十年分の現場から生まれた一冊──大長の初著書『自走する新規事業のつくりかた』の裏側
株式会社bridge代表・大長伸行さんの初著書がいよいよ発売されます。ナビゲーターの村上雄紀さんが、本を書くに至った衝動、章立て、執筆を通じて整理されたこと、そして「分かり合えない問題」というキーワードまでを丁寧に掘り下げました。bridgeが積み重ねてきた三百を超える新規事業伴走の経験が、どう一冊の本に結晶したのか。その内容をまとめます。
柔術と執筆、心技体の整え方
冒頭は近況の話題から。大長さんは三十年ぶりの運動として柔術ブラジリアン柔術などに代表される寝技中心の格闘技。帯の色で習熟度が分かれ、白帯から始まり青・紫・茶・黒へと昇格していく。を始め、九ヶ月目で初の試合を迎えるところまで来ているそうです。きっかけは意外にもコーチング対話を通じて目標達成や自己変容を支援する手法。経営者・起業家向けのコーチングプログラムでは、心身両面のコンディショニングを扱うものもある。でした。
心側はいってるのに、体たらくなだらしない体が。だからなんか鍛えないなと思ったんです。
心の整え方と体の整え方はつながっている──コーチングを通じてその学びを得たことで、自分の体への違和感が無視できなくなったといいます。アカデミーのカリキュラムに柔術が組み込まれており、今もそれが続いている形です。この「心技体を整える」という姿勢は、後半で語られる本の執筆姿勢にも通じていきます。
初著書『自走する新規事業のつくりかた』とは
収録時点でちょうど校了書籍の原稿や校正がすべて完了し、印刷工程に入る段階のこと。著者にとっては大きな節目となる。を迎えたばかりという初著書。Amazonでの予約販売が開始され、書店に並ぶのは2026年7月13日の予定です。
手持ちのリソースで成果を出し続ける組織のしくみ(翔泳社)
2026年5月19日よりAmazonで予約販売開始。
これまで番組や対談で語ってきた「新規事業の自走」というテーマを、書籍として一冊に結晶させたもの。
大長さんはこの本を「組織で議論する土台になる本」と位置づけています。読者一人ひとりが読むだけでなく、社内で広げて使えるガイドラインや道しるべとして役立ててほしい、というのが込められた願いです。
なぜ今、本を書こうと思ったのか
創業当初のbridgeのスコープは、出てきた新規事業アイデアをいかに検証し、世に出すかという「プロジェクトそのもの」にフォーカスしていました。しかし、業界や規模を超えてさまざまな企業に伴走するうちに、ある気づきが生まれたといいます。
当初はこうした「プロジェクトの外側」、つまり組織やリーダーシップ、文化に関する課題は「お客さん側の問題」として支援スコープに含めていなかったといいます。けれど、本当に成果を出す新規事業をつくるには、その裏側の組織や仕組みそのものに介入していかなければならない──そう確信が強まったのがこの三年でした。
大長さんはこれをフィットネスのメタファーで説明します。
三ヶ月で十キロ痩せる伴走
食事と運動だけにフォーカスして目標は達成できる
多くの場合、達成後に元の体に戻る
本当の要因
家族との生活、仕事のストレス、睡眠など、生活環境そのもの
新規事業も同じで、プロジェクト単体の成功を支えても、組織の習慣や価値観に手を入れなければ、担当者の異動とともに元に戻ってしまう。だからこそ「企業の活動習慣そのもの」を変えていく支援が必要だ、という結論にたどり着いたのです。
届けたい読者像と「分かり合えない問題」
本のメインターゲットは、売上規模で五十億から一千億ほどの中堅企業。本業はあるものの先細りへの不安を抱え、新規事業の必要性はわかっているが、社内に専門スタッフもリソースも十分にない──そうした企業の経営陣や経営企画の人に届けたい、と語ります。
そして本の核となるキーワードが「分かり合えない問題」です。経営・現場・ミドルマネジメントの三者がそれぞれ違う景色を見ているために、すれ違いが起きる構造を扱います。
経営サイドの見え方
現場の技術・スキル・能力・熱意が物足りなく感じる
現場サイドの見え方
経営は本気でこの事業に向き合っていないと思っている
