼロから作るのは筋が良くないため、重要なら専門組織で一気にリソースをかけるなど、トップダウンとミドルアップダウンの塩梅を探す必要があると大長さんは補足します。
バラバラな人をどう集める。「分かり合えない問題」に気づく場づくり
村上さんは、人事や事業部などバラバラの課題感を持つ人たちが集まる場を、どう作ればいいのかと問いかけます。
大長さんは、キックオフとして「3年後どうなっていたら成果か、どうなりたいか」という議論から始めるしかないと答えます。そこから著書で挙げた10の観点にあたるモヤモヤが出てきて、優先順位の高い課題を見極めていく流れです。
しかし村上さんは、そもそも横断で話す場に人が集まらないのではと率直に投げかけます。
気持ちはすごくわかるんですけど、集まらなそうだなって僕は思っちゃうんですけど。
集まってないです。
大長さんは、集めるのに苦労しているのが実情だと認めます。新規事業を推進するミドルが協力を得られず、進んでいるか分からないまま、だんだんすり減っていくのだと言います。
そうした背景があって著書を作ったと大長さんは明かします。一人だけ課題意識を持っていても始まらないため、みんなで読んでほしいという思いからでした。
ずっと噛み合わないと思ってたけど、こういうことだったのか、というきっかけを1つだけ作れれば対話はスタートできる。ちゃんと分かり合えない問題を認識するのがまず初めで。
村上さんは、著書のタイトルにある「地図」に触れ、今どこにいるのか、どこに行きたいのかを全員で見る作業が必要だと受け止めます。大長さんも、これは仮説検証などのHowtoの本ではなく、組織の中で対話するための本だと応じます。
多くの人はうまくいかない原因を、アイデアの質やスキル、経営陣の方向性のせいだと考えがちです。そのやりとりがずっと続いているのだと大長さんは指摘します。
新規事業に「一体感」は作れるか。次回への宿題
村上さんは、今日本当に話したかったのは、誰が決めるかよりも話し合う場をどう作るかだと整理します。その手前にある場づくりこそ重要だと感じたからです。
大長さんは、日本代表が「一体感のあるチーム」と語っていたことを引き合いに出します。それが強みである一方、新規事業では一体感を作りにくいと言います。
新規事業って一体感なんか作れない。全員今みんな悩んでる。孤軍奮闘してると思ってる。
それでも一体感を作るアプローチはあると大長さんは考えています。挑戦しようと言いながら一体感を作れなければ勝ち目がない、というのがその理由です。
挑戦しようって言ってるのに、一体感作れなかったらもう勝ち目がないですよね。
この回では話しきれないとして、一体感をどう作るのかは次回のテーマに持ち越されました。
まとめ
サッカー日本代表のトップダウン・ボトムアップ論を入り口に、新規事業では両者の中間にある「ミドルアップダウン」が現実的だと語られた回でした。そして行き着いたのは、誰が決めるかよりも「分かり合えない問題」に気づく対話の場づくりが先だ、という視点です。
- 新規事業はトップダウンが前に進みやすいが、日本企業には次世代リーダーが担うミドルアップダウンが合いやすい。
- ミドルとは執行役員・部長・経営企画など、仕組みを議論する多様な部署の中核メンバーを指す。
- ボトムの声だけで社内提案制度を作ると、経営との対話を欠いたまま2、3年で尻すぼみになりやすい。
- トップは期間と規模、なぜやるかを示し、領域や進め方はミドルが預かって議論し承認を取る。
- うまくいっていないと感じても、その解決の入り口が対話だと気づけていないことが多い。