ミドルは両者の板挟みで、うまくやりようがないまま挟まれている
誰かの能力や熱意のせいではなく構造の問題として扱う──この視点の転換こそが、本書のスタート地点になっています。
「自走地図」という構成のメタファー
本の章立ては、序章で「分かり合えない問題」全体を扱ったあと、地図のメタファーで構成されていきます。読者が自分たちのいる場所を確かめ、次の打ち手を見つけるための「自走地図」というわけです。
章の中では、よくあるシーン、止まりやすい観点、衝突が起こる「あるある」が多数登場します。順番通りに進む必要はなく、自社がどこで詰まっているのか、どこは順調なのかを照らし合わせながら読む構成です。
地図ってことなんで、組織とか会社の中でもみんなで広げて、目線合わせするためのツールになれるといいかもっていうことでもあるんですかね。
みんなの目線が全然違うんで、地図を広げることでそれぞれが見てるところがわかるみたいな。
大長さんは本の位置づけを「新規事業のHow to本でもないし、かといって精神論でもない、ちょうどその間ぐらいの本」と表現します。村上さんはそれを「問診票的」と言い換えました。普段新規事業に積極的に関わっていない人でも、自社の状態を診断できるツールとして機能するというイメージです。
書き終えて見えた、Bridgeという名前の意味
執筆を通じて整理が進んだことを問われた大長さんは、改めてbridgeが果たしてきた役割を語ります。組織と組織、人と人、立場と立場をつないで合意形成し、前に進めていく──まさに「橋渡し」をしてきた十年でした。
もう一つ印象的だったのが、「組織の外にいる人間」だからこその役割についての気づきです。以前は組織の文化やわかり合えない問題は「外側の人間が語るのはどうだろう」と踏み込みづらく感じていたといいます。けれど、実際は逆だった。
組織の中のことはよくわからないから、関係について語るのは難しい
外の人間がいる方が、みんなが対話できる。組織の「初心者」だからこそ違和感に気づき、問いを投げられる
「気づかなかった」「よく言ってくれた」「実はずっと言い出せなかった」──そんな反応が返ってくる仕事に手応えを感じているといいます。慣れ親しんだやり方の中に潜む違和感に介入できることが、bridgeの価値だと整理されていったようです。
村上さんはこの十年を振り返り、「大長さんが多分やりたかったのは、プロジェクト終わりにみんなで打ち上げ的にやりましょうとなるシーン」だと表現しました。エンパワーする仕事、目線を合わせていく仕事──それが本書を通じて、まだ会えていない未来のお客さんにも届いていくことになります。
まとめ
大長伸行さんの初著書『自走する新規事業のつくりかた』は、これまで一社一社の現場で積み上げてきた知見を、業界や規模を超えた「共通パターン」として届けるための一冊です。新規事業がうまくいかない理由を、能力や熱意の問題ではなく構造の問題として扱い、経営・現場・ミドルが同じ地図を広げて議論できる状態をつくる。それが「自走地図」というメタファーに込められた狙いです。
本業を守りながら新しい挑戦を求められる中堅企業や、社内に専門リソースが少ない中で陣頭指揮を取る経営層・経営企画の人にとって、自社の現在地を確かめ、次の一歩を選ぶための問診票のような存在になりそうです。ポッドキャストではこの先、本の内容をさらに深掘りする回も予定されています。
- 大長伸行さんの初著書『自走する新規事業のつくりかた 手持ちのリソースで成果を出し続ける組織のしくみ』が2026年7月13日に翔泳社より発売。Amazonで予約受付中
- 業界や規模を超えて伴走するなかで見えてきた「止まる理由・進む理由」の共通パターンが執筆のきっかけ
- 本書の核となるキーワードは「分かり合えない問題」。経営・現場・ミドルのすれ違いを構造として捉え直す
- 章立てはリーダーシップ・プロセス・カルチャーの三つで、「自走地図」のメタファーで構成
- 主な読者像は売上50億〜1000億規模の中堅企業の経営層・経営企画・新規事業のミドルマネジメント
- 外部の「初心者」だからこそ組織の違和感に介入できる──執筆を通じてbridgeの役割が改めて言語化された
